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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年03月30日(金) --

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『朗読者』

36歳の女性と15歳の少年。 ふたりは恋人になった。 とても話題になった作品なので、 何かしらスキャンダラスで暗い結末への先入観は 持っていたが、それは杞憂にすぎなかった。

わたしにこの作品をすすめてくれた方の いわれるように、年齢を経て初めて同化できる テイストというものは、確かにあるように思える。

人生を問うために本を読む。 わたしはどうしてもそれをしてしまう。 それは人に対するのと同じコミュニケーションなのだ。 そこに同化して、仮の人生を生きることで 現実の世界を生きやすく形づくっていく。 ものごころついた頃からそうしてきた。 他者に共感する想像力は、そうして獲得してきたと思う。 いつも、本から人生のテイストを学ぼうとしてしまうのは 結果として読む本の範囲を狭くもしているけれど。

朗読者のスタイルには、淡々とした時間の経過と 語り手である少年の内面は描かれるけれども、 ハンナという女性の側の内面、いわゆる人生の薀蓄などは かすれた活字の間にしまわれて、 表面には浮かび上がらない。 なのに、読み進むうちに、彼らの人生の薫りが、 わたしを取り巻き、豊かさをくれるのだ。 やがて、ほんのちょっとした出来事から、 わたしも敏感に何かを察するようになる。

そして思う。 生きるということ、その単純な美しさを。

ストーリーの醍醐味が損なわれないよう、 未読の方は解説を後に回すべし。(マーズ)


『朗読者』 著者:ベルンハルト・シュリンク / 出版社:新潮クレスト・ブックス

お天気猫や

-- 2001年03月29日(木) --

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『妖都』 

デザイン・京極夏彦。 いや、それは余談として(笑)。

現代作家の、しかも日本のホラー小説は、 ほとんど読んだことがない。 もと少女小説界のスターだったという津原泰水も はじめてだった。 図書館で、なんとなく手に取ったのだ。 スタンプがけっこうたくさん押されているのが 面白さの証拠になるだろうと借りた。

実体を伴った、普通の人には見えない死者の群れが、 邪神の化身に導かれて東京に現れる。 絶対的な主人公はいないが、すべての人物に光が当たり、 犬たちも重要なポストにいる。

わたしはほんとうは、あの危険で残虐で救いのない 時間と空間から遠く隔たった安全なところにいるのでは なくて、ほんとうは、ほんとうは。

…ということを、考えまいとしていた自分に気づく。 そんな感覚をもって読み終えた。

その時間と空間はひとによって違うのだろうが、 少なくてもわたしのなかに、そうした記憶が 封じ込められたフィールドはあるのだと思う。 それはもちろん、この世界で経験したことではなくて、 証明のしようのないことではあるけれど。

それなのに、絶望ではない。そこにあるのは。 そこが津原の作風なのか、力量だと思う。

そしてまた。 犬は鏡である、と津原はいう。 そう、犬は鏡である。 それが、犬と子どもの大きな違いかもしれない。(マーズ)


『妖都』 著者:津原泰水 / 出版社:講談社

お天気猫や

-- 2001年03月16日(金) --

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☆春休みのお知らせ

あったかくなったので、少しお休みします。

お彼岸のころに、再開しますね。

よろしくおねがいいたします。



お天気猫や

お天気猫や

-- 2001年03月13日(火) --

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『合格英単語600』

副題は、「東大入試でも、これだけで十分合格」。

なぜいまごろ、受験勉強かというと、別に受験のためではない。 あまりにも基本的な英単語を知らないことに恐れをなして、 以前、英会話に通っていたころ、シィアルからすすめられて 購入したこのミニ判を持ち歩き、信号待ちなどの車中で ぶつぶつとそらんじているこの頃。

これを完璧におぼえた自分の姿に酔いしれながら? いやほんとうに、それができればたいしたものだ。 おぼえさえすれば、東大に行けなくても大満足。

それにしても、この本、ちょっとユニークなのは、 単語の解説。 たとえば、destroyという単語には、 十年以上前、デストロイヤーという覆面プロレスラーがいたので この単語は覚えやすかった、などと書かれている。 はい、私もその世代ですから。

赤いプラスティックのシートを重ねても、 即座に意味が答えられるようになりたいものである。 それは一種の芸であろう(ハハハハハ)。(マーズ)


『合格英単語600』ミニ判 著者:鈴木友康・狩野裕健 / 出版社:ごま書房

お天気猫や

-- 2001年03月12日(月) --

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『明るいほうへ』

金子みすヾの、この童謡詩集を買ったのは 山口県の萩にある古書店でだった。 旅先で、なんの気なしに手にとったのだ。 わざわざ古書で買わなくても、好きなのだから 新刊を買えばよいものを。 そこにその本がずっと置かれているのなら、 私がと思ったのかもしれない。 今思えば、みすヾの郷里も山口県とあって、 なんだか縁を感じてしまう。

金子みすヾの復権を思うと、 世のなかはそういうふうにできていると改めて思う。 非凡な才能は、いつか再び見られる日がくる。 同世代のなかで、やがてうずもれてしまっても、 いつか、時の向こうで、 新しい読者が待っているのだ。

みすヾの詩ったことばは、 光で織られている。 読むほどに、それぞれの胸に 住処を見つけて人生の友になるだろう。

ひとつだけ言わせてもらえば、 彼女のものの見方は、太陽の光のように すべての方向から放射されている。 アマテラス─創生の女神にも似た、日本という 場から無限に生まれてくる、許容のエネルギー。 だから私たちは、ただ受け取ればよいのだ。 美しい日本語にのせた、女神の想いを。(マーズ)


『明るいほうへ』 著者:金子みすヾ / 出版社:JULA出版局

お天気猫や

-- 2001年03月09日(金) --

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☆本を売る

とにかくいいかげんに部屋を減量せねばと思い、 40冊くらいの文庫やハードカバーを車に乗せて、 全盛のBOOK○FFへ行った。 どうも一人で行くのは気がすすまなくて、延ばしていたのだ。

以前図書館で引き取ってもらえなかった、ちょっと前の ハードカバー類も含まれているので、心配しつつ。

カウンターにブツを渡して10分くらいのうちに 検品と見積りができて呼ばれた。

なんと、合計1460円。 そ、そんなに? 私の予想では500円くらいだった。 だって、なかには自分でも売るのに良心の呵責を感じるような 古いハウツー本もあったのだ。 なぜか値段がつけられないという10年ほど前の文庫本が 3冊くらいあって、それは引き取ってもらった。

すでにそのときには、棚で物色していたコミックを1000円ばかり 買うつもりで抱えていたので、もらったお金の一部で入手。

もっと売るものはないだろうか、と思っている。 資源はリサイクルしなければね(笑)

余談だが、店に入る前に、駐車場で遠くから呼び止められ、 近所の宅配便業者の方に、ちょうど良かったとばかりに 手渡された包みの中身も、また本。 (というかそれよりそんなことしていいのか?)(マーズ)

お天気猫や

-- 2001年03月08日(木) --

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『ガラスの麒麟』

一編一編が心に沁みる独立した小さな謎ときで、 最終話まで通して読むと 『きれいなガラス玉に糸を通して首飾りが出来上がるよう』と、 かって有栖川有栖氏が表現したように、 全体のストーリーがつながって見える 加納朋子さんお得意の手法の連作ミステリ集です。 惜しむらくは静かな語りが身上の加納さんの文章だと アクティブな展開のはずの最終話は 視点が細かく変わるために勢いが削がれてしまう。 読み物としての技術的な点がもっとこなれれば、 ガラスは更に鮮明に輝く事でしょう。

理不尽にも通り魔に若い命を奪われた少女、 彼女の友人、教師、親達の日々の生活の中に 時折起きる不可思議で不気味な謎。 それらのひとつひとつの意味するところを見抜くのは もの静かな保健室の神野先生。 女子高生は傲岸で愚かで陽気で 楽しそうで生気に満ちあふれてみえる。 けれど中身は空洞で不安定で酷く脆い事を 神野先生は知っているから、 そんな子たちはみんな保健室にやってくる。 大人も先生に相談しにやってくる。 そうしていくつかの事件を経て、 恵まれていると思われていた 死んだ少女の真の淋しさが、 周りの人々にも見えてくるのです。

そう、女子高生は周りがまだ見えない、 自分では十分大人のつもりだったけど 社会と自分とを結び付けて全体的に考えられるのは やはりもっとずっと後になってからの事だったと、 昔女子高生だった大人は今になって思います。 そしてそれは自分自身ではどう仕様もない事なのでした。 だから、とても危うい。(ナルシア)


『ガラスの麒麟』 著者:加納朋子 / 出版社:講談社文庫

お天気猫や

-- 2001年03月07日(水) --

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『一瞬の光のなかで』

すすめられて、はじめてゴダードに会った。 ハードカヴァー2段組468ページが、飛ぶように過ぎていった。 とつぜん消えてしまった理想の女を追う旅。

アイリッシュの『幻の女』もそうだった。 せつない予感と幻に翻弄されながら、 ゴダードの仕掛ける謎の迷路にはまり込む。 罠は結び目のないシルクでできている。 謎めいたハンモックは、どんなに揺れても切れることはない。 私たちはそれを知っているから、ハンモックに 常識や理性や義務といった重荷を乗せて揺すってみる。 ふとめまいがして、目を閉じたとたん、回りの小道具が 一瞬前より、ずっとリアルな空気を呼吸していたとしても。

舞台はイギリス。 主人公は写真家の「わたし」。 彼が何度も訪れる古い石づくりの街、バース。 かつてこの保養地を2度訪れた私の見たのが陽画なら、 ここに描かれるバースは陰画、光と影の反転した街。

劇中劇の主役、過去の女性、マリアン・エスガード。 写真史に残るべき、きわめて重要な発見を したとされる科学愛好家。 絶対的な運命の結果を知らされた読者にとって、 幾重にも魅力的なマリアンの人生。 生まれる時代を間違えてしまった不幸な女。 でもほんとうにそうなのだろうか? その答えは、彼女だけが知っている。

"Caught in The Light"
一瞬の光のなかで。

まさに瞬間と瞬間のはざまに生きながら、 行間を文字がすべりゆくかのように、 ここに息づく人生もまた、 運命の本に写し取られてゆくのだろうか。(マーズ)


『一瞬の光のなかで』 著者:ロバート・ゴダード / 出版社:扶桑社

お天気猫や

-- 2001年03月06日(火) --

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『クリスマスに少女は還る』 その(2)

聖ウルスラ学園。

そこは一世紀の歴史を誇る、 知能においても性癖においても 「平凡でない」子供たちの集められる学校である。 (聖ウルスラ会はイタリアで起こり、 なんと日本にも学校がある) この学園があるニューヨーク州の静かな田舎町で クリスマスの直前、学園の生徒、10歳のサディーとグウェン、 二人の少女の誘拐から物語は始まる。 目撃者である病的に内気な天才少年、 かつてその学園に通っていた天才警官、女性法心理学者。 子供たちの日曜学校の教師で、刑務所で変身を遂げた神父も 過去と現在をつなぐ環のなかにいる。

警察小説でもあるが、このミステリは 聖ウルスラ学園の生徒たちの戦いでもある。 後半、この学園の影がうすくなるのは少々もったいない 気がする(もっと学園長を出してほしかったのだ)とはいえ、 これほど主人公たちに親近感を感じるミステリも めずらしいのではないだろうか。 人間は皆、どこか毀れている。 だからこそ、私たちは強い希望を持ち、ともに 犯人と、そして彼らの過去と戦うのだ。

シィアルの助言に従った私は、解説を先に読まなかったので 予断なしに読み進むことはできたが、 うっかりして、終盤、「地獄の刑事」を信じかけてしまい、 勝手に肩をすかされてしまった。

表の主人公は若きルージュ・ケンダル警察官。 なんとはなしに、境遇や性格やルックス(そっくりともいえる)が P・コーンウェルの『サザンクロス』の元ジャーナリスト警官、 アンディ・ブラジルに似ていて好きだ。 彼は子供のころ、双子の妹を連続少女誘拐犯人に殺され、 崩壊した家庭で、半身として深い傷を負いながら生きている。

顔の片側にホラー映画まっさおの傷がある法心理学者、 アリ・クレイも、彼女を追い慕うFBI捜査官アーニー・パイルも さらわれた少女の親たちも、皆強さと弱さの危ういバランスで 輝いている。 脇で物語をしっかり支える母性。 サディーの母、グウェンの母、ルージュの母、 親がわりの寮母。警察で男たちを支える名物秘書。 心やさしいマッシュルーム・レディ。 聖女ウルスラの恩恵なのか、母たちの名演には ただただ脱帽である。

そして、読む者をとりこにせずにはいない ホラーマニアの向こうみずな少女、サディー・グリーン。 愛さずにはいられない、その個性。 もっともっと書きたいけれど、彼女の魅力には本のなかで 予断なく出会ってほしい。 B級ホラー映画のファンなら、誰しも少女たちの会話に 思わず笑い出し、その光景が目に浮かぶことだろう。 ティム・バートンなど、ひっくり返って笑うだろう。

この稀有な物語を読み終えた読者は、 また引き返してページをたぐることになる ──自分だけの、「クリスマスの奇跡」を求めて。(マーズ)


『クリスマスに少女は還る』著者:キャロル・オコンネル / 出版社:創元推理文庫

お天気猫や

-- 2001年03月05日(月) --

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『黒祠の島』

帯に「孤島、因習、連続殺人」、 ジャンルは長編本格推理となっています。 しかし。小野不由実さんの最新作ですよ。 まさか殺された人々が次々蘇って襲って来たりしないでしょうねえ (いや、大ブレイクした『屍鬼』はまだ読んでいないんですけど)。 帯には『獄門島』『十角館の殺人』が並び記されています。 どちらも孤島の「意外な犯人」の名作であります。 でも、どっちかというとファンタジー作家として 名高い小野不由実さんですよ。 いや最近用心してかからないと、 今どき古風な普通の謎ときミステリでは なかなか読者をびっくりさせられないものですから、 作家達もあらゆる手段を用いますので。

失踪した友人を探すため孤島に渡った調査員は、 皆一様に何かを押し隠すかのように 事実を語らぬ島民の態度に困惑します。 この現代においても、島には厳然たる支配者と犯し難いルールが 存在し、「他所者」には堅く扉が閉ざされているのです。 主人公は地道な聞き込み調査を続け、 次第に隠された島の惨劇の数々を知るのですが。

じっくりと重苦しい展開ですが、そこは小野さんの得意技、 登場人物達にだんだん好感が持てるようになるので 読み進むのに辛さは感じませんし、 おどろどろしい雰囲気も満点です。 結局丹念に聞き込んだ情報から、この島ならではの 容疑者の「アリバイ」と「動機」が合理的に示されて、 最終的にきちんと犯人が断罪されるのですが。

だったらいいじゃない、今回はちゃんとルールに則った まっとうな本格推理だったんでしょう? そうですね──事件の内容という点においては普通ですね。 でもね、しつこいけれど小野不由実さんなんですよ。 あれだけ用心しいしい読んだのに、 やっぱりびっくりさせられました。 抑えに抑えた墨色の風景の中、 ぱっと幻のごとく緋色が閃くようなクライマックス。 それはある意味彼女の周囲に居る筋金入りミステリ者達が 昔から悩んで来たパラドックスに対する一撃でもあるのです。(ナルシア)


『黒祠の島』 著者:小野不由実 / 出版社:祥伝社ノベルス

お天気猫や

-- 2001年03月02日(金) --

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『カフェめし』

お料理本コーナーに他の「カフェのレシピ」系の本と並んで 平積みになっていたのですが、 ぱらぱらめくると、普通のレシピ集と違って 雑誌のお洒落な広告みたいなページの作りになっていました。 細々とした小物や風景写真とエッセイ風コピー、 メインはざっくりと個性的に盛り付けられた軽めの料理。

この本のコンセプトは 架空の「海カフェ」と「森カフェ」という 理想のカフェをイメージして、 実在の料理人に作って貰った料理のレシピと、 そのカフェできままに過ごす時間を 誌上に生み出してみよう、という事のようです。 猫や流に言えば「夢カフェ」の本ですね。

ありますよね、お気に入りのドライブコースで ここにちょっと気の効いたお店があったら いつも通っちゃうのに、と思ったり 実際のお気に入りのお店で、こんなメニューや サービスがあったら嬉しいなあとか思ったり。 写真を眺めて自分でも空想をいろいろめぐらせながら カフェで過ごした気分になる、お料理本というより 旅の本に近いかも。

もちろん、実用的にも使えます。 「海カフェ」のエスニックフードも 「森カフェ」のカジュアルフレンチも 家庭で簡単に作れるようにアレンジされているし、 盛り付けやコーディネートのアイディアも満載。

こんどのお休み、お部屋をちょっと模様替えして 「家カフェ」をオープンしてもいいかな。(ナルシア)


『カフェめし』 / 出版社:マガジンハウス

お天気猫や

-- 2001年03月01日(木) --

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『ディズニー7つの法則』

ひとに魔法をかけるには、周到なリアリティーと、 目に見えないような、あるいは目にとまらないかも しれないような舞台装置が、確かに必要なのだ。

誰しも「魔法にかかってあげよう」なんて 思わない。 「さぁ、かけてみてよ」とは思っても。

ディズニーランドも、我々の個人サイト・猫やも そういう視点では同じだ。 ディズニーランドはただ漫然と見ていてもすばらしい。 舞台裏を知って、「そこまでやるのか」という驚きが、 さらなる深い感動を呼ぶ。 猫やはビジネスではない。でも客商売である。 ゲストを大事にすることがなにより自分たちの満足に つながるという思いでつくられている。 余談だが、我々は魔女のハンドルを使っているから、 ある意味、キャスト(ディズニーでは従業員をそう呼ぶ) でさえある。

たとえば、猫やの編集長は、 ほんとうに細かい色のちがいやレイアウトに こだわっている。妥協はしない。 ああでもない、こうでもないと、時間を費やして 画面を猫やらしく最適化する。 コンピュータのテクニックに通じているとはいっても、 プロの専門家ではないから、その作業は どちらかというとブランドづくりと呼ぶほうがふさわしい。

困っているゲストには手をさしのべ、共に笑い、泣く。 初めて猫やに来たゲストでも、和んで、ハッピーになれるように、 また来ようと思いながら帰ってくれるように。 我々全員が心からそう願っているが、だからこそ編集長は、 敏感すぎるほどマナーや表現に気を配っている。 私が原稿を書くよりも、ずっとこだわって 細部と全体を見渡しながら、いつも新しい要素を考えている。 飽きられないように、魔法をかけつづけられるように。

そうした見えない配慮のうえに、我々を乗せた猫やは のほほんとネット上に存在できるのだが、 その編集長も、猫やの一キャストであり、 現実世界に翻弄されつつ生きている 人生のキャストなのである。

…なんだか、思いつくまま書いていたら、 ディズニーの企業理念を自分の会社や生活にどう生かすか、 という本書の趣旨を通り越して、 編集長ほめ殺しになってしまった! 今日は別に編集長の誕生日ではありません(泣)

※またまた余談。編集長はたくさんディズニーの本を読んでいるが、 本書は購入後まだ読んでいないという。 2時間で読めるといってすすめておいた。

そして、 そんな猫やがめざすのは、マジック・キングダムならぬ、 夢のショッピング・モール!(マーズ)


『ディズニー7つの法則』 著者:トム・コネラン / 出版社:日経BP社

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