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2010年09月19日(日) 産経の外信コラムを読んで



 ようやく涼しくなって来た今朝、庭で新聞を読んでいたら今日の産経新聞(9/19)、外信コラム、「イタリア便り」の坂本鉄男記者が「手洗いの励行」を発見奨励した*ゼンメルワイスの事を書いていたが、あの記事では何で発見に至ったかはわからない。
どうして発見に至ったか。
 当時医師たちが担当する病棟と、助産婦が担当する病棟があり、*産褥熱で死亡する率が何と助産婦担当の棟と比べ医師たち担当の病棟が十倍近くあった。ゼンメルワイスはその事を不審に思い調べ始めていた矢先、たまたま手術の時に指をメスで切った先輩医師が同じ症状で死んでしまった所から、傷から何かが入ったに違いないと考え、当時、臭い消しに使用していた塩素水で手を洗ってみた所、直ちに改善し、死亡率は助産婦担当棟と同率になった。
 ゼンメルワイスは大学の学生たちにも奨励したが、当時のウイーン大学の産科学教授のクラインの反対にあって大学を追われ、結局は不遇な一生を送る事は坂本記者が書いていたとおりだが、すぐに不遇になった訳ではなくて、この後、故郷のペスト大学で教鞭をとり、この事(手を消毒するという事)について本を書いた。この本を読んだ多くの医師たちは自責の念にかられて自殺者が出た程だったが、本当に不遇にさせたのは、当時ベルリン大学に居た、今たん譚に書きかけの「どっ血や…」の中で取り上げている*ウィルヒョウこそがこの今日常識となっている手洗いを全否定した張本人であった。
 ウィルヒョウは産褥熱は気候や本人の体質と考えていて、当時考えが揺らいでいた医師たちに免罪符を与えた。
ウイルヒョウがどんなに絶大な人気と信頼を得ていたかを例えてみれば、東大の学長で医者の代表でテレビタレントで、政治家音楽家著述家をすべてこなした天才的なスーパースター、カリスマのようなものだった。後に、細胞分裂を支持したワジントン教授は千島喜久男博士(腸造血説)のあなたは細胞分裂を見たのかの質問に対して、ワジントン教授 「私は卵分割に際し、細胞核が有糸分裂によって2分して、次々と細胞数が増加することを実際には確認していません。だから細胞分裂で分割球が増加するかどうかは明言することができません。あなたのほうがよく知っているでしょう。」と答えている。
生体から切り離し、特殊状況下であれば細胞分裂はある(あの有名な映像)が、普通の状態では誰も確認していない。

 一部、真摯な学問検証を続けている人々に対して「とんでも」を貼付けている馬鹿がいるが、ニュートン力学から相対論、量子力学と、定説とされてきた学説が覆る事態は、歴史上何回も繰り返されてきている。トンデモ指摘の神々はよく心しておくように。一例:傷の消毒。以前は・「傷をしたらすぐアカチンなどの消毒薬で傷口を消毒しなければ、傷が化膿して治りにくくなる」と考えられていた。しかし最近そのような定説は否定され、「傷の消毒は必要がない。消毒剤の使用はかえって創傷治癒を妨げる」という考え方に変化した。
生体において唯物論的な考えは当てはまらない。針のつぼを探しても西洋医学では存在しないがごとし。

 だからウイルヒョウがあっちと言えばあっちに向かせる魔力を持っていた。ドイツの医学会にはもう一つの流れ、今ニュース等で話題になっているホメオパシーの流れを完全に否定した。ホメオパシーは現在ドイツでは日本の漢方のごとくに保険の対象になっているちゃんとしたものだが、日本にはこのウィルヒョウの流れだけが伝わって今日に至っている。
その後も多く功罪を残したウイルヒョウの今にひきずっているのが「細胞は分裂する」という主張(当時全面的支持を得た訳ではなく、ロタンスキーとの論争において強引にその説を通したと言われている。)である。これが現在の癌研究の基本ともなっていて、最近ようやくそうではないのではないかと言う主張が再認識され始めた。
これは「どっ血や…」に書こうと思っている。

普段普通に行っている、「手を洗う行為」にはこう言った歴史があった。


*産褥熱…分娩およびその前後に、主として分娩の際に生じた傷を介して細菌に感染して起こる熱性疾患

*イグナーツ•ゼンメルワイス(1818-1865)…
細菌学者の先駆的存在。
細菌によって感染するという事の解明のきっかけとなった。





→2002年の今日のたん譚


→2004年の今日のたん譚











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