「それじゃあ、この方々にボディーガードを頼みましょうか」 「じゃーなロイド。レアバード借りてくぜ」
瀕死のアルテスタを救うために、医者を呼びにフラノールに来た一行。 ランダムなメンバーをボディーガードに選んだ闇医者は、 ゼロスと共にアルテスタの家へと飛んでいきました。 レアバードって何機あるんだろう? そんな心配、強制進行イベントの前には杞憂です。
「仕方ない。一泊するか」
ロイドたちは、フラノールの宿屋に泊まることになりました。
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さて夕刻、ドアをノックする音に、ロイドは振り向きます。
「どうぞ」
部屋に入ってきたのは、コレットでした。
「ロイド、雪が降ってるよ」 「へぇ、雪? ま、フラノールだし・・・テイルズシリーズは雪が大好きだしな」 「えへへ。ね、散歩に行かない?」
ロイドのさりげない毒舌を天然というベールでかわしたコレット。
「散歩?」 「うん」
にこにことコレットが答えを待っています。 ロイド、ふと、ある不自然さに気がつきました。 ”音声が入っている”ことです。 通常イベントでは考えられない、ボイス入りの会話。 否、すなわち逆に取れば、ボイスが入るということは、つまり特殊イベント。
これは。 これは、まさか。 ロイドの背後にベタフラッシュが巻き起こります。
「これが噂に聞く、フラノールの雪見イベントか!」 「そうだよー」
フラノール雪見イベント。 それは、数々の攻略サイトで噂される、あの伝説のイベント(言いすぎ)です。 シンフォニアにて用意された、好感度とかいう二次創作系マニアにはたまらないシステムの採用。 その集大成、とも言えるべきが、このフラノール雪見イベントなのです。 今まで蓄積された好感度の高い方から、3人のキャラクターが誘ってくるはず。
「ロイド?」 「あ、ああ。えっと・・・」 「どうしたの? 散歩、行かないの?」
シリーズ最強のヒロイン属性(※プレイヤー談)を持つコレットが、 上目遣い&小首を傾げるヒロイン仕草で、ロイドに迫り寄ります。 ぐらりと世界が1回転ほど回ったロイドでしたが、かろうじて返答できました。
「その・・・ごめん」 「そう? そうだよね・・・アルテスタさんが大変なときに、不謹慎だったよね」
コレットは少し寂しそうに去って行きました。 罪悪感にかられつつも、ロイド、ぶんぶんと首を振ります。
運良く、セーブは数分前にしてあります。 ならば、この目で見ておきたかったのです。 ”好感度の高い上から3人”、というヤツを。
しかし、さすがにヒロイン。 ゲーム進行中は好感度の上下なんて考えもしなかった (最近知ったばかりだったため調整の計画も立てられなかった) ズボラプレイヤーでしたが、 一番手にやって来たのはヒロイン・コレット嬢でした。 何だかナ○コ様の手の平の上で踊らされているようでもありますが、 少し嬉しいのは確かな、ロイドです。
さて、次は誰だろう? ロイドが考えるヒマも無く、すぐに扉がノックされます。
「ロイド、いるー?」
次に部屋に入ってきたのは、ロイドの親友・ジーニアスでした。
「何だ、ジーニアスか」 「何だとは失礼だなー。ねぇ雪見しに行こうよ。雪降ってる!」
さすが戦闘参加率がロイド(90%強)に次いで高い80%後半台を誇るキャラクター。 プレイヤーの銀髪愛と魔法愛を一身に受ける、ハーフエルフの魔術使いです。
可愛らしい弟分と雪見なんて、世間の腐婦女たちをキャーキャー言わせそうですが、 ロイド、とりあえずは首を横に振りました。
「ごめん・・・今、そんな気分じゃなくてさ」 「ええー? もーつまんないなぁ」 「悪いな」
ジーニアスはぶーぶー言いながら、去っていきました。 その後ろ姿も何かちょっと愛らしい、 と、一瞬でも思ってしまったロイド(プレイヤー)は、 軽く犯罪者に片足突っ込んでる気がしてなりません。
はたと我に返って、ロイドは気分を切り替えます。
「さて、と。あと残ってるのって・・・誰だ?」
2人目のジーニアスの誘いを断り、ロイドはひとり黙します。
ゼロスでは無いことは、残念ながら確実です。 「レアバード借りてくぜー」というセリフは、ゼロス以外には考えられません。 他に何人か見えた気がしますが・・・ そんなに重要なイベントでは無いだろうと思って、見過ごしてしまったのです。
「リフィル先生もゼロスと一緒の方にいたっけかなぁ? あとは好感度の高そうなのはしいなだけど・・・」
しいなは『くちなわとの決闘』一連のイベントを終わらせているし、 通常戦メンバーにも加えたり、ロイド(プレイヤー)が何かとヒイキしているキャラです。 レアバードで世界中を飛び回って、無駄にスキットを見ている分には、 どのキャラでもおかしくは無いのですが。
「でもゼロスのも、プレセアのイベントも結構見たしなぁ・・・」
可能性の残るキャラクタに、クラトスを忘れてはなりません。 クラトスがここで3人目に訪ねてくれば、 貴重なクラトスルートとかいうやつを、1周目にして拝めるかもしれません。 かつて執念(と愛?)で勝利したクラトスには、 何かと思い入れも強いロイド(プレイヤー)なのです。
都合よくドアをノックする音に、期待は高まります。 3人目。
「ロイド、少しいいか?」
男性の声です。 ロイド、意を決して、振り向きました。
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翌朝、医者を連れて行った面々が戻ってきました。
「リフィル先生ッ、ロイドが大変なんです!」 「コレット? 一体、どうしたと言うの?」
リフィルが慌ててコレットに駆け寄ると、 彼女のそばにはツンツン頭の先まで真っ白に燃え尽きた、ロイドの姿がありました。 およそ人では無い効果音がロイドを無常に炭化させつつも、 何やら、ぼそぼそと口を動かしているではありませんか。
「昨日からうわ言みたいに、リーガルさんの名前を・・・」
確かに、よくよく聞いてみると、 放心状態のロイドは「リーガルが・・・何でリーガルが・・・」と繰り返し呟いています。
「昨晩、雪の降る中で立っていたせいで風邪でもひいたのかもしれんな」
しんみりと頷くリーガルです。
そう。フラノールの雪見イベント3人目は、あろうことかリーガルだったのです。 こと彼に関しては好感度もサブイベントも一切考えず、戦闘メンバーにも入らず、 進行上にも最後にパーティーに加わった、リーガルだったのです。 (超失礼です。リーガルファンの皆様、申し訳ありません。) 一体、いつ好感度が上がったというのでしょうか。怪現象です。
「え? リーガルさん、ロイドと雪見・・・してたんですか?」 「うむ」
そして、1人目、2人目の誘いを断ると、3人目とは強制的にイベントが進行されるということに、 リーガルと雪見をしながら、「何でリーガルと雪見してんだ俺?」と、 ?を頭上に浮かべていたロイド(プレイヤー)は、そのとき初めて気がついたのです。 あまりの衝撃に、ロイドは翌朝まで高熱にうなされていたのでした。
「ゼロス・・・」 「あ?」
フラフラと、どうやら立ち直ったらしいロイドは、 イベントを進行しながら何か決意したように頷きました。
「信じてるから(雪見イベントを)」
ぐッと親指を立てたロイドは、ゼロスとの謎のアイコンタクト直後、 颯爽とメニュー画面を開きました。
<<<ただいまロード中>>>
さて、何度目かの翌日。 ”フラノールの雪ウサギ”を装備して満足気なロイドの姿が、そこにありました。
「やっぱりイベントはヒロインとに限るよなー♪」 「? うん、そうだねー」
仲睦まじいロイドとコレット。 が、コレットは知りません。 そのイベントに至るまでに、涙の決死戦があったということを。
「ロイド・・・私の立場はどうなるというのだ・・・」 「リーガル。何かその発言、一方通行の愛みたいな・・・(もがッ)」 「それ以上は止めとけ、お子様。このサイトは健全がモットーだ」
せめてしいな、いやゼロスを、と。 どうにかして3人目を別のキャラに出来ないかと、 好感度上下イベントを求めて、レアバードを酷使し各地を飛び回ったロイドでしたが、 結局、好感度の順位が変わることは無かったのです。
「まぁ、何て言うか・・・ これぞ正真正銘って感じのストーリーで、結果良かったんじゃないかい?」
しいなの言うことも、もっともです。
・・・せっかくなので3人分全てを見た後、 ブツがもらえるという理由で、ヒロイン・コレットとの雪見を選択、 なんてことはロイド(プレイヤー)の心内に一生仕舞われることでしょう。
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