2004年12月29日(水) |
『初春』(女の子ヒカル。マイフェアシリーズ) |
大掃除もようやく終わり、一息ついた12月30日の朝。 進藤家の家事をとりしきる主婦――進藤美津子は、ほっとしてこたつでお茶を飲んでいた。 目の前に広げられたのは色とりどりの新聞広告。 年越し蕎麦やおせちやお雑煮の材料など、買わなければならないものはたくさんある。しかし買えば良いというものではない。「より安く、より良いものを」…これこそが大きな命題だ。 広告を見比べながら、赤ペンでお目当ての品物をチェックしている時、ひょこ、と彼女の娘が顔をのぞかせた。
「かーさん」 「なに?」
顔も上げずに応じると、娘はそのまま何の反応も返さない。 珍しいこともあったものだと美津子は目をぱちぱちさせた。
「どうしたの」
顔を上げてみると、そこには、くたびれた着古しのジャージに、毛羽立ったトレーナー。裸足でぺたぺたと歩くさまに頭痛がしないでもないが、今更のことだ。思春期真っ只中であろうというのに、ヒカルは女の子らしいものに全く興味を示す様子もない。 …唯一、おしゃれらしいものといえば、つい最近好んでつけている、朱色の丸い石がついたシンプルなピンだけ。 それでも、進歩と言えるのは、喜ぶべきか、嘆くべきか………。
「……あのさ、かーさん」 娘の声に美津子は思考を中断させた。
「なに?」
言いづらそうにためらうヒカルの様子は、本当に珍しい。 いつも、元気だけはピカイチで、あっけらかんと明るい性格は、女の子らしくないというマイナスを引いても立派な長所なのに。 ほしいものがあるならはっきりきっぱり言うし、嫌なものも以下同文。おかげで、クリスマスに何が欲しいかなんて筒抜けで、何を買おうかなんて迷うことはまずなかった。……そんなヒカルが。
(ひょっとして、何か悩み事なのかしら……)
…しかし、そんなに構えていたら話しにくいかと考え、気づかないふりをしてみる。
「どこか出かけるの?…残念ねぇ…今日の買い物一緒について来て荷物持ちしてくれたら、栗きんとん多めに作ってあげるのに…」
「ん…栗きんとんはたくさん作ってほしいけどさ…そうじゃなくて…」
ヒカルはぱりぱり、と頭をかいた。どう言って良いのか分からない、といった風情で。 そんな無造作な動作も、どこかおかしくて母はくすくすと笑いをこぼす。
「おかしな子ねぇ。言わなきゃ、何なのか分からないわよ」 「…だよね」
ヒカルも困ったように……というか、照れている様な表情で、微笑ってみせる。
「あのさ、かーさん」
「なに?」
「初詣に、着物着て行きたいんだけど……」
「……は?」
思考停止。
「……だから、着物」
「…………」(←停止持続中)
なおもかたまる母をよそに、ヒカルは言葉を続ける。
「知り合いの人が着せてくれるって言うんだ。持ってないって言ったら、お母さんの何か借りてきたらいいよって……聞いてる?」
「…誰の着物って?」
「聞いてないじゃん………」
ヤレヤレ、とため息をつくと、ヒカルはこたつに手をついて、目を丸くして赤ペンを握ったままかたまっている母親に身を乗り出した。
「あのねー!初詣行きたいの!着物着て!!」
「……誰が?」
ころころ、と赤ペンが転がる。 ヒカルはにっこりと微笑んだ。
「オレ」
「……………はい?」
(着物?!ヒカルが?!……いやでもこの子には着物は作ってないし…それもこれも宮参り以来頑として着ようとしなかったこの子のせいでもあるんだけど…ワンピースですらいやがるんだもの。…ああ、私の着物を借りたいと言っていたわね。…でもどこにしまったかしら。私もそういえばずいぶん着てないもの。振袖なんてとっくに袖を切って留袖に染め直してしまったし…初詣といえば、正装よね?…いやでも違うのかしら。それに着付けは知り合いの人って…今から美容院なんて予約できないし、それは助かるけれどやっぱりお礼は包むべきかしら、…というか誰なのその知り合いって?ああ、でもでも、せっかくヒカルが着物着たいなんて言ってくれたんだから、それは喜ばなくちゃ!…履物あったかしら?)
せわしい年の瀬。 美津子の頭の中は、これでもかとばかりに大嵐な状態だった。
そうした張本人は、こたつでぬくぬくと温まり、母親がパニックから脱出するまでのんびりみかんを頬張っていたのである。
2004年12月26日(日) |
さぁ、新年に向けてまっしぐら! |
クリスマスも終了し、いよいよ新年に向かってまっしぐらです。 今年・来年もやっぱりお茶席に篭って出てこられそうにありませんがな(苦笑)。 おまけに3日の行事の接待の主任くらっちゃったよどうすべー(泣)。
憩いの9日大阪イベントを楽しく迎えるためにも、がんばります! お茶会もあるしね♪
そんなこんなで更新も…落ちるかもなんですが。 ただ今、ヒカルちゃんのネタで頭がいっぱいだったりするんです(苦笑)。 現在、資料を集めるためにネットめぐりしています。
掲示板やメールのレス等が遅くなるかもしれませんが、ご了承くださいねvv
2004年12月25日(土) |
『ただ一人のためのギャルソン』4(オガヒカ) |
緒方のマンションに帰ると、ヒカルは台所に駆け込んで早速「アンティーク」のクリスマスケーキを皿に出していた。
「…まだ食う気か?」 「いーじゃん!クリスマスなんだからさぁ〜!」
ちなみに先程、以前から行こうと思っていた博多ラーメン屋で夕食を済ませてきたばかりである。見事に当たりだったその味に2人は大変満足し、次に来た時のメニューまで相談したほどだ。 超特大ラーメンの早食い特典があるのを見て、ヒカルは「倉田さんに今度教えてあげよう♪」とはしゃいでいた。
(そのラーメン食う前にアップルパイ食ってる筈なんだがな……)
その細い体のどこに、あれだけのモノが入るんだか。今更ながら不思議に思えてしょうがない。 緒方はソファに座ると、手にしていた瓶をテーブルの上に置いた。
「…ねぇ、橘さんさっき何くれたの?」
ふたりがラーメンを堪能してマンションに変える途中、見覚えのある車だなぁと思ったら……橘のケーキ配達中に行き合った。 似合わない白ヒゲ、若すぎるサンタの姿に爆笑するヒカルを軽くこづいた彼は、車に乗ると、そこから瓶を取り出して緒方に投げてよこした。 「?」 「バイト代だよ。ありがたく貰いやがれ」 ふん、と言い捨てると、そのまま彼は次の配達先に去ってゆく。 家族の微笑みをもたらす、特別な「クリスマスケーキ」。 それを運ぶべく、フェラーリとサンタは今夜はがんばるのだ。
緒方は、目の前に置かれた瓶を眺めては、くつくつと笑った。 (バイト代云々は冗談だったんだがな……相変わらず、融通の利かない不器用な奴) …下手に器用なくせに。 テーブルに置かれた瓶は、緑と赤の細いリボンがくるくると巻いて、結ばれていた。
「…だからこれ、何?やっぱお酒?」 ヒカルは皿に盛り付けたチョコレート色のブッシュ・ド・ノエルをテーブルに置きながら、もう一度たずねる。さっきからこの瓶を眺めては緒方がくつくつと笑うので、興味深々といった風情だ。 「ああ。…カルヴァドスといってな。リンゴから作ったブランデーだ」 「なーんだ、やっぱお酒かぁ」 それじゃ飲めねーじゃん、とヒカルはふくれる。未成年だから大っぴらに飲めないし、それ以前にどうやらアルコールに対して弱いようなのだ。飲めたとしても梅酒がせいぜいで、ワインや日本酒などは、舐めるくらいしかできないから、美味しいかどうかも分からない。
「お前でも楽しめる方法があるぞ」 「そうなの?」 「ああ。ケーキでも食いながらちょっと待ってろ」 「緒方さんは?」 「………一口だけもらう」
俺が甘いモノが嫌いだと知っていてケンカ売ってるのかコノヤロウ、という一瞥をくれてから、彼はカルヴァドスのボトルを持って立ち上がった。 ボトルのラベルは、ジェラール・ペリゴー社の「カルヴァドス1978」。半日ばかりのバイト代の割には、随分とはりこんだものだ。 (今度知り合いの女流棋士に店のことを教えておいてやるか) …むろん、客を数名紹介するだけ。 そこから発展した関係になれるかどうかまでは、知ったことじゃない。そこまで親切にされたら、向こうの方が気味悪がってしまうだろう。 緒方は、今日最後のコーヒーを、ゆっくりと、丁寧に煎れはじめた。 友人がくれた贈り物を、恋人と一緒に楽しむために。
大人しくヒカルがケーキをぱくついていると、緒方がコーヒーをひとつと、水割りを入れて持ってくる。…もちろん、水割りは緒方の分だ。 「…?さっきのお酒、コーヒーに入れたの?」 「いいや、まだだ」 緒方はスプーンの上に乗った角砂糖をカップの上に置き、ヒカルの目の前に置く。それから、先日ヒカルが何故か100円均一で買ってきたキャンドルを水を入れたグラスに浮かべて、テーブルの中央に置いた。
「電気消すぞ」 「……うん」
隣に座った緒方がリモコンで一瞬にして真っ暗になった瞬間、カチン、と彼のジッポーの音がして、ほのかに彼の顔を照らし出した。 そしてその火をキャンドルではなく、スプーンの上の角砂糖に近づけたのだ。
「う……わ………!」
ゆらりと立ち上る、蒼い炎。 つめたい色なのに、何故かほんのりあたたかい。 そして香りたつ、林檎の甘い香り。
緒方は水に浮かべたキャンドルに火をつけると、カラン、とまだ蒼い炎が燃えていたスプーンをコーヒーカップの中に入れてしまった。
「あー!」 もう少し見ていたかったのに……!と非難めいた眼差しを緒方に向けると、彼は無造作にスプーンでカップの中をかきまわす。 「あれ以上燃やすとコゲ臭くて飲めたものじゃなくなるぞ」 「…へ?」 「これはこういう飲み物なんだ。…飲んでみろ」 「う…うん」 ヒカルはおそるおそるカップを両手で持ち、ふう、と一息吹いてからほんの少しだけ、口にふくんだ。
「………!」
ぱちぱち、とまばたきして、もう一口、こくん、と飲む。
緒方はそんなヒカルの様子に、微笑んだ。
「…どうだ?」
「甘くて…すっごい、良い香りがするvv」 にっこりと極上の笑顔を見せる恋人の頬に、緒方はかるく唇を触れさせた。 くすぐるようなそれに、ヒカルは肩をすくめる。 もう一口不思議な味がするコーヒーを飲みながら、ヒカルは緒方の肩にもたれた。
「さっきもさ…」 「…ん?」
カラン、と氷が踊る音がする。 コーヒーから立ち上るのと、同じ香り。
「さっきも…「アンティーク」で、俺にコーヒー煎れてくれたよね。生クリームでフワフワしたやつ」 「ああ…ウインナコーヒーな」
カップに顔を近づければ、優しい香り。 カップを持つ手は、あたたかいぬくみ。 …まるで、さっきの蒼い炎のよう。
「……俺、コーヒーって、あんまり好きじゃないんだけど」 「そうだったか?」 自分の目の前で、今、こうして美味しそうに飲んでいるのに。…ついさっき、店の中でも。 ヒカルはくすくすと笑った。 「…うん。そーなんだ。………けどね」 顎をくい、と見上げて、ヒカルは緒方を見上げる。
……そして、ふわり、と微笑んだ。
「俺、緒方さんが煎れてくれたコーヒーだけは、美味しいって思うよ」
緒方はその微笑に惹かれるまま、くちづける。
「……そうか」 「…………ん……?」
思いのままに、緒方は恋人の鼻に、頬に、まぶたに唇で触れる。…そして、柔らかなお気に入りのその黄金色の髪にも。
「…それなら……もうコーヒーはお前にしか煎れない」
誓いのように、髪にくちづけながら。 ヒカルはくすくすと微笑う。
「無理言ってら……」 「無理じゃないさ……」
唇で交わす、ふれあい。 それしか術を知らぬ、小鳥のように。 そのキスは……かすかに香る、カルドヴァスの香り。
いつしか、ヒカルが持っていたカップはテーブルの上に。 緒方が持っていたグラスも、その隣に。 食べかけのクリスマスケーキはそのままで。
……ゆらゆら、と、水の上に揺れるキャンドルの炎だけが、 静かに。ふたりを照らしていた。
2004年12月24日(金) |
『ただ一人のためのギャルソン』3(やっとオガヒカ…?) |
「……なにしてんの?」
ヒカルは店に入るなりこう言った。 カウンターの向こうには、見慣れた男が見慣れぬ格好で、ニヤニヤ笑いながら自分を手招きしている。
「…あ、進藤くん。いらっしゃい」
わたわたとケーキを運びながら、千景がヒカルを出迎えた。 「こんばんわ、千景さん。忙しそうだね」 「はい、おかげさまで」 千景の言う通り、昼間ほどではないにしろ、イートインは程よく客が入っている。 大変なのはテイクアウトの方らしく、本日分の製造を終えたパティシェ二人は、その応対に追われていた。 そんな忙しい中、あまり立ち話をするのも気が引けたので、ヒカルは緒方が呼ぶカウンターへと向かっていった。
「なにしてんの?」 「……まぁ、なりゆきでな……臨時のバイトだ」 緒方は苦笑しながら、コーヒーを2つのカップに注いだ。既に用意してあるトレイには、ミルクピッチャーとシュガーポット、そしてスプーンの乗ったソーサーが用意されていて、その上にカップを乗せる。 その頃に丁度、千景がケーキを出し終えて戻ってきた。 「コーヒー2つ。さっきのケーキの客だ。…それから帰りに隅のテーブルの男に注文聞いてこい。いま出せるケーキ一覧はコレな」 「はい〜〜」 言われるままに千景はコーヒーを運んでいった。
「…ヒカル」 こいこい、と呼ばれる。 「なに?」 「中に来い。そこじゃなくて」 「いいの?」 「今日は俺が此処を仕切ってるから、良いんだよ」 ものすごく偉そうな臨時のバイトは、自分が動くスペースに、ヒカルを招き入れた。 何だか、「オマエは特別だから」と言外に言われているようで、ちょっとこそばゆいけど……嬉しい。 「そこに椅子があるから、そこで座ってろ」 「うん」 喋りながら、緒方は牛乳を取り出してミルクパンで温め始めた。 ヒカルは頷いて、示された椅子に腰掛ける。そして、目の前でコーヒーや紅茶を煎れてゆく彼をじっと見ていた。
上から二つまで外されたシャツのボタンとか、無造作にまくりあげられた腕とか。黒いエプロンがきりっと似合ってるのに、どこかくだけた雰囲気があるのは、そのシャツの着方のせいだろうか。 (…忙しかったのかな…髪、ちょっとくしゃくしゃだ) 身繕いにうるさい緒方なのに、ちょっと珍しいものを発見した。ひょっとしたら気付いているけど、食べ物や飲み物を扱っているから…と、触れずにいるのかもしれない。
「緒方さん」
ちょっといい?…と呼びかけると、彼はすい、とヒカルに近づいた。 「何だ?」 「ちょっとかがんで」 「…?」 いぶかしげな表情をしながら、ヒカルの言う通りにすると、ヒカルは緒方の亜麻色の髪にそっと触れた。 「髪……くしゃくしゃだったから」 髪の乱れを直して、ヒカルはくす、と微笑む。もういいよ、とヒカルが髪から手を放そうとするのを捕まえて、緒方はさらに恋人に近づいた。
掠めるように、盗むように…… ……与えられた、一瞬の、キス。
「緒方さん!」 こんなところで……と、真っ赤になったヒカルを満足そうに眺めながら、緒方はもう一度かがんでみせた。 そして耳元で囁かれる。 「オマエが、あんな表情をするからだ」 ぞくぞくとするような、甘い声。思わず肩をすくめる。 「俺の…せい?」 「いいや」 緒方は、ヒカルの顔の間近でニヤリと笑う。その表情はまさしく情事の時のソレで……。 ――一瞬、ヒカルは此処がどこだか分からなくなった。
おおきな手が、ヒカルの顔を撫でる。 ヒカルはうっとりと目を閉じた。
「お前に触れたくてたまらない……俺のせいだ」
もう一度、唇に触れるだけのキスを落とすと、緒方はヒカルから離れ、注文を取ってきた千景と何事も無かったように話していた。 ヒカルだけが、椅子の上に取り残される。 いつのまにか全身が熱くなっていて、さっきまでの外の寒さを忘れてしまっていることに気がついた。
「……ズルイよ」
ぼそり、とした呟きだったのに。 それでも聞えたのか、緒方はくつり、と微笑ってみせた。
ヒカルに見えたのは、白い大きな背中だけ。
文句のひとつやふたつ言ってやろうかと思っていると、小野が店内に顔を見せた。 「…あれ?進藤くん。来てたんだ」 「は〜い。臨時のバイト君がさぼらないようにちゃんと監視してるからね〜」 冗談めかして微笑むと、小野はくすりと笑った。 「そうだね。緒方さんのおかげで大助かりだよ。予約のケーキはすぐ用意できるけど…進藤くん、時間はある?」 「うん。へーき」 「じゃあ、お詫びにエージ君の焼いたアップルパイをごちそうするよ。温めてくるから、ちょっと待ってて」 小野はそう言うと厨房に引き返しかけたが、立ち止まる。
「コーヒーは、そこの有能なバイトさんに煎れてもらってね。…きっと、一番美味しく煎れてくれるよ」 「は〜い」 小野はにこやかに厨房へと消えてゆく。
…ふと、気がつくと。 カウンターの隅に座るヒカルの目の前で、一人のギャルソンが微笑んでいた。
「お客様、ご注文は?」
狭いカウンターの中。 ふたりだけの空間の中で。
フロアの中に、空いている席はあるけれど、ヒカルにとっては、一番の特等席。 …彼も、そうなのだろうか。 ……自分にそばにいてほしくて、此処に呼んでくれたのだろうか?
ヒカルは、自分だけのギャルソンに、にっこりと微笑んだ。
「コーヒー!とびっきり美味しいの♪」
緒方も微笑んで、うやうやしくお辞儀をした。
「承りました」
2004年12月21日(火) |
無事にお渡しできましたvv |
先日からとりかかっていたマフラーですが、無事に完成しまして。 本日、謡の稽古の会の忘年会にて、師匠にお渡しすることができましたvv 気に入っていただけたようで、お渡ししたらすぐに首に巻いてくださり、ついにはお開きまでずーっと巻いてて、お帰りの際には、 「これ、ずーっと巻いて帰るからな!」 と言っていただきました。 先生のことだから、きっとマフラーなんて何本もお持ちだと思うんですよ。(今のお住まいは宝塚だけど、実家は北陸で時々帰られるし) …でも、受け取っていただいた上にそんな言葉まで……。 なんかすっごく嬉しかったです。 稽古の時は厳しいけど、それ以外ではすっごく気さくで優しい先生です♪
お渡しした時に、 「お似合いですよ〜vv」 と生徒からはやしたてられると、 「僕は何でも似合うんだよ〜!」 とカラカラと笑って言われました。 そして上機嫌になった師匠はもう止まりません。 「だって僕は…ほら、アレだ(マフラーを巻き直して)ヨン様だから!」 一同大爆笑。 (師匠は70過ぎの禿頭のおじいちゃんデス) 思わず、 「…あ、それだったら白いマフラーの方が良かったですか?」 …なんて冬ソナネタでつっこんでしまいましたvv
そんなこんなのこのマフラー。 ……実はですね。 昨日、仕事でどたばた残業天国で、眠くてたまらず部屋に帰って速攻寝ようとしたんです。 そこで気がついた。
マフラーの糸の始末まだやし、房つけてへんやん!!
…飛び起きました。はい。 昨日の夜以外、とてもじゃないけど編物する時間はとれなかったので。 いや〜思い出してよかったよかった。
多少のアクシデントはありましたが、マフラーは無事編みあがり、 師匠に、ちょいと早いクリスマスプレゼントとしてお渡しすることができましたvv
めでたしめでたしvv
2004年12月17日(金) |
『ただ一人のためのギャルソン2』(オーナー登場) |
「…ね、あそこでコーヒー煎れてるヒト、格好イイよね」 「うん。シルバーフレームの眼鏡がちょっと知的なカンジ?」 「カフェ専門かなぁ…オーダー取りに来てくれれば良いのにvv」
テイクアウトの客は相変わらずひっきりなしだが、イートインの方はそれなりに落ち着いた。 すると、客も見慣れぬ店員が気になるのか、こそこそと視線と話題がカウンターに集中していた。
「すいません、これで向こうのカップ類全部下がりました」 「おう。…じゃあ次、モンブランとコーヒー」 「ええと……どのお客さまでしたっけ?」 「………(頭痛)。…黒のタートトルネック着たショートの茶髪」 「…ああ!はい。わかりました」 普通ならそのまま客にケーキとコーヒーを運ぶのに、千景はそのままじっと緒方を見つめた。 「…何だ」 「あ、あの…緒方さんが持って行かれませんか?洗い物は、私がしますから……」 「あ?」 「…あ、あの……お客様も、何だか緒方さんのことが気になっているようですし……」 緒方は下げられたカップをざっとだけ流しながら、苦笑した。 「嫌だね」 「あ……はぁ……」 「コーヒー冷めるぞ。とっとと行って来い」 「は、はいっ!」 ぎくしゃくと千景はフロアに戻り、客は供されたケーキに歓声を挙げていた。
(……それにしても遅いな………) 連絡してみるか、と携帯を取り出したところで、ポゥン♪とメールの着信音が鳴った。
【……ごめん。トラブル発生。家を出るの、18:00を過ぎそう☆ヒカル】
やれやれ、とため息をつきながら、緒方はふと、煙草が欲しくなった。…しかし場所が場所だけに、そうもいかない。
「緒方さん?どうしました?」 「…ああ、ちょっと外で煙草吸ってくる」
携帯と煙草とジッポを手にしたまま、緒方は視線がまつわりつくフロアをずかずかと横切り、店の外に出て行った。 途端に吹き付けるのは、12月の冷たい風。 「――っっ」 冬の夕方は、次第に辺りを影らせてゆく。 煙草に火を点けて一息ついてから、緒方はメールの返事を打った。
【何時になってもかまわないから、店まで来い。めったに見ないものを見せてやるから/緒方】
送信終了の画面に、何故かほっとする。
……そんな緒方の視界に、ド派手な赤のフェラーリが近づいてきて……停まった。 「――何でオマエがウチのエプロン付けて店の前にいるんだ?!」 中から出てきた怪しげな青年サンタに、緒方はふん、と一瞥をくれてやる。 「ようやくのおでましか。エセサンタ」 「な……なんだとぉっ!このクリスマスの幸せの象徴、ケーキを配達するサンタクロースに向かって似非とは何だ!似非とは!!」 緒方は煙草を吸うと、わざとその煙をサンタに向かって吐き出した。 「金儲けも結構だがなぁ、店で必死に客をさばく店員のために、臨時のバイトを雇ってやる甲斐性もないのか、しみったれオーナー」 「な…な…な……誰がしみったれだ!誰が!!」 携帯用の灰皿に吸いかけの煙草をねじ込んで消すと、パチン、と閉じる。 「…ほう?違うというのか?」 「おおよ!!今夜の俺はサービス精神あふれるサンタだぜ!」 気張るサンタを置き去りに、緒方は店に戻ってゆく。 「無視するなーー!!」 橘の声に、緒方はうっそりと微笑んだ。 「…客の入りすぎでパニック起こして崩壊寸前だったそっちのギャルソンを助けてやった恩人には、どんなお礼をしてくれるのか……サンタとやらのサービス精神に期待しておいてやろう」
「………………はい?」
ひとり路上に取り残されたサンタは、北風にひとり。
「おい!!ナニ突っ立ってんだよオヤジ!!二回目の配達のケーキ、もう出来てんだからな!さっさと積み込んで運ばないと配りきれねーだろ!!」
エージに怒鳴りつけられるまで、橘サンタは状況がつかめず立ちつくしていたのだった。
「ああ、緒方さん。休憩はもういいんですか?」 「ああ」 一段落ついた小野がカウンターの方に顔を出していたのに軽く挨拶を返した。 「小野さん、緒方さんの煎れるティーオーレ、とってもおいしいです〜vv」 「よかったねぇ、千景さん」
なんとなく、ほのぼの。
「…何か飲むか?」 「いえ、舌の感覚が刺激されるのはまずいから…仕事中はミネラルウォーターだけにしているんですよ」 にこにこと微笑む小野に、緒方はわずかに唇を笑いの形に歪めた。 「流石、プロだな」 「いえいえvv…あ、でも外で積み込みやっているエージくんに、薄めの緑茶、煎れてあげてもらえませんか?」 「分かった」 背もたれのない小さな丸椅子を持ち出し、緒方にも勧めながら自分も腰掛けた。何時間かぶりに座れて、ひと息つく。 「今日、進藤くんは?」 「遅れてくるらしい」 緒方はコンロにかけてあるやかんのお湯が沸騰しているのを見て、火を止めた。湯のみにお湯を入れてから、一度お湯を捨て、その湯呑みに、茶漉しにを置いて茶葉を入れお湯をひたるくらいまで注ぐと、そのまま放っておく。 「…じゃあそれまでは、バイトですか?」 「ま、コーヒーを煎れるくらいならできるからな」 「おかげで大助かりです〜〜」 千景がうんうん、と頷いた。
「すいません、ケーキ、予約していた荻谷ですが……」 会社帰りらしいサラリーマンが、ショーケースの前に立っていた。そろそろこういう客が増える時間帯だ。 「はい、いらっしゃいませ……」 ふわりと微笑んで小野が応対する。男相手だけにためらいはなかった。そのおっとりとした微笑みに、何故か客の方が頬を赤らめる。 (おや……カワイイかもしれない…) そんな不埒な事を考えつつ、パティシエはにこやかとケーキの箱を彼に渡していた。
「うえ〜〜〜っっ!外、冷えてきたぜぇ〜〜〜」 「お茶入れたぞ」 「お、サンキュ♪」 エージが喜んでお茶を一口飲み込むと、厨房の方から声がかかった。 「エージくん!ちっょと手伝って!」 「はいっ!」 師匠の声に、エージはすぐにとんでゆく。…これから、夜のピークのはじまりだ。
「千景、俺、二回目の配達行ってくっからな〜」 「はいっ。…あ、オーナー、これをどうぞ!」 「…あ?魔法瓶?」 「緒方さんが。中はコーヒーだそうです」 「え」 カウンターを振り返ると、緒方がネルドリップを洗っているのが見えた。 視線に気がついたのか、ふ、と顔を上げる。 「オイ、まともに飲めるモノなんだろうな?」 彼はニヤリと笑った。 「さあな」 …この友人のふてぶてしさは、相変わらずだ。
苦笑いしながら、サンタの衣装が似合わないサンタは、魔法瓶を持つ手をひょい、と持ち上げると。 ……何も言わずにカウベルを鳴らして、クリスマスイブの夜へと向かって行った。
2004年12月13日(月) |
『ただ一人のためのギャルソン』(オガヒカ。ヒカル18歳) |
12月24日。クリスマスイブ。 この日のケーキ屋は、とにかく忙しい。
ケーキの味と姿の美しさ、そして会社帰りに寄っても大丈夫な深夜営業の評判は、クチコミから始まり雑誌、テレビ等にも紹介され、そのため、「西洋骨董洋菓子店〜アンティーク」は、例年以上の忙しさをみせていた。
開店と同時にクリスマスケーキを求めにくる客が列をつくり、イートインのコーナーにもカップルや女性客がひしめいてた。 普段であれば、どんなに客が混もうとも、舌先三寸、口八丁の手八丁、営業用スマイルで鮮やかにさばいてしまうオーナーがいるのだが、今日ばかりはそうもいかない。 彼は上機嫌で、サンタに扮したままソリならぬ赤いフェラーリでケーキの配達に行ってしまった。 チーフ・パティシェの小野はケーキの製作にかかりっさきりになり、助手のエージは主に窓口で持ち帰り客の応対をしながら、師匠を手伝っていた。 ――そうなると、店の中の業務はすべて……小早川千景の双肩にのしかかってくるのだが。
「ねぇ〜、注文とってほしいんだけど〜〜」 「すいません、もうしばらくお待ちください」 「今食べたケーキ、持ち帰りできる?」 「すいません、もうしばらくお待ちください」 「お勘定いいかな〜」 「すいません、もうしばらくお待ちください」 「コーヒーまだ?」 「すいません、もうしばらくお待ちください」
………のしかかりすぎて今にもツブれそうな様相である。
(――若―――!助けてください―――!!) 心の中で滂沱の涙を流しつつ、サングラスのギャルソンは、一歩歩くたびに謝り倒しながら動いていた。
そしてまた、カランコロン、と無情なカウベルが鳴る。
「すいません、もうしばらくお待ちください」
オウム状態の店員からは、「いらっしゃいませ」の言葉すらも出てこなかった。
「…何だこの惨状は」
長身の男は、慣れた風にコートを脱ぐと年月の経った艶のある外套掛けにかけ、千景のから回りっぷりに眉をひそめた。 ヒカルが、待ち合わせはココで……と指定してきたので、不承不承来てみたが、待ち人もおらず、店内には壊れたレコードのように同じ言葉しか発しない男がマゴついている。
「ちーちゃん、あとでおしぼりちょ〜だい」 「すいません、もうしばらくお待ちください」 「ここ、エスプレッソってできるの?」 「すいません、もうしばらくお待ちください」 「さっき頼んだバフェまだ〜?」 「すいません、もうしばらくお待ちください」
そう言いながら、千景はトレイに乗せたコーヒーをこぼさぬようバランスをとるのに必死だ。
――ぷち。
緒方の頭の奥で何かが小さく切れ、ずかずかとカウンターに入ると手早くエスプレッソマシンをセットし、その間にカップにブレンドコーヒーを注いでソーサーにスプーンを添え、そのそばにミルクピッチャーを置き、ミルクパンに牛乳を入れて火にかけた。 「ええと、次はコーヒーふたつ……」 「ほらよ」 「えええ?!」 千景は驚きのあまりすっとんきょうな声をあげた。 先程まで、誰もいなかった筈のカウンターに、緒方が上着を脱いでカッターシャツをまくりあげ、手近にあった黒のシェフエプロンを身につけていたのだから。 「待ち合わせのついでだ。ヒカルが来るまで、コーヒー煎れるくらいならやってやるよ」 「…でもあの、エスプレッソという注文もあるんです〜」 「今できたぞ。そら持って行け」
棒立ちの千景の手からトレイを取上げ、コーヒーふたつとエスプレッソひとつ、そしてそのぶんの伝票をソーサーの下にねじ込んでやる。 「カップが小さいのがエスプレッソだ」 「は、はい〜〜」 千景がぎくしゃくとコーヒーを運んでいくと、緒方は沸騰しかけた牛乳の火を止め、紅茶の葉っぱを放り込んでから蓋をした。ついでに紅茶ポットに何杯か紅茶を入れ、電動ポットからお湯をそそぐ。それにティーコゼーを被せた後、水につけてあったネルドリップを取り出してかるく水を絞り、コーヒー用ポットにセットした。コンロにかけたやかんのお湯が沸いているのは確認済みだ。既に挽いてあるコーヒーを適量、ネルドリップに入れる。
「ちぃ〜、パフェとザッハとチーズケーキあがったぜ〜〜。大丈夫かぁ?」 厨房からひょい、と顔を出したエージが見たのは、千景と似ても似つかぬ、亜麻色の髪をした目つきのするどい常連の姿だった。 「あれ、緒方さんじゃん。どしたの?」 エージの問いに、緒方は紅茶を紅茶用のカップに注ぎながら苦笑した。
「アレを見せられたんじゃなぁ……ゆっくり客にもなってられん」
イートインのフロアには、おたおた、ヨロヨロ、客の応対をする大きな図体のギャルソンの姿。 それもそうか、とエージは肩をすくめた。 「…じゃ、コレも頼まぁ。やっと持ち帰り客の行列がなくなったから、オレ、急いで先生手伝わねぇと!」 エージはパフェやケーキの乗った皿を緒方に押し付けると、ニカッと笑った。
「サンキュな!後で、俺の作った焼き菓子持ってけよ!」 「美味ければな」 「ばーか。不味いワケねーだろ!」
可愛らしい容貌の割にやや柄の悪い見習いパティシェは、ぐっ、と親指を立てると、厨房のドアに消えていった。
2004年12月07日(火) |
映画に行ってきました。 |
もぉ年内に行くには今日しかねぇ! …とばかりに友人と映画『ハウルの動く城』を見に行ってきました。 なんかほのぼのと良い映画でしたvv ほほえましかったですね。 木村クンの声優、なかなか良かったですよvv見るまでは心配してましたが、どうしてどうして、しっかり演じてます。…ってか、最初の発声、一瞬彼だとは分かりませんでしたから。
…さて、これ以上書くとネタバレなんで書くのはひかえようと思うのですが……。
すみません。
ひとつだけ書かせてください。
金髪!!
金髪アキラの集団が!!!
――あーすっきりした。
宮崎監督、最近おかっぱがマイブームですか……?
2004年12月04日(土) |
黒板に描かれたナマSD |
ネットのニュース見ていたら目に付いたのですが、 12月3日から5日の三日間、神奈川に、あの、湘北高校が出現したそうです。
「一億冊ありがとうキャンペーンファイナル」というイベントなのですが。 神奈川県の廃校になった県立高校を会場に行われているそうです。
そして!! あのゴッドイノタケ先生御自ら、
教室の黒板にチョークで
ショートコミックを描かれている
…というじゃありませんか!!
なんか、すごく似合いますよね。 あの『スラムダンク』という作品と、少し古びた廃校の体育館……。 響いてくるドリブルの音と、フロアを踏みしめる甲高いシューズの音や、少しほこりっぽい匂い…… 教室に書きなぐられたのは、授業の消し忘れであったり、落書きだったり……。
紙に描かれたあの「作品」はもちろん、素晴らしいんですが。 「黒板」という、とても身近なものに描かれたことによって、すごくスラムダンクの世界が近くなったような気がします。
そして。 私が見たニュースには写真が掲載されていて、 「わーい、久々の花ちゃん〜〜vv」 …と上機嫌でクリックして拡大してみたらば。
流川。
何故流川。
まてコラカメラマン、何で主人公撮ってこんのじゃ〜〜!! …と叫んでみても。 見事に流川しか写ってませんでした。(号泣) うっうっうっ(ToT) コレは新手の焦らしプレイですか? それともナマの花ちゃん見たけりゃ、神奈川行けってことデスカ?
……うーむ。明日休みだったら真剣に検討したかもです(苦笑)。
スラムダンク一億冊感謝記念サイトにある、このイベントの紹介文も良かったです。本文まんまじゃないんですが、こんな感じ 「ささやかだけど、三日間だけ湘北高校が現れる、そんな時間になりますように。 もちろんそれが綾南高校でも、海南高校でも。 ――あなた自身の高校でも。」
私が注目したのは、勿論2行目です。 綾南高校でもイイんですかvvv
…現地には行けないけれど、どこか、廃校の古びた体育館で、仙道と越野が、楽しそうにバスケをしている…… そんな幸せな妄想に、ちょっとひたることができましたvv
サイト内のすみっこでこそこそやってたTrifle。
実はこの中身、以前web拍手やってた時に、拍手送信後用の画面用にぱらぱら書いていたものです。 一度は載せたものだけに、掲載するのにチトためらいもあって……更新履歴にも載せず、こそこそやっていた訳なんですけどね。 今回載せたもので、一応保存しておいたモノは掲載を終わりました。
…ただ、妙に気に入りましてね。 この、すぐに書ける会話だけのSSSという形式が。 別世界という気楽さからか、雰囲気もほのぼのして。
文章を書くのはもちろん大好きなんですが、このように、思いつきで散文書きなぐるのも、楽しいんですよ。(10数分で書けるしねぇ…)
そんなこんなで。 どっかから100題借りて、SSS部屋、立ちあげる予定です。 場所は……おそらくTrifleと同じ扱いになるのではないかと。(笑) 何でTrifleにしないのかというと、人様のサイトから100題お借りするのに、その置き場所の名前が「Trifle」じゃちとまずいからです。(苦笑)
Trifleの中身は、オガヒカばかりでしたが。(たまに女の子ヒカルも混ざってました…会話だけだけど、区別ついた方がいたらすごい) こんどのSSS部屋は、題が100あるだけに、オガヒカ、オガヒカ(女の子)だけにとどまらず、精良ヒカルや他ジャンルも書くかも……です。 でもあくまで会話だけで成立させるつもりなので、口調と雰囲気で、誰が誰だがお察しくださればありがたいかなと(笑)。
まだ書いてないネタもあるのに、コンテンツばかりが増えますねぇ……。
まぁいっか! 楽しいから。
せっかくの自分のHP、思い付いた事はやらなきゃ損だ!(ひらきなおり)
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