ケイケイの映画日記
目次過去未来


2005年06月11日(土) 「ZOO」


人気作家・乙一(おついち)原作のファンタジーホラーを、5話のオムにパスで描いています。しんどかったのに急に時間が出来たので、三男と先週の土曜日テアトルまで観に行きました。この後私は腎盂炎でぶっ倒れることに。そういう不吉さいっぱいの作品かというと、それがぬるめで詰めがちょっと甘いかな?という作品群が集まっていました。

★「カザリとヨーコ」
一卵性双生児のカザリとヨーコ。母親は幼い時からカザリばかり可愛がり、ヨーコには虐待を繰り返します。自分の状況に諦めていたヨーコですが、知り合った老婦人の言葉により、あることを思いつきます。

何故母親がヨーコを虐待するのか明確な理由がわからず、「どんどん醜くなるお腹を抱えて、やっと産んでやったのに!」という、ヨーコに向けたセリフが出てきますが、それならカザリとて同じ。「ママは私に似ている」とのヨーコのセリフが出てくるので、カザリではなくヨーコを虐待の対象に選んだ理由があったはずですが、この演出では母子家庭の母親が、ストレス発散のため、どちらでも良かった双子の片方を虐待し続けたように見えました。明確な理由がわからないので、ヨーコがひどい虐待を受けているのに、淡々とした様子の切なさや痛みが、ちょっと軽くなったように感じました。ラストはちょっとブラックユーモア風ですが、母親は気づいていたと思いました。主演の小林涼子は、顔だけ見ていると幼く愛くるしいですが、スラッとした容姿でもう16歳くらいなんでしょうか?きちんと二役を演じ分けていました。有望株だと思います。

★「SEVEN ROOMS」
突然薄汚い部屋に監禁された姉と幼い弟。体の小さな弟が、部屋に流れる用水路を潜っていくと、部屋は七つあるのがわかります。そしてその部屋全てに若い女性が監禁されているのです。そして一週間のうち、一人づつ殺されていきます・・・。

5話の中で一番気に入った作品。理由も何も全然わからなくても、ぐいぐい恐怖心が煽られるし、弟を使った愛らしいユーモアにも包まれていて、それがラストの出来事をグッと締める効果をあげており、思わず涙ぐんだ作品です。弟役の須賀健太くんが大活躍。可愛いいし大熱演です。

★「SO-far そ・ふぁー」
両親と一人息子の三人家族。ある日父は母を、母は父を見えなくなってしまい、両方見える息子は戸惑います。

冒頭夫婦がいかにも交通事故にあったような演出をあるので、それに乗せられて観る方が、オチが面白いです。お互い直接言い合わずに、息子を介してののしりあう夫婦の会話を、口と顔の表情だけで音にはしない演出は、なかなか上手いです。悲しみに耐えられず失神してしまう息子に、やはり夫婦喧嘩は子供の前でしちゃいかんと、数々の過去の修羅場に大反省しました。自分を犠牲にして親を思う「子はかすがい」を描いた作品。

★「 陽だまりの詩 」
事実上滅んでしまった地球。たった一人残った青年は、余命短い自分を埋葬するために、アンドロイドの少女を作ります。

アニメーション。美しい絵柄から、命を繋ぐことの美しさと厳しさを謳いあげた作品。最初アンドロイドの少女のヌードが映ったので、どーしよう、もし過激なラブシーンでもあったら、こっちは息子連れじゃと慌てましたが、いらん詮索でした。私は普段あまり考えない「地球に優しく」が頭に浮かびました。

★「ZOO」
誰もいない動物園で、別れ話の末恋人を殺してしまった男。以来毎日彼は、腐乱していく恋人を写真に撮り続けます。

タイトルになった作品ですし、一番ラストの作品なので期待しましたが、正直意味不明、理解不能で終わりました。いったいどんな原作なんでしょう?気味悪く薄汚いムードしか印象に残りませんでした。

考えてみると、「ZOO」が一番ラストに来たので、ぐっと評価が落ちてしまいましたが、他4作品は初めに書いたように、もうちょっと深く色々ある人の感情を 刺激して欲しかったなという思いはありますが、悪い作品ではありません。ただオムニパスで117分というと、タイトル&エンディングを抜くと、1話20分チョイだと思います。それなのに全部の作品が少し間延びした印象を受けました。大阪は公開が昨日で終わりましたが、ビデオでもあまり印象が変わらない作品だと思います。一番の収穫は、乙一の原作が読みたくなったことです。


ケイケイ |MAILHomePage