ケイケイの映画日記
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2006年04月30日(日) 「子ぎつねへレン」


25日に観て来ました。実はワタクシ、ここ数年バレンタインとホワイトデーに、映画のチケットを交換しているボーイフレンドがいます。お会いしたのは一度だけですが、大切なお友達の一人なんです。今年私が贈ったのが「シリアナ」。結果は二人とも・・・でした。この作品はラインシネマで3/18から公開だったので、通常ならすぐ観たのですが、入院が予定外に入ったので、ずるずる延びてしまいました。入院前ラインシネマに問い合わせると、4/28まで上映というので、仕事再開後の作品として取り置きの品でして。直前に観た完成度は高し、でも好きになれない「ブロークバック・マウンテン」とは対極の、雑い脚本甘い演出ながら、作り手の暖かな気持ちが伝わってくる、好きだと言える作品でした。

カメラマンの母(松雪泰子)が海外での仕事のため、北海道の恋人の獣医(大沢たかお)の元に預けれられた太一(深澤嵐)。東京から転校して間もないため友達もおらず、寂しい日々を送っていました。ある日下校時に一匹の子ぎつねを見つけた太一は、家へ持ち帰ってしまいます。獣医の娘美鈴(小林涼子)に洗ってもらった後、ドライヤーの音に気づかない子ぎつねを不信に思った獣医が調べると、子ぎつねは耳が聞こえず目も見えないようです。そんな子ぎつねを太一はヘレン・ケラーのヘレンと名づけ、自分を重ねて一生懸命慈しみます。

最初一人迷子になるヘレンを、太一は「お母さんの落し物」と表現します。それは「お母さんの幸せは太一の幸せよね?」と屈託なく言い放つ母親を持つ、彼自身が投影されているのでしょう。決して捨てられたのではない、間違って置いていかれたのだと。自分の環境を受け入いれながら、自我の芽生えを見せる太一を、暖かく見守りたくなります。

時期が過ぎてしまいましたが、春休みのファミリー作品ですので、描写や筋運びが非常にわかりやすいです。そのわかり易さが安直だったり雑に見えるのは確か。たとえば小さく手術に耐えないへレンを、太一が一生懸命になると肉も牛乳も食べる場面など、都合よすぎて白ける人がいるのもわかります。しかし子供を育てていて、思いがけない小さな奇跡や、思いが通じる体験を経てきている私には、不十分な演出でも充分理解出来るのです。この不十分さは、小さなお子供さんへは解り易さとなったと思いますので、これでもOKかと思いました。

ただ転校生として寂しさを感じていた彼が、いつの間にか友人が出来ていたり、導入部分で獣医宅に預けられているのに、不自然な演出の箇所など、捻らずとも、もう少し説明があっても良かろうとは思いました。

私が印象深かったのは、共に子供を連れた男女の再婚話が描かれていたことです。太一の母も悪意のない人ですが、母親としては未熟な人です。獣医の娘美咲が、高校に行きながら、もうからない父の仕事を手伝い、おさんどんに明け暮れる姿は、何気なく挿入したのではないと思います。遊びたい盛りの子が、友人とお茶する姿さえありません。そんな娘に父親は、感謝の言葉もねぎらいの言葉一つすらありません。太一の母も、自分の都合で子供の環境を振りますことに、何も感じてはいません。しかし美咲も太一も、渋々ながら受け入れます。それは何故でしょう?

親が好きだ、というとても素直で当たり前の気持ちだからでしょう。そして親たちも、欠点だらけながら子供からの愛情を受けるに足る人ではあると描いています。そんな親が、太一のヘレンへの生きとしいける者への深い愛情をみて、親として子供の愛にどう応えるべきか、どう接するべきか、気づく仕掛けになっています。

子ぎつねがヘレンなら、太一はサリバン先生であり母です。段々弱って苦しんでいくヘレンを、共に泣き共に苦しみ、共に喜び共に愛する太一。誰がなんと言おうと、ヘレンを手放しません。これは子育ての原点だなと、私も小学生の子に改めて教えられました。子育ては親育て、ヘレンを通じて一回りたくましく成長した太一が実証してくれています。

子供達には限りある生命の大切さを、親たちにはそれを発展させて子育てを考えさせてくれる作品で、ファミリー映画として充分合格点をあげても良いかと思います。動物がいっぱい出てくるので、それだけでも動物好きさんにはお薦めできる作品です。


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