petit aqua vita
日頃のつぶやきやら、たまに小ネタやら…

2003年01月31日(金) ネタ製造期?

…やっとこさ機関誌の原稿を脱稿して、
引続き、別件の原稿の資料さがしにとっかかっておりますが。
ふふふ……気がついたら、二件に増えていた……
「現代の地球環境について、飢・病・戦」編と、
「若い母親、もしくはこれから母親になる人へ向けての子育ての手引き書」
………ジャンル全然違うんですけど……どーせぇっちゅーねん。
仕事だから容赦なく締め切りは来ます。
…でも、通常の仕事も、行事等もおっかぶさってくるんですけど……
それからお茶とー、謡とー、劇とー。
今寮長やってるからこまごました雑用も。

…そんな状況なのにさ。
HP用のネタがぽんつく湧いてくるのはどーしたんだろう……。
止まってたキリリクSSも、2件ほどプロットが立ち、そのうちの一つは下書きまで終了してます。
だいたい、このpetit aqua vita に書き込むSS以外は、私は直接パソコンに打ち込むことをしないので、(…てゆうか、できない…未だにプロットと下書きは手書き。でないとちゃんと形にならないの)書くのが遅いんですが、それにしても、最近のペースはどーしたこっちゃ?!と自分で驚いています。今までが今までだっただけに……ねぇ?(苦笑)

昨日も、例の異色ドリーム小説(笑)の続きががばーっとね、浮かんできて。書きとめるために慌ててその辺の資料の裏紙手に取りましたよ。

友人に話したところ、
「ネタ製造期なんちゃう?あのバスん中で妄想(ネタ)ってた時からさ」
……とのこと。
そうか。やっぱりそういう時期って、あるものなんですかね。
とりあえず、浮かんだぶんは、きっちり形にしたいなと。

さて、次は陰陽師ネタか。どうしてくれましょう♪(くふふ♪)
(↑仕事どーした)



2003年01月30日(木) 魂の叫び(今週のシュート!ネタバレ注意)

せーーーーのっ!


掛川高校、

冬の高校サッカー選手権

優勝おめでとう〜〜〜〜!!!



いよっしゃぁあああああああ!!
ふははははははは!!掛川勝ったぁ!!
神谷さんが勝ったぁ!!
これでヨーロッパへ殴り込みだぁ!!
ルディの所へ行くんだよ♪♪♪(←ちょっと違)



2003年01月29日(水) 『last summer 2』(あとがき?)

…はい、昨日ので無事(?)プロローグ編『last summer』終了です。
要は、ニューヨークに行くまでの出発編だったのですが。
旅立ちまでのエピソードをぱらぱらと書きつづってます。
…文章がぶっつんぶっつん切れてるのはそのせい……ではなく、久々の一人称に私がとまどっているせいです。それと、細かく書こうとすると、ひとつひとつのエピソードがだいたいA4(プリントアウトしたとして)2,3枚くらいになってしまうんですよ。これじゃちっとも本編に進めねー、と、さらっと、エピソードだけを箇条書きみたいにぽんぽんと書きました。
さらっと…読めなくなったのは私の文章力のなさですー(泣)

last summer、「最後の夏」。
越野にとっては、この夏が最後に味わう夏で、それは、ニューヨークに向かう為の旅立ちの夏となります。
本編が『Autumn In New York』なんで、そんじゃ日本出発したのは夏だなー、という単純な思い付き。(笑)

越野の職業がイラストレーター!!(爆笑)無理な設定かなー、と戦々恐々としつつ、しかしやってみたかったのでそのまま決行!!フォトグラファーと迷った挙げ句の選択でした。しかもパステルだよー、水彩色鉛筆だよー。趣味大爆発!!(苦笑)画風モデルは黒井 健さんです。(←だから趣味丸出し)
おかげで、性格設定が、今迄の越野像とかなり変化したような……(トホホ)。その為に、書いてる本人がちょっと違和感を感じています。パロディといいながらも、「もーこりゃオリジナルって言った方が早いかも」って、本人があきらめてますから。(苦笑)

仙道が出てこないのは、私が越野ファンだからですー。(笑)
いえ、ちゃんと本編から出てきますよ。(出てこなかったら大問題)
ただ、彼の職業が決まらなくて、ちょっと困ってます。掲示版にもぐちったと思うんですが、NBAのオーナーにするか?NBAスタジアムのオーナーにするか?それともNBAの選手そのものにするか?年齢設定としては30半ばくらいにしたいので、(もちっと上でもいいか?ここから下がることはないと思うけど)選手の線はちょっと消えかけてますが。NBAスタジアムの中に入ってる、会員制のレストランのオーナーでもいいなぁ。
何故、「年上の金持ち」設定にこだわるかというと、
過去、映画の『Autumn In New York』(ウィノナ・ライダー主演)を見た時、映像は、どこを切り取っても写真になるくらい綺麗だったんです。なのに、とんでもない安直なストーリーに「金返せー!」と映画館で叫んだことがきっかけ。「それなら、今度はパロでもなんでも、納得のいくストーリーで自分で書いたるっ!」…と息巻いた結果が、このSD仙越でのダブルパロとなったのでした。設定はすごくおいしかったんですよこの映画。映画の中で、主人公の恋人役は某レストランのオーナーだったんです。だから、仙道も金持ち設定で……何にしよっかなー♪

相変わらずの仕事スケジュールなんで、いつ最後まで書き終わるか分からないんですが、ぼちぼちと、進めていきたいと思います。

…しかし、真冬に真夏の話書いてるよ。『last summer』(笑)。それで季節表現おかしいのかしら。



2003年01月28日(火) 『last summer 2』(プロローグ2)

パスポートを申請し、ビザが下りるまでの時間、
俺はどうにかこうにか、仕事を片づけることができた。
出来上がったイラストを送った後、
次回の仕事の電話がかかってきたが、それは断わった。
…ようやく、イラストレーターとして名指しで仕事も入り、ひとりだちしかけた時
だったので、「もったいないなぁ」とは思ったけれども。
ニューヨークへ行く俺には、仕事を受けたとしてもそれを最後まで果せる自信がない。
……時間も、ないし。

実際、一度体調を崩し、どうしようもない体のだるさと、背中の痛みに襲われて、パステルを持てなくなった。
机につっぷして、歯をくいしばって痛みを堪える。
何時間も続いたと思っていたが、痛みがやわらいで時計を見ると、10分しかたっていなかった。
病気は、確実に進んでいる。素人の俺にすら、そう自覚できるくらいに。

全く治療を受けていない訳ではない。一応、病院からは薬をもらっているし、定期的に注射も受けている。
放射線治療や、他の治療法もある、試してみる気はないのかと言われたが、俺はそれには首を振った。そして、ニューヨークへ行く事もその時話した。
主治医はため息をつきながら、しかし手早くニューヨークの病院の専門医に紹介状を書いてくれた。日本語もできる奴だから安心していい、と。
――俺、一応英語は大丈夫なんだけどな。
内心そう思いながらも、主治医の心遣いに俺は黙って頭を下げた。

荷物をまとめるのはすぐに済んだ。
多少の衣類と、それからスケッチブック、24色の水彩色鉛筆と、パステル。それから水筆。そんなものだった。
祖父の知人からの話では、服は息子のものがあるから、それを貸すと言っていた。こちらに来るからといって、新品を買うのはやめた方が良い、という忠告つきで。日本人はカモにされやすく、狙われやすいんだそうだ。わざわざ「金を持っています」という格好をすることは、「狙ってください」と言っているのと同じことだという。
その一言だけでも、日本は平和なんだなぁ、と思った。

祖父には、「軽いから邪魔にはならんだろう」と、海苔を持たされた。本当は梅干しを持たせたかったらしいが、俺が嫌いなのを知っているので、あきらめたのだ。
「梅干しでは途中でビンが割れたりしたら大変だしな」…とかなんとか理由をつけて、自分を納得させようとしている姿が可笑しかった。


いよいよ、出発する日の朝。自分の部屋を見廻したが、あまり変わりばえはしない。いつも画材と資料でごっちゃまぜになっている机の上が、妙にきちんと片付いているくらいだ。まぁ、そんなにモノを持っていかないのだから、当然か。
これから、俺はニューヨークに行く。
多分、帰ってこられるだろうけれど、もしかしたら…これが、最後かもしれない。
なんとなくそう思った時、俺は、ふと思い出して本棚のアルバムを引っ張り出した。
そして写真を一枚、その中からはがす。
13年前、祖父が名人位を防衛した時、俺が中学に入学した記念を兼ねて、祖父と、両親と、俺との4人が写っているものだ。家の庭で、確か取材に来ていたプロのカメラマンが撮ってくれたような気がする。
これが、家族の写った最後の写真だった。

「ちょっとセンチすぎるかなぁ」

一人、笑いながら、しかしその写真を鞄の中にしまいこんだ。
ニューヨークに行ったら、まず最初にこの写真を入れるフォトフレームを買いに行こう。そう決めた。


そして、8月の末、残暑が衰えぬ晴れた日に、
祖父に見送られ、俺は、ニューヨークへと旅立った。




2003年01月27日(月) 奇跡的に一個残ってた!

相変わらずつながらない、以前のレンタル日記サイト。
私のページだけでなく、ホストのページにもアクセスできないなんて、何があったんだろー。やっぱ突然落ちたのかしら。

それにしても悔やまれるのは、ぱらぱら書いてたSS。
合計すると、六個くらいあったと思うのですが。

ため息つきつつ部屋の掃除してたら、何と!そのSSのうちのひとつをプリントアウトしたものが出てきたではないですか!!

記憶をたどると、確かそのSSは、友人が好きなCPで、「読みたいからプリントアウトして送ってくれ」という声に答えて印刷したもの。
プリンターの調子がおかしかったのか、何故か2部刷れてしまって、1部は私の手許に残ってたのです!!

こりゃすげーや。今度SSにupしようっと。

ちなみにジャンルは笛です。
異色CPですが、友人にうっかり洗脳されて、定着しつつあります。(もともとみかみんは総受だから…)

功兄×三上
周防×シゲ

……オガヒカといい、年の差カップルに萌えてます♪



2003年01月26日(日) 京都に行ってあれこれと

久々の休み(2週間ぶり…会議のバカー!)、午前中はひたすら洗濯して、寮の掃除しました。
…あ、合間に貰い物の野菜で雑煮作った。
餅があったんで、昨日のすまし汁にだし足して、野菜も足して、ふと思いつきで豆板醤を少し入れてみた。そんで餅焼いてどんぶらこと汁に入れる。
……意外においしかった。
和風の雑煮に飽きた時、試す価値はあると思います。はい。

午後、日曜日は運賃半額なんで、バスを使って京都へ。
謡本とかをまとめて注文してたのでね。
四条河原町の本屋へてくてく。
そこは、お茶とか謡とか能とかお花とか、着物とか香道とか日本の伝統芸術に関する本を専門に扱う本屋なので、立ち読みしてても楽しいです。
入門書だったら、イラストや写真つきなので分かりやすい。私が読むのはこの程度。
…でも、日本建築やお茶席の庭や庭園についての本だったら、飽きずに読みあさります。(好きだも〜ん)

帰り際、友人におみやげのケーキを買って、デパ地下をウロついてたら、こんぺいとうのお店を見つけました。色んな味があって、かわいくて面白かったんで、今度友人の誕生日にでも送ろうと思ってます。

それやこれやで、よーやく帰宅が20時だったかな。
こんだけあちこち見て回ったのは久しぶりです。ちょこっとストレス解消!

行き帰りのバス、だいたい50分くらいかかるので、酔うからいつもはMD聞いてるんですが、今回必要ありませんでした。
何してたかって?
……小説のプロット立てるため、頭の中で妄想(ネタ)ってたんです……。
あああ、やはりどこまでいっても同人女。



2003年01月25日(土) 『last summer』(あとがき?)

……さて問題です。
昨日書いたモノのジャンルはなんでしょう?(呆)

……すいません。自分でも呆れてます。
分かった人すごいです。
ヒントは、本文中に二つほどありますが。

あまりに、最近のシュミ(多発性骨髄腫と囲碁)の色が強すぎますね。
ええ。あの祖父のモデルは某囲碁マンガのあの方です(苦笑)。

そして、問題がもう一つ。
あのね。

プロローグ、終わってません………。
出発までを書きたかったのですが、入りませんでした。
とゆ訳で、次回、last summer2いきます!

そして本編、果して今年中に書けるのか?!こんな仕事のスケジュールで?!でも書きたいの!!
『Autum In NewYork』
で、お会いしましょ〜〜♪(←ホントか?)



2003年01月24日(金) 『last summer』(プロローグ)

この夏が、最後の夏になる。

感傷や…そういうロマンチックなものではなく、俺にとっては、それが現実だった。

多発性骨髄腫

そう医者から宣告されたのは、梅雨が明けた、夏の初めだった。


体調の悪さがいつまでも抜けなくて、注射の一本でも打って何とかしようと病院に行ったのが、去年の冬。
しかし一向に良くなる気配もなく、検査することを勧められ、渋々承諾したのが、こいのぼりが空を泳いでた…確か、4月ごろ。
検査の結果ははっきりせず、体のだるさは以前よりひどくなり、大学病院に紹介状を持たされて、車検の時の車のような扱いで、体を調べ尽くされ……その結果。
夏、俺は医者から自分の病気について告知された。

血液の癌とかで、病気の進行は、若いほど早いらしい。
様々な治療法はあるらしいが、それらはもう、かすかな効果しか得られないという。治していくはしから、別のところで病が進行していくのだから、どうしようもない、というのが、医者の本音だろう。決して、彼らが口にすることはなかったけれど。

そして告げられた俺の時間は……もって半年。
今年の冬までが、タイムリミットだという。

来年のおせちや雑煮はもう食えないんだなぁ……なんて、医者を前にしながら思いついたのは、そんなくだらない事だったが。
後見人である祖父に病気の事を告げ、ついでのようにそれを言ったら、このクソ暑いのに雑煮をしこたま食わされた。


「どこか行きたいところはないのか」

涼しい風が通る和室で祖父と俺は碁盤をはさみ、無言のまま対局していたが、その沈黙を破ったのは、祖父のほうだった。

「アメリカ…ニューヨークに行ってみたい。見たいものがあるんだ」

テロによって、一度は死にかけた街。
しかし今力強く生きている街。
以前からのNBAへの憧れもあって、いつかは行きたいと願っていた街だった。

それを聞いた祖父は、ゆっくりと和服の袖に手を入れ、腕を組んだまま動かなくなった。
中学の頃両親を亡くした俺と、俺の母親が生まれた直後に妻――俺にとっては祖母だ――を亡くした祖父と。他に親戚もない俺たちは、寂しい者同士、肩を寄せ合うように生きてきた。
そしてまた、俺は祖父をひとりにしようとしている。
俺は碁盤に黒石を置いた。そして、

「ごめんな」

下を向いたまま、呟いた。


祖父はゆっくりと組んでいた腕をほどいた。
「アメリカに死にに行く訳ではないだろう。お前が謝ることは何もない」
ぱちり、と、碁盤に白石を指す。
「向こうに知人がいる。連絡はしておくから、準備をしておけ」
俺は慌てて祖父を見上げた。

「この対局は、打ち掛けにしておく」

祖父は、ふわりと笑った。続きは帰ってきてからだ、と。
過去、最強の棋士として名を馳せていた祖父は、決して表情を崩す事などなかったという。
そんな祖父のほほ笑みを知るのは、孫である俺だけの特権だった。

「だから必ず帰って来い。――宏明」


返事は、声にならなかった。




2003年01月23日(木) まずは試しに

今まで使ってた日記が不安定でこれまたもー。
ちょこちょこ書いてたSSのログが飛びそうで、ちょいと不機嫌だったのです。

…んで、最後におすがりします「えんぴつ」サン!!

ここならきっと大丈夫……よね?
期待は大きく、喜びも大きく♪

キットカットの冬限定の情報を流したら、あっちゅ間に広まりました。
ネタにいいよねこれ……。
使うなら乾海か、オガヒカか。
くふふ♪



2003年01月03日(金) 『初春』2(女の子ヒカル)

ヒカルからの思いもかけぬ言葉に固まった美津子だったが、そうそうじっとしている訳にもいかない。なにしろ今日は30日。やることは山積みなのだから。
美津子は表情をひきしめ、娘を振り返った。

「ヒカル」

ヒカルはみかんを頬張ったまままばたきする。

「ふぁに(なに)?」

「初詣に着付けを着せて振袖はお礼がいるのかしら?」








ヒカルは助手席で風呂敷を抱えたまま、くすくすと笑っている。
「ヒカル///。いいかげん笑うのやめなさい」
車を運転しながら、美津子は頬を赤くしながら娘を叱りつけた。
「だぁってさぁ…かーさん、いきなり真剣な顔したかと思ったら……」
くすくすくす。
ヒカルの笑いは止まらない。
「……まったく…誰のせいだと思ってるの?!」
美津子は憮然とした顔のままだった。ヒカルは何とか笑いをおさめ、にじみ出た涙をふいた。
「はいは〜い。珍しいコト言ったオレのせいだよ〜。…次の信号、左ね」


…あの後、焦るあまりに日本語まで焦ってしまった母の言葉にヒカルは爆笑し、美津子本人もそれに気がついて赤くなるやら怒るやら……しばらく収拾がつかなくなったのだった。
照れを隠すようにそそくさと自分の着物を引っ張り出しにかかった美津子だが、彼女の持つ着物では、どうにもしっくりくるものがない。顔立ちは母親ゆずりの筈なのに、何がいけないのだろうかと母娘で首をかしげながら、祖父の家を尋ねてみることにした。彼の家には、今は亡い平八郎の妻…ヒカルの祖母の着物が若い頃のものから結婚後に誂えたものまで保管してあるはずなのだ。
しかしずいぶん古いものだから、果たして着る本人が気に入るものがあるかどうか……と心配していると、意外にも、黒地に梅の模様を散らした古典的な柄にヒカルは興味を示した。
「これが良い!」
しかしそれは小紋と呼ばれる、いわばちょっとした普段用、と考えられるもので、振袖と比べても袖も短く、どうしても華やかさに欠けてしまうように思える。
美津子は総絞りの振袖も勧めてみたが、合わせてみるとヒカルにはかなり大きく、いくら着物が多少修正して着付けられるといっても、あまりにも無理があった。
結果、着物はヒカルの希望を通すことにしたのだが、古典柄とはいえ、黒地に赤い花という、大胆な色合いである。素人の美津子には、どういった帯を合わせてよいのか分からず、平八郎はもとより、ヒカルにも皆目見当がつかずに、取り合えず出した着物を片付けていたところに、ヒカルの携帯が鳴った。
「帯は着物に合わせて、貸してくれるって。…でも、できれば事前に見て小物類も合わせたいから、時間があるなら今晩持ってきてもらえると助かるって〜」
電話の相手は、件のヒカルに着物を着せてくれるという人物からのもので。
渡りに船と頷くと、ヒカルは用件を伝え、時間を決めるとさっさと電話を切ってしまった。
「ヒカル!切ることないでしょう?!いろいろお礼もご挨拶もしないと……」
「…?どうせ今晩行くんだから、その時言えば良いじゃん」
けろん、と応える娘にめまいを覚えつつ、美津子はその人物のものとには自分も行くことを了承させたのだった。この娘ひとりでは、先方さまにどれだけ失礼を働くか分からない、と危惧した結果である。



そんなこんなで急いで年末の買い物を済ませ、(ヒカルは当然荷物もちに駆り出された)晩御飯のシチューを仕込んでおいてから、美津子とヒカルはその目的地へと車で向かったのだった。



「…ここだよ」
ヒカルが示した古い呉服屋。その看板には、「あつみ」と書かれてあった。

「呉服屋さん?!何でそんな人と知り合いなの?!」
「んー、とね。2年くらい前、棋院のカレンダーの仕事でオレ、着物着たじゃん。それを着せてくれたのがここの呉服屋さんで、今年の夏に父さんとオレが雨宿りして着物貸してくれたのもココの女将さんなの」
「なんでそれを早く言わないの?!」
「だって、かーさん何もきかなかっただろー」

……正確には、違う。
尋ねても、こちらが答えて欲しい事柄が答えとして返ってこなかっただけだ。例えて言うなら、キャッチボールしようとボールを投げたのに、何故かヘディングで返ってくる。そういう感覚が一番近いといえるだろうか。
――そうだった。こういう娘だった。
美津子は改めて娘についての認識を確認し直した。囲碁をやるようになってから、ほんの少〜しは常識が身につきはじめたかと思っていたが、いかんせん、幼い頃からのピントのずれた天然さは健在だ。
…しかしそれが、好ましいと映る人物が意外といるらしいのも事実だ。

暖簾の奥から出てきた着物姿の女性。
彼女も、おそらくそういった人なのだろう。
にっこりと笑顔をたたえた表情で出迎えるその様子に、美津子は確信に近いものを感じた。


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平 知嗣 [HOMEPAGE]

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