ひとり遊びが上手なこどもだった。 春が近づくたび、 「春を探しに行こう」とつくし取りに駆け出した。 何時間も、海辺で貝集めをして困らせた。 いじめられてる子を見過ごせずに、 年上の男の子に、代わりに棒で叩かれて悔し泣きした。 家族に泣き顔を見せるのが嫌いで、 けれど涙を拭って帰っても、いつでもすぐに見破られた。
記憶の断片をだれかと共有できてる幸福。 ただ見守られることで、 いかに自分が健やかに育ってきたかを知る。
私はまだ、あのときの小さいこどものままで、 些細な事につまづき、転んでばかりだし、 名前に込められたような広いこころも未だ持ち得ていないけれど。 自分がふんだんに愛されたように、 あんな優しいまなざしで、 あたたかい空気で包むように、 彼女のことを愛せるようになりたい。
大切な人の死を、 まだうまく内在化できない私は、 ただ、 息を吸って、吐いて、 透明人間になりたいと願いながら日々を過ごし、 毎朝、目覚めるのを拒否する。
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