正月の読書「世界の果ての子どもたち」、「法廷通訳人」、「流」 - 2016年01月05日(火) さて正月の読書シリーズ。 今年はFBでお友達が推薦されてた2作と直木賞さんに推薦された1作。 「世界の果ての子どもたち」中脇初枝著 講談社 1940年代、満州である夏の日を共に過ごした3人の少女たちのその後の人生。構造的に深く関わりながら異なる立場に立つ3人の少女たちの互への想像力と祈りと励ましの物語。 美子(ミジャ)のおにぎりと笑顔が珠子(美珠)と茉莉のその後の過酷な人生を支えたように、茉莉の母の言葉が美子の背筋を伸ばしたように、どんな状況でも人は人と出会い、日々を回して行く糧を得る。 「法廷通訳人」丁海玉 港の人 日本語と韓国語のの法廷通訳を務める著者が描く通訳の介在が必要な裁判の内幕。著者をはじめ在日コリアンの存在は法曹界に分厚い言語資源をもたらしているなあと思いながら読む。その他の希少言語の場合これほどの手厚い通訳が可能だろうか?外国につながる子どもたちの母語・継承語能力の資源価値というものについて考える。 子どもの母語(一番最初に身につけ、最もしっくりくる言葉)が日本で暮らし、日本語を習得していく中、相対化され継承語(親の言葉)になっていく過程で起こる親子のディスコミュニケーションが描かれる「父と子の母語」という章がやはり胸に刺さった(FBでの紹介者の方も触れられていた部分なのだが)。 「流」東山彰 講談社 これは外国につながる子ども(移動する子どもとか、外国にルーツを持つ子どもとか、多文化児童とかいっぱい呼ばれ方があります)であった著者が家族の故郷、台湾を舞台に描いた青春小説。著者は5歳で日本に移動してきたということなので台湾の言葉も文化も継承語であり、継承文化であるはずなのに、取材力かあるいは家族の継承力が強いのか生き生きと描かれる台湾の青春群像は時に暴力に彩られながらも私たちに多くを訴えかける。青春のいら立ちも平時と戦時ではその姿は全く変わり一族の運命を左右する。また疑似兄弟のような兄貴分と弟分の関係の濃密さ、本省人と蒋介石に率いられた中国からの移入者の関係など台湾の事情が私たちに「なるほどそうなっているのか」と思わせるように翻訳されて提示される。著者が複数の文化の間で育つことによって得た「媒介力」が私たちの台湾文化への認識の旅を支えている。 ...
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