ケイケイの映画日記
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2004年05月21日(金) 「死に花」

今日からレビューを書かせてもらうケイケイと申します。初めましての方は初めまして。お見知りおき下さいます皆様は、今後もどうぞよろしゅうお願い致します。

さて、記念すべき第一作目に選んだのは「死に花」です。この作品は、超高級豪華老人ホームを終の棲家と選んだ老人達が、ひょんなことから銀行強盗を実行するお話です。

描かれる老人方たるや、エアロビクスにスイミング、筋トレにお酒、そして恋と若い子顔負けの勢いです。福祉なんかにゃ志低く、やる気なさそうな星野真理扮する今時のやんちゃな新人職員・和子チャンはたまげます。そしてそれは、老人以外の多くの観客と同じ目線です。その和子チャンに、エロ爺の青島幸男はその忙しさの本質を語ります。「みんな退屈が怖いんだよ。」

この和子チャンは、いつの間にやら強盗一味に加わるのですが、彼女は全然お年寄を尊敬もしなければ、いたわりもしません。彼女にあるのは楽しいから、面白そうだから、この人たちはイケてるからの「共感」です。彼女が違和感なくお年寄達に受け入れられる様子は、老人に対して優しくしなければ、いたわらなければと言う保護する」接し方ではなく、一緒に共感することが大切なのではないかと感じました。

昨今の老人を主人公にした作品では、老人の恋と性も盛り込まれて描かれていますが、本作でも積極的に描かれています。役立たない体に鞭打つ姿など、笑いを誘いながら、人を愛すると言うみずみずしい感受性に性を伴うことに、年齢は関係ないのだと感じます。

銀行強盗を決意したあとの、おじいちゃんたちの姿は、観ているこちらまで楽しくなるよな弾けっぷりです。まるで幼稚園児が、お気に入りのおもちゃを与えられたように、嬉々としています。生きる目標が何でもいいから欲しかったのですね。

不満もあります。あんな大富豪ばかり集まるホームの老人を主役に据える必要があるのでしょうか?長屋のおじいちゃんでも充分ではないかと思いました。それに不必要に老けメイクしすぎ。最近のお年寄りは、おじいちゃんももっと身奇麗です。設定とチグハグな気がします。そして誰も身内が出てこないのです。思春期の子供に親が立ちはだかるように、老春を謳歌しようと
するのを邪魔するのは、実の子供たちのはず。漫画チックが過ぎる、銀行強盗の方法も含め、寓話だからと逃げずに、きちんと作り込んでいれば、爽快感・痛快感が、もっと増したと思います。

老いるとは子供に返ることのように表現されますが、実際は、子供は大きくなればあれもこれも出来るようになりますが、老いるとは、今日出来たことが明日は出来なくなることです。去年は乗れた自転車が、半年前は結べた靴紐が、昨日は数えられた数字が、次々と、そして永遠に出来なくなることです。その空しさにわびしさに、折り合いをつけて受け入れる、そんなラストがほろ苦く心に残りました。


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