2007年11月20日(火) 尺八の音色に誘われて


 ある夏の日、友だちと一緒に散歩をしていると、どこからか尺八の音色が聞こえてきた。自然と音のする方へと足が向かう。
 行き着いた先は一軒の古い民家だった。土間では3人の人が尺八を吹いている。軒先には「ご自由に手にお取りください」と、尺八が置かれている。つやつやした薄茶色の竹の楽器。私たちも見よう見まねで吹いてみる。意外と難しく、ちっとも音が出ない。息の漏れるような音がするだけだ。
「首筋はまっすぐにして、尺八をいろんな角度にして吹くといいですよ」そのうちに中からお兄さんが出てきて、レクチャーしてくれる。
 聞けば、ここは築85年の民家を使ったオープンスペースなのだそうだ。看板には「間間間(SANKENMA)」とある。私たちがお邪魔した木曜日には毎週「ルーツ尺八(bamboo way)」という尺八教室を開いているとのことだった。「MY尺八作りを体験していきませんか?」と誘われ、参加させていただくことにした。
 バーナーで竹をあぶって、ぴかぴかにしていく。節の部分を棒でつついてくりぬいて、口をつける部分をやすって、音階の押さえ穴をあけて……。楽器好きな友だちが尺八づくりにチャレンジしている間、私は民家の内装やみなさんの写真を撮らせてもらった。
 その日は真夏日で、正午を少し回った時間の外はかんかん照り。そんな中、間間間はノークーラーで、扇風機だけがゆるゆると回っているだけ。開け放した戸からは自然の風が流れてきて、十分に涼しい。風鈴がちりりんと鳴り、畳にちゃぶ台にボンボン時計。昔ながらの家で過ごすひと時は私をタイムスリップさせてくれた。
 合間にはルーツ尺八のみなさんによるミニ演奏会もあって、日本ならではの時間を過ごすことができる。尺八のかすれた音色には深みがあり、荘厳さすら感じさせる。目をつぶると心が静かになるようだった。
 約一時間半後、無事にできあがったMY尺八を手にした友だちと私は、満たされた気持ちで間間間を後にした。彼女は道行くときにも尺八に挑戦し、その日はついに音色を聞くことはできなかったものの、一日中うれしそうな顔だった。



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