彩々

2004年02月27日(金) 記憶を弔えば

ひとり遊びが上手なこどもだった。
春が近づくたび、
「春を探しに行こう」とつくし取りに駆け出した。
何時間も、海辺で貝集めをして困らせた。
いじめられてる子を見過ごせずに、
年上の男の子に、代わりに棒で叩かれて悔し泣きした。
家族に泣き顔を見せるのが嫌いで、
けれど涙を拭って帰っても、いつでもすぐに見破られた。

記憶の断片をだれかと共有できてる幸福。
ただ見守られることで、
いかに自分が健やかに育ってきたかを知る。

私はまだ、あのときの小さいこどものままで、
些細な事につまづき、転んでばかりだし、
名前に込められたような広いこころも未だ持ち得ていないけれど。
自分がふんだんに愛されたように、
あんな優しいまなざしで、
あたたかい空気で包むように、
彼女のことを愛せるようになりたい。

大切な人の死を、
まだうまく内在化できない私は、
ただ、
息を吸って、吐いて、
透明人間になりたいと願いながら日々を過ごし、
毎朝、目覚めるのを拒否する。


 < 過去  INDEX  未来 >


喬(きょう) [MAIL]

My追加