ケイケイの映画日記
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2005年01月07日(金) 「ターミナル」

昨日布施ラインシネマで観てきました。大好きな「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」と似たテイストの作品と聞き、大いに期待しての鑑賞でした。宣伝にあるような大きな感動や涙はありませんが、観ている間中ずっと心がポカポカするような作品です。私は「キャッチ〜」より、同じトム・ハンクス主演の「フォレスト・ガンプ」に似た味わいの、素敵な大人の寓話だと思いました。

東欧のクラコウジアからニューヨーク空港に来たビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)は、到着後すぐに祖国にクーデターが起こり国が消滅。書類上無国籍となり、パスポートは無効。入国も帰国も出来なくなります。空港警備局主任のディクソン(スタンリー・トゥッチ)から、このまま空港で待機するよう言われます。当初すぐビクターは逃げ出し、自分の管轄外で不法入国で捕まるだろうと思っていたディクソンに対し、ビクターは「待つ!」と宣言。お金もなく言葉も通じない空港での、彼の生活が始まります。

冒頭、ビクターの身の上に起った事柄を説明するディクソンは、言葉のわからない彼にまるで子供扱いです。そして政治状況の不安的な小国の人である彼に、言葉は丁寧ですが、食事を取りながら説明するなど、横柄で侮蔑の気持ちも感じられます。状況をきちんと把握出来ないまま、ターミナルに放り出された彼は、空港内のテレビを見て状況を把握するのですが、この時のハンクスの芝居がとても上手です。自分の国が亡くなってしまう、その嘆きと哀しさが痛いほど伝わり、ビクターの純粋さも感じさせます。そして彼は何のためにアメリカに来たのか、その謎も追いかける事になります。

ターミナルで働く底辺の訳ありの人々と、徐々に交流を暖めて仲間入りするビクター。この辺は昨年観た「ゲート・トゥ・ヘブン」にも描かれており、
人種もインド系、ラテン系、黒人とマイノリティが多数というのもいっしょで、無国籍になり窮地に追い込まれたビクターに手を差し伸べる姿も自然です。少々やぼったいですが、観ていて思わず顔がほころんでしまうようなエピソードがちりばめられ、好感が持てます。そして愚直なまでに正しくあれと、知恵を捻り一心に「約束」を果たそうとする彼を、応援したくなります。

私が一番びっくりしたのは、ビクターの憧れの人の客室乗務員アメリア役のキャサリン・ゼッタ・ジョーンズ。ゴージャスな迫力ある美貌、気が強そうで少々ビッチなところもまた魅力の彼女が、清楚でとても可愛いのです。男性には年齢をサバを読み、仕事柄港港に男ありを匂わし、不倫に身を焦がしているとビクターに告白しても、彼女自身が言う「私は近づいてはいけない女」には、とても見えません。むしろ読書好き歴史好きな、教養豊かで上品な女性に感じました。誠実・愚直が売り物のハンクスとはミスマッチな共演だと思っていたのに、どうしてどうして。キャサリンはとても素敵でした。

対するハンクスは、やはり観客の心を掴むのが上手で、この手のキャラはお手の物の感じがしました。それだけに安心して観られますが、これと言って新しい魅力は発見出来ませんでした。

あの手この手でビクターを追い出そうとするディクソンですが、これをいたちごっごのように、ビクターがすり抜けていきます。その様にクスクス笑いながら安堵したりビクターに喝采したりする私がいるのですが、ビクターに感情移入しながら、どうもディクソンも憎めないのです。

もうじき警備局長昇進間近のディクソンは、仕事も有能であるシーンも描いてあります。当初は裏の手を使おうと提案する部下に、「彼は嘘ではめたくない。」と語り、終盤ビクターの大切な友になった人たちの小さな不正をちらつかせて、彼と取引しようとしますが、それだってビクターが現れるまでは、知っていても知らん顔をしていたのです。そして上司から昇進を告げられる場面では、「良く17年辛抱してくれたな。」のねぎらいの言葉もかけられる、彼こそ「待つ人」だったはず。

悪役に見えるディクソンですが、本当は善良で、立場が違えばビクターを応援するような人に感じました。彼は多くの観客と同じ場所にいる人ではないかと思います。「ビクターに学べ。」上司がディクソンに助言する言葉は、観客にも向けられたように感じました。

こんなに上手く行くわけないよ〜、と言うなかれ。小さな奇跡や今日はついていると、生活していてしばし出会う出来事は、きっと自分自身が引き寄せているはずです。少々やぼったい作りですが、そのやぼったさが気後れせず、物語に素直に溶け込んで行けます。「フォレスト・ガンプ」に出てくる「人生はチョコレートの箱のよう。どんな味がするか開けてみないとわからない。」というセリフが、私は大好きです。さしずめこの作品は、セミスィート・チョコに、所々スィートが混ざっている感じです。ビクターの「約束」も、少々とってつけたようですが、万人に理解出来るような理由です。
頭で観るより、心で観ると納得出来る作品です。


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