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2011年09月25日(日) 私のコンソメ史

 先日、中禅寺湖金谷ホテルで極上のコンソメスープを味わってきた。何を隠そう、私はスープに関してはコンソメ至上主義者なのだった。美味しいコンソメに出会うと、たいていのことは忘れて幸せな気分になれる。

 思えば、私のコンソメ愛は新宿プリンスホテルから始まったように思う。中学生の頃、兄が東京で大学に通っていた。母はここぞとばかりに私を連れて東京に遊びにゆく。ホテル好きの母のことだから、兄のアパートに泊まるなんて選択肢はもとよりなく、毎回そこそこのホテルを取って。しかもディナーはそのホテルのダイニングで。私がほんとうの「ちゃんとしたレストラン」で食事をした最初の経験だったと思う。母はたぶん自分がちょっと贅沢をしたくて、言い訳として娘を連れて行ったのだろうけれど、私が大人になってから格の高いレストランやホテルに臆することがなかったのはこのおかげだと有り難く思っている。

 既に遠い日で確かではないが、その女二人東京贅沢旅の最初は新宿プリンスホテルだったと記憶している。1970年代、勢いのあるホテルだった時代だ。レストランもきちんとしたフレンチだった。私はそこでひととおりオーセンティックなフランス料理とそのサービスを体験した。席のそばでギャルソンがオレンジをフランベしてクレープ・シュゼットを作ってくれたりもした。今思うといろいろびっくりだが。

 そして、そこで初めてインスタントではないコンソメスープと出会ったのだった。「滋味」だった。当時は子供だったから表現する術を持たなかったけれど。なんと言うか、液体だけれどあれは肉だ。エキスの最たるものだ。母も気に入って、その後もう一度同じホテルに泊まって同じレストランで「コンソメが美味しかったからまた来ました」とギャルソンに宣言していたのを覚えている。

 しかしちゃんと作られたコンソメスープは、なかなか食べる機会が難しい。そうたびたびコース料理を食するわけにもいかず、まさか自作するわけにもいかず。普段はマギーやクノールで誤摩化しつつ、JALに乗ったらごくごく飲んだりして。インスタントは塩辛いからお代わりしたら飽きるんだけどね。ああ、いつか帝国ホテルのメインダイニングでコンソメスープとシャリアピンステーキを食したいなあ。


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