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2003年03月26日(水)
◆Adventures in Motion Pictures 『白鳥の湖』 (ソワレ)〔3度目〕 首藤康之、ベン・ライト、他


ザ・スワン&ストレンジャー: 首藤康之、
王子: ベン・ライト、
女王: ヘザー・レジス・ダンカン
執事: スティーヴ・カーカム
ガールフレンド: フィオナ=マリー・チヴァース



昨日に引き続き3回目の観劇。
このところ連続で観劇が続き少々疲れ気味でしたので、誰かにチケットを譲ろうと思っていましたが、今回の公演は見に行ってよかったと思います。これで、「白鳥役」3人3様の舞台を味わうことができました。
今回も30列目でステージから遠かったですが、この前の教訓を得て、準備万端オペラグラスを用意していきましたので欲求不満が解消できました。(笑)


気になっていた首藤=白鳥は、感動的すら感じるものでした。逆にストレンジャー役は正直、無理があるなぁとも…。

首藤君の白鳥は、純粋で悲しく、繊細ではかなげな印象。登場シーンもとても静かで、昔ながらの版の「白鳥〜」の姫君のように人間から白鳥の姿に変えられ、身の不幸悲しみながら王子の前に現れ、そして辛い過去を持っている...。と、その様な印象。とにかく身体から立ちのぼる雰囲気が非常に繊細ではかなげなのです。
獰猛な白鳥の群れの中でも、アダム・クーパーはクールで激しい獣のボス的存在感で、自分から他の白鳥とは違っていると主張しているように見えましたが、首藤君の白鳥は、この群れの中で受け入れられていないような、ひとりぼっちの孤独感…という様に見えました。
踊り方もひときわ丁寧で、指先、脚の先端に至るまで、滑らかで美しく、神経が行き渡っています。

王子とのパ・ド・ドゥは、辛い身の上どうしが慰めあい、心を触れあわせ、対等な立場の“愛”をとても感じました。まるで恋愛のような…。
首藤=白鳥は、他の誰でも真似できないような透明な世界を描き出し、この場面が他の人の演じた時とまるで違ったものに見えてしまう不思議な空気を持っています。
こんなにも演じる人によって違った印象になるなんて!! 
とにかく、心が痛くなる白鳥。

そしてストレンジャー役ですが、周りの強烈な個性を持った姫君達を、誘惑し征服していくのは、無理だったかなぁ。
体格から見ても女達は肉感的でしかも強そうで、一緒に踊ると逆に振り回され、パートナーを変えるときなど捨てられた様に見えてしまう。
頑張っているのですが、シャイさや奥ゆかしさが見え隠れして、この場の全員を意のままにすることは、出来ていませんでした。あざとさや欲望のない何か潔癖な感じなんですね。
この挑発的な場面はアダム仕様な作りですし難しいですね…。
ソロの踊りについては断然素晴らしかったと思いますけど…。

終幕の悲劇的な場面の白鳥は、他の人よりも悲しみが伝わってきて、良かったと思います。痛々しくて感動的。

このように個性的なそれぞれのAMP「白鳥」を見ることができて、大変幸せでした。



2003年03月25日(火)
◆Adventures in Motion Pictures『白鳥の湖』 (ソワレ)〔2度目〕 アダム・クーパー、ベン・ライト、

ザ・スワン&ストレンジャー:アダム・クーパー、
王子:ベン・ライト、
女王:マーガリート・ポーター、
執事:リチャード・クルト、
ガールフレンド:フィオナ=マリー・チヴァース



今回、2度目の観劇。この日はあいにくの雨。
だいぶ期間をあけて観たわけですが、その間、連日の長期公演ということもあり、全体の印象は、熟成ぶりと激しさを増したな、という印象です。
観客は、口こみで来たという、どうみてもバレエなど普段見そうもないサッカーシャツを着た若い男性や、何度も見たというリピーターなど、噂が噂をよんで、すごい勢いで波及しているようです。
ロビーも、通常の公演では感じられない、“熱”が伝わってきて、改めて観客を高陽させてしまう、作品の質の高さとダンサーの情熱を感じずにはいられません。

この日の公演は前回見た時、あまりにも面白くて、もう一度見たいと思い、臨時で取ったチケットです。
売り切れ続出のなか、やっと確保した席でしたので、30列目というかなりの後方の座席。なのに失敗しました!!
アダムの白鳥だったのに、オペラグラスを忘れてよく見えないとは!!
しょうがないのでレンタルしようとしたら、既に在庫が無くなったということで借りられませんでした。こんな事って初めてです。
楽しみだった、ストレンジャー=アダムが遠いよう…。 というわけで、あまり細かいところを観察できなかったのが残念…。
私の場合、ダンサーの表情含めて舞台を楽しむもので…。


王子のベン・ライトは、前回見たアンドリュー・コルベット程、内に秘めるタイプではなく、もう少し感情を表に出すことが出来、体格から受ける印象かもしれませんが力強さも感じられました。
私は、前回のコルベットの方が、マザコンぶりや孤独感、心を解放するすべを知らず、鬱積してたまりに溜まった失望感から、感情の爆発まで持っていく表現の方が好きでしたが、ベン・ライトの方も、白鳥と心を通わせたときの溢れ出る喜びの表現など、全体的にスケールの大きさを感じました。


2幕の白鳥たちも、前回よりだいぶ激しく力強く感じ、こんなに強そうだったか?と獣ぶりが圧巻で素晴らしかったです。
いやぁー出演者ひとりひとりが、どの場面を見ても気が利いた演出、演技で、本当に良く出来ているなぁと再び感心。


そして今回楽しみだったアダムの白鳥は、踊り、雰囲気ともナイフのように鋭く、他の白鳥と群れていてもどこか離れた存在に感じました。
鋭角的で孤独…。ジーザスが少し人間寄りで暖かみも感じましたが、アダムは氷の炎のようで激しいけれどクール…。
解釈というより、もう踊り手の個性がそのまま滲み出ているようなダンスで、どちらが良い悪いでは無く、見る人の好みでしょうね。でも私はアダムに惹かれてしまいます。

ストレンジャー役はもうかっこ良すぎ!!元々タップをやっていたのがうなずける程、細かいステップが完璧。白鳥の時はバランスを崩してしまうところもありましたが、3幕は魅せる魅せる!!! もうあのパーティーの場を完全に支配して、誰も観客すら逆らえない。全てのものを僕とかして、狂気を生んでゆく。これが見たかった。

しかし、やはり悔やまれるのは、私の席位置。もっと近くでよーく見たかったなぁ。裸眼だったし…。


あと、改めてガールフレンド役のフィオナ=マリー・チヴァースがやっぱりいい!!
自分が脇にいて、観客の注目を集めていない場面でも、しっかり素晴らしい演技をしていますし、連日の活躍ぶりも拍手を送りたいです。

この『白鳥〜』公演って、既に伝説の舞台になってますよねぇ…
改めてAMPの次回再演を強く希望します。



2003年03月24日(月)
◆パリ・オペラ座バレエ『ジュエルズ』 ピュジョル、ロモリ、アバニャート、ムッサン、ルグリ、ジロー、マルティネズ


すっかり春めいて、暖かい宵でした。『ジュエルズ』という演目の予備知識もあまり無いまま、会場の東京文化会館に向いました。
ガラ公演と違って、全体を見たほうがいいバレエには向かないと思われる、オケ後ろの見上げる体勢の席で鑑賞となりましたが、ソリスト個々の表情や息遣いを充分堪能しました。



【エメラルド】音楽:フォーレ

《プレリュード》(ピュジョル、ロモリ、コール・ド、)
幕が開くと緑の世界。ラクロワがデザインした衣装をまとったダンサー達は、さながら深い海の中にいる幻想的な人魚のよう…。キラキラと輝く宝石を模したラインストーンの部分は、鱗が輝いているみたい。フォーレの美しく少し儚げな音楽は夢の中を彷徨っているようです。

エメラルドに登場するダンサーは、割と体格の良い人が多く、ふっくらというより、筋肉が上半身についてしまった感じで、オペラ座の人は、皆こうなのかと思ったら、後で違うことが判明しました。ちょっと安心。ここの幕では最後までゆったりと、リラックスして楽しめました。


《糸を紡ぐ女》(ピュジョル)
ピュジョルって愛らしい。動きは素晴らしいのは当たり前ですが、表情が何とも良いのです。身体も柔らかく動けてましたが、時々、少女のように見え、音楽と戯れている感じがしました。

《シシリエンヌ》(アバニャート)
すごく気に入りました。ピュジョルと対照的に大人っぽく女らしい印象のアバニャート。大変柔らかで、音に狂い無く踊ってました。美しかった。彼女は観客を引き付ける“何か”を持っていて、この先もっと大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。拍手や歓声も一際浴びていました。

《パ・ド・トロワ》(ユレル、カミオンカ、カルボネ)
女性2人、男性1人のトロワで軽快に踊ります。カルボネ君のチャーミングさに目が一点集中。ラテンっぽい弾けるような明るいパーソナリティは、踊りの喜びにみち溢れて見えました。
途中、アポロ風な動きに見えたりしましたが、楽しげな雰囲気で今までとは違う味付けになってます。


《第1パ・ド・ドゥ》(ピュジョル、ロモリ)
近くで見たせいか、ロモリの足の太さばかり目がいってしまいました。このような作品ではもう少しエレガントさがあればなぁと…。

《第2パ・ド・ドゥ》(アバニャート、パケット)
アバニャートの大人の味わい。パケットは彫刻のような整ったお顔で、踊りも上品な印象でした。やはりしっとりとして綺麗でした。

《スケルツォ》(全員)
再びコール・ドも含め、早めの音楽で様々なバリエーション、フォーメーションで艶やかに舞います。エメラルドは、とりわけ腕の動きの柔らかさを印象付ける踊りだと思いました。
個人的には、アバニャート、アイドルとしてカルボネが気に入りました。




【ルビー】音楽:ストラヴィンスキー
(ムッサン、ルグリ、ロンベール、コール・ド)

粋で、ヴァイタリティー溢れ、ユーモアもあり、可愛らしくセクシー。
印象的な動作を繰り返したり、生き生きと現代的な動き。背景もグレーの中に鮮やかなルビー色の変6角形が中央に大きく浮かび上がったものです。
オペラ座では、上演回数もルビーが飛びぬけて多く、踊りのスタイルも、ここのダンサーの個性にもピッタリはまっているように感じました。登場するダンサーの体形もエメラルドより、すっきり引きしまってシャープな動きに合っています。

ルグリは、いつどんな時も期待を裏切らず素晴らしいのですが、今回もはじけていて若々しくキレやウィットがあり良かったです。登場した瞬間から周りから際立ち、明るく輝いていること!!

それと、今回特に感心したのは、デルフィーヌ・ムッサン。ベテランだと思いますが、まず、ここまで体形が研ぎ澄まされている女性ダンサーは見たことありません。近くで見たので、その美しい筋肉のつき方にビックリしました。踊るためにあつらえた、最高のF1のような仕様とでもいいましょうか。もちろん踊りも粋そのもので、バランシンスタイルをシャープでセクシーに体言していました。
それに、とにかく動けているのですね。2人は本当に良かったです。

ロンベールの踊りのパーツは、とにかく強烈な個性を必要とします。優しい、繊細とは逆の女性の持つ強さを示すような…。口角の下がった強そうな顔立ちから、迫力ある体型もよく合っていたと思います。この幕は、途中、早いテンポの音楽が途切れずに、次々とダンサーが踊り比べのように入れ替わり、どんどん盛り上がっていきます。はじける躍動感が見ていて楽しいですね。




【ダイヤモンド】音楽:チャイコフスキー

(ジロー、マルティネス、コール・ド)

今までと、全く雰囲気が変わり、ロシア的な“クラシックバレエ”の美しい世界へ。
プティパ振り付けの有名な作品のオマージュのようで、白鳥、眠り、ライモンダ…と見覚えある動きが次々現れてきますので、思い起こすのも面白かったです。

幕が上がるとチャイコフスキーの華麗な旋律と共に、白と銀を基調としたクラシックチュチュのダンサーがずらりと現れ、先程までと同じバレエ団かとばかりに、より繊細なスタイルで美しく踊ります。体型もこの幕ではさらにほっそりとしたコール・ドで、今までと違った印象をより強く感じてしまいました。この幕に登場するダンサーは、男女とも、とりわけ美しかったです。
背景は一面水色で、上部にきらめく銀色の飾りが品良く横に雲のように流れた感じのものでした。

主役は、前からお気に入りのジローとマルティネス。2人は、大変背丈が高く、周りとは迫力が違います。
ジローの個性に、この「ダイヤモンド」は合ってるとはあまり思えませんでしたが、完璧な古典作品ではないので、アプローチの仕方は興味深かったです。あえて、絶対に似合いそうな「ルビー」をはずした日を私は選びました。

久々に見たジローは、間近で見たせいもあり、圧倒的に大きくて、胸、背中など、やたら逞しく、リフトされる時など、正直重そうに感じてしまいました。
でも存在感と煌めきいう点では、他のダンサーにはない独自の個性が光っていて、本当に早くエトワールの称号を与えて戴きたいです。
全体の舞台を背負っていく力を持っていると感じますが、今回はかなり後半スタミナ切れ気味で息が上がって辛そうでした。確かにこの踊り、休みなくかなり大変そう…。でも好きなダンサーです。

マルティネスはなんて優雅でエレガンスに満ちているのでしょう。無理矢理なキメを強調したり、やりすぎな点がなく、あくまで自然に流れるように踊っていました。本当に好感の持てる美しいダンス。体型も背は高いのですが、腰から脚のラインが大変美しく、メチャメチャ気に入りました。



でもこのバレエ団、エトワール以外でも、ダンサーのレベルが非常に高く、そんなに頂点のダンサーと差がないと思いました。ジロー、アバニャート、ムッサン、ドラノエ、etc…、数え切れないですよね。主役でも遜色無い人が…。



2003年03月12日(水)
◆『三月大歌舞伎』(夜の部)  仁左衛門、勘九郎、玉三郎、富十郎、芝翫、左團次、弥十郎、他…

 
歌舞伎はいつ観ても、その生の舞台の迫力に圧倒されたり、アドリブに大笑いしたりと、その素晴らしさ、面白さを毎回感じていましたが、今回ほど華のある役者が勢ぞろいの舞台は、毎度の事では無いので、楽しみに出かけました。
今回は歌舞伎が好きな母と出かける筈でしたが、ケガで入院してしまいましたので、急遽、観るのが初めてという従妹を誘いました。
初めてでも解りやすくと思い、イヤホンガイドも借りて舞台を拝見。彼女も大変楽しんだ様子で感動したそうです。


【傾 城 反 魂 香】

絵の師匠である、土佐将監光信〈左團次〉のもとに、お見舞いに行く主人公の又平〈富十郎〉と妻のおとく〈芝翫〉
忠義心もあり土佐派の絵師である(土佐の名前を与えられていないが)主人公の又平は、真面目で実直ではあるが、不器用で“どもり”というハンディの為、おとうと弟子の修理之助〈勘太郎〉にも出世の先を越され、何とか手柄を立てて、“土佐”の名前を与えてもらいたいと、遠方から師匠のもとに通っています。
しかし、どう願っても、訴えても師匠に訴えは通じません。
そこへ主家の姫君を救出するという、手柄をたてるチャンスがめぐってきます。
ですが、師匠は、おとうと弟子の修理之助に助けに行くように命じます。
唯一のチャンスも逃し、生きる希望も無くなり“どもり”を嘆きながら夫婦で死のうと覚悟して最後に、この世に生きた証として、庭の手水鉢に一世一代の自分の絵を残そうとしますが…。

この演目を観るのは二度目になります。以前も又平役を富十郎さんが演じたのを拝見していました。
不器用な夫と、主人を思う少々お喋りで気のいい女房。
この取り合わせに可笑しみもある分、思うように自分の気持ちを話すことが出来ない“どもり”というハンディのもどかしさ。
師匠に伝えたくても伝えきれない心の内が、セリフや演技から悲痛な叫びのように聞こえてくるかのよう。

また、今回の女房おとくを演じた芝翫さんは、夫が話せない分、変わって一生懸命話す前半は楽しい劇になっているのですが、後半のどうする事も出来ず、死を覚悟する場面の悲痛な嘆き、身体自体に不足があるわけではないのに、ただ“どもり”というだけで、なぜこんなに惨い想いをしなければならないのか…。
涙を誘う迫真の演技には、強い夫婦愛を見せつけられ、胸に迫ります。
以前観た時より、かなりホロリときて、地味目な演目ですが、心に強く残りました。

そう、話の終盤は、一心不乱に手水鉢に書いた絵が、不思議な事に、石の反対側に抜け出て、その奇跡のような現象を観た師匠に、“土佐”の姓(武士の資格も得られる)と、衣服、刀、印可の筆を贈られ、喜び勇み姫君救出に赴くのでした。

〔*注 不快に思われるかもしれませんが、セリフで吃音の事を“どもり”と表現していましたので、あえてこの言葉を使用しました〕


【連 獅 子】

実に華やかな親子共演。狂言師のちに親獅子役は中村勘九郎、子獅子役に勘太郎、同じく七之助という、観客が見たくなるような配役ですね。
こういった舞踊作品を見るとき、振りの一つ一つに込められた意味の深さを知るのに、イヤホンガイドは有り難かったです。
初めは3人とも狂言師で登場します。そして、勘九郎の親狂言師が、文殊菩薩の霊地である清涼山の様子を、中国の壮大な風景を映し出すように重厚に舞い、遥かな景色が目に浮びました。

つづき、親獅子が子を谷に突き落とし、這い上がってくる子のみを育てるという故事を3人が舞います。
大変迫力ある踊りで、男性ならではの力強さを感じました。
この場面は、獅子親子の試練に耐える姿ばかりでなく、“芸の道”やその他の過酷な訓練、厳しさに耐えることにも読み取れるところのようです。
勘九郎の突き落とした子を心配する演技や、一直線に親のもとに這い上がろうとする子獅子の一途さも良く表現していたと思います。
それに、勘九郎がいつも見せる軽みとは全く違い、役に対して深く洞察したことがうかがえる出来でした。(ここまではまだ狂言師の扮装)

獅子の姿に変わる為に3人が一旦退場したあと、狂言場面(本当に狂言の手法)になり、法華宗の僧(信二郎)と、浄土宗の僧(扇雀)が登場し、清涼山の石橋への道中を面白可笑しく演じて、場を和やかにしていました。

そして、獅子の精になって激しく舞い踊るお楽しみの場面。
花道から登場するときも一度出て引っ込み、再び登場する、歌舞伎ならではの期待を更に高める伝統の演出。白と赤の牡丹の中で、長い獅子の毛を振る3人の姿は勇壮で圧巻。

舞踊はしっとりした舞いもあれば、このように大迫力で激しい踊りも見ることができる、歌舞伎公演はなんて楽しく奥深いのでしょう。
観客も大喜びで拍手喝采でしたが、歌舞伎の場合どんなに盛り上がってもカーテンコールが無いのは残念だなぁ。


【与 話 情 浮 名 横 櫛】

とりわけ華やかな役者が揃い、随所に見所だらけのこの演目は期待とともに拝見しました。
いやぁー 面白かった。生の舞台の醍醐味を味わいましたよ。

《序幕、木更津海岸見染の場》いわゆる、土地の親分、赤間源左衛門の妾、お富〈玉三郎〉と、大店「伊豆屋」の若旦那、与三郎〈仁左衛門〉が、木更津の海岸でお互いを一目で見初める出会いの場面。
大勢の子分に付き添われ、現われた玉三郎のお富は、なんとも大人の色香を漂わせながら、威厳を持ち、凛とした存在感。

対する仁左衛門の与三郎は、若旦那というお坊っちゃん気質を、登場の場面から柔らかく大らかに表現し、此方も大変男前で色っぽかったです。
特に嬉しかったのは、舞台装置が変わる場面で、花道の反対側の客席に降りてきて、1F 通路をぐるりと一周、アドリブに近い話をしながら廻ってくれました。近くでお姿を見られて観客も大喜び。生舞台ならではの興奮ですね。
そして見所は、二人がぶつかって出会った時に見惚れあって、お富は周りに勘ぐられないように「いい景色だねぇ」とごまかし、与三郎は、ぼぅーとなって、着ている羽織を落としてしまう。何とも見事な演出です。

《赤間源左衛門別荘の場》
親分である主人の源左衛門〈弥十郎〉の留守にお富は、与三郎と逢瀬を重ねます。
この場面のお富と与三郎は何とも初々しく、ですが最後はお富のほうがリードして、障子の影に隠れてしまいます。障子のシルエットで愛の場面を客席に映し出す演出で、大変なまめかしかったです。与三郎の初心なしぐさが印象的。

しかし、子分に告げ口され、主人の源左衛門に発見されてしまいます。お富は逃げ込みましたが、与三郎はその場で捕まり、身体のいたる部分に刀で斬りさいなまれて簀巻きにされ海に投げ込まれてしまう。
お富は、海岸まで逃げたが、子分に追いつかれ、与三郎は源左衛門の手にかかったと聞いて茫然自失となり、海に飛び込んでしまいます。

この、“赤間別荘の場”はここしばらく上演していないそうで、今回は珍しいみたいです。
なぜそうだったのか疑問。前後の話の流れもよりわかり易くなるし、色っぽい逢引場面にポッーとなり、最後にお富が逃げるところは、ハラハラする面白い場面でしたので…。
それにしても主役二人は美しい。

《源氏店の場》
木更津での出来事から三年後。黒塀に見越しの松が植えられた、江戸の大店の大番頭、多左衛門〈左團次〉宅。お富は海に彷徨っていたのを助けられ、多左衛門の世話になっていました。(後に兄という事がわかります)
お富は銭湯の帰りで洗い髪姿で色香が匂う風情です。軒下で雨宿りをしていた手代の籐八〈松之助〉を邸内に引き入れ休ませる。
このお富と籐八のやり取りがものすごく面白く、客席の笑いを誘ってました。
お富に気のある籐八を、全く相手にしてないお富が、からかい気味にお化粧したりと…。コントのような感じかな…。

そこへ傷だらけの与三郎が顔を隠しながら、ならず者でゆすり屋の蝙蝠安〈勘九郎〉と連れ立って登場。
ここからの三人での掛け合い芝居の面白かった事!! 勘九郎が入っただけで、芝居の空気がガラリと変わります。蝙蝠安はゆすりたかりをするが、どこか憎めない小物ぶりで、勘九郎にハマる、ハマる!!

与三郎は初め、お富がいるなどと知らずに蝙蝠安について来たが、途中、お富と解り、自分が死ぬ思いをし、このような姿に変わり果てたのに、お富は優雅に安穏と妾として暮らしているという事が我慢できずに、お富を攻め立てます。お富の言い訳も聞きはしません。
お富の玉三郎は、先ほどの籐八に対して軽くいなしていたのと違い、必死になって身の潔白と、けして妾などになっておらず、無償で世話になっているだけと訴える演技の対比が凄かったです。
多左衛門が帰ってきて、全員をなだめ、お富に渡したお守りで、彼が実はお富の兄だったので世話をしていたと解ったところでめでたしになるのですが…。

今回の玉三郎は匂う様な女っぽさ、仁左衛門の若旦那ぶりと三幕目での斬られ与三郎になったときの演技の対比と色気、勘九郎の調子いい小物悪党ぶりを楽しめて幸せでした。



2003年03月01日(土)
◆Adventures in Motion Pictures『白鳥の湖』(ソワレ) ジーザス・パスター、アンドリュー・コルベット、他


スワン&ストレンジャー: ジーザス・パスター
王子: アンドリュー・コルベット
女王: エマ・スピアーズ
執事: スティーブ・カークハム
ガールフレンド: フィオーナ=マリー・チヴァーズ



雨降りの土曜日、公演会場オーチャードホールへ。
ソワレの開演に間に合うように渋谷に向いましたが、山手線が事故の為、電車の運転が止まっていたようで、駅構内は人で混乱してました。私は何とかたどり着きましたが、放送で少し開演を遅らせるとの旨のアナウンスがなされていました。あせった人も多かったのでは…。

AMPの『白鳥の湖』、この時の“白鳥”はジーザス・パスターと配役表に書いてあり、やっぱりというのと少し残念というのが最初の正直な感想でした。本当にごめんなさい。
でもまぁ、作品の良さを知っていた為、期待しながら開演を待ちました。

さて、始まると、最初から面白さにグイグイ引き込まれてしまう素晴らしい作品。
もう少しこうすればなぁ、などと思うところがなく、完成度の高い内容ですし、イギリス的な社会文化が垣間見られるのも魅力的に感じます。
あと、不思議ですが、使用されているチャイコフスキーの『白鳥の湖』の音楽が、古典のものとマシュー版とでは内容が全く違うのに、ピタッとはまり見事です。
最初のワルツの音楽が終わるくらいで、母としての女王の性格や、愛情に飢えている王子、細かいところまで良く伝わるのも凄い。
美術、照明、衣装の完璧さにはひたすら感心するのみ。音楽も生オケではなかったですが、聴き辛くなく良かったです。作品の出来について文句なしに楽しめました。

アンドリュー・コルベットの王子はオーバーな表情や演技をせずに孤独感や満ち足りなさを表し、常に周りに気を使い物事をだんだんと溜め込んでしまうようなタイプに見えました。
そうやって耐えに耐えて爆発したのが、3幕の「宮殿の広間の場」の女王に拳銃を向けるシーンの演技。そこまでの高みにじょじょに持っていく凄まじさがとても気に入りました。
その後の精神が崩壊していく様子も見事で、とても感情移入してしまいます。もう母性本能くすぐられまくりで、助けてあげたくなってしまいました。

また、女王役のエマ・スピアーズが素晴らしい。幾つになっても、女王という立場でありながら“女”を捨てないぞという雰囲気、冷たく時に高圧的に見えても、色香たっぷりでいい味出してました。
女王は王子を立派な王として育てたいが為に、あそこまで冷たく王子を突き放したのか解りませんが、最後に王子が亡くなった(のよねぇ?)時の演技は、たしかに愛があったと感じさせるものでした。
姿かたちも大きめな人で、ダンスシーンなどはとても迫力ありましたし、あのツンとしたメークや表情しぐさ、キッチリはじめから決められた演技方法だとしても、はまり具合がいいですよ。

ガールフレンド役のフィオーナ=マリー・チヴァーズは、もうかなり気に入ってしまいました。
金髪の可愛らしい方で、演技のいたるところ、一つ一つの表情が魅力的で見入ってしまいました。
映像版では気にくわない役だったのですが、今回その可愛いことといったら…。(私的には「ビバ・ヒル」初期のドナちゃんに見えた)
彼女は形ばかりで愛の無い王子の生活の中では、型破りな自由の象徴、王子がかかわった人の中では、人間らしく普通に振舞う唯一の存在。
とりわけ魅力的に見え、重要で深い役だなと実感しなおしました。
3幕では彼女を見下した女王に対し、あんたなんかに屈服しないぞという態度でお辞儀をするあの演技、「いいぞ!」と応援してしまいました。
ホント彼女いいですよ。

スワン&ストレンジャー役のジーザス・パスターですが、日本では多分存在をあまり知られていないということで、私みたいな「白鳥」=アダムの印象を強く持っている観客達に、アダムと全く違った彼の個性で魅せなければならないという大変な責務を感じて公演に挑んでいるだろうと思われます。
正直、キャスト発表していたら、違う3人3様の白鳥をそれぞれ買って見てもいいと思ってましたが、1回だけ観にいくのでしたら、知らないジーザスよりもアダムで是非と思ってしまう。
キャストの当日発表というのは誰が出るか解らない訳ですから、何度かで行ってもいいかなと思っている人も、手が出せなくなってしまうシステムですよね。

ジーザスの白鳥の踊りはキレというよりにバネがあり、アダムのような鋭さや神秘的というより生命感を感じさせる印象です。見た目的には、身長はそんなに高くなく、肩から腕にかけてとても細くて長さはない、胸筋はあまりなく胴回りはポコッとあって少し不思議なスタイル。誰とも違う体形。
出来れば“男”、“魔をもつ生物”なんて感じにセクシーさを見たかったかなと…。
良い人に見える風貌なので危険な雰囲気もほしかったと思います。
踊りの印象は柔らかく伸びやかです。3幕の時はラテン系アウトローのような感じがしましたが“美”という点と、“皆を魅了する”ということに関しては私の好みとは少し違うのですね。
まぁ、あくまで私的好みの問題ですが…。 
でもとっても頑張っていて好感は持てました。
特に最後のカーテンコールの満面の笑みは忘れがたい印象を残してくれました。

まだ、公演の日程は残っているようですが、見た人が、また買い求めるということでチケットは、ほぼ残ってないようです。 
再演を希望するのみですゎ。
どうか是非お願い!!

*後日、追加公演の券を手に入れました。やったー!