ラーメン博 - 2008年05月25日(日) 結局ラーメン博には行かず、どこにも出かけず週末は終わった。 体をゆっくり休めることができたのでよしとしましょう。 母のかすかな狂気について。 母が時折見せる狂気に、わたしは悲しくなる。 別に彼女のことを嫌っているわけではないのだけれど、他者との通じ合い、意思疎通のマナー、そういったものを獲得することをしないまま還暦を迎えた彼女という存在がわたしは悲しい。意思の表明ができる、ということと、意思の疎通ができる、ということとの間にある圧倒的なギャップを知らない彼女。 チャンスはいくらでもあったはずなのに、彼女は変わることができなかった。変わることができない人間はダメ人間だとわたしは思う。乱暴な言い方だがそう思う。スタートラインが低くたっていいし、つまづいたって、立ち止まることがあったって、それは別にいいのだ。大局で見て、成長しようとする意思があるかどうか。ダメかダメじゃないかを決めるのは、そこだけだと思う。教室のスタッフさんからそういう側面を疎んじられ、そして人間として軽んじられていることにも気づかない。本人は気づいていないから幸せなのだろう。しかし周囲がその割を食う。 これから老いてゆく彼女が、ますますその側面を募らせてゆくのかと思うと気が重い。 とりあえず、こまごまとした仕事を片付けようと思う。 - 再考「脂肪と言う名の服を着て」 - 2008年05月06日(火) ただ黙々とフリーセルを行う。 今日は午後から水泳に行き、サウナに入って帰ってきた。 ぽかぽかと暖まったけだるい体で無心にフリーセルに没頭する。 こうして「何も考えない」というひとときは、至福のひとときなのである。 そうしてだんだんと不安になってくる。 何か大切なことを忘れているのではないか。 「脂肪と言う名の服を着て」の脇役である千夏に注目してみたいと思う。 千夏は、昼間はそつなく仕事をこなし、身だしなみにはきちんと気を配り、ショッピングと合コンが日々の楽しみというどこにでもいる平凡なOL。 デブで鈍くてとろくて何をやってもダメな主人公「のこ」は、職場髄一の才色兼備の同僚「マユミ」に陰湿ないじめを受ける。一見対照的なふたりだが、実はふたりとも「美しい・スタイルがよい=善」「醜い・スタイルが悪い=悪」というような、マスメディアなどの影響であろう単純な二元的価値観の下に立っている。ふたりはともに「美」を至上命題とする価値観に縛られて身動きの取れなくなっているという意味でまったく同じ存在である、とも言える。 そこから少し離れた地点にいるのが、いじめの傍観者である同僚の千夏である。平凡な千夏は価値観も平凡で、「マユミ」や「のこ」のような、どちらかの極にぶっちぎれるようなものを持っていない。 物語の序盤で千夏は「マユミ」とも「のこ」とも同僚としてうまくいっている。仕事帰りにいっしょに飲みに行ったりする。いじめが始まってからはマユミ側につき、千夏と「のこ」との人間的な関わりは途切れてゆく。「のこ」はマユミの陰謀で、千夏の仕事上のミスの責任を全面的になすりつけられ、部署を追われる。それからは、千夏がマユミのストレスの捌け口となる。件の負い目があり、なすすべもない千夏。一時期は会社も休みがちになり、社会生活さえ危ぶまれる状況にまで追い詰められる。 結局、マユミのいじめや陰湿な画策が明るみに出ることとなり、千夏は無事会社に復帰するのだが、問題なのはその後だ。 いろいろあって拒食症になって入院した「のこ」を、千夏はもうひとりの同僚とともに見舞いに行き「マユミ、捕まったよ」と報告する。もう何もかもどうでもいいかのように「そう…」と力なくうなづくだけの「のこ」。 そして病院を出るなり、千夏たちの間でこのようなやり取りが交わされる。 「見た!?あの手!木の枝みたい!」 「こえー!インパクトつえー!」 「あたしダイエットやめよー!」 「今からケーキバイキングとか行く?」 「キャー!行く行く!」 何度読んでも、ここでわたしは、うーん、とうなってしまうのです。 今回の一連のごたごたで、かつての同僚のうちひとりは拒食症で入院し、ひとりは逮捕された。 しかしそれらは結局、千夏の中では「何も起こっていない」に等しいのだ。 千夏は、かつてさまざまなかたちで人間的な関わりを持っていたはずの「のこ」にも「マユミ」にも、同情とか軽蔑とか嫌悪とか怒りとか恨みとか、そういった情緒的関心を何ら寄せていないのである。 たとえばテレビなどで見ず知らずの拒食症の人を追ったドキュメンタリーを見たかのような、千夏の反応はその程度の濃度しかないのだ。 ここは物語の進行上なくてもまったく支障のないシーンである。しかしわたしは、このワンシーンが何だかものすごく重要な示唆を含んでいる気がしてしかたない。 社会にすんなりと適応しきっている「普通の人」が時折見せる、無自覚で無慈悲な無関心。 - 妙齢の女性にとってのファッション、スイーツ、ラーメン - 2008年05月05日(月) ある晴れた初夏の休日の昼下がり。 趣味のショッピングの合間に、街角にある隠れ家カフェに立ち寄り、そよ風の吹くオープンテラスで、お気に入りのスイーツを楽しむ女性。 ではなくて、 ある晴れた初夏の休日の昼下がり。 趣味のショッピングの合間に、街角にある口コミで大人気のラーメン店に立ち寄り、年季の入ったカウンター席でラーメンを楽しむ女性。 これはどちらもわたしの姿であり、今日たまたま後者だったという話なのだ。わたしが妙齢の女性であるということは大した問題ではない。年頃の女なら普通はスイーツだろう、とかそんなことはどうでもいいのだ。スイーツとラーメンは似ている。どっちもみんなが大好きな食べ物で、どっちもカロリーが高くて太りやすいよね。うん。 さて今日のラーメン評。 5月下旬に開催される熊本ラーメン博に出店予定の店が先週のすぱいすに一覧掲載されていた。せっかくの機会なのでそれらを全店制覇することに決めたのだ。今日は近場の市街地へ。ワンピースもほしいしね(まだあきらめてない)。 一軒目、ワシントン通りにある「龍の家」。 久留米ラーメンのお店。 けっこう前からある店で名前だけは知っていたけれど、行ったことはなかった。わたしが入ろうとすると、ちょうど近くを歩いていた男子高校生の集団10人ほどがどやどやと店内へ入っていった。なぜか少しビビりながら続いて入店。いつ改装したのか知らないが、明らかに女性客を意識した小洒落た居酒屋のような内装になっていて少し安心した。入るのは初めてなので前がどんなだったかよく知らないのではあるが、外見を思い起こすに以前はこんな店ではなくてもっと殺風景なごく普通のラーメン屋だったはずだ。 スープが、こってり「こく味」とあっさり「純味」の二パターンある。 「店長おすすめ」とのことで「こく味全部のせ」を注文した。トッピングが全部乗っているので「全部のせ」。さらにテーブルには辛子高菜と辛子もやし、それに紅しょうがのつぼが置いてある。高菜は基本として、もやしスキーとしてはこれはうれしいサービス。それとごまにこしょう。ごまとこしょうがその場で挽いてふりかけることができるのもよかった。 熊本ラーメンのルーツは久留米ラーメンで、久留米ラーメンのルーツは博多ラーメンなのであるが、ここのはやや細めの麺といい、スープの白っぽいとろとろ加減といい、どこを取っても正統派の久留米ラーメン。豊富な具によってスープは食べ進めるほどにコクが深まってゆき、飽きが来ない。久留米ラーメンの一般的な特徴でもあるけれど、スープは見た目どろどろだが味付けそのものはやや淡白なので、トッピングをできるだけ多く頼んで味わいに奥行きを出しながら食べるのがよいと思った。 店内では大勢の店員が互いに大声でギャグを飛ばし合いながら楽しそうに動き回っていたのだが、気の利いた受け答えに専心するあまりか肝心のオーダーが揃うのが遅くなってしまっている様子が見受けられたのがちょっと残念だった。楽しく働くのは大いに結構なことだけど、もう少し客席の状況にも意識を向けるべきではないか。いや、いいんだけどさ…。 おなかいっぱいになったのでしばらく街中をうろつく。 何度でも言うが、今年のワンピースは本当にどっこも同じようなものばかりだなあ。 先日、唯一希望にかなうワンピースを見つけた店を通りがかった。もう売れただろうけどまあ一応入ってみるか…ぐらいな感じでふらっと立ち寄る。先日と言っても一ヶ月ぐらい前のことなので例のワンピースはさすがになかったわけですが、なんかまた別のかわいいのがあるわけですよ。色がわたしの好きなロイヤルブルーで、シルエットもよい感じにスポーンと着やすそうで、しかも長さがわたしの希望にジャストフィットなのですよ。うわー。うわー。とひとりで興奮していると店員さんに声をかけられた。これ綿ニットなんですよ。え?綿?ニット?聞き返すと、綿と麻でニット風に織り上げた生地らしい。これでまた興味をそそられる。ほら、このへんに縫製がしてあって、着ると縦に落ちるラインができるんですよ。ああ確かにここが縫ってあるとすっとしますね、へー、かわいいなあ、ちょうど膝丈のがほしかったんですよわたし。あ、そうなんですかー、今年は短めですもんねー、それに今年のワンピースってほら、あちこち見てこられたんならおわかりだと思いますけど、だいたいシフォンかシャツか、みたいな感じじゃないですか、しかもシフォンならもう小花柄、みたいなねー、 「そう!そうなんですよね!」 思わず店員さんに飛びかからんばかりの勢いで同意した。 「もうどこ行ってもほんっとに同じようなのばっかりで…」 「あー、わかります。今年のワンピースね、出回ってる数はかなり多いんですよ。でもラインナップはねー」 「うんうん!ホントにそうなんですよー!」 このときのわたしが犬だったらそれはもう全力でしっぽを振っていたに違いない。 「カットソーとかちょっとした小物ならいいんですけど、ワンピースって着こなしの主役になるものだし、存在感が全然違うから、やっぱりねー」 うんうん、そうですよね。 あんた、実によくわかってらっしゃるよ! まあ当然の流れで試着。 当然サイズもぴったりで、大いに気に入りました。 もうそのまま買っちゃってもよかったんだけど、試着室のそばにかけてあったワンピースにふと目がいってしまった。 先日気に入ったものの色違いだ。 その旨を店員さんに話すと「ああ、あの色もまだありますよ」って奥から持ってきちゃったよこれ。まだあったのね。やばいって。そんなことされたら迷っちゃうじゃないのよ。 この時点ですでに閉店5分前。 二着目も急いで試着だけしてみたものの決められず、決断を明日に持ち越すことに。 あー。どうしよ。 どっちもすごくかわいいんだよなあ。 どうしよう。どうしよう。 考えているうちにおなかがすいてきたのでラーメン屋二軒目へ。 下通を紀伊国屋の角から栄通り方向へ曲がり、風林火山の先にある「麺工房 中々」。 。 夜しかやっていないお店なのだが、食べてみて「これは確かに飲んだ後に食べたくなる味だな」と納得した。やや塩味の濃いシンプルな味で、箸がどんどん進む。「麺工房」と謳っているだけあって麺も食べ応えがあっておいしい。熊本ラーメンのいいとこどり、といった感じ。客席にはこしょうと辛子味噌が置いてあるが、この辛子味噌がものすごくおいしい。やみつきになる味だ。 内装はごく普通のラーメン店。入り口のガラス戸なんてちょっと割れてる。しかし注文を受けてからの動きは非常に手早く、無駄話などもってのほか、といった雰囲気。先ほどの龍の家といろいろな意味で好対照であった。何よりの答えがその味。ここはブームに乗っかる側ではなく、ブームを引っ張る側の店だと感じた。内装やトッピングなどいわばオプションで客の気を引こうとするラーメン店があまたひしめく中、あくまでシンプルにラーメンそのもので勝負しようとするその潔さをもって「麺工房 中々」の勝ち。 それにしてもワンピース、どうしよう…。 -
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