初日 最新日 カンゲキ★日記〔目次〕 MAIL HOME


カンゲキ★日記
Ruby

MAIL→Ruby

Ruby's Room HP Top

BBS・情報・お知らせ


カンゲキ★日記index
(↑カンゲキ・日記一覧表示)

投票ボタン↓

My追加

2003年10月07日(火)
◆平成中村座歌舞伎公演【昼の部】『加賀見山再岩藤』(骨寄せの岩藤)勘九郎、扇雀、七之助、弥十郎、福助 (03/10/18up)

(5幕9場)11:00開演

作・河竹黙阿弥、
演出・串田和美



やっぱりとても面白い内容の公演でした。勘九郎さんは毎回、お客のツボを心得ているなぁ〜。

「中村座」は、初代中村勘三郎が、寛永元年に江戸・中橋で猿若座(後に改名)として立ち上げたのが始まりだそうで、常に江戸の歌舞伎界をリードする存在だったとのこと。
しかし明治時代になると、由緒あるこの座は途絶えてしまいました。
ですが、平成12年に勘九郎さんを筆頭として、往時の中村座を今に偲ばせる仮設劇場「平成中村座」を再び誕生させ、今回4回目の公演となりました。

*過去は、第1・2回公演=東京・墨田公園、第3回公演=大阪・扇町公園(パンフを参考に記載)

今年は、江戸開府四百年、さらに歌舞伎発祥四百年という記念の年ということもあり、様々なイヴェントの中の一環として、江戸文化の中心地でもある浅草寺の境内にて特別に座を建て興行が催されることになったそうです。

地下鉄浅草駅に降り、活気ある仲見世を通って正面の浅草寺本堂まで行くと、向って左手には「浅草奥山風景」という江戸の町(お店)が建ち並んでいます。中は職人さんの伝統工芸品、手作りのお店、お休み処とか色々…。(これも江戸開府四百年記念行事として特別です)

その奥に「平成中村座」の茶色い小屋がありました。(入り口は本堂の左裏になっています) ギリギリに到着。焦りました〜。

近頃は特に勘九郎さんの出演される公演は、チケット争奪戦が激しくて、アッと言う間に売り切れてしまいますが、それにも増して江戸の芝居小屋体験気分で面白い舞台が観られるとあっては、人気が出ないはずがありません。
この日は、平日の午前だというのに空席なしの超満員でした。
若い方も沢山来ていましたので、皆さん何らか都合を付けて観に来ているのね...。

小屋では皆、ビニール袋を配られ靴を脱いで入場します。
私たちは竹席(椅子)の2階サイド舞台に近い1列目。(2列目は梅席)
安全の為の手すりが邪魔であまり良席ではないと思いますが、まぁ舞台に近い位置なので役者さん達が良く見えました。


序幕「馬捨場八丁畷三昧の場」は暗い照明になり、花道と正面の舞台上には何ともおどろおどろしい馬の骸骨が辺り一面散乱しています。骨には青い夜光塗料が塗ってあるのか不気味に鈍い光を放っていました。
この場面は、一年前多賀家の局の岩藤がお家乗っ取りを画策したけれど、結局中老尾上の召使お初に殺され、ここ八丁畷三昧に馬の死骸に混じって遺体が捨てられていました。
そして、未だにその時の怨念を持った岩藤の魂は静まっておらず、この夜散らばった骨が寄せ集まり、彼女の亡霊が復活するという、いきなりのスペクタクルな場面。

不気味な空気の中、散乱した馬の骨がするすると動き出し、舞台に設置している演出上のスッポンやセリの穴に引き込まれていきます。そして舞台から消えていく。
それに伴い、舞台中央では人間の骨のパーツが組み合わされ、少しずつ人間の形を成してゆきます。
最後に頭が付くとその途端、サッと人骨人形と入れ替わって、後ろのセリから物凄く朽ち果てた感じの亡霊“岩藤”の勘九郎さんが登場します。
すごい形相の亡霊姿ですが、やっぱり勘九郎さんが演じると愛嬌があるなぁ。(手首指先の骨がよく出来ている...)

この不気味な場面が終わると一転、「花の山の場」が展開され、夢のような美しい姿の御殿女中「岩藤」が花道上を浮かび消えてゆきます。
暗い場面から、メリハリの効いた明るい場面、見事な効果で序幕から惹き込まれます。

勘九郎さん出演舞台の、お客を楽しませる要素として、本物の水を使用や、古いものを復活させたり、新しい演出を取り入れたりと、観る度ビックリさせられるのですが、今回も序幕から盛り沢山でした。

2幕目3場「浅野川々中船中の場」では、前に見た串田作品にも使われた“ミニチュア”が登場。 
舞台は全体的に大きく水が張られています。深さは濁りや照明の関係でわかりませんでしたが、その上に屋形船のミニチュアの舟が浮かんでいました。人形も出てきて、コクーン歌舞伎を思い起こす演出。
忠義のつもりで、陰謀の為失脚した花房求女(扇雀)の為に、求女の下僕・又助(勘九郎)は、妖婦・お柳の方(福助)を殺すつもりで罠にはまり、多賀家の奥方・梅の方を殺してしまいます。
このとき勘九郎さんは水の中から突然現れ、泳いだり潜ったりで大奮闘。
ハラハラドキドキの場面。


三幕目「多賀家奥殿草履打の場」は屏風がマジックミラーになっていて、初めはただの鏡に見えたのですが、照明が変わると屏風の裏に現れた岩藤の亡霊が見えるという仕掛けになっています。
この場面での驚異は、何と言っても勘九郎さんのあのアッと言う間の早変わりでしょう。
岩藤から望月弾正(お家騒動を起こそうとしている一味の首領)へこんなに一瞬のうちに変わったのを見るのは初めてです。本当に信じられない早さでした。感嘆、唖然!!


四幕目「鳥井又助内切腹の場」は今までと打って変わって、人情とか世話物風の落着いた内容。
釣の餌を売り、細々暮らしている忠義の下僕・又助(勘九郎)、優しいその妹おつゆ(七之助)、体を壊し、寝たきりで面倒を看られている又助の主人花房求女(扇雀)がいい味を出しています。
貧しいながら、いきいきと生活している市井の姿が、垣間見られる場面となっていました。
この幕で目を引いたのは又助の弟で盲目の子供、志賀市を演じた清水大希君の健気な演技です。

目が見えないために近所の子供にいじめられて悔しがっている導入部だけでも見事な演技。
この子は生活の為一生懸命に按摩をやり、音曲の師匠に琴を習いに行っています。

志賀市が出かけた後、話が急激に進み、又助が以前に忠義の為と思い浅野川で殺したのは、妖婦・お柳の方ではなく、多賀家奥方のお梅の方であったと知らされます。
又助は騙された事とはいえ衝撃を受け、主人・求女にも勘当を言い渡されてしまいました。

その後、琴の稽古から師匠の琴を担いだ下男に伴われ、志賀市が戻って来る。
師匠に褒められ喜んで帰ってきた志賀市は、『妹背川』を又助に聴かせようと、無心に弾き始めるが、又助はこの世の名残として琴の音の響く中、梅の方を殺してしまったけじめとして切腹してしまいます。
志賀市は目が見えないので、なかなか又助の様子に気がつきません。
そこに求女やおつゆ達が姿を現して切腹の場面に遭遇。皆が驚く中、事の真相を又助が話します。
そして妹弟の行く末を求女に頼み、安心して死んでいきます。


志賀市役の清水君は、勘九郎さんの弟役とはいえ本当に幼さの残る子供さんでしたが、琴を弾きながら歌わなくてはならないですし、目の見えない役なので、それなりの動きをしなければなりません。
手や足で確かめながら歩いたり、セリフも多くて大人でも大変な難しい役を可愛らしく素直な演技で見事に演じていて、とても感心しました。
パンフレットには小さく写真しか出ていなかったのですが、歌舞伎好きのファンの間では名子役として有名な方なようです。大人はメロメロかも…。(表現が古いか...)

後になりますが、七之助さんのおつゆの奥ゆかしい色っぽさ、勘九郎さんの思いの深い演技も素晴らしくて感動的でした。


大詰の「多賀家下館奥庭の場」悪役・弾正(勘九郎)の大立ち回りがやっぱり圧巻。
水バシャバシャもあり、たっぷりやってくれます。
そしてやっぱりありましたよ!! 例の舞台奥が思いっきり開き、外が丸見えという演出。(何人か向こうから見ている人がいましたね)
最後は亡霊・岩藤になった勘九郎さんがリフトのような機械を使い、空中から御挨拶してくれます。(笑)


『裏側から見た芝居小屋』

【最後に】
とても楽しかったですが、演出的に他の作品で見たものが使われていて「またか」と思う人もいるかもしれません。でも「待ってました」と見るべきでしょう。
コクーン歌舞伎の一体感と畳み掛けるような凄さと比べると、最後部分の作品としてのパワーがもう少しあれば更に良かったですね。
でも勘九郎さんの役者としての情熱とパーソナリティにはいつもやられっぱなしです。(笑) 次回も益々楽しみ!!

ところで幕の内側から芝居を見る桜席で観劇したらどんな感じでしょうか。
2度目に見るのであれば、楽しいかもしれないですね。
ただ、幕が閉まっているときは花道の芝居は見られませんので御注意を!
ちなみに定式幕は過去の「中村座」名残の、白、柿、黒色を復活して使用していました。

最後、帰るときに出口で枡に入ったふるまい酒を頂きました。
焼印の押された枡は記念になります。嬉しい!!(同行した母は気がつかず、貰いませんでした)