電子の星

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/416717409X
やっと出ました。石田衣良の池袋ウェストゲートパーク(IWGP)シリーズの文庫版第四巻。ちなみにハードカバーでは5巻まで出ています。早く出して。

池袋でストリートギャングの揉め事を解決するなんでも屋のマコトが主人公。ラーメン戦争,不法滞在外国人,ネットで売買されるスナッフビデオといったイマドキな事件に,首を突っ込まざるをえないマコトが実に魅力的なのです。池袋のストリートギャングのボス「キング」,売り出し中のやくざ「サル」といった脇役陣はもちろん,事件に巻き込まれる被害者,そして加害者までキャラがたちまくっているのは相変わらずですなあ。

基本的に最終的には救いのある話ばかりなので(とはいえ黒フードおやじとかいるが),読んでいても重くないし,次も楽しみです。しかし,マコトってストリートギャングのボスとやくざと警察署長が知り合いなのはずるいと思う。
2005年10月03日(月)

タフの方舟(1)(2)

ハリポタブームで「氷と炎の歌」が紹介された影響なのか,G.R.R.マーティンのSFの新刊が読める。うれしい。主人公は宇宙商人のタフ。何星人なのかよく分からない。無毛で巨漢で太鼓腹で無表情で白い。グルメで猫好き。こいつが第一話でかつての惑星間の大戦で使用された超巨大な生物兵器艦をゲットするところから話は始まる。

タフが色々な星でその星の問題を遺伝子テクノロジーと商人根性で解決していくのが基本ストーリーで,とんでもない変な生物が続々と出てくる(あるいはタフが作る)ので,そういうのが好きな人(オレ)にはたまりません。「サンドキングス」にあったような救いの無いトーンは鳴りを潜めていて,ライトなエンターテインメントといった感じ。

子供を産み増やすことを宗教的な命題にしているある星の人口問題をテーマにした物語が,連作の形で3編おさめられているが,「産児制限するしかないね」というその星を全否定する出発点からの飛躍がないので,おはなしの着地がうまく決まっていない。そのため全体の評価が少し落ちてしまう。残念。
2005年07月15日(金)

消滅する言語

「消滅する言語」読了。いま地球上からすごい勢いで言語が消えている。少数の民族にしか利用されていない言語は,英語などのグローバル言語の波に押されたり,その言語を利用する人間が全て死に絶えてしまったりすることで,消滅の危機にさらされている。

具体例が少なく抽象的な論理だけで話が進むので,ちょっは読みにくいんだけど,内容は衝撃的。言語が消えるということは,それにともなって文化が消えるということで,文化の多様性という面から見ても人類に対するダメージがあるという論旨である。

地球上にある言語の数も定説はないらしい(筆者は約6000と見積もっている)。そして,この中の半分ぐらいが近い将来に消滅するのではないかと予測している。これを防ぐためには,言語学者や政府や資金のサポートが必要だ。ユーロが多言語政策を押し進めていたりして好転の兆しもあるが,それでも多くの言語の消滅は避けられないらしい。
2005年04月05日(火)

ハッカーと画家

「ハッカーと画家」読了。

「ハッカーと画家」は,プログラミングに感するエッセイ集だけど,半分ぐらいはプログラミングに関係ない話が入っている。富の分配についての鋭い分析や(著者は貧富の差が広がるような政策はOKだと言っているのだ。たくさん反論がきたらしい),オタクが学校でいじめられることについての考察(大学にはいじめなんか無いのだから,小学〜高校のありかたが間違っている),また著茶たちが立ち上げたベンチャー企業のはなしなどである。

特に著者はLispというプログラミング言語を愛していて,プログラミング言語の選択に関して実に鋭い意見を述べている。これを読んでワタシも「Javaを使うのやめてRubyに集中しようかな...」などと思ったぞ。とにかく「強い言語」を使わなければ競争に勝てないとする著者のメッセージは力強く明快なのである。
2005年03月14日(月)

「ザ・スタンド」(I〜V)

とうとう読み終わりました,スティーブン・キングの「ザ・スタンド」。ブ厚い文庫本でなんと5巻。一生終らないかと思った。しかし,やっぱりこの頃のキングは本当に面白い。

よくある「終末SF」の設定で,米軍の生物兵器が漏れだして,あっと言う間に全米(たぶん全世界)の人類の90%以上が死滅した世界での,善と悪の戦いを描いています。キングの執拗な描写が炸裂していて,人が死ぬ死ぬ。子供も死ぬ死ぬ。大人も死ぬ死ぬ。インフルエンザに似た謎の疾病がひろまっていく過程は圧巻。とにか序盤は死にまくりです..と思ったら中盤に入っても終盤でも死んでる。もう関東地獄地震の描写しかない「バイオレンスジャック」みたい。

意地悪なキングは,善の側には妊婦とかでぶのオタクとか聾唖の青年とか知的障害を持つ少年とか奥さん死んでがっくり来てるおっさんとか,そんなのしか生き残らせません。これに比べると悪側はキャラたちまくりです。特に精神に障害を持つ放火魔「トラッシュカン」はすごい。全米を放火しながら,悪の首領の元に旅していくのだけど,これがヨイ。いやヨクナイ。

プロットを冷静に考えるとなんかデタラメの一歩前って感じなんだけど,その全てをキングの描写力が吹き飛ばす力業。あー面白かった。次はもっと気楽な本を読もう...
2004年11月20日(土)

封印作品の謎

「封印作品の謎」読了。ウルトラセブンやブラックジャックの中にある"封印作品"(ある時期から放映/出版されなくなった作品)について追いかけたノンフィクション。いや面白かった。

ウルトラセブンの有名な「スペル星人」については,内容を見もせずに抗議を行い,作品を封印に追い込んだ側が悪いと単純に考えていたが,モノゴトはやはりそんなシンプルではありませんでした。抗議する側,される側,作品を作った側,作品を売る側,それぞれの思惑が交差するあたりは実に面白い。

昔の作品が見られないのはちょっとおかしいとは思う一方,ここ15年ぐらいで自分でも差別的な言い回しはしなくなっている(逆に言えば15年前なら平気でしていた)。その一方差別的表現があることをしっかりと認識しつつ作品を評価するという方向も確立しつつある(ちょっと前なら出せなかった作品が次々と復刻されている)。そう考えると,ここに取り上げられた封印作品が見られる日もいつかは来るかもしれないな。
2004年10月08日(金)

底抜け合衆国―アメリカが最もバカだった4年間

「底抜け合衆国―アメリカが最もバカだった4年間」読了。ウェイン町山づいているワタシ。アメリカでのいろんな出来事を連載するコラムを一冊にまとめたものだが,これがちょうどブッシュが大統領になってからの4年間に重なっているため,その間にいかにアメリカがダメになったかを記録する報告にもなっている。

「ブッシュでもゴアでも,まいいか」的なノリから始まるものの,ブッシュがあらゆる手を使ってアメリカの「自由」を奪っていくにつれ,著者の怒りと恐怖が現れてくる。これ読むとアメリカがマジにヤバイことになっているのが分かるね。つーことは日本もヤバイということだ。うがが。
2004年10月03日(日)

ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判〈2〉

「ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判〈2〉」読了。あー笑う。とにかく笑える映画についての毒舌対談集。私は本としてのエンターテインメント性にだけ興味があるの,批判が正しいかどうかはあまり興味が無い(見ている映画はほんの一部だし)。重要なのは「ぐはは。そうだよなー」と思わずいわせてしまうような芸である。

で,この本にはそういう芸がたくさん。
2004年09月30日(木)

真空ダイアグラム

ジーリー・クロニクル「プランク・ゼロ」の続編「真空ダイアグラム」読了。宇宙誕生の頃から存在しながらも他の知的種族と接触しない謎の超種族「ジーリー」。そのジーリーと人間の関わりを描くジーリー・クロニクルの短編集(メインは長編で数冊ある)の後半です。

ここで明らかになるジーリーの真の意図。そして人間の行き着く末はどこか。いかにもSFらしい全編と比べて,ここではSF的センスオブワンダーというより,なんだろう,冒険小説的なノリというか,「意志」の物語になってますね。あとがきにもあったけど,ヴェルヌの「タイムマシン」の最後の方を思い出したりします。

さあ,短編集を読むと今度は長編の方が読みたくなるんだけど,今は入手困難とか。うーむ。
2004年09月25日(土)

プランク・ゼロ

スティーブン・バクスターのハードSF短編集「プランク・ゼロ」読了。いやー,ずっと「面白いSFが読みたい病」だったんだけど,やっと満足しました。実にSFらしいSF。これは「ジーリー・クロニクル」という,バクスターの未来史シリーズの一部となる短編集です。長編には「天の筏」「時間的無限大」などがある模様(読んでない)。
ジーリー・クロニクルは,宇宙の創世記から存在する超絶的な種族「ジーリー」をめぐる物語なんだけど,この短編集では,その未来史を短編で縦断するかたちになっているので,長編を読まなくてもだいたいの流れが把握できる。おとく。異常に進んだテクノロジーを持ちながら,銀河系内の知的生物とはコンタクトをとらない謎の種族ジーリー。かれらの目的は何か。ジーリー以外にも異星人,異星生物てんこ盛りで楽しいです。ジーリーの発明品も(宇宙に廃棄されているジーリーの技術を,いろんな種族が争って探している)スケールが大きくてイイネ。
ちなみに,短編集は二分冊で「真空ダイアグラム」に続きます。
2004年09月20日(月)

ま2の本日記 / ま2