バイトをしていていちばんさみしいこと。 それは、家族そろって夕飯を食べられないこと。 うちの家族は夕飯が終わって一時間くらいすると、 それぞれが部屋に戻ってしまうから、会話は少ない方だと思う。 たまのバイト休みの夜には、おばあちゃんとなにかと話をすることが多い。
この前の夜は、おばあちゃんに「puppyっていうホームページを見せて」って頼まれた。 puppyは毛糸会社で、手編みはおばあちゃんの趣味だ。 読売新聞の記事が気になったらしくて、 本社に毛糸と作品例を見に行きたいんだって。 パソコンの前にふたり並んで、いっしょに明るい画面を見る。 おばあちゃんはパソコンができないから、 私がキーボードとマウスをカタカタポチポチと操作。 色とりどりの毛糸の写真を見ながら、 「この色はいいわね」とか「ばあばが作ったセーターの糸に似てるね」っておしゃべりする。
途中で、横目でおばあちゃんの顔を盗み見てみた。 おばあちゃんはまつげが短い。 その中にちょびっと白髪のまつげが混じっているのを見つけた。 そういう小さいことで、急におばあちゃんの年齢を確認してしまった。 まだまだおばあちゃんに教えてもらいたいことがあるんだよ。 大好きなお漬物の漬け方や、ミシンの使い方もお料理も。 いつかはいっしょに海外に行きたいし、 欲しがってたブランドもののバッグも買ってあげたいんだ。
お風呂上がりに「ばあばはけっこう肌つるつるでしょ?」って自ら言ってくるおばあちゃんを見て、 まだまだいけるなって安心した。
制服に袖を通すのもあとほんのちょっと。 制服なんて嫌いだった。 女子高生という言葉でひとくくりにされるのが嫌だった。 中年オヤジにいやらしい目つきで見られるのが嫌だった。 短いスカートやダボダボのセーターが似合わない自分も嫌だった。 いつも自分に自信がなくて、 わあわあ騒ぐ男子の前を通り過ぎるときにはうつむいていた。
でも、今は制服もいいんじゃないって思える。 制服に身をつつむ女の子たちはみんなかわいいし、 やっぱり制服ってある種のステイタスだと思うから。 よくも悪くも、ステイタス。ひとくくり。
これからは、自分らしさが最大の武器になる。 個性も長所も短所も、全部合わせたものが。 自分らしさをステイタスにするんだ。
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