ヒトリゴト partIII
 Moritty



愚痴

2003年11月27日(木)

ああ、もうこんな世の中いいことないから生きていたくなんかないよ、と思う。でも、そんな愚痴を言っている自分は、生きていたいという欲望でいっぱいだ。生きていたいから、愚痴を言う。

人事考課の季節がやってきた。外資系で働く人間にとっては非常に大切な季節で、この時期になると急に勤務態度が良くなったり、やる気を見せちゃったりする人も多い。私もやっぱり意識せずには入られない。だって、サラリーマンだもん。今日、人の人事考課表を書いたのだが、書きながら改めて客観的評価の難しさを感じた。公正な評価、といいながら、やっぱり主観が入ってしまう。ちょっと虫が好かないのよね、という場合、仕事がいくら出来ていても良い評価は付けづらいのだ。卑近な例だが、セクハラでクビになったドメ男が良い例だ(2月5日の日記参照)。彼は、百合子さんとウマが会わなかったので、部下である彼女の評価は史上最悪だったらしい。それも大人気ないけれど、多かれ少なかれ、人事考課に主観が入ってしまうのは避けられない。私だって、やっぱり少し入ってしまう。そうなると、仕事が出来ることも大事だが、とりあえず上司の機嫌をとっておく、というのも実に大事だったりするのだ。これを、社内政治とか呼ぶのかもしれないが、そういうのを目の当たりにするとウンザリする。

そんな気分で「白い巨塔」を見ていたら、さらにウンザリした。仮に人のいのちを扱う医者があんなんじゃ、死んでも医者にはかかりたくないと思う。こんな世の中、生きる価値なんかないんじゃないか、と思う一方で、やはり生きたいという欲望からは逃れられない。

そして、こうやって欲望の裏返しである愚痴を日記に書き留めていたりする。



眠れる獅子

2003年11月26日(水)

2週間ほど前、日経新聞から取材を受けて、我らがプロジェクトが一面トップ記事になったことがあった。その記者は「明日の朝刊に記事出しますね」と言っただけだったので、翌日の朝刊を見て驚いてしまった。一瞬、「まずいこと書いてあったらクビかも」と慌てふためいてしまったけれど、結果的に問題はなかったし、それなりに知名度もあがったので良かった。今日、その新聞記者から電話があり、来週東京に来るCEOと調査部ヘッドとインタビューをしたいのでアレンジをしてほしいといってきた。あやー面倒だわ、と思ったけれど、CEOは割りと露出好きなのでとりあえずミーティングをセットすることにした。でも、どんな質問をするのか前もって聞いとこう、と思って記者に問い合わせると、知りたいのは「我々の組織の中国での活動」だった。

某大手自動車メーカーに勤めるエリー曰く、ここ数年儲かっているのはダントツ中国なんだそうだが、まだまだ自由化が実現していない金融業界のこれからの注目の的はやはり中国だ。中国の為替制度は「管理フロート制」と言って、中央銀行である中国人民銀行が必要に応じて為替相場に介入する体制だが、最近、アメリカや日本からの人民元切り上げに対するプレッシャーは大きい。とは言え、1985年のプラザ合意で円切り上げを余儀なくされた日本で、輸出企業が大きな打撃を受けて経済が一時停滞したことを知っている中国は、簡単に要請を受け入れられないのだろう。しかし、それも時間の問題だと思われる。

しかし、本当に中国金融市場は我々の予想通り発展するのか、とふと思う。中国では欧米の常識は通用しないのだ。ましてや、こんなにお人よしの日本人が参入して一儲けする余地は(技術系は別として)あるのだろうか。(カモにされたりしないだろうか。)今、引き続き停滞している国内市場のみで市場取引による収益を上げるのは難しいのかもしれないが、かといって中国市場に期待するのは、想像以上にリスクが高いのではないかと思ったりする。



冷たい雨

2003年11月20日(木)

今日は一日雨が降っていた。冷たい冷たい雨だった。

昨日の夜2時から朝の8時まで電話会議だったので、その後仮眠をしてからお昼前に出勤した。日本にいながら時差ぼけみたいな気分だ。すごく忙しい。だけど、最近は自分の意思で何かをしているという気がしない。よく、「人間は神の意思によって生かされている」、という表現を聞くけれど、今の私は「生かされている」という感覚そのもの。でも、それが神様によってなのかどうかはわからない。最も、それがわかれば、こんなに落ち込まないのだろうけれど。

冷たい雨が肌に沁みて、心も冷たくなってしまったみたい。そんな憂鬱な一日でした。



夜更けの訪問者

2003年11月05日(水)

母が病気になって、実家で眠ることが多くなった。夜、眠っていると、ピシッ、ピシィと渇いた音がする。寝静まった夜更けの音は妙に耳に響いて、眠れない。何か硬いものを叩くような音なのだけど、ノックのような規則的な音ではない。そういえば、去年の今頃もちょうど母が入院していて、一人で眠っていた時にやはり奇妙な音に驚いて、眠れなくなったことを思い出した。そうか、もう秋も終わりなんだ。

昨年、薄気味悪い音で眠れなかった翌朝、頭痛に苦しみながら庭を歩いていると、あちこちにどんぐりが落ちているのに気付いた。私を寝不足にしたあの音は、どんぐりが屋根瓦に落ちた時の音だったのだ。耳をすませてみれば、昼間でもどんぐりの落ちる音は聞こえてくる。音の正体がわかってほっとする反面、含まらせていた想像力がしぼんでしまい、少し淋しい気もした。

そんなことを、ピシィと鳴る音を聞きながらふと思い出した。季節が廻るのは、なんて早いんだろう。

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