ケイケイの映画日記
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2006年03月12日(日) 「シリアナ」

本年度アカデミー賞助演男優賞受賞作。祝ジョージ・クルーニーということで観て来ました。どうもこの作品、面白かった人とダメだった人きっちり分かれるようで、私なんかネタバレなしの感想を読むと、明らかに後者なのです。しかし私は今年のオスカーで彼を予想し見事的中、それにクルーニーは私が大好きだった「ER」の第6シーズンまで、プレイボーイながら熱血漢の小児科医ロス先生だった人。観に行かないのは人の道にはずれるのじゃ、と覚悟を決めて観て来ました。私の予想のつまらん、わからん、眠くなる、は全然大丈夫でした。トロい私の頭では、ぼわ〜ん観ていたら置いていかれると、必死で筋を追いかけたのが良かったみたい。でも悲しいかな、あんまり面白くなかったのだな。

CIAの工作員であるボブ(ジョージ・クルーニー)は、現場での最後の指令が上司から下されます。それは中東の小国の次期国王候補であるナイール王子の暗殺です。ナイール王子は熱心な改革派で、石油の利権で長年手を結ぶ米国ではなく、中国と手を組もうとしています。ナシール王子の父のパーティに出向いたジュネーブ在住の石油アナリストブライアン(マット・デイモン)は、そこで起こった不幸な出来事の償いに、ナシール王子から大きな仕事を持ちかけられます。そのナシールの国に出稼ぎにきていたパキスタン人の青年ワシムは、そのため雇い主が変わり、突然の解雇のため、父共々路頭に迷います。ベネット(ジェフリー・ライト)は、アメリカの気鋭で野心家の弁護士で、二つの石油会社の合弁に深く関わります。

と、一見繋がらないお話が、徐々に絡み合っていきます。が、事態の全容が段々明らかになるという感じではなく、一つ一つのお話が掘り下げられていきますが、一話完結という感じで全体の繋がりが悪いです。主軸は石油の利権なのであまり馴染みが無く、それなりにはわかるのですが、話を味わうより筋について行くのに精一杯の感じが残ります。これは個人差があるでしょうが。

各々エピソードは悪くないもので、特にパキスタン青年ワシムが豊かさを求めて夢砕かれ、同じ境遇の友人と共にカリスマ性のあるイスラム原理主義者の集会に参加し、次第に彼に心酔し洗脳されていくのは説得力があり、憐れさも充分感じさせます。しかし感情を刺激されるのはこのエピソートと、改革に熱心なナイール王子が、安定を求め再びアメリカと手を組む父によって、王位を弟に奪われることくらいです。その他のボブのCIA工作員として、最後は捨石になってしまう悲哀、家庭的だったブライアンが、感情よりも大金の入る仕事を優先させるお話などは、どこかで観た既視感があり、あまりお話も盛り上がりません。

ベネットのエピソードも、ほぉ〜、アメリカの弁護士は、国の経済にも深くかかわり、フィクサーめいた存在なのかと勉強にはなりましたが、これもあんまり面白くはなかったです。面白かったのは、相手に合わせて狩りをしたりスカッシュしたり、お酒に付き合わされたりで、商社の営業マンみたいだったこと。弁護士と言っても日本とはだいぶ事情が違うみたいでした。

要するに石油の利権を握る者が世界を制すということですね。やっきになってアメリカが、他人様の国の政治に首を突っ込むのはよく理解出来ました。クルーニーは良かったんですが、正直オスカーを取るほどかなぁとも思います。作品と監督両方にもノミネートされていたので、どこであげようとなると、一番キャリアの長い演技でってことだったのかと想像出来ます。

シリアナとは、イラン・イラク・シリアが、もし一つの国家をなしたらと仮定しての名前だそうです。ハリウッドのリベラル派がこぞって出演したかった作品だそうで、元CIA工作員の書いた手記が原作だそうです。それにしてはCIAのやったことはどえらいことで、あんなに大っぴらにやるのかという疑問も残りますが、この辺はフィクションだと思います。力作だと思うし出来も悪く無いと思いますが、私にはイマイチピンと来る作品ではありませんでした。


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