ケイケイの映画日記
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2006年06月12日(月) 「ポセイドン」


今観て来たばっかり。あの私を映画道に引きずり込んだ思い出の「ポセイドン・アドベンチャー」をリメイク、それもウォルフガング・ペーターゼンだなんて、あんたなんかに撮って欲しくないわと思っていましたが(「パーフェクト・ストーム」参照)、どんなにダメでも「ポセイドン」とつくだけで、やっぱり観たくなる哀しい私。しかし意外にも私と同世代で、この作品に思い入れのある方々からも、好評なのです。いわく「ドラマ部分はすっ飛ばし、別モンと考えろ」だそう。なるほど、手に汗握る危機また危機は堪能出来そう。ならばスクリーンの小さいラインシネマではなく、大きい角座の方が良さそう(招待券もあるしね)。これが大正解でして、合格はあげても良いリメイクでした。

大晦日の豪華客船ポセイドン号。船上では、船長司会でパーティーがたけなわです。船には元ニューヨーク市長のラムジー(カート・ラッセル)と娘ジェニファー(エミー・ロッサム)と恋人クリス、シングルマザーのマギー(ジャシンダ・バレット)と息子コナー(ジミー・ベネット)、恋人と別れたばかりのゲイの老紳士ネルソン(リチャード・ドレイファス)、訳あって無賃乗船しているエレナ、ギャンブラーのディラン(ジョシュ・ルーカス)などが、様々な思いを胸に抱いて、乗っていました。しかし年が明けてすぐに予測不能な大波が船を襲い、ポセイドン号は転覆。ディランとラムジーを中心に、数人が船上脱出にサバイバルします。

ポセイドン号が転覆するだけで、後はほとんどオリジナルに近い脚色でした。元作のスコット牧師(ジーン・ハックマン)VSロゴ刑事(アーネスト・ボークナイン)の印象的な対立などもなく、私が予測したラムジーVSディランもなく、仲間割れはありません。女子供を脱出の優先にするお約束も守り、なんですが、この人間関係はだいぶツッコミあり。後でネタバレで書きます。巷の評判通り、ドラマ部分は希薄です。

そもそもすぐに転覆しちゃうので、その人の背景がわからずというか、多分どうでも良かったんでしょう(暴言)、その代わり、脱出までの過程は見応え充分です。転覆の大掛かりな仕掛け、燃料が引火しての大爆発、吹っ飛ばされる人々の様子、脱出組はあの危機、この危機を乗り越えても、すぐにひたひたと洪水のように水が押し寄せるので、息つく暇なく行動に移さねばなりません。観ているこっちも息つく暇なし。途中カンカン音が鳴るので「救出だ!」、とみんな色めき立ちますが、スカでした。あれは一息入れて下さいとの、監督のサービスでしょうか?

元作から30年経っているので、CGをふんだんに使っての描写も、地上とはまた違った船の中の出来事なので、迫力満点で新鮮味がありました。水を使ったアクション物というのは、案外少ないからかも知れません。パーティの様子や調理場の様子には、人海戦術を使うなど(違うかも?)、細かい配分も良かったです。元作はヒッピー風味のキャロル・リンリーがオスカーの主題歌賞を撮った「モーニング・アフター」を歌っていましたが(歌はモーリン・マクガバン)、今作では叶姉妹のような色っぽいお姉さんで、その辺はやっぱりちょびっと寂しかったです。


今回の出演者トップは、なんとカート・ラッセルを追い越し、ディラン役のジョシュ・ルーカスでした。(↑)ちょっとマシュー・マコノヒー似のハンサムで、なかなか良かったです。アメリカではコケちゃったそうで、次に観る時は主役ではないかも(残念)。カート・ラッセルは水の中に潜るシーンでは、レイ・リオッタに顔が似ていました。元市長だけではなく、元消防士とは「バック・ドラフト」を意識してか?手に汗握ると言いながら、ドラマ部分が希薄だと、こういうところも楽しめます。ドレイファスは老けすぎてびっくり!だってまだ60前ですよ、もう老人みたいでしたが、役作りであることを望みます。元作より老人を減らし、使える若い男性(クリス)を増やしたのが、サバイバル場面のバージョンアップに貢献していました。

ドラマ部分はオリジナルなので比較しようがなく、正解だったかも。サバイバル場面が面白かったから、これはこれで楽しめました。役者さんたちもずぶ濡れ体力勝負の演技ばっかりで、よく頑張ったと思います。でもやっぱり私は

「ポセイドン・アドベンチャー」の方が大好きですが。オリジナルをまた公開してくれないかなぁ。


ではネタバレドラマ部分のツッコミ**********










脱出が始まるとき、ディランは一匹狼で行きたかったはず。だからネルソンの足にしがみつく乗務員バレンタインを「蹴り落とせ!」と言った時、これは穏健派そうなラムジーと対立するなぁと思いましたが、後は女子供に優しく、ほとんどリーダーとして颯爽と引っ張る様子とちょっとちぐはぐ。バレンタインは優しく親切な若者だったので、あの発言は余計に鬼です。「蹴り落とせ!」にはせず、自然に落下したとする方が、納得し易いです。人間の土壇場の保身を描きたかったのなら、もっと人物描写に工夫せにゃ。

ネルソンも自分の身を救うため、バレンタインの命を犠牲にしているのに、最後まで生き残っても葛藤なし。その割にはエレナを最後まで気遣い、ここもチグハグ。この二人は元作のレッド・バトンズとキャロル・リンリーになるのかと思いきや、途中でエレナが亡くなるので、予想がはずれました。(誰が途中で死ぬか、予想しながら観ていた←人でなし)。それに何でゲイの設定なの?別に奥さんに男が出来たでもいいんじゃないでしょうか?死のうとしたくせに、最後まで頑張るのはツッコミません。拾いものした命だから、必死になって守りたくなる、そんなもんじゃなかろうかと思います。

これは死ぬなと思ったラムジーは(←人でなし)、まさか「アルマゲドン」風味で亡くなるとは思いませんでした。あれは元作のシェリー・ウィンタースの場面の代わりなんでしょうね。感動指数は1/3くらいでした。


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