ケイケイの映画日記
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2007年01月08日(月) |
「リトル・ミス・サンシャイン」 |
昨日は夫はお仕事、末っ子は花園へ高校ラグビーの決勝を観戦しにいったので、チャンス到来(上の二人はどうでもよし)、昨日梅田シネ・リーブルで観て来ました。続々届く高評価の嵐に、いやが上にも盛り上がる私。ちょっと作偽的に感じたり、ドタバタしすぎたりする場面もありましたが、ラストのオリーヴの踊りで、問題点は全て帳消し。大好きな作品です。やっぱりトニ姐さんの作品は、はずれがないねぇ。
アリゾナ州に住むフーヴァー家の末娘9歳のオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)は、極々平凡な容姿ながら、将来ミスアメリカになることを憧れています。一家は独自の勝ち組になる方法「9段階論」の出版を夢見て、常に勝ち組たれと、家族にも自分の主義を押し付けるはた迷惑な父リチャード(グレッグ・ギニア)、そんな父に反発し、パイロットの学校の試験に合格するまでは家族と口を利こうとしない長男ドェーン(ポール・ダノ)、ヘロインの吸引が見つかり、老人ホームを追い出されたリチャードの父・グランパ(アラン・アーキン)です。リチャードの本を出版するためのお金がかかり、経済的にも逼迫し、問題山積みのこの家族を、一人明るく支えて頑張る母シェリル(トニ・コレット)ですが、あろうことかゲイの兄フランク(スティーヴ・カレル)が、研究する賞をライバルに取られ、恋人まで奪われて自殺未遂、フーヴァー家で預ることに。そんな一家にオリーヴの憧れの「リトル・ミス・サンシャイン」という子供のミスコンに出場が決まり、一家総出でオンボロバスに乗り、カリフォルニアを目指すことになります。
これがミスを目指すオリーヴちゃん。はじけるような笑顔と、おしゃまだけど、こまっしゃくれていない様子が本当に可愛く、この可愛さは「イン・アメリカ」のボイジャー姉妹に匹敵し、私なんぞほっぺすりすりしたくなるのですが、いかんせん名前負けで(だってオリーヴ)、風船が入っているようなぽっこりお腹のぽちゃぽちゃガールなのですね。しかしこの平凡な容姿が、のちのちコンテストで感慨深いものを観客に与えてくれます。
カリフォルニアに着くまでの珍道中の数々のエピソードが本当におかしく、場内笑いっぱなし。しかし一つ一つ難儀を乗り越えていく度、バラバラだった家族が段々絆を深めていくのがわかります。リチャードの本の出版がダメになり、肩を落とす息子に、一見犬猿の仲に見えたグランパが、「お前はよくやった。頑張ったよ。」と肩を抱く姿に、私は思わずホロリ。これが親子の情ってもんですよ。
崩壊寸前の家庭は一見シェリル一人で支えているようですが、本当にリチャードはダメ親父なんでしょうか?彼が出版を諦めきれず、捨て身で出版元に掛け合う姿は、すごくみっともなく彼の嫌う負け組の姿のはず。自分の意地だけだったのでしょうか?家のお金を全部つぎ込み、家族のためにも何とかしたいと思う気持ちがあったのだと思います。豊かではない家庭で、好き放題やらかす老父を引き取り、これまたやっかいをかける妻の兄を引き取ることにも、彼が厭味をいう場面はありません(フランクのことは嫌いみたいだけど)。優しい言葉をかける姿こそ画面に出ませんが、それこそ鈍感な男の優しさじゃないんでしょうか?シェリルが夫と出版のことで大喧嘩するのも、夫を信じて裏切られたと思ったから。健気な彼女が信じるに値する夫だったということでしょう。この辺が「イカとクジラ」の夫婦とは違うところです。
私が作偽的だと感じたのは、道中のグランパに起こったことと、ドェーンの明らかになる事実。グランパの場合は、まぁ伏線もあるのでいいとして、ドェーンはあまりに唐突。日本ではこういうことは、もっと小さい時に明らかになるシステムです。アメリカはどうなんでしょうか?しかし無駄なエピソードではなく、きちんと筋の中で生かされたエピソードなんで、不問にしたいと思います。
それを立証すべく、グランパの身の上に起こったことの、その後のリチャードの活躍は目覚しく、一家の大黒柱として立派なものです。大黒柱がしっかりすれば、家族はそれについていくだけ。みるみる一丸となってオリーヴのため家族が頑張る姿を見て、世のお父さんたちに観て欲しいと思いました。
子供のミスコンと言えば、あのジョンベネちゃんが記憶にあると思います。小さな子がお化粧して、大人顔負けのお色気を振りまく姿に、私を含め嫌悪感を抱いた方も多かったと思います。あの作られた笑顔は誰かに似ていると思ったら、北朝鮮の子供たち。
そんな欺瞞に満ちた中で、オリーヴがグランパに振りつけてもらって披露したダンスは、去年の紅白のDJ OZMAも真っ青の代物。しかしこれがね。必死でオリーヴを舞台から引き降ろそうとする主催者に、この家族が対抗したことは、爆笑も幸せな号泣も誘うものでした。そうですよ、子供が世界中誰も味方がいなくったって、家族は子供を守るもんです。良かったね、オリーヴちゃん。
オンボロバスはクラッチがいかれて、バスを降りて押さなければ動きません。何度も何度も出てくるこのシーンで、段々とみんな押し方乗り方が上手くなっていきますが、それは家族の絆が段々強まったいく証しなのでしょう。しかしあの踊り・・・。さすが老人ホームでまでも女に不自由しなかったグランパです、もう最高!「負け犬というのは、勝つことをあきらめることさ」。いい言葉だなぁ、私も一生覚えておこうと思います。
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