思考過多の記録
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2008年12月12日(金) |
観劇のマナー〜新国立劇場にて〜 |
昨日、新国立劇場の中ホールで行われた芝居を見に行った。 芝居それ自体は面白く、まあよくあるストーロー展開と落ちではあったが、役者の熱演が素晴らしかった。 本来なら気分よく劇場を出られるところであったが、僕のその気分をぶち壊す出来事が、本番中に起きていた。
よく芝居を見に行く人なら周知のことと思うが、客席内は飲食・喫煙は禁止である。 最近は携帯電話や時計のアラーム等の電源を切ることや、許可なく撮影・録音することが禁じられていることも、広く知られるようになって来た。 ところが、昨日の舞台の本番中、僕の左隣に座った二人組みの中高年の女性のうち、僕のすぐ隣に座った女性が、本番が始まるや否やバックからペットボトルを出して飲み出したのだ。 しかも、それで終わりではなかった。 その女性は荷物の中から飴のようなものを取り出し、なめ始めたのである。袋から飴を取り出すときのガサガサという耳障りな音が、静まり返った客席に響き渡った。 こうした行為は一度や二度ではない。2時間5分の本番中、彼女は何度もペットボトルの飲料を飲み、飴をなめた。 悪いことに、客席と舞台の位置関係からして、舞台を見ようとすると僕は左側を向かなければならない。すると当然その女性の仕草が視界に入ってくる。 せっかく舞台上ではいい演技を役者がしているのに、僕の注意は逸らされ、芝居に集中できなかった。
よほど終演後に二人をとっ捕まえようかと思ったが、早く帰りたかったのでそのままにして、家に着いてから新国立劇場に電話して、事の次第を伝え、料金の払い戻しか、改めて別に席を用意してもらいたい旨伝えた。 そして今日になって、新国立劇場の営業担当という年配の穏やかそうな方からお詫びの電話があった。そして、一度見てしまったものは、払い戻すことはできないと言われた。 しかし、本来なら劇場スタッフが発見して注意すべきであったこと(実際、目に余る場合はそういうこともあるそうである)、今後はアナウンスや立て看板等で注意を促すように検討したい、と伝えてきた。 僕としてはそれで劇場側の誠意は伝わったので、それ以上は要求しなかった。
それにしても、憎むべきはあの女性である。 客席内での飲食・喫煙の禁止というのは、観劇のマナーとしてはいろはのい、幼稚園レベルのことである。 掲示などしなくても、常識の範囲内の話である。 ましてやそこは歌舞伎座ではない。新国立劇場という普通のホールである。 他の客に迷惑をかけないということとともに、目の前で全力でいい演技を見せようとしている役者に対しての礼儀にもとる。 確かに劇場内は乾燥していて、喉には辛い空間だ。 我々が上演する側にまわった場合、開場前に舞台上に霧吹きをして役者の喉を守るのが常識となっている。 件の女性も、あるいは風邪などで喉を痛めていたのかもしれない。今思えば、咳もしていた。 しかし、だからといって、他人の観劇を邪魔していいということにはならない。 7000円以上のチケット代を払い、時間も使って、せっかくいいものを見てリフレッシュしようと思っていたのが、その女性一人のために不快な思いをさせられてしまったのである。
今回のことは、制作のミスでもある。 アナウンスでも飲食禁止の注意を喚起せず、飲食禁止というのは、無料で配布された(といっても机の上に置いてあって客が自分で取ることになっていたのだが)冊子の一番後ろのページにある、「お客さめへの注意事項」という欄に小さく書かれているだけである。 先述した劇場の営業の人が認めたとおり、アリバイ的に書かれているものであり、客が全員目を通すとは限らない。 今回のような客がいることも想定して、注意喚起のアナウンスを流す等の改善を行った方がよい。
最近は、常識が常識でなくなってきている事例が多い。 それも若者ではなく、いい歳をした大人が、平気で他人に迷惑をかけるような、常識はずれなことをする。 世の中のモラルが崩れてきているのだろうか。 とにもかくにも、こういう不愉快な思いをする人間が二度と出ないように、「国」が運営する劇場なのだから善処してほしい。 と同時に、特に公共の場では、僕も含めて自分のやっていることを省みて、これは他人に迷惑ではないか、モラルに反していないか、常に自問自答をすることが必要であると思う。
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