ヨンサマ?

 「どこいくの」
 「ン〜MOVIX」
 「私、ヨン様がいい」

 というわけで、T.バートンの新作を観るはずが、なぜか昼間からR-18指定の韓国映画を母上と見る羽目に。
 「ヨン様」こと裴勇俊氏主演の『スキャンダル』(2003年韓国)。
 韓国語の節回しが実に雅やかで美しいし、「侯爵夫人」の役回りである李美淑さんが素晴らしい。
 まあ、あとは李朝時代の貴族の生活を見るのがただ面白いというか。
 コスチューム・プレイを見る楽しいというか。
 いつ馬牌を出すのかとドキドキしましたが、こんなフラチな暗行御史いないか。
 寧ろ成敗してほしいくらいで。
 ピエール・コデルロス・ド・ラクロの「ヴァルモン」を李朝時代の貴族社会に置換しただけといえばそうですし、あまり巧くもないのですが、脚色はナカナカ面白く、楽しく観ました。


 どうでもいいけど、「ヨンサマ」って始めて聞いたとき、金泳三元大統領のことかと思ったヨ。
 ワタシだけですか、あ、そうですか。




五月の乱読覚書

・『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』大竹まこと(角川書店)
・『在日』姜尚中(講談社)

 姜尚中氏の自伝『在日』は面白かった。
 親の世代である二世のことばは、身につまされたりされなかったり。
 80年代、私は小学生でした。
 理不尽で妙な学校教育を、今でも苦々しく憎々しく思う気持ちを捨てられずにいるのですが、今思えば、あそこでの教育以上に、80年代の世界は理不尽で妙だったのだな、と。
 過去の学校教育を恨むより、これからのための公正で冷静な視線と姿勢を手に入れたいと思います。
2004年05月31日(月)

取り敢えず、まだあと少し

 昨年まで、毎年思い出しては憂鬱になったりもしたヤツの誕生日を、今年はすっかり忘れていたことに気付いた。
 思い出したからといって、特になにかしていたわけじゃなし。
 共に祝えないことを悲しむでなく、「忘れられないのネ」とメランコリックに浸るわけでもなく、単に「忘れていない自分」に驚きウンザリしていただけなのだけれど。
 今年は「忘れた自分」にショックを受ける羽目になるなんてナ。
 年月ってやつは濁流のようにおいらを押し流し、しかし元いた場所から確実に遠ざける。
 年々その流れが、速まるような気がする。
 一体いつになったら、海へと続く穏やかな下流に至るのやら。


 まあ、それはともかくヤツだ。
 左手に深く挟み込んだ煙草に火をつけて深く吸い込み、煙に目を細める。
 そんな何気ない仕草も、惚れた男ならなお愛しかった。
 煙草が嫌いなわけではない。
 そういえば駅のホームから灰皿が消えた。
 同時に線路やホーム、道路には吸殻が増えた。
 吸う場所がなければ外で吸うのはいいとして、捨てるところがなければ道に捨てるというのはどうなのだ。
 煙草が嫌いなわけではないが、喫煙者のマナーの悪さは耐えがたい。


 話がそれた。
 ヤツだ。
 最後に話したのはいつだったか。
 『サイン』だったか。『ゴスフォード・パーク』だったか。
 『ボウリング・フォー・コロンバイン』の話はしたか。
 そういえばマイケル・ムーア監督の『華氏911』がパルムドール受賞だそうで。
 まあ、「ドキュメンタリー」とはいえ、作者の主観なくして映画は有り得なく、そういう意味で純粋な「ドキュメンタリー」の映画など有り得ない。
 「ドキュメンタリー映画」は、だから面白いと思うのよネ。
 俄然観たくなってきた。


 ああ、またそれた。
 ヤツだ。
 忘れられずにいたことに驚き、忘れたことに気付いたことに驚く。
 イッタイ忘れたほうがいいのか、忘れないほうがいいのか。
 忘れられるのか、忘れられないのか。
 否、おいらは、忘れたいのだろうか…。
 悩むところではある。
 取り敢えず、長年おいらを悩ませた胸の疼痛が、いまはない。
 うーん?うん、ない。
 よし。


 日常の奔流に流され続け、けれど見える景色に然したる変化もなく。
 確実に、ヤツの誕生日を忘れるくらいには遠くに来た。
 疼痛が癒えるほどには時が経った。
 それでも忘れていたということに気付く。

 ま、いいや。
 優しく懐かしく思い出すには、取り敢えず、まだあと少し。
2004年05月23日(日)

沈黙は


 「沈黙は愚者の機知である」


〜ジャン・ド・ラ・ブリュイエール「カラクテール」より〜




 「語りえぬものについては沈黙しなければならない」


〜ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン「論理哲学論考」より〜

2004年05月20日(木)


 Elvin Jones氏のご冥福を衷心よりお祈り申しあげます。
2004年05月19日(水)

ひも

 後頭部から紐が伸びていて、
 紐の先に噛み終わったガムがついていて、
 それを引き摺りながら歩いている、そんな感じ。
 ガムにはゴミばかり付いてくる。
 重い。だんだんと重くなる。


 鏡の前で、いつかのようにファイティングポーズをとってみる。
 泣きわめきながらサンドバッグを叩く力が、躰のどこかにあると信じ
 湧きあがるのをしばし待ってみるけれど、
 握った拳はだらしなく弛緩する。
 途端に浮遊する。
 ここに在る肉体
 ゴミのついたガム
 ガムのついた紐
 それを引き摺る肉体
 その重さに堪えられず、剥がれて浮遊する。




 「癒し」
 なんて偽善的なことばだと思っていた。
 おいらが「癒される」のは
 ショスタコーヴィチの五番だったり
 ストラヴィンスキーの「春の祭典」だったり
 伊福部昭の「リトミカ・オスティナータ」だったりするのだと。

 しかしいま、それらは空っぽの灯油缶の底をかき混ぜることしかしない。
 灯油はない。一滴もない。
 ガコガコと空ろな音が響くばかり。



 天上へと続く階段が見たい。
 突き動かされるようにそれを上りながら、
 そこで聴こえるだろう天上の調べ。
 その霧散した粒子が、すうと入りこむのを感じられたら
 鏡の前の肉体に還り、紐を引っこ抜こう。
 明日が来ても動き出せる。
2004年05月18日(火)

サンドバッグが私は欲しい

 計算合わない。
 ファックスこない。
 電話番号間違ってる。
 ワトソン博士は今日4回目。

 プリンターはトナー切れ。
 トナーを替えたら用紙切れ。
 紙を入れたら紙詰まり。


 計算合わない。
 ファックスこない。
 トイレの紙がない。
 傘盗まれた。
 茶筒の中蓋どこいった。
 ワトソン博士は今日5回目。


 「アンケートにお答え頂ければエステの無料招待券」?
 そんなものより、サンドバッグが私は欲しい。
2004年05月17日(月)

名前もイイ

 相変わらずTV番組を殆ど見ないので、土曜の「ブロードキャスター」(TBS)で漸く世情を知ったりするわけです。
 跆拳道といいサッカーといいバレーボールといい、おいらが子供の時分は、オリンピックに出場することが斯様に遠大なプロセスを要するものだとは思わなんダが。
 なんにせよ面白い試合を見るのは楽しみです。
 代表になられた方々には頑張って来ていただきたいものです。

 ま、そんなこんなでオリンピックも楽しみだけれど、今年はテニス全仏オープンにナブラチロワのシングルス出場が決まったところだし、wowowに加入したいナ〜と目論んでいたりするこの頃です。
 や、TV見ないンだけどサ…。


 さて、月曜にシネアートの前を通るとポスターが貼られていないことに気付きました。だいぶ前に看板はなくなっていたのですが、オヤオヤ?と思ったら9日閉館とのこと。ガーン…。
 と、かなりショックを受けていたのですが、やがて来月チネ・ラヴィータオープンの知らせが。
 ン、どうやら東宝が手放したシネアートをフォーラムさんが買った、とそういうことかな。設備も弄るようですが(あの映写機の音だけなんとかしてくれば贅沢は
云わん)、単館系作品の上映がメインになるというのは嬉しい。
 フォーラムやMOVIXの最終上映の終了時間は終電ギリギリだったけれど、こちらはなんとかなりそうだし、なにより駅前の映画館が次々に閉館してゆくなか、どこよりも思い出深い「シネアート」が残る、というのは本当に嬉しい。

 「チネ・ラヴィータ」
 ン、名前もイイ。

 万歳!フォーラム!誰が止めようとおいらは行くぜ!
 …取り敢えず決算が終わったら、の話ですけどね。
2004年05月16日(日)

黄金週間どころか

 このところの陽気で、近所の藤棚が盛りを迎えました。
 黄金週間、ミナサマ如何お過ごしでしたでしょうか。
 おいらはといえば、四日に上京、五日に天王洲アイルはアートスフィアにてCITYBOYSのLIVEを観た以外は、今年はひとりでやることになった決算の書類をアレコレと揃えたりと忙しなく過ごし、黄金週間どころか2004年の1/3が終わってしまったことに気付き、しばし呆然となってしまった本日です。
 決算が無事に終わるまでは映画館はお預けかな。
 セントラル劇場の特別レイトショーには行きたいけれど。
 週末の終電は酔客が多い。うんざり。



 サテ、CITYBOYS MIX「だめな人の前をメザシを持って移動中」。
 相変わらずなんなんでしょう、このタイトルは。
 今年はDVD発売時にカットされそうなネタもなく、否、それはそれで楽しいのですが。ともかく大いに笑いました。
 パンフレットにサインが入っている確率は約五割だそうですが、おいらのには斉木さん、ツレには大竹さんのサインが。わーい。
 ま、三人と同じ時間、同じ空気を共有できた歓びに比べれば、サインなどはどうでもいい話。
 また来年、お会いしたい。



 四月の乱読覚書

・『銀行籠城』新堂冬樹(幻冬舎)
・『時の渚』笹本稜平(文春文庫)
・『狛犬学事始』ねず・てつや(ナカニシヤ出版)

 Amazon.co.jpのオリジナルブックカバー、非常且つ異常にくさい。
2004年05月08日(土)

メイテイノテイ / チドリアシ

My追加 エンピツユニオン
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