ケイケイの映画日記
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2007年07月22日(日) |
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(吹き替え版) |
日本全国夏休みに突入、お母様方におかれましては、地獄の42日の始まりですね(今年は2日多いぞ。知ってた?)。うちも末っ子が中三でして、クラブ活動のラグビーは秋まで引退はなく、塾は6万5千円も払って夏期講習があり(多分元は取れず)、母の私も仕事の他に洗濯女・飯炊き女としてフル回転ですじゃ。なので映画も普段より綿密に予定を立てないと、落してばっかりになります。金曜日は後輩の試合の応援に出かけた息子、帰宅は7時半というので、夕食の支度をして4時15分からの吹き替え版でしたが観てきました。初作から5作目、三人ともすっかりティーンエイジャーでしょ?今回子供らしい可愛さは大幅に減って、成長した三人に相応しい少し苦く大人っぽい内容でした。
ボグワーツ魔法学校の五年生に進級したハリー(ダニエル・ラドクリフ)。復活したヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ)の差し向けた敵から身を守るため、人間の前で魔法を使ってしまったハリーは、退学の危機に陥ります。ダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)の弁護により事なきを終え、晴れてロン(ルパート・グリント)やハーマイオニー(エマ・ワトソン)と共にボグワーツに戻って来ました。しかしヴォルデモート卿の復活を恐れるあまり、復活を証言するダンブルドアが魔法省を乗っ取るつもりだと信じている長官は、監視役として腹心のアンブリッジ(イメルダ・スタウントン)を教師として送り込みます。ボグワーツを乗っ取ろうとするアンブリッジは、闘うための魔法を教えてはくれません。ヴォルデモートの復活を危惧するハリーたちは、有志の生徒を集めて「ダンブルドア軍団」を作ります。
三作目からは息子とは別々に観ていて、三作目と四作目は字幕でしたが、今回は久しぶりの吹き替えでした。「ハリポタ」は吹き替えの方が案外しっくりくるなぁと感じたのは意外でした。
今回は大人たちと命がけで闘うハリーたちが全面に押し出ていますので、今までの校内での大会のような、ファンタジックな魔法はあまり出てきません。今までになく存在感のある、ロンの双子のお兄ちゃんが見せてくれる魔法くらいかな?設定では15歳になったので、私はこれも彼らの大人への段階と取りましたが、子供向けとして鑑賞すると、少し殺伐としているかもわかりません。
魔法界に置いては特別の存在のハリー。その立場ゆえの孤独が今回くっきり浮かび上がります。辛いダースリー家での生活も、仲間との楽しいボグワーツでの生活が支えであった彼ですが、今回はどこにも居場所のないハリーの苦悩が描かれて、現実の思春期の子供たちを見ているようです。
しかしそれを救うのは、やはりロンやハーマイオニーたちの友情です。ハリーが自分が一人ぼっちではないと感じるようになるまでの、ロンやハーマイオニーのアプローチは大人さながらの粘り強さ。くちゲンカもせず時には見守り、時には説教。ほんと、大きくなったよねぇ。遊びで徒党を組むのではなく、正義のために自分たち自ら行動を起こすというのも、成長した証しです。
もう一人新たな登場人物のルーナ(イヴァナ・リンチ)(↑)が、ハリーの心をほぐすのを助けます。ただの不思議ちゃんではない彼女の思慮深さは、早くに母を亡くし、人の死を目の当たりにした辛さを糧に生きているからだと思います。子供たちにそういう正しい感情や教えを導くのは、やはり大人の仕事だとしっかり認識させてくれるのが、今回の作品の特徴でもあります。
ハリーを守ろうと、あえて彼に冷たくするダンブルドアしかり。子供たちの危機に、身を呈して守ろうとするムーディ先生を始めとする教師たち。親友だったハリーの父ジェームズに代わり、父のように接しハリーを支えるシリウス(ゲイリー・オールドマン)。両親のいないハリーに家庭の愛情を教えたいロンの両親など、ハリーが孤独を感じる時も、観客には彼は決して一人ではないのだとわかります。敵ではなく、子供に信じてもらえるのが正しい大人、そんな思いが湧きました。
今回は何とハリーとチョウ(ケイティ・リューイング)のキスシーンもあり。それをロンとハーマイオニーに報告する姿は、何となく昔の日活や東宝の青春モノのようで微笑ましいです。ずっとチョウが泣いていたというハリーに、「ハリーのキスが下手だからじゃないの?」というロンに対し、「バカね。チョウはまだセドリックが死んだのが悲しいのよ。それなのにハリーを好きになるのは悪いと思っているからよ」と、切ない女心を解説するハーマイオニー。う〜ん、お見事!他には小ぶりでぽちゃぽちゃしていて、ちょっと愚鈍な雰囲気だったネビルが、すんごく背が高くなって大人っぽく成長していたのも嬉しかったです。
英国演技派大集合のこのシリーズ、新たに加わったのはイメルダ・スタウントンとヘレナ・ボナム・カーターで、二人とも超敵役です。スタウントンは存在感たっぷりの名演技ですが、演じるアンブリッジと言う人は、徐々にモンスターめいて見えなくてはいけないと思うのですが、その辺がちょっと物足りなかったように感じました。彼女の演技ではなく、演出のせいと言う気がします。まぁ原作は膨大ですから、この辺は難しかったかも。ヘレナは問題なし。少ない場面でしたが印象的でした。
ラストにダンブルドアの大立ち回りがあるのですが、これはなかなかの見せ物でした。ちょっと「指輪シリーズ」の、イアン・マッケランみたいでしたが、白髪のロンゲと髭のせいかな?でも校長先生はあれくらいの技がなくては!現実の校長先生方は魔法が使えませんが、教師としての技量は学校随一であって欲しいと、今回のダンブルドアを観て思いました。
華やかさやファンタジックさを求めて観た方には、少々物足らない作品だったと思います。そういった面白みには欠けるでしょう。しかし私のように、このシリーズが大好きで観ている、特に大人の人には、感慨深い思いが色々湧いてくる作品でした。正直いうと、私はファンタジーものはあんまり好きではありません。息子が観たいというので、いっしょに観ただけの作品も多いですが、このシリーズだけは別。私は本当にこの子たち三人が大好きです。多分ロンのママのような気持ちなのでしょう。あと二作残っていますが、先頃完結された原作では、主要人物が亡くなっているとか。どんな悲しく寂しい最後でも、しっかり見守りたいと思っています。
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