ケイケイの映画日記
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1/31に、「やわらかい手」とはしごして観ました。「やわらかい手」終了後、梅田ガーデンシネマからテアトル梅田まで、制限時間は15分少し。大阪在住の方はおわかりでしょう。そう、走ったんです。現在期間限定門限午後4時のため、劇場通いの時間捻出に四苦八苦している所へ、この公開ラッシュでしょう?本当、大変なんですよ。頑張れ、私!いや息子か・・・(全然勉強しとらんが)。この作品は、今年めでたく100歳を迎える現役最長老監督、ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラが、ルイス・ブニュエル監督の「昼顔」のその後を描くということで、すごく楽しみにしていました。しかし面白かったか?というと、超微妙な感覚が残ります。でも格調高かったし、見どころはたくさんあったので、やっぱり観て良かったです。
老紳士アンリ(ミシェル・ピコリ)は、クラシックのコンサートで、昔の友人の妻を見つけます。彼女の名はセヴリーヌ(ビュル・オジエ)。セヴリーヌを追いかけるアンリですが、自分の過去の「ある出来事」を知るアンリとは会いたくない彼女は、逃げ去ります。色々手を尽くしてセヴリーヌと会食の約束を取り付けるアンリ。そこで交わした会話は・・・。
予告編で最大の謎だったのは、アンリは前作と同じくピコリなのに、何故セヴリーヌはカトリーヌ・ドヌーヴから、オジエに交代したか?でした。テアトルで数度予告編を観て、監督はきっとすっかり老成したセヴリーヌを表現したいのだ。今だゴージャスに現役の女感を振りまくドヌーヴじゃ、しっくりいかないと判断したのかも?などなど色々想像していました。鑑賞後の個人的な感想としては、それは当たっていたし、それが超微妙な感想の元でもありました。
アンリは老いたりとは言え、一人でバーへ、それも初めての店で若いバーテン相手に、お洒落で含蓄のある会話を楽しめる人です。店を根城にする二人の老若の娼婦が彼を誘いますが、「彼女たちは天使だよ」とお酒を御馳走しますが、買うことはしません。若いバーテンも、年寄りの戯言に付き合うと言う感じはなく、アンリとの会話を楽しんでいます。この恰幅の良さや余裕は、男としてのは高い経験値がモノを言い、若い男じゃ出せない艶です。あぁなんて素敵。特にカッコいいのが、チップの使い方です。自分を高く印象付ける初めての店での不足のない額のチップ、セヴリーヌの居場所を突き止めるための、フロント係に渡すチップ。ピンポイントを押さえたお金の使い方は、あちこちお金をばらまく、そこいらの成金とは一味も二味も違います。
一つ間違えばストーカーのようなセヴリーヌへの執着ぶりですが、前作でもアンリはセヴリーヌから嫌われていましたが、彼女を追いかけまわしていましたから、合点はいきます。それよりもその感情が、老人となった今も続いている方が驚異的。枯れもせず渋くもならず、ひたすら戻った恋しい人を追いかける様子が色っぽくて、現役の男だと感じさせ、下品ないやらしさは皆無です。
何とかセヴリーヌと会食の席を設けるアンリ。そのレストランはケバケバしさがなく、調度品やサービスなど素晴らしく、相当格式高いところだとわかります。いくら恋しい人とは言え、老女相手にこんなにお金使って、フランスの男は違うわ(うっとり)。しかし対するセヴリーヌがですね・・・。
オジエは70歳前の人で、スタイルもよくブランド品のスーツを美しく着こなし、ヒールのあるパンプスを履いて、こちらも素敵なんですが、如何せん「可愛いお婆ちゃん」に見えてしまいます。なので、倒錯した性癖を持ち、「昼顔」として娼館に勤めていた過去を悔い、「修道院に入りたい」という現在の姿はとても納得出来ます。
しかしですね、前作を観ている私はですね、男の方は容色は衰えているのに、男力は著しくアップしているのにですよ、女は可愛いお婆ちゃんでいいのか?と思うのですね。やはりここは、艶めかしく男を誘う、ドヌーヴの方が良かったと思いました。「私、修道院に入りたいの・・・」も彼女なら、そんな大きな嘘をおっしゃっちゃいけません、という風で、二人のエスプリの利いた会話に、より色気も妙も出て、この人たち、どこまで本心なの?と言う感じで、観客は煙に巻かれて楽しかったかも。あれでは男は老いてもまだまだ現役で、女はすっかり枯れてしまい、と言う風に感じました。そんなの悔しいでしょ?そのせいで、幕引きにも消化不良の感覚が残りました。
バンドーム広場を映して、アンリが過去に思いを馳せるシーンがあったり、四つ星のホテルの中を映したり、冒頭のコンサートのシーンも本物のカルースト・グルベンキアン基金管弦楽団を使っており、会食のレストランを含め、なかなか観られないモノを観られて、うっとりでした。娼婦は若い子と老女のコンビなのですが、若い方が「あなたのテクニックは抜群よ」と褒めると、「そうなのよ、客を引く時はあなたの手を借りなくちゃいけないけど」と、老娼婦が言うのには、笑ってしまいました。彼女の言葉があって、余計セヴリーヌはドヌーブだったら、と思ってしまいました。
しかし私は書きながらびっくしたのですが、一週間前に観て、その間に「アメリカン・ギャングスター」にも感激して、なお内容をすべて覚えていることです。う〜ん、恐るべしオリヴェイラ。70分と短い作品でしたが、ゆっくりと時間が流れ、味わい深いです。ちなみにバーテンはオリヴィエラの孫だそう。なーんだ、やっぱり気に入ってんじゃん、私。
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