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2008年09月15日(月) 大濠公園

連休最終日。
空港行きの地下鉄の駅へと向かう階段を降り始めた直後、
足が止まって、また外に戻った。

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好きな街には、好きな公園がある。
札幌の大通公園も良い、ソウルのオリンピック公園も良い、
日比谷公園も、葛西臨海公園も。

福岡には、僕が抱えていることの全てを話すことができる
唯一の大切な友人がいる。東京と福岡。
適度な距離感があるから、お互いのプライベートを
何でも話せるようになったのだと思う。

大手町、札幌、霞ヶ関、と僕の周囲の環境が変わって、
人間関係が様変わりしても、その友人との関係だけは、
変わることがなかった。

ここ数年、僕は、半年に一度くらいの割合で、
福岡へ行って、その友人と飲んで、話した。
水炊き、モツ鍋、お刺身、博多ラーメン。
いつも素敵なお店に案内してくれて、
福岡のおいしい料理を食べながら、
時間を忘れて話した。

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2〜3軒のはしごが終わって、日付も変わるころ、
いつしか、友人の家へ向かう途中にある、
大濠公園に立ち寄るようになった。

周囲2キロほどの池の周りは、ランニングコースに
なっていて、夜遅くでも、ジョギングをする人たちがいる。

僕らは池に面したベンチに座り、水面に揺れる
オレンジや白の街灯を見ながら、途切れ途切れに
会話を続けた。

沈黙も多かった。
けれど、その沈黙すらも大切な時間だった。

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水が高いところから低いところへ流れるように、
自然の流れに従って、その友人は、来月福岡を去ることとなった。

3連休、僕は福岡へ向かった。
連休2日目の夜、天神でご飯を済ませ、公園へ向かった。
夜には雨の予報だったけれど、雨は上がってくれていた。

こうして深夜の大濠公園で話をするのも、
今夜がきっと最後になる。僕は言葉があまりつなげなかった。

池の真ん中の島へと渡る橋を観月橋という。
この日は十五夜で、観月橋のたもとから空を見上げると、
雲の合間から見事な満月が顔をのぞかせた。
「月がきれいだ」

別れ際、これまでのお礼を伝えた。
「何かお別れみたい」という友人の言葉が辛くて、
僕は急いで背を向けた。

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地下鉄の入り口を出た僕は、
疲れていたし、重い荷物を持っていたけれど、
衝動的に大濠公園へ向かった。

お昼に、一人で、この公園へ来るのは初めてのことだった。
深夜からは想像もできないくらい、たくさんの人が思い思いの
休日を過ごしていた。

池を眺めながら、売店で買ったホットドックを食べた。
そして、1枚の写真を撮った。

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昨夜、僕は、もう2度とこの公園で満月を見ることは
ないと思ったし、そう感じていたから、言葉が継げなかったの
だということはわかっていた。

羽田行きの飛行機に乗って窓の外を眺めると、
ずっと泣くのを我慢してくれていた曇り空から、
雨が降り始めた。


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