媚び
 昨日、高校の時の知り合いが電話を掛けて来ました。OB会をやるから来ないかというお誘いでした。
 男子は居なかったから「OB」ではなく「OG」だろうと思いながら、今日は予備校の振り込み等を纏めてやるつもりだと断りました。
 彼女には余り会いたくない。口には出せないけどそれも断る理由にあったかもしれません。
 彼女以外に来るのは一人だけらしい。それも理由にあったでしょう。

 彼女はあっさり京都を諦めて地元の私大に行き、未だに諦めてない僕はまた仮面さん。どちらが賢明であるかは僕にさえ判るというのに彼女には莫迦にされたくない。だから彼女に直接会いたくはない。
 そんな莫迦げた考えが僕の中にある。

 電話を切った後、高校の時の体育の時間の事を思い出しました。
 確か高三の時に卓球を選択した僕と彼女は一緒に行動していたのです。
 卓球の選択者はさほど多くは無かった為、旧体育館に男子と女子がほぼ一緒に詰め込まれてました。
 卓球の球が男子の所から自分の元に転がって来る度に彼女は可愛らしい笑顔と声で男子に球を渡し、女子の所から転がる度に厭々拾って投げ返してました。
 其の性別による彼女の態度の差は余り感じの良いものではありませんでしたけど僕は何も言いませんでした。僕も似たような事してましたから。但し、僕は彼女とは逆に男子にはそっけなく女子には媚びを売ってました。

 互いのしている行動には大差ない。
 そう言って僕と彼女の状態を見た別の知人は笑ってました。

 電話の彼女の声は以前と変わらず低く不機嫌そうな声でした。
 相変わらず彼女は己以外の女性を疎ましく思っているようで少し安心しました。

 変わっている様で変わっていないものが一つでもあれば僕は今の自分にしがみ付いていられるつもりなのでしょう。
 だから矢張り僕は男性に媚びを売る気はない。
2001年03月26日(月)


 不可謂
 何だろう、叫びたい。

 胸のもやもやが大きくなると打ち消す為に全部を曝け出したくなる。
 言わなくても良い事、言ってはならない事まで誰かに知って貰いたくなる。
 考えてはいけない、試してはならない行為。

 幼稚園からの僕の親友は、僕の心の中の事は全部知ってはいるけど僕の身体の事は一部しか知らない。
 小学校からの僕の友達は、僕の心と身体の不自由の一部だけしか知らない。
 中学校からの僕の友人は、僕の心と身体の不自由を知りもしない。
 高校からの僕の知人達は、僕の身体の不自由を一部だけ知っているのみ。
 学校以外の知人には、僕は殆ど教えていない。
 僕と付き合ってきた人達は、皆一つづつしか僕の不自由を知らない。

 高次脳障害、むち打ち、鬱…その他諸々。
 記憶出来ない事が頻繁にある事、いきなり暴れ出す事がある事、自分が何か迷惑を掛ける事があるかもしれない相手には其れくらいは伝えてある。
 高校の時、部活が一緒であった知人達もそれくらいは知っているだろう。

 僕の身体の状態を全て知った心算で色々言う莫迦も居る。
 言われる度に、貴方が知らない事がまだまだあるのですよ、と余計な指摘をしたくなる。
 指摘を口に出す気は無いから唇を微笑み掛けた形にした侭相手の眼をじっと見てしまう。

 僕の身体のある状態を知ると喜んで僕を食べようとする莫迦も居る。
 逆に同じ事実を知って僕を疑い出す莫迦も居る。
 己の思い込みを否定されたからと僕に負の感情をぶつける莫迦は多い。僕がいつ初めてだと言ったのだろうか。

 「僕の身体は小学校の高学年の頃から殆ど成長していないのです。」
 この科白を何度も他人に言ってきた。本当の意味で解してくれた人は居なかった。
 是は僕の身長の事だけを指して言うのではない。

 僕の心も身体も小学校の高学年の頃から殆ど成長していないのです。
 成長を止める原因を作ったのは僕、成長したくなかったのも僕。
2001年03月01日(木)
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