ケイケイの映画日記
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素晴らしい!本年度アカデミー賞長編アニメーション受賞作です。2Dのアニメですが、とにかく体感する作品でした。共生とは何か?根幹的な事を教えて貰いました。ラトビアのギンツ・ジルバロディスが、監督・製作・脚本・撮影・編集・音楽と、全て担っています。
一匹の猫が、森を散歩していた時、大きな洪水が起こります。猫の生息してた場所も、水に埋もれてしまいます。返る場所の無くなった猫の前に、一隻の難破船が現れ、中にはカピパラが居ました。船に乗り込む猫に、無関心ながら、カピパラは追い出す事もしません。やがて船は流れに任せ、彷徨います。
とにかく映像が素晴らしい!色彩の美しさや光の煌めき、動物たちの俊敏な動きなど、一瞬も目が離せません。そして洪水の様子や、大海を悠然と渡るクジラの様子など、ちょっとしたスペクタクルで、雄大で荘厳な自然を堪能します。人間は一人も出て来ず、動物に喋らせる事もありませんが、その時々の動物たちの心を、映像は雄弁に伝えてくれます。
キツネザル、犬、ヘビクイワシ。次々とノアの箱舟のような難破船に乗り込む動物たち。彼らは、自分の特性を用いて動いているだけなのに、個性が際立つ。そして、その個性が生きる上で役立っています。
それぞれ別々の行動をししていた彼ら。各々の理由で、自分の仲間たちから逸れてしまっている。食住を共にすることで、まとまりの無かった動物たちが、自然に寄り添い協力していく。思いやりや、共に喜び楽しむ感情を芽生えさせる様子が、描かれます。ファンタジックでありながら、成長していく動物たちの姿は、人間が投影されています。
水面に映った動物たちの姿を観た時、これこそ共生だと思いました。あの船に乗っていた事以外は、どこにも共通点が無い彼ら。生まれも育ちも属性も、みんなバラバラです。私が一番感動したのは、動物たちが、自分の属性に戻っても、苦労を共にしてきた仲間を、はっきりと覚えていた事です。人間に置き換えて、観てしまう。各国で移民の問題が溢れる中、迎える方だけではなく、移住する方にも心得を促していたように感じます。
85分間、動物たちと共に、流れに身を任せて、得難い体験をした気分です。人間は英知に長けた生き物です。人間の想像力や思考力は、3Dや4Dを凌駕する事を、身を持って体験しました。生きるとは、抗うのではなく、その時々の流れに任せて、自分の身の丈を伸ばす事なのかも知れません。
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