♀つきなみ♀日記
DiaryINDEXpastwill


2005年02月23日(水) 中国「クレヨンしんちゃん」商品撤去騒動に見る著作権と商標権

ってことで、春一番と共に花粉症の始まった、つきなみ♀です。美貌90%OFF、思考力50%OFFって感じかな。まぁ、ゼロに何を掛けてもゼロなんだけど(自爆)

それはともかく、中国で双葉社が正規ライセンスを発給した会社のクレヨンしんちゃんの製品が、コピー商品として撤去を命じられて騒ぎになっているんだよね。

Yahoo!news(共同通信) - 2月21日17時31分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050221-00000136-kyodo-bus_all

本文を読んで頂くと判るんだけど、記事は間違いなく、商標権と著作権を混同しているし、双葉社自体も、少なくても商標権に関して錯誤があるのではないかと推測できる。

この記事の内容の内、事実関係は正しいとすれば、なにせ、「今年1月、コピー商品の商標登録取り消しを当局に請求」って言うんだから、まだ一月しか経っていないわけで、その時期に商標権を添付しないでライセンスを発給した商品を店頭に並べれば、トラブルになるに決まっているんだよね。

って言うか、ろくな調査もせずに、ライセンス契約をしたことは明白で、これは著作権侵害とは別に、契約の仕方自体に問題がある。

知的所有権の権利範囲と法律の絡みは
http://d.hatena.ne.jp/tsukinami/20000430

で一覧表にしたので、そっちを見てもらえれば判りやすいと思うんだけど、根本的な誤解は、よほど周知されていない限り、物品と名称は、商標の登録によって以外、関連付けられることは無い。これは、知的所有権の国際条約であるマドリッド条約の概念においても同じだ。

但し今回の中国での問題はちょっと違っていて、著作権を侵害している業者が、その著作物と関連する名称を使った商品を製造、あるいはライセンスしているわけで、まず間違いなく、商標は将来的には抹消→新規登録か移転することになるだろうけど、それと今回の騒ぎは分けて考えないといけないんだよね。

上のリンク先でも書いているんだけど、著作権は登録制ではないので、著作権が発生している証明は、マンガとしてのクレヨンしんちゃんが週間アクションに連載が始まったのは、1991年夏なので、これは間違いなく立証できる。

ところが、商標は登録制なんだけど、双葉社が商標の登録を開始したのは、ほぼ1年後の1992年6月3日なんだよね。そして、その時は、

30類 菓子及びパン,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミ−トパイ,ラビオリ

だけの申請で、これは1994年12月22日に登録されいる。想像だけど、クレヨンっていう一般名詞が、最初審査に引っかかって、「クレヨンしんちゃん」で一体だっていう申請までに、何度か訂正があったので、2年以上かかったんだと思うんだよね。

で何故だか、同日、25類の被服関係(詳細は略します)も別紙で提出されていて、登録は1995年4月28日になっている。

その後、16類の文房具、28類のボードゲーム類、14類の時計,身飾品 そして何故か9類の電気機器を登録しているけど、それ以外には登録が無い。(すべて類内の詳細は略しています)

そして日本で行ったすべての登録は、日本国内登録であって、中国を含めた他の国への登録とは、まったく関連しない。

極論すれば、それ以外の類の登録は現在日本でも可能だし、著作権に違反しなければ、って、しんちゃんの画像と関連させなければ、その商標権を用いて事業を開始することはまったく可能だ。

代表的な例を挙げれば、24類の登録は無いので、「クレヨンしんちゃん商標」のタオルやハンカチは権利関係は確立していないんだよね。

めんど臭いのは、「クレヨンしんちゃん」という商標のタオルは作れるけど、そこにクレヨンしんちゃんの画像を乗せるのは、著作権がクリアできなければ不可能だってことで、逆に作者の臼井さん本人が、自分で絵を書いたハンカチを売ろうとしても、もし他の人が商標取得してると「クレヨンしんちゃん」って商標じゃ売れない。この辺が現在の知的所有権関連法間の不整合なんだよね。

本当なら、双葉社は、ライセンス契約をする際には商標権の取得をして、セットで販売するべきなんだけど、今の登録状況だと、その辺まったく気にしていないみたいなんだよね。って、ちょっと考えた方がいいと思うんだけど。

じゃ世界的な商標の問題は、現在最新の協定である、ニース協定への参加国は、いまだに66ヶ国に留まっている。って、それ以外の国は、分類だけは国際登録分類になっている国が別に92ヶ国あるけど、ニース条約加盟国でも、当然、登録は各国別だ。

じゃ、同時に複数の国に出願登録できないのかと言えば、それが、マドリード条約で、現在44ヶ国が加盟しているけど、あくまで、同時に申請できるだけで、申請し登録されない限り、その国での商標権は保護されないし、権利は生じないんだよね。もし、著名な商標であっても、一件ずつ、一類ずつ、各国の所轄官庁が審査し、判断を下していくんだよね。
(実際には類似群が存在しますが、説明が繁多になるので割愛します)

この辺の法律や権利関係に対しての理解は、日本はまだまだ後進国だ。商標の国際分類を採用したのでさえ、平成4年4月1日からで、まだ10年ちょっとにしかならい。そしてマドリッド協定議定書に加入したのは、ほんの5年前の平成12年からなんだよね。

ヤフオクの「ご理解ある方のみ入札」「お値段からご理解」って台詞をを引き合いに出すまでも無く、先進国の中で、コピー商品の流通がほぼ野放しなのは、いまや日本だけになってきている。街で、コピー商品屋台を捕まえるのは、どちらかと言えば暴力団対策だったり、外国人不法滞在者対策の面のほうが強いし。

昨年やっと、個人使用についてもコピー商品の持込が規制された訳で、それまでは、規制自体が無かった、商標件的には、とんでもない国なんだよね、日本は。

そして今も、マスコミやいんちきコンサル達が、泥縄で「知的所有権」って騒いでいるだけで、正しい理解を一向にすすめようとはしていない。って、学校の先生も、新聞記者さんも、TVキャスターも正しい理解が足りないので、嘘ばっかり広めているんだよね。まったく。

この問題は、私の実生活の仕事とも関わるんだけど、正直に言えば、弁理士さん達も、ビジネスと商標、そして著作権の関連を把握しきれていない。何故なら、著作権は弁護士さんの範疇で、弁理士さんじゃないんだよね。そして、弁護士さんは、弁理士さん範囲の知識が薄いので、最近は「国際法律特許事務所」なんて感じで合体してる訳なんだけど、今度は、ライセンスビジネスの実務やドメインへの理解が薄いんだよね、残念ながら。

この三つを上手く調整でき、また理解し、実際の仕事に繋げる人材を育成しないと、まずいって思うんだけどなぁ。

さて今日は、早めに上がって、ごはんを作ろうっと。って、名古屋のお土産に味噌煮込みうどんもらったので、鶏肉買って帰ろうっと。

ってことで、またね。











テキスト庵

日記才人の投票ボタンです。

♀つきなみ♀ |MAILHomePage

My追加