エンターテイメント日誌

2002年11月26日(火) 戦慄!茫然自失...君は<呪怨>のポスターを観たか?

筆者は8月30日の日記に、いかにオリジナル・ビデオ「呪怨」が身の毛もよだつかを語り、その劇場映画版が日本を恐怖のどん底に陥れるだろうと予言した。そしていよいよその公開が日に日に迫っている。

その映画版のポスターを見てもう唖然とした。これだけでぼっけえ、きょうてえ...もう、泣いちゃいそう。心臓の悪い人は決して見ないように。

これが呪怨のポスターだ!覚悟して跳べ!←クリック

しかし、これを本当に駅や街頭に張り出すのだろうか?公序良俗に反しはしないか??まさかあの<猫少年>が一枚看板とは恐れ入った。この少年が猫の声で咆哮するんですよ。想像して下さい...冷や汗。日本には入江たか子さん主演作を代表とする化け猫映画の伝統があり、例えば大林宣彦監督の「HOUSE」や「麗猫伝説」もそうなのだが、「呪怨」の猫少年は見事にこの伝統に則った存在なのである。

既に公式ホームページもオープンし、予告編も観ることが出来る。

呪怨公式HPへGO!
こちらからも予告編の試聴が可能

「リング」は「呪怨」の前座に過ぎなかった。本物の恐怖がこれからはじまる。「リング」に続いて「仄暗い水の底から」や「女優霊」など和製恐怖映画のハリウッドでのリメイク・プロジェクトが既に進行中だが、この「呪怨」にハリウッドのプロデューサーが群がり、血眼になって獲得競争を展開する日もそう遠くはないだろう。

現時点で東京では単館公開予定だが、評判が評判を呼び、伽椰子の呪いが一挙に全国に飛び火し、伝染するのは日の目を見るより明らかである。公開は2003年1月下旬より、その日を心して待て。

この日記が参考になったら、是非下にある投票のご協力もよろしく。



2002年11月17日(日) 映画<ハリー・ポッターと秘密の部屋>雑感

先行オールナイトの日、シネマ・コンプレックスにて鑑賞。いや〜、さすがに凄い人だった。

映画自体は非常にウェルメイドなエンターテイメント作品に仕上がっており、たとえば「風と共に去りぬ」や「ドクトル・ジバゴ」など文芸大作を観る感覚で、安心して愉しめた。まあ、煩(うるさ)い原作者や原作ファンの厳しい監視下で、原作に忠実であることを運命づけられているこの手の作品としては上出来であり、これ以上のものを望むのはないものねだりというものだろう。主役の三人は全く違和感なく、このキャスティングは大成功の一言だなと改めて感心することしきりであった。ハーマイオニー役のエマ・ワトソンは本当に美しい娘に成長した。また新キャラクターであるドビーもなかなか表情豊かで愛嬌がある。CGの進歩は目覚ましい。ロックハート先生役のケネス・ブラナーも意外な好演であったが、僕としては最初にオファーされていたヒュー・グラントが演じた方がさらに面白くはまり役だったろうなと、この点は返す返すも残念である。

この作品は子供たちも沢山見るのであろうが、第一作が2時間半、今回の第二作が2時間40分と次第に上映時間が長くなっているのは気になるところである。今回が小中学生に耐えられるギリギリの線ではなかろうか?第四作の「炎のゴブレット」なんか、原作は二冊組とボリューム・アップしているけれど、どう処置する気だろう?あくまで原作に忠実という方針を貫く限り、途中に休憩を挿入し「風と共に去りぬ」並に三時間半程度にしないと無理なのではなかろうか?破綻をきたすのは目に見えている。

ところで今回、ハリーと敵対するヴァルデモードが魔法使いの母とマグル(人間)の父から生まれ、マグルを心の底から憎んでいたことが明らかにされるのであるが、嗚呼、成る程と唸った。つまりヴァルデモードはヒトラーをモデルにしているのであろう。

ヒトラーにユダヤ人の血が流れているという噂は以前からあり、それに基づいて手塚治虫は大傑作漫画「アドルフに告ぐ」を書いている。つまり純血至上主義でマグルの<汚れた血>を憎むスリザリン寮の面々はナチスを象徴し、彼らから迫害を受けマグルの両親を持つハーマイオニーは<ユダヤ人(例えばアンネ・フランク)>を象徴しているのだろう。その証拠に、スリザリン寮のドラコ・マルフォイとスリザリン卒業生であるその父は、金髪碧眼のゲルマン系の顔立ちをしている。一見、単純明快なファンタジー小説の外見を持ちながら、こういう深い奥行きのあるハリー・ポッター・シリーズ、なかなか侮れない。

しかし、第一作でも感じたことなのだが、クィディッチというスポーツのルールには僕はどうしても納得がいかない。だって試合の点差にかかわらず、結局シーカーがスニッチを捕まえた瞬間に、その側の勝利で試合は終了するというのはいくらなんでも無茶苦茶でしょう?各チーム7人づついる選手のうち、外の6人の実力・努力なんか全く関係なく、シーカーの働きひとつでゲームが決まってしまうんだから(実際どの試合もグリフィンドール寮チームが負けていて、最後にハリーがスニッチを捕まえて逆転勝ちしている)。

このゲームの模様を観るたびにTVのクイズ番組を想い出す。一問正解で10点獲得のルールで番組は進行する。そして司会者が言う、
「さあ、最後の問題です。この問題を正解した人には特別に100点を差し上げましょう!」
番組を盛り上げるための常套手段。つまりそれまでの成果は問われず、結局最後の問題を解答した人が勝者なのである。
はっきり言おう。原作者のJK.ローリングって、実はスポーツ音痴じゃないの?

最後に、この映画でダンブルドア校長を演じたチャード・ハリスは先日亡くなりこれが遺作となった。いくつかの映画の感想文で「確かに今回のハリスには生気が無かった。」とか、したり顔で書いている人がいるが、実際に映画を見て失笑。ハリスは第一作目から今回同様ヨボヨボの老人だったし、そんなこと分かる筈がない。そういうのを<コロンブスの卵>って言うんですよ(^^;。



2002年11月09日(土) 映画「なごり雪」の古里、臼杵へ<本編>

これは、前回の日記からの続きである。

大分県臼杵市は古い町並みの残る、たおやかで鄙びた、心落ち着くところであった。映画では<臼杵駅>として登場した駅ーしかし実際には上臼杵駅なのだがーに到着すると、構内に「なごり雪」ロケ地マップが置かれていた。<映画「なごり雪」を歩こう>と印刷されている。

火祭りの場面が撮影された臼杵石仏を訪ねた後、二王座歴史の道を散策した。昼間から市の職員や市民ボランティアの人々がせっせと夜の竹宵のために竹ぼんぼりの設置をされていた。今年は一万五千本、過去最高の規模になるという。映画でヒロイン雪子の家になった釘宮邸もそこにあった。中年の女性たちが「あ、ここが<雪子の家>だ!」と嬉しそうに声を上げ、「貴男、映画観た?」と聞かれた中年男性が「そりゃあ勿論。臼杵が映画の舞台になっているんだから、観ない訳にはいかないだろう。」と答えている。そこを通り過ぎる子供たちは「なごり雪」の唄を口ずさんでいた。いかにこの映画が臼杵の人たちに愛されているのかを知り、深い感銘を受けた。また、映画が撮影されて一年経つのに、雪子が降らせた発砲スチロールの雪が未だ土の上に残っているのを見つけ、ひそやかなる悦びを感じた。

釘宮邸の坂をさらに登ると、やはり大林宣彦監督が撮った老人性痴呆のCM(製薬会社ファイザーとエーザイの共同製作、現在ニュース・ステーションの枠で放送中)に登場する家も発見した。

小手川商店で食べた味噌汁や、臼杵の郷土料理である黄飯、きらすまめしなど全てが美味しかった。映画の主人公、祐作の実家<みちこ>になったお店ではやはり映画に登場したサイダーを頂いた。なんだか懐かしい味がした。そこには二日連続で訪れたのだが、二日目にはピーナッツとチョコレートのサービスが付いてきた。そのさりげない心遣いが嬉しかった。そのお店で知り合った人が<みちこ>と同じ通りにある、大林監督が新しく借りたばかりという邸宅に案内して下さった。元々ボロボロに朽ち果てた廃家が奇麗に改装され、既に監督愛用のピアノも運び込まれているという。本当に監督はこの街が心底気に入られたのだなぁとの感慨を覚えた。これからまた、何本もの映画がこの美しい日本の古里で撮られていくことだろう。

臼杵の街は午後五時を過ぎると竹ぼんぼりの蝋燭の炎が一斉に灯され、風に揺らぐ。なんとも幻想的、幽玄な雰囲気であった。午後六時、般若姫が神輿に担がれ、雅楽の生演奏に先導され、竹ぼんぼりの仄かな光の中を練り歩く。今年般若姫に選ばれた大林映画の新ヒロイン、須藤温子さんは豪華な着物に身を纏い、まるでお雛さまみたいだった。「凄く可愛い!」「わぁ〜顔が小さいなぁ。」という感歎の溜め息があちらこちらから聞こえた。

映画に登場する<臼杵駅>の外観は上臼杵駅だが、プラットホームの場面は臼杵からさらに各駅停車の列車で一時間ほど旅した重岡駅で撮影が行われた。この駅は無人駅で一日に停車する上りも下り列車もたった五本しかない。だから往復するのは結構大変だっが、なんとか時間を調整して竹宵を見た翌日訪ねた。山間にひっそりとある情緒豊かなプラットホームに立ち「嗚呼、ここで映画の印象的な<六つの駅の別れ>が描かれたんだ。」と感無量であった。

重岡駅から戻り、須藤温子さんが出演する「なごり雪」トークショーを見るため稲葉家下屋敷へ足を向けた。ゲストとして<雪子の家>こと釘宮邸の主、釘宮さんと後藤臼杵市長が参加された。釘宮さんは「もう私の家は釘宮邸ではなく、すっかり<雪子の家>になってしまいました。週末になると映画をご覧になった方が沢山お見えになるんですよ。」とニコニコ嬉しそうに仰しゃる。竹宵の夜には釘宮邸は特設の竹オブジェが設置され、訪れた人々を嫌な顔もせずお宅の中まで入れてあげている光景を僕は目撃している。なんて良い人なんだ。後藤市長は「僕はね、誰よりも沢山映画『なごり雪』を観ているんですよ。もう十数回観ました。」と自慢される。ちなみに須藤さんは五回だそうだ。市長の圧勝である。市長が東京に戻った彼女に、臼杵特産のかぼすを使った<カボネード>を郵送したという微笑ましいエピソードも披露され、和やかな雰囲気のうちにトークショーの幕は閉じた。

トークショーの後ぶらぶらとと商店街を歩いていると、自転車にまたがった後藤市長が市民と談笑している姿を見かけた。なんとも庶民的な市長さんだ。想わずほほ笑みがこぼれ、僕は臼杵の街がいっそう好きになった。

こうして愉しい想い出とともに僕の臼杵の旅は幕を閉じた。映画「なごり雪」と出会えて、本当に幸福だった。

最後に、エンターテイメント日誌の読者へのささやかなプレゼント。今回の旅のアルバムの一部を、貴方だけにこっそりお見せしよう。

臼杵写真集へ



2002年11月06日(水) 映画と旅〜「なごり雪」の古里、臼杵へ<予告編>

想えば僕は、映画とともに沢山の旅をしてきた。

吉田喜重監督「秋津温泉」が撮られた岡山県奥津、成瀬巳喜男監督「乱れ雲」の撮られた青森県の蔦温泉や十和田湖。最近の作品では「がんばっていきまっしょい」の愛媛県松山市、今治市、東予市を訪ねた。また宮崎駿監督が「もののけ姫」の製作にあたり、ジブリの作画スタッフとともにロケハンを行った屋久島(鹿児島県)や白神山地(秋田県)へも往った。屋久島は成瀬巳喜男監督の名作「浮雲」の舞台にもなっている。

海外に目を向けると「ローマの休日」でオードリーがアイスクリームを食べたスペイン広場の階段を歩き、<真実の口>に手を差し入れることも勿論した。さらに「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台となったオーストリアのザルツブルク、「第三の男」のウィーン、「アマデウス」のプラハ、ヴィスコンティの「ルードウィヒ 神々の黄昏」のノイシュバンシュタイン城(ドイツ、フッセン)へも足を運んだ。このお城はディズニーのシンデレラ城のモデルになったことでも知られている。NYではキングコングや「めぐり逢えたら」のメグ・ライアン、トム・ハンクスも登ったエンパイヤ・ステート・ビルの屋上までエレベーターで往復した。

しかし、何といっても僕にとって映画と旅が密接に結びついているのは大林宣彦監督作品だろう。尾道は言うに及ばず、「廃市」の福岡県柳川、「青春デンデケデケデケ」の香川県観音寺、「はるか、ノスタルジイ」の北海道小樽、究極は「天国にいちばん近い島」ことニューカレドニアのウベア島まで遠征した。高校一年生の夏、大林映画「転校生」に出会ってもう既に20年経つ。その蓄積された時空こそ、はるかなる旅といえるだろう。

そして大林監督の最新作は大分県臼杵市で撮られた「なごり雪」である。わざわざ映画の冒頭に<臼杵映画>と銘打っているくらいである。これはファンとしては臼杵を訪れるしかあるまい。時期を念入りに検討した結果11月2-3日と定めた。なぜならば<臼杵竹宵>がこのとき開催されるからである。

<臼杵竹宵>は映画「なごり雪」でも登場する幻想的で美しいお祭りで、一万本の竹ぼんぼりに照らされ浮かび上がる竹の光のオブジェの中、笛や笙の雅楽の演奏とともに般若姫の行列が街を練り歩く。般若姫とは臼杵石仏を彫った真明長者の美しい一人娘で、帝に嫁ぐ旅路の途中で命を落としてしまう。悲しんだ両親の元に年に一度会いに来る般若姫を、里の人々が竹に灯り火を灯してお迎えしたという伝説に基づくお祭りでなのである。今年その般若姫役に選ばれたのが映画「なごり雪」のヒロイン、須藤温子さんで、是非臼杵の町に恩返しがしたいという本人の強い希望で実現したのだそうだ。この機会をみすみす見逃す手は無いだろう。


 < 過去の日誌  総目次  未来 >


↑エンピツ投票ボタン
押せばコメントの続きが読めます

My追加
雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]