ケイケイの映画日記
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2007年05月22日(火) |
「女囚さそり 第41雑居房」(レンタルビデオ) |
どこまで続くぬかるみぞ。「怨み節」もフルコーラスで歌えるようになってしまった今日この頃、やはり観てしまいました。明日は「恋愛睡眠のすすめ」観に行きますから、どうぞ許して下さい。昨日と今日は息子が中間試験中だったんですが、勉強の途中で息子も横で観ておりました。母としてこれでいいのか?と言う問題ですが、まーもう中三だしね(微妙にずれている問題の争点)。でも鑑賞中の息子の一言のお陰で、この作品の意図がわかったような気がします。
服役中の松島ナミ(梶芽衣子)は、看守長(渡辺文雄)の壮絶な拷問に合い、地下の独房に一年入れられていました。しかし別の場所へ護送する時、他の女囚たち(白石加代子・賀川ゆき絵・荒砂ゆき・八並映子・伊佐山ひろ子・石井くに子)といっしょに逃亡。追い詰められた果てに、バスジャックします。
法務省からのえらいさん(戸浦六宏)の巡間のため、一時的にナミは表に出られることに。渡辺×戸浦のツーショットに深く感じるワタクシ。だってこの人達、東大卒(渡辺)と京大卒(戸浦)なんですのよ。本当にこんな仕事していたかも知れない人たちがこんな映画に出て、隻眼だわ失禁だわさせられて(!)、そのアバンギャルドさに私は目がくらくら。ちなみに今を去ること30年前、私の高1の時の担任は京大の工学部を卒業した先生でした。先生いわく「同期は400人くらいで、教職の資格を取ったのは4人。その内本当に教師になったのはボク独りです。親は泣きました。」というくらい、末は博士か大臣か?だけの時代に、こんな役を引き受ける二人に好感を持つワタクシ(多分歪んでいる感想)。
が、戸浦六宏のための女囚大集合で、私は驚愕の発見をするのです。 若かりし頃の白石加代子は、今をときめく蒼井優にそっくりという件について。
嘘じゃないんだってば!!画像はこの作品の白石加代子でないのが残念です。センター分けのサラサラヘアの当時三十路ちょっと過ぎくらいの白石加代子は、びっくりするほど優ちゃんに似ていました。そうかぁ、優ちゃんもあと20年くらいしたら、白塗りの怪女優と呼ばれるのね(絶対違うと思う)。
おかげで冒頭の高圧水流のホースで水攻めに合う梶芽衣子の奮闘は、すっかり私の中で影薄くなってしまいました。しかし次の女囚の面前で、懲罰と称してナミを看守に輪姦させる件は、そう簡単にはいきません。あまりに下衆で正視に堪えないのですが、渡辺の「これは仕事なんだ」にはいくらなんでも、やりすぎの感があります。逃亡中の女囚を見つけたバスの観光客(前回の「さそり」で、女囚に強チンされた腹いせか、小林稔次がまたいた)は、警察に通報する前にやはり輪姦して死体は遺棄。あまりにもありえない展開に、いくら男性向けでもなぁと気分を害する私でしたが、その前のバスの中で、戦時中、中国人女性を銃で脅して暴行した自慢話をする虫唾の走るような中年男の話が耳に残ります。
欧米では女囚ものというと、お色気とバイオレンス中心で、何故受刑者がこのように転落したかというのは、あまり描かれません。しかし日本ではテレビドラマでも、女性受刑者の犯罪の影には止むに止まれぬ事情や、その影に男の存在があることを描いています。この作品もそう。浮気した亭主への腹いせに我が子を殺し、お腹の中の子まで殺したり(もちろん演ずるは白石加代子)、子供に暴力をふるう再婚相手を殺したり、不倫相手の妻を殺したり、自分を手篭めにする継父を殺したり。劇中で何も殺すことはないだろう!というセリフと共に、彼女たちをいたぶる幻想場面が出てきますが、殺すことはないという正論を認めつつ、哀しい彼女たちの過去を思うと、罪を憎んで人を憎まずという気持ちも湧いてきます。
女囚をレイプした男達を丸裸にしていたぶり、恐れる目で彼女たちを見るバスジャックの観光客女性に、「私たちは自分と違う世界の人間だと思ってんだろう!」と罵声を浴びせる女囚たち。きっと観光客は私たちなんでしょう。扇情的に女囚たちのどうしようもないほどの凶暴さ、あばずれぶりを描きながら、ありえない看守たちの横暴さを描きながら、その奥にある哀しさにも目を向け、一歩間違えれば誰にでもある転落を感じさせます。だからこその受刑者の人権にも思いを馳せて欲しいとの、作り手の思惑も感じました(深読みか?)。そう思うと、渡辺文雄も戸浦六宏も、出身大学でキャストしたのかと、これまた思ってしまいます(多分勘違い)。
「何でこんな綺麗な人が、この映画に出てたん?」との息子の言葉が、梶芽衣子にナミをやらせた理由でしょう。ただのエログロバイオレンスではなく、その奥にある真実を観客に見つけてもらうには、梶芽衣子の強くて気高い美しさが必要だったんだと思います。いたぶられても陵辱されても、人としての誇りを失わない輝きも。何と実のある質問。偉いぞ、息子!
ラストお約束の復讐場面では、また息子が「すごいな。あんなに刺して返り血も浴びてないなんて。」とゲラゲラ。そう、この作品は事実なんて何にも描いていないのね。大切なのはエログロに包まれた奥の、真実を感じることなんだと思います。
「この人、この後どんな映画に出たん?」と息子を心配させた梶芽衣子。普通の作品にもたくさん出て、大女優になったよと言うと、安堵していました。私の屁理屈なんか置いておいても、SM好きさんにはご満足いただけるシーンも満載、30年前から白石加代子は白石加代子だったんだなぁと、感慨深いもんもある作品です。荒野を逃亡する女囚たちは、囚人服の上にマントを羽織っていることもあって、ちょいマカロニウェスタン風でカッコ良く、三作観てこの作品が一番好きです。
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