Love Letters
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あなたのお見舞いに行った日のことを
詳しくは書かずにいました。
何となくあの時に私が会った人は
私が知っているあなたとは違う人のような気がして。
予想していたよりもずっと綺麗な病院。
それもその筈、市がかなりの予算をつぎ込んで建てた
最新設備の整った新しい病院なのだそうです。
GWの前半ということもあって、
あなたの病室の他の患者さんは
皆外泊に出ていました。
柔らかい春の日差しが入る病室で
あなたと二人だけでお喋りしました。
当たり障りのない会話。
何だか友達だった頃に戻ったような感じ。
帰り際、
休日のがらんとしたロビーで話をしました。
帰りの電車の時間を気にしながら。
長いすの隣に座っていた
「駄目よ。^^」
私がそう言うと、
あなたはすぐに手を引っ込めたけれど。
病院の玄関の外まで送ってくれたあなたと、
柱の陰でキスをしました。
あなたは私の肩を抱くようにして、
短いキスを三回。
翌日、あなたと電話で話しました。
「キスしか出来なかったね。」
「小夜子が欲しがったら、
連れて行こうと思ってたんだけど。(笑)」
「どこへ?(笑)」
「妖しい。(笑)」
「休日なら誰も来ないでしょ。^^」
「そっか、残念。^^」
とは言ったものの、
実際はそんな気分にはならなかったのです。
やっぱり健康なあなたが戻って来てくれないと、
私のスイッチがオンになることはないでしょう。
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昨日もあなたと電話で話をしました。
どうやら入院が長引きそうです。
治療は一通り無事終了して、
後は退院を待つばかりだったのですが、
担当医師から今後のことも考えて
外科的手術もしておこうという方針が出されたからです。
あなたには早く元気になって退院してほしい、
そう願う一方で、
色褪せていく己の気持ちに
目を背けることが出来ない自分がいます。
「活きのいい男にしか興味が抱けないのは、
健康な女だったら当たり前でしょ。」
私達のことをよく知る友人が言いました。
あなたのことを嫌いになったわけではないのです。
毎日のように惰性的に交わされるあなたとの会話。
見通しのつかない退院の日。
そういった諸々の事情が
私達の恋を曇らせているのでしょう。
昨夜、
その後、
あなたからの返信が途絶えています。
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2006年05月19日(金) |
大切な指輪を失くしたら |
ふと気がつくと、
左手の薬指にしている指輪がありませんでした。
あなたから貰った最初の指輪。
いつ、どこで外したのかが思い出せなくて…
血眼になって探しました。
職場で指輪を外すということは絶対無いから、
あるとすれば家の中の筈。
キッチンのシンクや
バスルームの棚、
ベッドの下や隙間など
思いつく場所は全て。
『どうしよう…
失くしたことをあなたに伝えるべきか否か…』
伝えればきっと
あなたはがっかりするでしょう。
でも、たとえ今黙っていても、
いつか気づかれてしまうと思うし。
いつの間にこんな場所に置いたのでしょうか。
全く記憶にないのです。
とりあえず、
すぐにあなたにメールを送りました。
ごめんなさい。
指輪を失くしました。
でも、安心して。
必死に探して、たった今見つけたから。
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担当医師に器具の使用ミスがあって、
一時はICUに搬送されるかもしれないという
容態にまで陥っていたあなた。
不幸中の幸いで医師が素早くミスに気づき
適切な処置をしたため、
最悪の事態は免れました。
数日安静に過ごしていた個室を出て
四人部屋に戻ったあなたは、
本来の治療を始めました。
春の日差しが暖かい週末に
あなたの病室を訪ねました。
その後の治療が順調だったこともあって、
あなたは思ったより明るく見えました。
病院生活が退屈なのか
あなたはいつになく饒舌で、
最近
誰かから聞いた話を思い出しました。
愛する人が病気になって
毎日のように病院へ通い、彼を励まし、
彼の回復を願った彼女。
恋人が元気になって彼女の元へ戻った時、
彼女が彼に告げたのは別れの言葉でした。
変わったのは彼なのか、彼女なのか、
それとも二人の関係なのか。
いずれにしても人の心は
時として理不尽に動くものです。
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小夜子
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