読書の日記 --- READING DIARY
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 Summer Island : A Novel/Kristin Hannah

<SUMMER READING>
母と娘、夫婦、恋人・・・さまざまな愛情の形を描いている物語だが、メインは母ノーラと娘ルビーの物語。
母親が夫と娘たちを置いて家を出て行ってから、ずっと彼女を憎んできたルビーだが、母親の社会的トラブルと交通事故のため、否応なしに彼女と一緒の時間を過ごすことになる。そこから徐々に明らかにされる一家の過去・・・。

母と娘に不幸がふりかかり、それを、過去を明らかにするという形で解決に導いていくのはいいが、とんでもない過去が明かされるというわけでもなく、ただ昔の思い出を語っているといった風で退屈。ルビーの恋人の兄がエイズで亡くなるなど、お涙頂戴を意識して書かれたような部分もあって、興ざめ。テーマの母と娘の愛情も、今いちピンと来なかった。愛情を取り戻す段で感動しなければならないのだろうな・・・などと思わせる作りが、ちょっと嫌。

どの登場人物にも魅力が感じられず、ただひたすら退屈。この本はNY Timesのベストセラーに入っていたので、そこそこ期待していたのだが、全くの期待はずれだった。


2002年09月26日(木)
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 クレイジーインアラバマ/マーク・チャイルドレス

<カバーより>
●ルシールの章
夫に虐待されながらも、女優への夢を抱き続けた33歳の美貌の主婦ルシールに、ついにチャンスが巡ってきた。ハリウッドのエージェントから「人気番組のオーディションを受けないか」と連絡が入ったのだ。一気に舞い上がったルシールは、理解のない夫を毒殺、小さな子供たちをアラバマに残して、西へ西へと痛快な逃避行を繰り広げる・・・。

●ピージョーの章
立派な葬儀屋になることを夢見る12歳のピージョー少年に、突如異変が起きた。叔母のルシールがやってきて、自分だけに夫殺しの一部始終を打ち明け、去ってしまったのだ。おまけに、尊敬する葬儀屋のおじさんに引き取られたピージョーは、街で起こった大騒動に巻き込まれてしまう・・・。白人と黒人、善と悪、見えるものと見えないものを心の目で追いながら成長していく、思春期の少年の物語。


この本は、上に示したように、ピージョー少年の一人称の語りと、ルシールの視点から見た三人称の語りとが交互に繰り返される。
この中に描かれるテーマは盛りだくさんで、まずピージョーの方では、ハーパー・リーの『アラバマ物語』にあるような、人種差別をメインテーマとし、社会的な問題を描いていく。一方ルシールのほうのテーマは狂気。一見何の関係もないテーマのようだが、人種差別というのも人間の狂気の一種ではないだろうか。

少年の目から見た世の中の矛盾や不正は、それがまかり通ってしまう現実を目の当たりにして、読者も少年の純粋な心と同化し、やるせない思いにとらわれる。ピージョーの尊敬するおじさんの言った言葉に胸を打たれる。「子供のほうが正しいことをやりやすい」。大人は様々なしがらみに押しつぶされ、正しいと思っていることでも、手を出せないことがある。世間の悪を見て見ぬふりをせざるを得ないことがあるのだと、おじさんは自らのやるせなさを訴えたのだ。そういった無念さに、読んでいるほうも胸のつぶれる思いがした。

一方ルシールのほうは、殺害した夫の首を切断し、それをタッパーに入れて持ち歩くというクレイジーな旅をする。殺人という重罪を犯しているルシールだが、これがなぜか憎めないキャラクターで、つかまって裁判にかけられているときも、ルシールのファンが大勢登場したほどなのだ。彼女の逃亡ルートが、フーバーダムからラスベガス、ロサンゼルス、サンフランシスコとなっているので、これもまた個人的に入り込んでしまった。いつしか、無事に逃げおおせてくれと、ルシールを応援している自分がいる。

さまざまなテーマ、出来事が重なりながらも、全く滞りなく一気に読ませてしまうこの作家の手腕は素晴らしい。ハーパー・リーの『アラバマ物語』も名作だが、それをさらにパワフルにしたような感じ。そして、この本で注目すべきことは、翻訳がいいということ。登場人物が多く、年齢や性別、人種も多岐に渡っているのに、会話の部分などで不自然なところは全くなかった。それもこの本を一気に読めた大きな要因だろうと思う。




2002年09月22日(日)
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 あなたがいるから(B+)/キャシー・ケリー

<カバーより>
ハンナ─36歳、キャリアウーマン、未婚、容姿端麗。男なんて(遊び以外)いらない!が信条。恋だの結婚だのに煩わされるのはもううんざり・・・そういいながら本当は、いつだって独り身の寂しさを痛感している恋多き乙女。

エマ─31歳、既婚。チャリティーの仕事と優しい夫に恵まれる一方、問題の或る両親と不妊の悩みを抱えて毎日を過ごす。いっつも損な役回り・・・と不満を内に隠しつつ、感謝と周囲への気配りを忘れない優しい乙女。

リオニー─42歳、バツイチ。病院で動物相手に奮闘し、家で反抗期の3人の子供に手こずれば、心も身体も逞しい女になるしかない。本音はそろそろ誰かに頼りたいけれど・・・運命の恋を信じてやまない、純粋な乙女。

こんな3人が心機一転、旅立ったエジプトの地で出会って意気投合。故郷アイルランドで悩みを打ち明けあい、助け合い、ときにぶつかり合いながら、自分たちの幸せをみつけようと必死に生きてゆく。


というわけで、上の3人の周囲に起こる出来事を、それぞれに描きながら、3人の友情をも描いていく。彼女たちに起こるエピソードは、読者にもどれかしらがあてはまるような出来事なので、いつの間にか彼女たちと一緒になって、悩んだり、喜んだりしている自分に気づく。そして、彼女たちの前向きな姿勢に、心が温まる思いがして、自分もがんばっていかなきゃ!と元気づけられる。悩んだ時、悲しい時、嬉しい時、家族でも誰でもない、身をもって答えてくれる友人がいるというのは素晴らしい。もっともこれは、大人だからこそ築ける友情かもしれない。

原題は「Someone Like You」で、邦題の「あなたがいるから」とはちょっとニュアンスが違う。原題のほうが的確にこの物語の本質を掴んでいるような気がする。




2002年09月12日(木)
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 メール(B+)/マメヴ・メドウェド

<カバーより>
カティンカ・オトゥールは、バツイチの31歳。小説家としてモノになるために、孤軍奮闘中の彼女の一日は、郵便配達で始まる。小説の採用通知を、のどから手が出るほどに待って暮らす毎日だが、うれしい知らせは来たためしがない。無常な現実にくじけそうになるカティンカに、さらに追い討ちをかけるのが、「早くいい人見つけなさい」攻撃を繰り広げる母親と、別れて9年たった今でも彼女を我が物扱いする、嫌味な有名大学教授の元夫。そんなある日、ハンサムなメールマンに一目惚れしてしまったことから、彼女の人生は、ゆっくりと、でも確実に動き始めた!

「共感度100%のガールズフィクション!」などとあったので、ブリジット・ジョーンズの日記ばりの、明るくて面白い話なのかと思ったら、意外にも暗い。というのも、この作家が真面目すぎるのだろうか?笑えるところで笑えない、くそ(失礼!)真面目なところが目に付く。つまり、BJと違って、主人公を笑いものにすることのできない作家だ。不幸や失敗を笑いのネタにできない作家なのだ。そういうのは、あまり共感できない。

話のほうは、学歴主義の母親が、自分のスタイルを崩さず、どんどん恋愛をしているのに、「学歴なんてなによ!」と言っているカティンカのほうが、本当の恋愛を見つけられずにいる。なぜなら、そういいつつも、彼女もまた母親と同じ価値観を持っているからだ。

恋したメールマンは、ハンサムでスイートでセックスも上手なのだが、頭の隅に母親と同じこだわりがあって、その恋愛に没頭できないのだ。メールマンを好きである理由を述べるところなどは、そのこだわりを否定しようとする言い訳にしか聞こえない。

よんどころない事情でメールマンと別れ、最終的には自分の価値観に合った相手に出会うのだが、やっぱりね、という相手で興ざめ。


2002年09月07日(土)
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 ¥999(B+)/フレデリック・ベグベデ

<著者のことば>
「この小説には現代広告の脅威の世界が描かれている。それは、要りもしないものを、買う金もない人間に欲しがらせるため、何十億フランの金が遣われる世界。これは僕等の社会についての本だ。あなたの社会、僕の社会、広告業界に在籍した十年で個人的に貢献しでっちあげてきた社会、無力さにほぞをかみつつも僕等みんなでのさばらせてきた社会についての本だ」

何を言ってるんでしょーか。全然わからないでしょう?
コマーシャルとかの世界って、それはそれはバカバカしい世界なのだ。この本を読んで面白いと感じる人は、そういった世界を実際に知っている人たちではないだろうか?かく言う私もその一人なので、ベグベデの言いたいことはよくわかる。

しかし、コマーシャルとかクリエイティブな業界ってカッコイイ!などという幻想を持っている人には、なんのことやら???じゃないだろうか?つまり、「内輪ネタ」をばらして、「内輪うけ」しているといった感じなのだ。

ベグベデはもともとコピーライターだから、おや!と思う言葉の使い方をしている部分もあって、それはそれなりに素晴らしいと思えるが、物語として、本としては、結局コピーライターであることが災いして、長文はやっぱりダメかな?という感想。

こんな世界、いや!と思っていた世界が、そのまま包み隠さず描かれているといった意味では、喝采を送ってもいいかもしれないが。



2002年09月04日(水)
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 洞窟(B+)/ティム・クラベー

<カバーより>
地質学者エイホン・ヴァクターはいまラタナキリ国にいる。とうとうぼくは、麻薬入りのトランクをもって、ここまで来てしまった。金欲しさに麻薬密売人アクセルの言いなりになって。数年前、ここでオランダ人ビジネスマンが麻薬所持で死刑になったというのに。
結局ぼくは、アクセルに人生の手綱を握られているのか。14歳のサマーキャンプで出会った、あの反抗的なカリスマ。誰もが引きずり込まれる、あらがいたいふしぎなオーラ。でもあの夏は、ぼくが将来の夢を決めた夏でもあったんだ・・・。
オランダの大御所クラベーの、超傑作サスペンス。過去と現在、物語の舞台が交錯する先の読めないストーリー展開。すべてのパズルが符号したとき、せつない運命に胸がしめつけられる。

というわけで、各雑誌、新聞の批評は素晴らしいものばかり。これはサスペンスであるとされているので、詳しい感想を書いてしまうと怒られるだろうし、だからといって書かなきゃ感想にならない。ともあれ、大まかなところは上のカバーの文章で把握していただくしかない。

個人的には、主人公とはちょっと離れた(全然関係がないというわけではないが)、全然違う人物が語る話の部分(つまり「ぼく」ではない誰かが語っている、「ぼく」の物語でない部分)が素晴らしいと思った。カバーにある「せつない運命」とはここの部分だろうか?しかしそれも書いてしまうと「ネタばれ」と怒られそうなので、なんとも感想の書きにくい物語で困ってしまう。心に余韻を残すその話、あとで思うのは、自分の親の人生とは、本当はどんなものだったのだろう?ということ。



2002年09月02日(月)
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