電話に出無かつた。
出無い言ひ譯は單純、「今は聲が出無いから」此れは嘘では無かつた。實際に僕の咽喉は風邪の爲殆どいつもの聲を出せ無くなつてゐた。
最後に電話したのはいつだつたのかもう憶へてゐない。携帶の着信履歴からは彼の電話番號は今日の一つ以外殘つて無かつた。
最後に直接聲を交わしたのがいつなのかは憶へて居る。青空と白く嫋やかな人と白い車の組み合はせを僕は確り憶へて居る。
距離を置いた最初の理由と今の理由が違つてきてゐるのに今現在氣付いてしまつてゐるのは僕の半身ともいえるお孃さんだけ。
避けたい程嫌つてゐるから離れるのでは無いのだと、もつと別の感情が在るからだと、今だけは指摘し無いで居て。
2002年06月30日(日)
頭を抱えて叫びたくなつた。
だから僕は冗談にし樣と亦考へてしまつた。
「冗談ですよ。」
どれについて僕がそう謂つたのか。本當は如何なのか。判らないなら其の儘で佳い。
2002年06月29日(土)
僕が放つ言葉が僕の掌から次々毀れ落ちて行つてしまふ。
「嗚呼、そういへばさうだつたね。」と再び示される事實を丸でずつと覺へてゐたかの如く受け入れてみせても既に以前の記憶は失せてゐるのだ。
十在る内の十を受け入れるのか十を切り捨てるのか、僕は未だに決め兼ねて居る。
十の内の五を受け入れ殘る五を切り捨てればもう少し樂に生きられるのだらうけど、僕は極端から極端にしかいつも選擇出來ずに居るんだ。
どれだけ僕が僕の過ごした時間を爲した事實の連なりを書き殘さうとしても其の時僕が感じた想ひは確實に僕の記憶から消え失せて居り幾ら紙の上に記された過去の事實を辿らうと二度と僕は其の感情を取り戻せ無い。
さらゝゝと砂の如く毀れていく砂の樣な記憶を取り戻さうと今も僕は足掻いて居るさ。
2002年06月27日(木)
彼女は矢張り僕を信用しちや居無かつた。そう確認したかつた譯では無い。
僕は嘘でも良いから彼女に僕を友達だと言ひ續けて欲しかつた。どれだけ其の言葉が欺瞞に滿ち滿ちてゐても。
嘘さえ消え失せた其の後に現れ出るのは僕等の虚實と愚かさ。
お願いだから嘘を吐き續けて下さいよ。どれだけ貴女が僕を陰で罵らうと氣付か無い振りをし續けますから。
2002年06月14日(金)
僕以外の僕なんて認めたく無かつた。
獨りだと心底感じ取つた其の瞬間に父の許に逝かうとする己も在る事を僕は認知したく無かつた。
以前はネットに繋げば僕は獨りである事を忘れた。
今はネットに繋ぎメッセンジャーを起動すると僕が獨りであると思ひ知らせ樣とするお孃さんが居る。
彼女は自身こそが獨りだといふけれど、彼女はいつも獨りじや無いのに。
穴が廣がるのが厭なんだ。僕の心なのに僕の思ひ通りにならぬのが。
是以上痛みを感じたく無いから穴を廣げぬ樣そつと身體を運び乍今夜も移動し續けてみる。
2002年06月13日(木)
約束してゐた筈だつた。
彼女は僕に二度としないと誓つた筈だつた。
彼女には其れは守る價値の無い一時凌ぎの言葉だつたのかも知れ無い。しかし、僕にとつては其れは誓約だつた。
破られた約束の内容と約した際の會話を思ひ返しながら、彼女が僕に架した重石を無視し僕も約束を破つてみた。
彼女との約束を守り續けるだけの精神力が僕には消え失せてゐたから。
まだ嘘は吐けて無い。
誰と如何だなんて僕は明確な個人名を出して無いのだから。
2002年06月09日(日)
昨晩から今朝四時過ぎ迄眠れずに過ごしてゐた。
一旦は眠り掛けたのに夢の中に出て來た彼から逃れ樣と足掻いた結果だ。
夢の中の彼は僕が見捨てたあの時の彼で、蒼褪めた苦し氣な表情で僕に何かを傳へ樣としてゐた。
苦しくなり掛けた僕は「許してくれなくて可いです。」と笑ひ泣きしながら叫んでゐた。
今年ももう水無月になつてしまつたのだね。
2002年06月04日(火)