J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (19)
(私の気持ち、分かっていない・・・)
ああ、この言葉はあの晩も聞いた言葉、、。(参照こちら) ふたりで過去の気持ちを確かめあった大阪の夜。 レイは同じ言葉を私に投げかけたのだった。
だがね、レイちゃん、それは3年前の話、だよ。 今更何が始まるものでもない。 君だって、そう、過去形で話したことじゃないか。 だから僕は。 君への恋愛の情を打ち消そうとしてきたんだ。
3年振りに火が噴くように心から出てきた君への想い。 過去の遺物のようなこの感情を沈めるために、 どれほどか僕は強い精神力を費やしてきたか。 君こそ、、僕の気持ちは分かるまい。
だからこそ、。 あらぬ誤解は持たれてはならないのだ。 誰にあっても、どんな場合にも。
だが、君の気持ちって、、!?
・・
「、、君の気持ち、って、言ってもね、分からないよ。分からないが、、。 だけどね、僕の考えていることも君は少しは分かって欲しいと思うよ。 僕は君のために、そう言っているんだ、あらぬ誤解をされないようにね。」
「工藤さんの考えていることは、分かっているつもりです。 だから、、。だから、私だって、ずっと、ずっと、我慢してるんです。」
我慢、、!
私ははっと息を飲む。 レイは少し目を潤ませて、、話を続ける。 「私は、、誤解されていてもいいの。あえて否定したくないの。だって、私は、、。」
そこへタクシーが来る。 レイの話は、(だって、私は、、)のまま途切れてしまう。 だって、私は、って、なんなんだ。 我慢、って、いったい、君は、、。
「あ、、っと、もう行かなくちゃ、。レイちゃん、いずれにせよ、僕の言う通りにして、ね。」
私はそう言いながら、タクシーに乗り込む。 しかし、レイは首を振って、頷かない。
ちっ。 しようのない奴だな。 どうすればいい。
「わかった、話はまた今度、ゆっくり聞こう。ね、いいね。」
運転手が行き先を聞く。 私は、駅まで、と伝える。
レイは言う。 「工藤さん、だって、私は、。」 「何?」 「私はまだ信じたい、これから始まる運命、、」 「え、、?」
「お客さん、いいですか、?」タクシーの運転手が聞く。 「あ、はい、。」と私。
タクシーのドアがしまる。 車が走り出す。
レイの姿が小さくなる。
これから始まる運命、、!
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