petit aqua vita
日頃のつぶやきやら、たまに小ネタやら…

2004年09月30日(木) 『雨やどり3』(マイフェアシリーズ)

久しぶりに身に付けた着物は、丁度良い具合に着古してあって、さらりと肌に心地よかった。柄もそんなに奇抜ではなく、縞の模様が落着いている。
どうやら誰かのお古らしい。
これなら、返す際も気軽にクリーニングに出して返せそうだ……などと、正夫はちょっと小市民的な思いを抱いていた。呉服店だけに、高級品などを着せられたら買い取りを迫られるのではないかと、冷や冷やしていたのも確かなのだ。

ともかく、あの女将にお礼を言わなければ…と、正夫は店先へと続く廊下を歩いていった。
「あら、もうお上がりですか」
するとその部屋からタイミング良くこの店の女主人が出てくる。
「あ、はい。どうも、風呂までいただいた上に着替えまで…ありがとうございました」
「いいんですよぉ。ウチの父の着古しで申し訳ないくらいです。今麦茶お持ちしますからね。中に入ってお待ちくださいな。ヒカルちゃんもそこで待ってますよ」
にっこり、と彼女は微笑むと、ぱたぱたと奥へ姿を消してしまった。客商売…というより、本当に人をもてなすことが好きなのだろう。丁寧なのだが、どこか下町の香りがする応対に、少しだけ親近感が湧く。

(…それにしても……ヒカル、どうしてこんな呉服屋の女将と知り合いなんだ?)

普段の吾が娘の格好や言動、どこをどうとっても「着物」などという日本文化とは結びつかない。活発で、明るくて、じっとしていない……彼が目にするのは、制服以外はジーンズ姿とか、ジャージとか、そんなものばかりだ。今は中学も卒業してしまい、そのまま囲碁の棋士になんぞなってしまったので、ある意味「女の子らしく見えた」制服姿も、見られなくなってしまった。
何とかどうにか娘らしくならないものかと、妻とため息をついたのは、かなり以前からなのだが、いまだにソレは、進藤夫妻の悩みのタネでもあった。
十七歳……年頃の娘を持つ親の悩みとしては、ちょっと世間ズレしているかもしれないが、親として正夫はそれなりに悩み、そしてこれまたお約束通りにその悩みの原因たる娘はそんなことなど全く理解していなかった。

「あー!!そっちに打つかぁ!」

部屋に入った途端に耳に入るのは、聞き慣れた……まるで男の子のような言葉で叫ぶ、娘の声。
しまった、とばかりに頭に手をやるヒカルは、そのまま無造作にがしがし、と髪をかきまわす。着物を着てはいても、その所作はまったく少年のものと変り無い。
「…騒いでいる暇があったら早く打て。十秒碁の意味がないだろうが」
「わかってるよっ!」
…そしてヒカルと碁盤をはさんで向かい側に座っているのは、先程下着を持ってきてくれた…あの青年だった。
ヒカル相手ということで、先程の自分に対してよりも、若干年相応……というかぞんざいな言葉づかいになっていた。ぱち、と微かな音を立ててヒカルが黒石を置くのを無言で見つめると、すかさず碁笥から白石を人差し指と中指で器用にはさんで、ぴしり、と打つ。まさしく、「打つ」とか、「指す」という言葉がぴったりの所作だった。胡座を掻いて座っているのに、崩れたような感がない。
そんな雰囲気を感じていないのか、慣れているのか、ヒカルは飄々として次の手を打つ。

「そういや、珍しいよねぇ」

ぱちり

「何が」

ぱちり

「緒方さんのジーンズ姿なんて、オレはじめて見たよ」

ぱち

「こんな大雨の日に呼び出されて、スーツで来る訳ないだろ」

じゃら……ぱちり

「いや、緒方さんもジーンズ持ってたんだなー…って」

ぱち

「水槽の掃除をするつもりだったからな…作業着だ」

ぱちり



正夫には、囲碁に関してはまったく分からない。
しかし、娘はれっきとしたプロになり、良い成績をおさめているという。
家にいる「娘」からは、まったく想像もつかない姿だ。
しかし。

こうして、「大人」である青年と向かい合い、臆することもなく、自然に碁盤に向かい、碁を打っている―――。

緒方もヒカルも、本気で打っている訳ではない。手遊びとも言える、気軽な早碁だ。

――しかし、正夫はヒカルの姿を見て、普段とは違う、「棋士」としての娘の姿を見たような気がした。





「……あら?まだ中にお入りになってないんですか」
正夫がふたりの姿を見つめている間に、美登里が、麦茶のグラスとポットを持って台所から帰ってきた。
「あ、その……」
正夫の様子に、ちらり、と美登里が中の様子を伺う。
「やれやれ…またかい?」
彼女は、正夫に向かって苦笑いを浮かべた。
「ヒカルちゃんも囲碁は大好きなんですけどねぇ…。ウチの甥っ子も、輪をかけて囲碁バカなんですよ。打ち始めたら、近くに誰が来ようと気がつきゃしないんですから。気にせずにお入りくださいな。お風呂上がりの麦茶、召し上がれ」
言うだけ言ってさっさと正夫を連れて部屋に入ると、流石に二人も気がついた。

「…あ、父さん、お風呂あがったんだvv」
ヒカルが無邪気に碁盤から気をそらしたのを合図に、その対局は打ち掛けとなったようだ。
ヒカルは無邪気に父の隣にぺたん、と座るとね美登里が渡してくれる麦茶のグラスを受け取った。ヒカルは美味しそうに一気に飲み干す。
「おいし〜〜〜〜♪ね、美登里さん、も一杯もらっていい?」
「あいよ、いくらでも」
「…おいおい、ヒカル……」
「飲んでみてよ父さん!美登里さんの煎れてくれる麦茶って、ホントにオイシイんだ!」
ヒカルに薦められて、正夫はグラスの麦茶を一口飲んだ。…確かに美味い。ほどよく冷やされたそれが、風呂上がりで乾いたのどに染みわたるようだ。そして、口の中にふわりとのこる、香ばしい香り。
「本当だ……美味い」
気がつけば娘同様に飲み干していた。
「まぁ、薦め甲斐があること」
ころころと微笑みながら、美登里は空いたグラスに麦茶を注いだ。

「精ちゃん、あんたもどうだい?」
女将のその呼び方に、彼は少し眉をひそめた。…確かに、こんな立派な大人になっておいて、この呼ばれ方は気恥ずかしいのだろう。
「…いや、後にしますよ。ところで、――進藤さん」
彼は、正夫の鞄を目の前に持ってきた。
「鞄の外の水気は殆ど取れたので、中身を開けても大丈夫だとは思うのですが……一応、確認した方が良いかもしれませんよ」
「ああ…そうだね。ノートパソコンも中に入ってるし」

パソコン、と聞いて、ヒカルが目を輝かせた。
「パソコン!父さん、パソコン持ってたんだ!」
ヒカルは何の気なしに父の鞄に手を伸ばす。

「――待て!進藤」

びくり、と、伸ばしかけた手が止まる。
大きくはないが厳しい声の方に目をやると、緒方が、声と同じように厳しい表情でヒカルを見ていた。

「精ちゃん、何を……」

「これは進藤さんの大事な仕事用の鞄だ。会社の重要な書類やデータが入っていてもおかしくない。そういうものに、たとえ父親のものとはいえ、本人の了解もなしに先に開けようなんて事はするものじゃない」
「…う……うん………」
「お前だって、大事な棋譜を打っている最中の碁盤を、人に荒されたくないだろうが。それと同じだ。…分かるな」
「うん………」
ヒカルはうつむいた。しかし緒方は容赦ない。
「お父さんに、何か言うことがあるんじゃないのか」
「…うん。…父さん、ゴメン。勝手に鞄、開けようとして」

正夫はそれこそ驚いていた。
確かに、仕事用の鞄だし、仕事に必要な書類が入っているのも確かだ。
しかし、どうせ娘が見たって分かるまい……。そんな気持ちでいたのだ。ヒカルはきっとパソコンが見たかっただけなのだから。乱暴に扱われるのは困る……と、思いはしたけれども。
しかし、目の前の青年は、ヒカルにそんな「甘え」を許さなかった。
「子供」ではなく、ヒカルを一人前の人間として見ているからこそ発した言葉だろう。
そして、ヒカルはそれを認め、素直に持ち主の自分に謝っている。
…その、何もかもが、正夫を驚かせていた。




「……余計な事を言って、すいません」
緒方は正夫に頭を下げた。

「美登里伯母様、店の車は裏手でしたね」
「……あ、ああ……そうだよ」
「店の前まで廻してきます」


緒方は、そう言ってその場を後にした。




2004年09月27日(月) すわ浮気?!(今週の薫ちゃん)

以下ネタバレなんで、覚悟決めた方は反転ヨロシク。




いやびっくりしましたよ。
あまりの薫ちゃんの愛らしさにクラクラきてまして、
「乾さん一緒に来てないの?!乾さん!!」
と大騒ぎしていたのです。

…そうしたらアナタ。
見るからに「やられ役系」キャラたちが、立海大付属をこきおろし……。義理堅く、そしてプライドの高い薫ちゃんは義憤を燃やし、一気に殴る殴る!!
(暴力沙汰で出場停止処分とか考えないあたりがやっぱり薫ちゃんですvv)

そこに止めに入ったのが、柳生……。

そんなこんなで、ダブルス対決。

ふたりはブーメラン、レーザービームをそれぞれ決め……。
やられ役キャラたちは、データを取って退散するのですが。

よくよく見たらば。

薫ちゃんが立海のユニフォーム着て。
柳生が青学ユニ着てたんですよ!!

……ちくしょう、
「薫ちゃんのレギュユニ姿〜〜〜っっvv」って、一瞬たりとも萌えたこのオレのときめきを返せ!(不覚!)

しかしだ。
コトの成り行き上とはいえ、
あの人見知りの薫ちゃんが、素直にこの入れ替わりに応じた?!
プチ潔癖症の薫ちゃんが、自分のユニを他人に着せ、しかもゲーム済んだらその場で着替えてる?!
真昼のストリップ(←違う)に鼻血吹きそうになりつつ、はたと私は凍り付いた。

薫ちゃん、いつレーザービーム会得したのさ?!
まさか、一緒に練習したとか?!たまに一緒に会ってるとか?!
…それだったらあの息の合い方も、ユニ交換に抵抗しなかったこともまだ分かるのよ。
――ってこらまてぃ。

薫ちゃん、浮気デスか?!

ダーリン(乾)が最近柳とつるんで(←創作もいいとこ)かまってくれない(←いやだから妄想)からって、柳生とイイカンジになってたんですか?!
……ん?でも薫ちゃん、浮気できるほど器用でもないし………。


大変だ乾さん!!
プロポーズしたからって、油断は禁物!
柳生は知的な眼鏡の似合うスポーツマン、モロに薫ちゃんの好みにジャストミートだぞ!!
変装という特異な趣味の持主でも、乾サンを相手にしてた薫ちゃんなら、むしろまっとうな趣味に見えるはずだ!(ここまで言うか)
いやむしろ薫ちゃんの将来と幸せを考えるなら、このまま柳生とゴールインした方が良いような気までしてきたぞ……!

最後のページ、
「どこか木の影か建物の影で二人の様子を伺う乾さんがいないか」
――と。マジで探しましたとも。ええ。



2004年09月25日(土) 『雨やどり2』(久々の続き〜。マイフェア)

――まさか、こんな所で自分の娘と出くわすとは思わなかった。

……というのが、正夫の正直な感想である。
呉服屋の女将は、彼がヒカルの父親だと知るや、そんな方をずぶ濡れなままにしておけない、さぁ風呂に入れ、と強引に風呂場に連れ込み、閉じ込めた。見ず知らずの他人の家の風呂に入るなど……と抵抗がない訳ではなかったが、ここまで来たら皿まで食らうしかないようだ。
風呂から上がると、自分が脱いだずぶ濡れの服はどこかに消えており、少し着慣らした感のある木綿の着物と帯が丁寧に畳まれて置いてあった。

「…ああ、上がられたんですか。失礼」

不意に脱衣所の簾戸がからりと開かれ、長身の男が姿を見せた。

「いや、こちらこそ……お世話になって」

腰にバスタオルを巻いただけの姿で挨拶するのは少々マヌケだが、風呂までしっかり入った上に着替えまで用意してくれたこの家の者に失礼はできない。
まだ若い男は気にした風もなく、ビニールの袋に入ったままのものを正夫に差し出した。
「此処は女ばかりの家なので……こういうものには気が回らなかったらしい」
多少苦笑いしながら渡されたその中身を見ると、買ったばかりと思われる下着類。…なるほど、そういえば用意されていたのは着物だけだったようだ。
「いや、これは…どうも」
正夫も苦笑しながら、ありがたく受け取る。正直助かった。…そして、下着を持ってきたのがあの女将でなくてよかった。

「着物が面倒だったら着付けさせてもらいますが…どうされますか」
まだ20代半ばくらいの彼は、その年に似合わず丁寧な口調だった。しかも使い慣れた様子で、ぎこちなさもない。
(ウチの新人とはえらい違いだな……)
…そういえば、自分の娘も、敬語のけの字も使えているところを見た事がない。元気が一番、と、少々…いやかなり奔放に育ちすぎてしまったようだ。
「…進藤さん?」
「…あ。その…大丈夫です。家でたまに着ることもありますから」
正夫のその言葉に、彼は苦笑した。
「年下の者にそこまで丁寧にならなくても良いですよ。俺は此処の女将の甥です。どうせあの叔母のことだ、強引にお節介焼きまくってこうなったんでしょう」
彼の表情に、正夫の表情も少しやわらぐ。
「正直……驚きました」
正夫の答えに、彼は心底やれやれ…といった風情でため息をついた。
「…まぁ、本人に悪気はないので…勘弁してやってください。じゃ、着替えたら店の方にどうぞ。進…娘さんも待ってますから」
「ああ、ありがとう」

彼は、また簾戸をからりと閉じて去っていった。

長身で…どこかあの女将と血のつながりを感じさせる整った容姿のせいか怜悧な印象を受けたが、育ちの良さを感じさせる青年だ。しかも年齢を感じさせない不相応な落着きと世慣れた印象もある。営業という仕事柄、様々な人間を見ることが多いが、それでも、初めて見るようなタイプだ。

「学生……ではないな」

――あれは、自分の力で食っている人間だろう。

後で職業を聞いてみようかと思いつつ、正夫は用意された下着と着物を身に着け始めた。






――彼は、まだ知らない。
先程下着を持ってきた男が自分の娘と同じ職業で。
そしてさらに、その囲碁の世界でも数少ない頂点に立つ男だということを。

正夫にとって、彼は親切で気の付く、今時珍しい青年でしかなかったのだ。




2004年09月22日(水) 『手に届く背中3』(女の子ヒカル)

陽が沈み。
最後まで西の空を朱色に染めていた残光も、やがて、藍色の薄闇に溶かされてゆく。もともと高い処だっただけに、風は強かったが、今では身を震わせるほどの冷たさまでも加わっている。

――自分はともかく、まだか細い少女が長居して良いような場所じゃない。


ヒカルも泣き止んだようだし、そろそろ部屋に戻すか、と緒方が考えたところで、ある音が響いた。


何かを踏みつぶして転がしたような、そんな奇妙な音。



「おがたせんせ……」

ヒカルは緒方にしがみついたまま、細い声で訴えた。

「おなかすいたぁ………」


その声が。
あまりに正直な、その声が、どうにもこうにも可笑しくて、思わず、吹き出さずにはいられない。

「………くっくっくっくっ………」

その肩の震えは、ダイレクトにヒカルにまで伝わって、ヒカルはむう、とふくれてバシバシと緒方の背中を叩く。

「笑うことないだろー!対局ですっげ疲れたんだから!!」

「……いや……くくっ…、まぁ、そうだろうな……」

緒方は振り返ってヒカルの頭をぐしゃぐしゃと掻きまわす。
ふくれるその表情は、多少目元と鼻の頭が赤いものの、いつもの少女だ。
好奇心と、無邪気さと、貪欲さと。
それらをすべて持ち得る子供だ。
何故かそれにほっとする。


「何だよー!」

追いすがるヒカルをよそに、緒方は非常階段から出て、ホテルの廊下に入った。風がないだけでも、少しはあたたかい。ヒカルもそれに続く。

「何でもねぇよ。…とりあえず着替えてこい。何か手っ取り早く食えるモノでも差し入れてやるよ」
「えーオレ、ラーメン食べたい!」
「かまわんが……検討はいいのか?」
「へ?検討?」

思いきり「ナニソレ食えるの?」…と言わんばかりに首を傾げるヒカルの額に、緒方はその長い指でデコピンをくれてやった。

「…今、7時5分前だぞ」
「検討……あーーーっっ!!女流本因坊戦の検討!!」

慌ててヒカルは自分の部屋に向かって走り出す。
遠ざかる小さな背中に、緒方は面白がって声をかける。

「――進藤!」
「ナニっ!」

ヒカルは部屋に入るべく、カードキィを取り出していた。


「検討の後でなら、ラーメン食いに連れてってやるぞ。タイトル逃した残念祝いにな」

ヒカルはキィを通すと、思いきり顔をしかめる。

「いらないよそんなモン!!」

バタン!と扉は閉じられる。
予想通りのリアクション。
かまって飽きないとは、まさにこのことだ。


くつくつと笑いながら、緒方はエレベーターに向かう。
そんな彼の背後から、もう一度声がかかった。


「緒方先生!」

ぴた、と歩みを止めた。

「その……ラーメン、緒方さんがどうしても行きたいって言うんなら、つき合ってやってもイイから!」

そしてまたばたん、と扉が閉まる。




「あ〜〜〜、ホント、飽きねぇ奴………」




面白すぎて、ますます目が離せなくなるではないか。

――とりあえず、子供の機嫌を取るために、地下のベーカリーでベーグルかパニーニでも探してきてやろう。
子供を釣るなら、食べ物が手っ取り早い。












「……あれ?」

ヒカルは、スーツを脱ぎ捨てて、履き慣らしたジーンズを履きながら首をかしげた。

「そういや緒方先生、なんでいたんだろ?」




2004年09月21日(火) 『アナタが生まれた この夜に』(オガヒカ)

車のエンジンを切り、外へ出る。
昼間の残暑が嘘のような心地よい風と、虫の声。
緒方は手元の時計を確かめた。

21:38

取材やら何やらで、かなり遅くなってしまった。

「ケーキで機嫌が直れば良いんだがな」

――果たして、そううまくいくかどうか。



中国の棋戦から帰ったばかりの彼は、自宅のマンションに戻らず、祖父の家に帰ってるから、と空港からメールをよこしてきた。
旅行好きな彼の祖父が家を空けると、彼はその間祖父の家に泊まりたがる。気が向けば、祖父がいる時でもその大きな家に滞在し、そこから仕事に出かける。緒方も、何度かそれに付き合った。
最初は恐縮ばかりしていた家の主も、最近ではすっかり馴れて、緒方が泊まると聞けばとっておきの大吟醸を片手に心待ちにするようになっていた。
彼はといえば、祖父に緒方を取られるかっこうになるので多少拗ねるのだが……。いかんせん、彼は酒に滅法弱い。対等に付き合おうとすればつぶれるし、そうでなければ、冷やした麦茶を舐めながら、酒の話で盛り上がる祖父と緒方をうらめしそうにじっと見ているしかない。
…それでも、文句を言いつつも、彼は緒方が祖父と飲むことを止めようとはしなかった。

緒方は知っている。
彼が、彼の祖父が楽しそうに酒を飲んで語る様子を、嬉しそうに…目を細めて、見ていることを。
わがままなようで、子供のようで……その実、深い深い、「慈しみ」のような優しさを持つ恋人。
その風のような軽やかさでもって、誰のもとにもとどまらず、寄りかからない。…しかしとんでもなく寂しがりの…仔猫のような。


そんな彼が、自分の腕になつき…安らぎ、甘えてわがままを言う……この優越感。
その身体を抱きながらも、こちらが包まれているような……この充足感。

すべて、彼を想うようになってから生まれたモノ。

そんな彼が生まれたこの夜は。


今夜のように、虫の音が優しく響く夜だったのだろうか。
今夜のように、涼しい風が頬を撫でる夜だったのだろうか。

ススキが揺れて。
ハギがしだれ下がり、フジバカマが微かに香る。
オミナエシがひっそりと咲き、コムラサキシキブがたわわに実る、秋の夜に。


門を開ければ、出迎えるのは秋の草花。
彼の祖母が好きだったというシュウメイギクやホトトギスの花が、今を盛りと咲いている。

渡された合い鍵で家の中に入ると、玄関には見慣れたオレンジと黄緑のスニーカー。
いつもの茶の間のちゃぶ台には、梅酒の瓶と氷の溶けたグラスが放っておかれてあった。その上にケーキの箱を置いて、首を巡らす。脱ぎ散らかされた靴下やベルトの後を追っていけば……求める存在はそこに居た。

ごろん……と、縁側に半分身を乗りだして、冷たい板の廊下の感触を楽しむように、すこし赤い頬をぺったりとつけている。
伸ばされた左手の先には、大事にしていた筈の鼓が転がったままだ。

緒方はくすり、と笑うと、彼を抱き上げた。


腕になじむ、重さとぬくもり。
腕の中の彼が、もそ…と動き、ほんの少し、緒方のスーツに鼻を押しつけた。

――その時の、彼の表情は。
そこに、暗闇に、ぽつりとちいさな灯りが灯ったような、そんな微笑み。
無意識にでも、その香りが分かったのだろうか。
彼を包む、その存在の……。


緒方は、たまらなくなって、恋人の頬に自分の頬をすりよせた。
こんな、想いは……こんな、心は……彼が生まれたからこそ、生まれたモノ。


「ヒカル………」


お前が生まれたから、自分はこんなにも……変わることができた。
お前が生まれたから、自分は愛することを…その幸せを、知った。

感謝を。
ありったけの感謝を。

お前が生まれさせた、両親、祖母、そしてはるかに続く人々に。
天文学的な確立で「お前」となった、その運命に。
「あの時」お前と出会えた、偶然に。
お前を愛することができる、奇跡に。


目に見えない、しかし確かに此処にあるものに捧げよう。


それらが全て集まって、腕の中で眠るヒカルに。



「感謝する……ヒカル。此処に、お前が生まれてきたことを」






――アナタが生まれた、この夜は。


お前を抱いたまま、眠りにつこう。


――アナタが生まれた、この夜は。


散らかした部屋の片づけは、明日でいいから。


――アナタが生まれた、この夜は。


使い慣れた、洋間のシングルベッドで。


――アナタが生まれた、この夜は。


遠く、近く響く、虫の音色をうとうとと聞きながら………。






――アナタガウマレタ、コノヨルニ。








2004年09月20日(月) よくよく見てみれば……!

体調崩してろくろくネットにつないでなかったんですが。
よくよく見てみたら、私、三年前の今日にサイト立ちあげたんですねぇ……。

……ヒカルの誕生日やん。

当時、確か笛にどっぷりで、まったく興味を示していなかったような気がするヒカ碁……。
今じゃ一番作品数が多いという(笑)。

す〜っかり忘れてたので、何かしようにも何もしようがないのですが。
気付いたからには何かやらないとダメなような気がしてきた(何じゃそら)

腹痛・腰痛・偏頭痛、三重苦で過ごしてしまった連休なのですが。
それもおさまってきたので、SSSくらいなら書けるかな……。



2004年09月17日(金) 『手に届く背中』2(女の子ヒカル小ネタ)

さっきまで戦いの場だった和室は……今は、ひっそりと静まりかえっている。
寂しさもあるが、今は何故か、その方がほっとした。

「着替え…なきゃ」

いつもは着ないスーツが、何となく息苦しい。
早く部屋に戻って、いつもの服に着替えてしまおう。
――そうすれば、また、「いつもの自分」に、戻るから。
ヒカルは、痺れがおさまった足に力をいれて、ゆっくりと立ち上がった。


運が良いことに、エレベーターはすぐやってきたし、誰も乗ってはいなかった。
自分の部屋の階のボタンを押した後、はふ、と一息ついて、ヒカルは壁にもたれかかる。


「さいぃ……負けちゃったよ………」


自分でも意識しなかったような弱々しい自分の声に、ヒカルは自分で驚いた。

――勝てなかったのは事実。
――自分のミス。
――もっともっと、強くならなければ、届かない。

ふと、エレベーターの中の鏡を見ると眉の下がり気味の、泣きそうな、弱い弱い自分の姿。

「いけない」

――こんなことで、こんな顔をしちゃいけない。

『……泣かないで』

――また、心配するから。

『……どうか笑って……ヒカル』

――せっかく、自分の笑顔が好きだと言ってくれたのだから。

『……あなたが笑うと、私まで嬉しくなります。…ふしぎな子ですね……ヒカルは』

――こんなところで、こんなことでとどまっていては。

ますます、届かなくなってしまう。
遥か高みに消えてしまった、あの、後ろ姿に。


その時、突然ポーン、と明るい音がして、エレベーターが止まった。
もう着いたのかな……ぼんやりと、扉がゆっくり開いていくのを眺める。

「―――!」
「進藤?」

扉の向こうに立っていたのは、白いスーツの、長身の男。
見覚えのある人物の登場に、ヒカルはパニックを起こしかけた。

(――嫌だ――――!)

反射的にそう思って、ヒカルは扉を閉めるボタンを押す。
見られたくない。
……今の自分は……誰にも。
もう少し。もう少し時間があったら……大丈夫。いつものように、笑えると思うから。
――だから、今は。


しかし、ヒカルのそんな願いは、閉じかけた扉を掴んだ大きな手によって、阻まれる。
「……随分な態度じゃないか…。挨拶もなしか?え?」
もう一度開いたエレベーターは、にやりと笑う緒方を迎え入れる。
「コンニチハ」
ヒカルはぷい、と顔をそむけながら挨拶の言葉を口にした。
彼女のそんな様子に、緒方は眉をひそめる。
――この表情は、どこかで……見た。

「おい、進藤」
緒方がヒカルの髪に手を伸ばした時、ヒカルはとっさにその手を弾き返した。
「さわんなっ!」
そして丁度目的の階に着いたのを良いことに、開いてゆくエレベーターの扉から飛び出す。
今はひとりでいたかった。
――誰かいたら、笑わなくちゃいけない。
それが、かの人が望んだ「ヒカル」
でも、今の自分にはそれは無理だから。
何故だか判らないけど、胸が痛くて、喉が苦しくて、目が熱い―――!

「―――待て!」
しかし手首を掴まれて、捕らえられる。逃げ出さないように、廊下の壁に背中を押しつけられて。
――奇妙な、デジャ=ビュ。
そういえば、以前にもこんなことがあった。
……そして…彼は、何と叫んだのだっけ……。

その時を思い出して、何故かおかしくなった。
(なぁんだ。あの頃から俺、全然成長してないじゃん)
だから……………

「――笑うな」
眼鏡越しで表情がよく見えない彼は、ぼそりとそう言った。
言ってる意味が、よく分からない。
そう思って首をかしげると、緒方はますます眉をひそめた。
「そんな顔で、笑うなっつってんだ」

(そんな顔……どんな顔?)

ますます分からない。考えていると、ばさ、と白いもが頭に被さってきた。
「?」
かすかに香る、男性用のコロンと、煙草の匂い。……そういえば、奈瀬が緒方の愛用の香水について騒いでいたような気がする…。
そんなことをぼんやり思っていると、ぐい、と手を引かれた。


「??」


引っ張られるままについて行くと、やがて緒方は目の前の重そうなドアを開けた。
きしみとともに、目の前に広がったのは。

遥かに周囲の空を染め上げる、茜色の空。
上から、白く、黄色く、そしてゆっくりと地表に向かうにつれて赤みを帯びた朱へと鮮やかさを増して………。
その先には、赤く輝く、夕焼けの太陽。

「…………………」

ヒカルがその景色にぼうっとしている間に、いつしか緒方はヒカルの手を離し、手すりにもたれて地上の風景を見下ろしていた。
「ここなら誰もいないぞ」
「?」

確かに、こんな高くまで螺旋を描く非常用階段に、誰もいる訳がない。

「誰も見てない」
ヒカルは、相変わらず緒方の上着を頭から被ったままで、夕焼けを眺めながら喋る緒方の背中を見ている。
その背中が、すごく近くにあることを、ヒカルは不思議に思っていた。ほんの数歩、踏み出して、手を伸ばせば、届いてしまいそうだ。

――アンナニ、トオカッタノニ――――

(ほんとに……届くのかな)
夢で追いかけたときは、触れる前に、消えてしまったけれど。
ヒカルは、おそるおそる近づいて、そおっ…と彼の背中に手を伸ばした。

ゆっくり、シャツの皺が近づく。
あと少しで、フレル。

その時、緒方はその腕を掴んで、一気に引き寄せた。

「――――!――――」

不意をつかれたのに驚いていると、自分の顔に緒方の背中がぶつかって、もうひとつびっくりする。
驚いた。
本当に、触れたことに。
その背中が、あたたかいことに。
その背中が、消えないことに。



「……笑いたくないのに、笑うな」

その声は、背中につけた耳から直接振動して伝わってくるようだった。




「負けて、悔しくて、腹が立って、むしゃくしゃして、八つ当たりして、見苦しくわめいて、何が悪い」




…今、そんな事を言われたら………
ヒカルは、ひゅっ、と息を吸い込んだ。息を殺していなければ、我慢が、できなくなりそうだ。なにか、せり上がってくる空気のかたまりのようなものを、抑えきれない。
――しかし、緒方はこう言うのだ。

「安心しろ」

煙草を咥え、火をつけたのが気配で分かる。

「――俺も見てない」

――背中を向けているからな。

言葉以外の彼の声が……聞えた、気が、した。



もう止まらない。
必死で抑えていたものが……ぽろぽとこぼれ始める。


「……いい…っ…の…?」


「――ああ」


応えて、緒方は紫煙を吐き出す。
風にあおられて、煙はすぐに彼方に飛び去ってしまう。



そして、夕焼けが薄闇に染まりかえるまで。
ヒカルは泣きつづけ。

緒方は、ヒカルに背中を貸したまま、振り返りもしなかった。



2004年09月15日(水) 『手に届く背中』(女の子ヒカル。設定としたら台風の方)

進藤ヒカルが、負けた。

「女流本因坊戦」第五局。11月の最後の局まで粘った、タイトルがかかった初めての挑戦手合いだった。
プロ棋士となって、二年弱というそれは、囲碁界始まって以来の初の快挙であり、女流戦では珍しく、新聞各紙でも注目を集めていたのだ。
これで彼女が勝てば、間違いなく最年少の女流タイトルホルダーの誕生である。
これを逃してなるものかと、取材陣は色めきたっていた。

――しかし。

「……ありません」

ヒカルは、ゆっくりと俯いて、頭を下げた。
中盤までは、互角だった。
しかし、たったひとつの読み違い。
…それを許してもらえるほど、甘くはなかったのだ。
これまで静かに動静をうかがっていた日下 ナツ女流本因坊は、苛烈なほどの気迫をもって攻めに転ずる。
ヒカルにできたのは、これまで築いてきた陣地を必死で守るくらいで。
……守っていても、もう、勝てないと、分かった。


自らの負けを告げるとき、ヒカルは、手の中の扇子を力いっぱい握り締めていた。

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」

一礼をした後、日下本因坊は勝負師の顔から、穏やかなそれへと戻った。そして、少し俯き加減の、娘のような年頃のヒカルに声をかける。

「タイトル戦って、重いでしょう?」
「……はい。くたびれちゃった」

はぁ、とヒカルもため息をつく。
タイトル戦でも、囲碁サロンの一局でも、ネット碁でも、一局は一局。それに違いないのだ。
しかし今の……これまでの、「女流本因坊」というタイトルがかかった挑戦手合いの、何と重かったことか………。
重なる取材攻勢、人々からの期待と、嫉妬、好奇心。
親しい人から、見知らぬ人にまで寄せられる、それ。

自分は自分。
――そう思ってた。

いつもと変らない自分で。
――そうあるようにしたつもりだ。

なのに、届かなかった。
女流ではあっても、かのひとの称号を冠した、その、頂点に。


疲れと悔しさと放心状態がないまぜになったようなヒカルの笑みに、女流本因坊は過去の自分を見たような気がした。

「足は大丈夫?痺れてない?」
「あー、なんとか……立てます。走れって言われたら無理だけど」
これまで正座していた脚をさすりながら、ヒカルは苦笑いする。
しっくりこない、幼いパンツスーツ姿。きっと、親御さんが心配して用意したものなのだろう。
先程の、一瞬たりとも気を抜けない戦いをした相手とは思えないほどの年相応のヒカルの様子を、日下本因坊は微笑ましく見つめた。



「失礼しますー」
「日下本因坊、防衛おめでとうございます!」
「進藤くん、残念だったねぇ。やっぱりタイトル戦は緊張した?」
口々に勝手な事を喋りながら、どやどやと取材陣や外野たちが入ってくる。
そのあまりの無遠慮さに日下は眉をひそめた。
しかしそれとは対称的に、ヒカルはほにゃ、と微笑んだ。
「へへ……負けちゃいました……//」
ヒカルのそんなあっけらかんとした様子に、今度は大の大人たちが毒気を抜かれる。やはり現代っ子だねぇ、だの、若い子は勝負にこだわりを見せないから…だの、その方が平常心でできるんでしょう、などとの声が聞えた。
ヒカルはその間、頭をかしかしとかきながらにこにこと微笑んでそれらを聞いていた。


「日下本因坊、検討は……」
「ああ、検討ね。食事して、一休みしてからにしましょうvv」
「え」
目を丸くする係員その他一同に、日下本因坊はぱたぱた、と手で顔をあおいだ。
「もう夕方近いし……私もこんな長期戦、疲れちゃったわよ。タイトルの授賞式はどうせ東京に帰ってから日を改めてするんでしょう?」
「あ…はい。その予定です」
「だったら、検討は食事して、ひとっ風呂浴びてから気持ち良くやりたいんだけど……進藤さん?どうかしら」

話の水を向けられたヒカルは、きょん、と首をかしげた。
「…へ?そりゃ……日下先生がその方が良いならそれで………」
「あとは検討だけだし、スーツ脱いで、ジーンズとかジャージ着てても良いわよ」
「――お願いしますvv」
堅苦しい格好に再び着替えなくて良い、その理由だけで、ヒカルは即、日下本因坊の提案に乗った。
あまりにも彼女らしいその反応に、その場にいた一同はどっと沸く。


「それじゃ、七時半に……此処で」

用件を済ませてしまうと、日下女流本因坊はさっさと立ち上がり、その場を後にした。まずは勝者であるタイトル防衛者のコメントを取らないと、と取材陣は彼女の後を追う。



部屋にはぽつんと…ヒカルだけが残った。

地方の旅館で行われた女流本因坊戦最終局………ヒカルは、たったひとりで来ていたのだ。



2004年09月12日(日) ナニかが憑いて(?)る勝ちっぷり

ワールドチャンプはミハエルに決定したし。
ここからはのんびりまったり観戦できるF1イタリアGPでござんす。

いや〜、やっぱり、誰か特定の人のファンやってると、やはり観戦も物騒なんですよ。(苦笑)
周回遅れなんぞがミハエルの前にたむろっていたら、一気にガラが悪くなります(地金が出るともいう……)
ミハエルさえ関与していなければ、他のドライバーのバトルなんかも拍手したりして楽しむんですけどね。ミヒャが絡むと……ははは。
でもホント、ミハエルって、実に応援のしがいがあるんですよねぇ。…あ、最近のフェラーリも。
何というか、一時的に順位落としても、「まだイケる!!」とばかりにプッシュするし、すごく前向き。トップにいても、ファステスト叩き出し、容赦がない。
三味線弾かずに、「とにかく前へ」。「走るんじゃ〜〜〜!!」のミハエルのシュー念がなせるワザというか、何というか……その走りや、チームにまで伝染して特に表現しなくても伝わってくるあたりがなんだろねぃ。(くすくす)
…実際、余裕かまされた方がコワいんですよ。
そういう時に限って、回りますから。ミハエル…。そう、それもほぼ自力で(爆笑)。そうでなかったらイミフメイなポイントでオーバーテイクかまそうとしてラインはずしてふっとんだー、…とかね。
そして乗り手の意志をも反映するのか、壊れますから
あああ、なんて優秀なフェラーリのマシン………。
でも、多少のトラブルくらいなら、ミハエル、走っちやいますから
…んでもって、「こーゆー状況なのになんで速いんじゃアンタは――っっ!!」って、サギのような速さで魅せてくれるから、ミハエルファンはやめられませんvv
そうそう、そんなこんなで順位が落ちたミハエルも面白いんですよ♪


イタリアGPはそんな楽しさに満ちていました。
バリちゃんPP、ミハエル3位でスタートした……のに…………。

ミハエル、渋滞避けるためにわざわざシケインショートカットして、順位落とした上に、
回ってますがな。 (おいおいおい)
14位に後退……。

バリちゃんもタイヤ選択ミスったかズルズル順位落としてピットインしてさらに落として………(ははは……)PPやったのに、5位〜?!

あまりの展開に、しばし呆然☆
お茶持ったままかたまっちまったじゃないかい。


しかし。


ここからが面白かったんですイタリアGP♪

ミハエルは14位に順位を下げましたが。まぁそこから、速さの格の「差」を見せつけんばかりのオーバーテイクの嵐!!タンクが軽くなったらファステスト叩き出し!!
ひさびさに見ましたよ、「前に走るマシンを追い越すことだけに集中しているミハエル」!!もう、こうなったらありとあらゆる手を使ってでも前に走り抜けていくのがミハエルですから!
もうその格好良いことったら!!♪♪
予選で前方のグリッドについたマシンは、たとえ決勝では遅くとも後続は抜けないままにレースは終わる……ような、そんな展開じゃないんです。
たとえ後方にいても、「速いヤツは速いんだよ」の見本のようなミハエルのこの走り!!あああ、これが見られるとは!!う〜れ〜し〜す〜ぎ〜る〜〜♪

バリちゃんも、ピットワークをうまくこなし(すっげ短いショートストップ。三回ストップかます気かい?)、ダンゴなポジションを避けてミハエルの後方で単独走行vvタイムを縮めます♪(グッジョブ!フェラーリ♪)
そんなこんなで前をゆくアロンソ、モントヤ、たっくまんがピットイン。一周遅れてバトン。そんな間にも、跳ね馬は走るよどこまでも♪縮んでる縮んでるvvタイム差縮んでるぞぉぉぉ♪

そんでもってミハエルが最後のピットアウトした時にゃ、4位のたっくまんのすぐ後ろだもんねー♪(いつのまにかモントヤが後退してた……なーぜー?)
現在バリちゃん3位、ミヒャ5位。
――でも、たっくまんを上手く(接触なしで←オイ)かわしてミハエル4位〜♪

――と、思ったら。

2位走行のアロンソがくるりと回ってるよ?!

そして一気にバリちゃん2位。ミハエル3位。

ここでも出るかアゴ電波

アゴ電波の餌食となった、アロンソの身こそあはれなれ………。フラビオのむつかし〜い顔もしっかり映すあたり、ナイスだ!国際映像♪(笑)

そうこうやってる間にも………

ミハエル、ストレートでスリップストリームに入ってバトン抜くし。

バリちゃん、超ショートストップでピットアウトしてバトンの前に出るし。



いつのまにやら地元イタリアGPで、フェラーリ12独占状態〜〜?!
しかも最後の最後で。
やってくれますバリちゃん。
魅せてくれますミハエル。
おいしいトコもっていきましたフェラーリ!!
…まぁ、レースの方はこのままの順位で終了しました。(ホッ。まだ五周くらいあって、フェラーリ2台とも一位二位ってーのは……またぞろ愉快なことしでかすんじゃないかいなと、ちょっと心臓に悪かったのです。)

ほんとにね〜。しょっぱなであれだけポカやって、順位を落としておきながら。なんで勝てるかフェラーリ2台!!
まるで、ナニかが憑いてる勝ちっぷりでした。地元大騒ぎ〜。ティフォシ大狂乱〜。



……さてちなみに、バトンが3位でたっくまん4位。
しかし、バトンがあまり気に食わない私は。
「こけろ!どっかでこけろ!」
…などと、電波を送っておりました。(笑)しかし、もう既に終ってる時間に放映されてる地上波ですからねぇ(苦笑)。
ナニも起きないのがアタリマエ。(笑)



2004年09月11日(土) 『ごろごろ』(思い出したように北城家)

残暑のきつい暑さもやわらいで。
空は高く澄みわたり、遥か向こうに白い雲がちいさく見える。
開け放した窓からは、どこかひやりとした心地よい風がすべりこみ。

「……高耶?」

…気がつけば、娘は氏政の腕に抱かれてすやすやと眠っていた。
そういえば、昼寝の時間であったかと思い出す。
幼稚園がお休みの今日。いつもならめったにいない父親が家にいるのがうれしくて、昼寝の時間だというのに彼女はなかなか寝付こうとはしなかった。
「とうさま!ごほんよんでvv」
そう言ってお気に入りの絵本を持ち出し、自分は当然のように畳の上に座った父親の膝におさまる。
見上げてくる大きな瞳の愛らしさに……つい、娘のわがままをきいてしまった氏政だった。親ばかと弟たちからいくらからかわれようと、この愛しい存在が自分を頼って伸ばしてくる手を素直に取ることを、やめようとは思わなかった。
――以前はそれで、すれ違い、失敗をしたのだから。

立場もあった。感情もそれを許せなかった。
なにもかにもが、がんじがらめになっているようだった、あの頃。
自分も、三郎も。


――それが、今は自らの腕の中で無防備に眠る。全ての信頼と安らぎを預けきって。
ほのほのと、何と幸せな、このぬくもり。


氏政はそっと高耶を抱き上げ、隣に敷いてあった小さな布団に横たえた。
できるだけ静かにしたつもりだったが、タオルケットをかけてやったところで、高耶はむずがるように頭を動かし、うっすらと目をあけた。
「…? …………」
そして、氏政と目があうと、高耶は心底嬉しそうに、ふわぁ、と微笑んだ。つられて、氏政の唇も緩む。
高耶の横に同じように寝転んで、ぽん、ぽん……と穏やかなリズムで体を叩いてやると、高耶はそのリズムに引き込まれるように、目をとじた。

そして、気息正しい寝息が聞えるようになった頃、やがてそのかすかなリズムも、途切れていた。







「…あら、羨ましいこと」
夫と娘の様子を見に来た馥子は、くすりと微笑む。
窓から流れ込む、秋の風。
なんともおだやかな昼下がり。
ちょうど、用事はすませたばかり。しばらくはなにもない。
――ならば。
「ご一緒させていただきましょvv」
彼女は、娘を挟んで夫とは反対側に、寝転がった。
娘と、夫と、よくにた寝顔に、くすくすと笑いながら。

――やがて、そのひそかな声も、聞えなくなる………






「ずるいですぞ。兄上、義姉上」
高耶のごきげん伺いに人形やら絵本やらを抱えてきた北城家の次男坊は、むう、と口をとがらせた。
抱えたモノを置くと、音をたてぬよう、大柄な身体を心持ち丸めてそっと近づく。
ごろん、と横になると。
愛すべき高耶の寝顔に頬をゆるませて。

――そして、健やかな寝息が、聞こえてくる…………





「おや、これはこれは……(笑)」




「たまには…いいかもね」




「……ま、休みの日だしなー」




「仲間に入れてねvv」










秋の陽ほのほの、にちようび。
開け放たれた窓からは、レースのカーテンをゆらゆら揺らす涼やかな風。
しずかな、ひるさがり。


「……………………………」


無表情な老人は、目の前の光景を見て珍しく一瞬固まった。

そこには。

小さな高耶を中心に、その両脇に眠る氏政と馥子。そしてさらにそれを取り囲むようにごろごろと転がる北城家の兄弟たち。

「…………………」

老執事はふ、と一息つくと、踵を返した。人数分の上掛けを用意せねばなるまい。主家の人々の体を気遣うのも、仕事のうちだ。


……ふと、彼は天空を見上げる。
そこには、どこまでも高く澄んだ青空と、刷毛で掃いたような薄い雲があるばかり。

「………ご覧くだされたか?……御実城様」

ぼそりと呟いて。
そして彼は、70になろうかという年を感じさせぬ足取りで、その部屋を後にした。


――屋敷のどこかで、しまい忘れた風鈴が、ちりん、と鳴っている。


まるで、それが応えのように。



2004年09月09日(木) …またかい。(ヤレヤレ)

ウイルスメールが6件も届いていて呆然。
一応、平のところはプロバイダでウイルスチェックし、さらに本体のPCに入れてあるウイルス対策ソフトが自動的にウイルスチェックするのですが。

安全と分かっててもやっぱりキモチワルイですよ。うん。

平のメアドは一応、限られた同人系にしかまわってないはずなので。(それでも出会い系からメールがきていた……何故。今は来なくなったけど)

一週間以内にウイルスチェックをしていない方。
ウイルス対策ソフトを使用されていない方は。

今すぐココ↓に行ってウイルスチェックしてきてください!!

http://www.trendmicro.co.jp/hcall/index.asp

トレンドマイクロのオンラインスキャンです。(スクロールして下の方に、検索画面表示のボタンがあります)
対策ソフトではないので、ウイルスの駆除等はできませんが、今、使っているパソコンがウイルスに感染しているかどうかはチェックできますから。
しかも無料です。
パソコンの健康診断ってヤツですな。

早期発見、早期駆除に、ご協力ください。(ぺこり)



2004年09月07日(火) がんばれ!田臥さん!

さっきニュースで、バスケットの田臥選手が、NBAのフェニックスサンズと契約したことを見ました♪
やったね田臥さん!
…さぁあとは、公式戦に出場できる12人の中に入らなければなりません。

2メートル近い選手がガンガンいるNBAの中で、173センチという小柄な田臥選手。しかしそんな中で、彼の持ち味であるスピードと、キレの良い身のこなしで、大柄の選手をガンガンふりまわし、味方の選手を自在に使ってほしいものです。

高校生の頃からすごい選手だったけど、やっぱりちっちゃいんですよね〜(笑)。
チームメイトの方が背、高いんだもん。

普通なら、諦める材料にしてしまうであろうその身長。
しかし彼はそうしなかった。
そんな彼の強さに、とても憧れます。

がんばれ!田臥さん!!



2004年09月03日(金) ダシに会いたい……!

ベルギーGPでアゴ電波をくらいまくったミシュラン勢がことごとく消えていった、「何じゃこりゃ」通り越して笑うしかなかったF1は、キミィが久々に優勝を決め、ミハエルは二位でゴールして今期優勝が決定。7度目という前人未踏の栄冠を手にしました。

そんなこんなで台風がやってきて、実家に帰るのが一日遅れて。(休日一日返せ〜!)

台風一過の実家に帰れば、屋根がブッ飛んだ叔母の家の片づけと掃除に行ってきました。

友人とも食事してはじゃいでカラオケして、まぁそれなりに楽しかった帰省中。

久々に読んだのは、紫堂恭子の『グラン・ローヴァ物語』。
しかも1巻と2巻。


3巻…続きは、京都に帰ってきても読めずにいます。(近くの本屋にも古本屋にもないのさ)
1巻で主人公が拾ったイヌワラシの仔、デシとダシ。
かしこくて愛らしい2匹の獣。
そして冬の日にダシに起きた悲劇………

異形のモノとなったダシ。
彼が「とーちゃん」と慕ったひとの前に現れることなく……。
闇市でも一緒だった兄弟のデシとも別れ。
たったひとりで。

そんなダシが、「とーちゃん」が岩に閉じこめられる瞬間、まっすぐに飛び込んでいきました。彼のもとに。
気絶した「とーちゃん」の懐かしい匂いをふんふん、と嗅いで。
ダシは「とーちゃん」の懐に擦り寄ります。
幸せだった、幼い頃のように………。


……このシーン、何度も読んだ筈なのに「うるっ」ときちゃいまして。
続きが読みたいんです。
なのに近所には置いてないんです。

あああ。


ダシに会いたい……!


会いたいよぅ〜〜(号泣)。
休日、何の予定も入らなければ京都のマンガ喫茶に突撃決定ですな。


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平 知嗣 [HOMEPAGE]

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