+シコウカイロ+
此花



 another one

小学生のころ

私と友達は、階段を誰が一番に駆け下りれるかという
競争をしていた。

理由は特にナイ。
階段を降りた正面に手洗い場があってそこに鏡がある。

ちょうど駆け下りた目の前に自分の顔が飛び込んでくるような
そんな位置だ。

私は鏡に移る自分を見ると
つい凝視するくせがある。

そして視線を残して去り際に笑うのだ。


一瞬のことなので
知られることはないのだが
まぁその日は運悪く、友達がそんな私を見たらしい。


その時の友達は相当驚いたようで、
鏡と現実の僕を交互に三回見てから、一言。

「君は鏡に映ると別人だね」


私の友達は、現実と変わらぬ姿で
目の前の鏡に居る。
でもその横に映っている私はチガウ。

急に、いつもと違う姿を見られたことが恥ずかしくなって
私は友達をせかし、その場を去った。
友達は納得いかないように何度も鏡を振り返っていた。


・・・・まぁべつに
学校の七不思議というわけじゃないのです。

鏡に映ると印象が違うとか。
私が普段はしないような表情をしていたので
友達には不思議だったのだろう。

クラスに戻るときにまたその鏡の前を通ったので
今度はいつも通りの顔をしておいた。
友達はいつもの私が、そこに映っているのを見て
安心したようだった。

私は鏡に映っているのは“自分”だ
という感覚が薄いのかもしれない
鏡を覗くときは“自分を見ている”
というよりは“鏡に映ってるものを見ている”
という感覚でしかない。
そこに居るのは
“自分であって自分で無いもの”

だから
“目が合ったら”
笑うことにしているだけ


2004年02月01日(日)
初日 最新 目次 MAIL

気に入った?↓

My追加