ケイケイの映画日記
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2005年11月12日(土) |
「TAKESHIS’」 |
木曜日に観てきました。毎月のように新聞屋さんから梅田ピカデリーと角座のチケットをもらいますが、ここで上映の作品はだいたいラインシネマとかぶっているので、無料でも電車代を使うし往復に時間がかかるので、ラインシネマで観てしまいがちです。それでチケット交換場所に出したり、合間を見て使ったりしていますが、今回はパーにしてしまうのかと思いきや、友人に「乱歩地獄」の日程を決めるのに電話したところ、この作品も観ることになりました。武の集大成、わかる人にだけわかる作品だという絶賛の感想もありましたが、実は私はそういう感想及び作品は大嫌い。映画を観て想像力を豊かにすることはとても大事ですが、あまりに難解な作品を、自分は選ばれし人間だから理解出来たのだというのをとうとうと書く人を見ると、ケッ、そんな作品一生わからんでもええわ、と思ってしまうのです。映画なんてそんな大層なもんじゃなし、大事なのはどれだけ楽しませてくれたか、心を豊かに、または刺激を与えてくれたかが、私は大事だと思っています。しかし期待レベル最低で観たこの作品、意外や結構楽しめました。
売れっ子俳優のビートたけし(ビートたけし)は、自分とそっくりの売れない役者で、今はコンビニの店員で生計を立てている北野武(たけし二役)と知り合います。たけしからサインをもらった武は、その後夢か幻か、自分がたけし主演の映画に入り込んでしまったかのような、混沌とした妄想と夢想の間を行き来するのです。
何故悪くなかったかというと、監督ご本人が「変なもん作ってしまった。頭で考えるのでなく体感する作品。」との言葉を読んだからです。じゃ、わけわからなくてもOKなのね〜と、ものすごく気が楽に。体感とは抽象的な言い回しですが、要するに理屈抜きで感覚が合うか合わないかということかと思います。
ストーリーなんてあってないようなもの、二役以上の役をこなすのは登場人物全てです。もうごちゃらごちゃら、点と線がやがて結ばれなんて一切無しで、結ばれたかと思うとまた叩き切られるのですが、私は不思議と違和感もイライラ感もなく最後まで観られました。たけし特有のお茶らけギャグも、「座頭市」の時は何でここでふざけるかなぁと、嫌悪感すら覚えましたが、今回はクスクスと笑えました。車に乗って死体の海を轢かないようにゆっくり運転する場面など、普通はブラックに感じる場面なのでしょうか、何故か私にはファンタジーめいて見え、ゲームみたいで楽しそうだなと思った瞬間我に返り、えっ?私どうしちゃったの?という感じでした。まんまと監督の罠にはまったんでしょうか?
最初と最後にアメリカ兵が出てきますが、深読みすればたけしの年代では戦争の傷跡もどこかにあるやも知れませんが、あんまり意味も感じ取れないので深追いしないことにします。岸本加代子が、どの場面でも怒鳴り散らし、たけし及び武を罵倒することが生きがいみたいなヒステリックな中年女性で出てきますが、彼女が「HANA-BI」でたけしの妻役をやったことを考えれば、あれは監督の奥さん像じゃないんでしょうか?どんなに理不尽なことをされても耐え、どんなに拳銃をぶっ放しても、彼女にだけは手出しをしませんでしたもん。代わりに愛人役の京野ことみに殴らせていましたが、モノの見事に岸本加代子が圧倒。もう愛情や安らぎはなくても、監督にとって奥さんは別格の存在かなと感じました。
虐げられ続ける武が、ライフルを手に入れた後の行動はスカッとします。こういうわけのわからない作品は、観た後爽快感やカタルシスがあるかないかで印象が随分変わりますが、私には両方そこそこありました。
美輪明弘の「ヨイトマケの唄」は、歌自体は聴いたことがありますが、本人が歌っている姿は初めて観たので、ちょっと感激。「座頭市」でのタップダンスは少々閉口しましたが、この作品では適度のスパイスになった感じがします。「座頭市」で、「おじちゃん、あたいと遊ばない?」と言っていた男の子、大きくなってました。すぐわかったけど。
タダも加味されていますが、私は駄作だとは思いませんでした。面白いとまではいきませんが、退屈もせず。結構肌に合ったということでしょうか?オススメは出来ませんが、案外悪くなかったと言う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
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