ケイケイの映画日記
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2018年06月20日(水) 「レディ・バード」




この作品大好き!観てだいぶ経つのですが、今年の私のベスト10に必ず入れようと思うので、少しでも書いておきたいと思います。サンフランシスコはサクラメントの、平凡なハイスクールの女の子のお話が、こんなにも笑って笑って、胸に染み入るなんて。監督は女優でもあり、私のご贔屓のグレタ・ガーヴィク。

2002年のサクラメント。大学進学間近のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、根拠もないのに自意識過剰で、親のつけた名前を嫌い、周囲に「レディー・バード」と呼ばせます。口煩いママ(ローリー・メトカーフ)とは折り合い悪く、いつも口喧嘩ばかり。それでも親友のジュリー(ビーにー・フェルドスタイン)との毎日は楽しく、イケメンの彼氏ダニー(ルーカス・ヘッジス)も出来ました。後はこの閉塞的な田舎町を脱出して、NYの大学に進むだけなのですが、一騒動待ち受けていました。

彼女たちの日常は覚えがあります。派手なグループを遠めに見ながら、自分と似た子たちと浮かず沈まず、泳いでいたあの日々。あぁ懐かしい。箸が転んでも笑い、男の子への好奇心もいっぱい。友達が入れ替わる時の悪気のなさと寂しさ。男性教師への恋心(これはジュリーね)。でも何か足りないと焦る気持ち。そして親との葛藤。

冒頭、ラジオの「怒りの葡萄」の朗読に、同じように涙する母と娘。楽しくドライブするかと思いきや、その直後の空気の悪さとクリスティンの行動と言ったら(笑)。いやいや、見ている分には面白いけど、親からしたら、トンでもない娘ですよ。

パパ(トレイシー・レッツ)がリストラに遭い、看護師をしているママは、クリスティンの大学は地元にして欲しい。しかし娘は優しいパパに懇願して、奨学金の手筈を整え、NYの大学を目指す。これだけ見ると、自立心旺盛な娘が正しい。でも私が感慨深かったのは、ママをただのわからず屋ではなく、状況を浮かび上がらせて、愛を持って描いている事です。

だらしなさを咎める母に、「ママだって親に口煩く言われて、嫌だったでしょう!」と口答えするクリスティンに、「私のママは酒びたりだったわ」と返事をします。あぁ、そうなんだ。結婚した夫は、ユーモアと誠実さを兼ね備えた良き人ですが、リストラに怯える甲斐性なし。養子の長男ミゲルは、有名大学を出たのに、フリーターの日々で頭が痛い。でもママは、育った家庭でそれ以上の苦労をしていたのでしょう。自分が頑張って家庭を守る方を選ぶ。だって看護師としてフルタイムで夜勤まで入ってるんですよ。家族を捨てて、一人になる方が気楽でしょ?

パパはその気持ちをわかっていたと思います。でも一番解ってほしかったのは、クリスティンのはず。だってこの家庭で、ママと唯一血が繋がっているのが、彼女。そして同性。解ってくれたっていいじゃないの!と、ガミガミ口煩くなるのもわかるのです。四六時中お金の算段で頭が痛いはずなのに、なけなしのお金で整えるクリスマスプレゼントに、家族に捨てられたミゲルの彼女の分まである。ここで泣いたのは、私だけかなぁ?あと、空港のシーンでも、ママの気持ちが痛いほどわかり、滂沱の涙でした。

と、観ながらうるうるしているのに、娘は自分の事で頭がいっぱい(笑)。優しいダニーの、とある秘密に激怒し振った後、スクールカースト上位のジェナに、お金持ちと偽り近づき、首尾よくカイル(ティモシー・シャラメ)をゲット。しかしこれが顔だけの不誠実なバカで、念願の初体験が大失敗。努力と見栄と恥の日々(笑)。しかしクリスティンが、「私はプロムに行きたい」ときっぱり言い放った時、それは彼女の見栄と恥の日々は、自分と確認するのに、無駄ではなかったと感じました。

私が感嘆したのは、女の子のこの手の顛末を描くと、ペーソスだけになりがちなのに、笑いも元気も盛りだくさん。気にすんな、頑張れよ!と声をかけたくなりました。女優としての監督の持ち味が、生かされていると思います。

一人NYに出た彼女が、名前を尋ねられて、どう答えたか?親と離れ、親に感謝出来た、これからがあなたの人生のスタートなんだよ。傷つけば、羽を休めに、サクラメントに帰りなさい。パパとママが温かく迎えてくれるはず。その時、嫌で嫌で仕方のなかったサクラメントから、違う風景も見えるはず。アメリカの女の子物語は、青春を描きながら、親への感謝がいっぱい詰まっていました。





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