♀つきなみ♀日記
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2005年03月20日(日) 柳の下に二匹目の関鯵はいるのか?/産地ブランドを生み出す、商標法改正の問題点。

今日は前フリ略です<=おい!

ってことで、今国会に提出されている法案の一つに、商標法の改正案があるんだけど、これは2月18日に特許庁からプレス発表の、産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会において取りまとめられた

「地域ブランドの商標法における保護の在り方について」
http://www.jpo.go.jp/torikumi/puresu/shouhyou_matome.htm

を読んでいただくと詳細が判るんだけど、すごくざっぱにまとめると

1.現在の商標法では、原産地と産物だけで構成される商標は、登録できなか
 った(第三条第三項)
2.しかし、最近地域興しの一環として、産物をブランド化する動きがあり、 これを保護する要請も高まっていた。
3.今回、地域の名称及び商品又は役務の名称等からなる商標について、一定 の範囲で周知となった場合には、事業協同組合等が団体商標として登録す ることを認める(地域団体商標)

って事なんだよね。

「え〜っ?!じゃ、今までの何々産ってのは何だったの?」って思われる方も多いって思うんだけど、現在の産地表示はほんのこの前って言うか、2000年と2004年に大幅改正されたJAS法に基づいていて、商標じゃないんだよね。つか、それまでは、ほんとえーかげんなものだったんだよね、●●産って言うのは。

そんで、JAS法が変わってから、ご存知のように産地の不当表示問題が続出した訳なんだけど、それまで、産地がきちんと表示されていたわけじゃなくて、義務化されていなかったので、法律で問題にならなかっただけなんだよね。

さて、皆様が産地&地域ブランドって言うと、まず思い浮かべるのは、松阪牛だったり、最近ブランド化成功の事例としてよく取り上げられる、大分県の佐賀関町(現大分市佐賀関)の関鯵、関鯖かも知れない。

詳細を書くと切りがないんだけど、松阪牛は現在の商標登録は無くて、三重県にある松坂食肉公社が,10桁の個体識別番号を利用した松阪牛個体識別管理システムによって管理している牛だけを「生産地松阪」表示とすることを決定して、地域も22市町村に限定・厳密化したんだけど、この選定からもれた、それまで松阪牛として長年出荷していた近隣市町村の飼育農家とトラブルになっているんだよね。

じゃぁ、関鯵、関鯖はどうかと言えば、こちらは商標なんだけど、正式な商標としては

以下引用(一部情報簡略化。権利者住所氏名伏せ)

【商標(検索用)】 §大分県一村一品\関あじ\関さば∞大分県一村一品\関あじ\関さば
【標準文字商標】
【称呼】 オーイタケンイッソンイッピンセキアジセキサバ,セキアジセキサバ,セキアジ,セキサバ,セキ
【ウィーン図形分類】 1.15.24; 3.9.1; 3.9.10.99; 26.1.1; 26.1.2; 26.1.15; 26.1.18; 26.2.1; 26.4.4; 26.4.6; 26.4.7; 26.4.9; 26.11.3; 26.11.12; 26.11.13; 27.3.1; 27.3.3; 27.5.1.30; 27.5.23.92; 28.19

---------------------------------------------------------------------
【権利者】
【氏名又は名称】 ***************
【住所又は居所】 ********
---------------------------------------------------------------------
【付加情報】 色彩有り

以上引用

で、権利は地元の漁業協同組合が所有している。

つまり、現在の商標法下では、「佐賀関鯵」では元々登録が不可能だし、単に「関鯵」でもできなかったので、こんな登録になっていて、図形商標も一体として登録されているんだよね。

もちろん「関鯵」「関鯖」は産地の人達の品質を守り、市場に浸透させるための長い努力の結果で、これは当然正当に評価されるべき成果なんだよね。

ところが、今回の商標法改正の大きな問題点は、そんな成果の柳の下のドジョウを狙う発想が前提にあって、さすがに、関鯵.鯖を騙る処は出てこないとは思うんだけど、JAS法との整合性が、細密に検証されないままで法案が作られていて、現在までの一般認識と異なった産地産物が登録される可能性が高いのと、種苗法との関連も曖昧で、今まで頑張って地域名が入っている野菜を、他地域で作っていても、その名前が突然名乗れなく可能性がある。

極論を言えば、薩摩芋が薩摩地方(鹿児島県西部)で商標化されれば、同じ鹿児島県でも東部の旧大隈地方では薩摩芋表示はできないわけで、ましてや、NHKの朝の連ドラの舞台の宮崎だと、芋焼酎の原材料名に「サツマイモ」と表示するためには、薩摩地方の芋を使うか、商標所有者の許可を受けた地元産の芋を使用しないと、いけなくなっちゃう。

まぁ、「薩摩芋」は一般名称として周知認識されているから、まずそんな登録はできないとは思うけど、今回の法案では可能になっちゃってるんだよね。

それより何より問題なのは、法律が改正される前から、インチキ産地ブランドコンサルタントを名乗る人や、広告代理店の担当部門を名乗る怪しい組織とかが、雲霞のように湧き出してきていて、自治体や農林水産関係の団体に食い込み始めている。

そしてそれは例によって、政治家さんのご紹介状を持参する。

仕事をきっちりやってくれるんならまだしもなんだけど、実際には商標とJAS法と種苗法の整合性さえも理解していなくて、どっかからもらって来た、陳腐なマニュアル程度の知識しかないような連中が、予算を狙って徘徊してて、商標登録の実務まで弁理士さんに丸投げして、それだけで数百万円、数千万のコンサルフィーをかっぱらっているんだよね。って、詐欺師か泥棒以外何者でもない、実態は。

ふぅ。

この問題は、もうちょっと追いたいので、今日は問題提起だけで、すんません。

ってことで、またね。


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