一昨日の夜中のことだった。 日記が書き終わり居間に行ってみると、聞き飽きた歌が流れてきた。 「おまえ、またこれ見よるんか?」 「会社の人にDVD借りてきたんよ」 「去年、完全版も見たし、もういいやろうが」 「それが、何回見ても飽きんのよね」 「おれは、このドラマを見ているおまえのアホ面を見飽きたわい」 「そんなん言わんでいいやん」 「もういい、ごゆっくり見て下さい。私ゃもう寝ますんで」
聞き飽きた歌とは『マイメモリー』で、このドラマとは『冬のソナタ』である。 嫁ブーは、まだ韓流にはまっているのだ。 家には、『美しき日々』のDVDがあるし、ぼくがタイトルを知らないドラマのやつもある。 それに加えて、今回の『冬のソナタ』である。 そこにぼくのライブラリーなんて一つもない。 つまり、うちのテレビの周りには韓流が充満しているのだ。
嫁ブーはいつも何かにはまっている。 以前はSMAPものだった。 彼らの出ているドラマはすべて見ていた。 その後が、韓流。 一昨日のことがあって、「嫁ブーは、今年も韓流で終わりそう」と思っていたのだが、何とそれだけではなかった。 また新たなものにはまってしまっているのだ。
昨日、床屋から帰った後に街に出た。 給料後の恒例になっている銀行周りに行ったのだ。 その帰り、本屋に立ち寄った。 『20世紀少年』の新刊が出ていたので、それをレジに持って行くと、横で嫁ブーが何か買っている。 何を買っているのだろうと見てみると、コミックが何十冊もあるのだ。 「おまえ、何買いよるんか?」 「花より男子」 「何冊あるんか?」 「全部で39冊」 「えーっ、全巻か?」 「うん」 「ドラマで充分やろうが」 「ドラマは、ダイジェストに過ぎんもん。だいたい10回やそこらで、38巻分の内容を全部出来るわけないやん」 「そうか」 「買ったらいけんと?」 「いや、おまえのお金やけ、別に何に遣おうとかまわんけど。ただ条件がある」 「えっ、条件?」 「おう」 「何ね?」 「おまえが読んだら、次はおれが読むけ、絶対に人に貸したらいけんぞ」 「そんなことね。いいよ」 ということで、ぼくは39冊買うことを承認した。
しかしたまげた女である。 ぼくもコミックのまとめ買いをよくやるのだが、10冊が限度だ。 一度に39冊も買ったことなんかない。 第一、書棚はぼくの本でいっぱいなのに、いったいどこに置くつもりなのだろうか。 そこでぼくは、「おまえ、それどこに置くんか?」と聞いてみた。 「テレビのところ」 「あそこ、おまえのDVDでいっぱいやないか」 「ああ、あれね。あれはもう見たけ、クローゼットの中にでも入れておく」 「命よりも大切な韓流やないか」 「大切やないよ。こっちのほうが大切やもん」 そう言って、嫁ブーは嬉しそうな顔をして、39冊のコミックを抱えて帰ったのだった。
11月29日休み。 今日は午前中に床屋に行った。 前に行ったのは、確か2ヶ月ほど前だったと思う。 3週間ほど前から前髪が垂れてきて、鬱陶しかった。 その頃に行こうと思っていたのだが、仕事が入ったために行けなかった。 その後はご存知の通り、風邪である。 ということで、今日まで延び延びになっていたのだ。
まだ風邪の方は治ってないのだが、いちおう残っている症状は咳だけで、それを除けば健康体とほとんど変わらないところまで回復している。 朝起きて、いちおう体をチェック下のだが、特に悪いところはないようなので、床屋行きを決行することにした。 ただ、いったん咳き込み出すとひどいので、念のために咳止め薬を飲んでいった。 顔を剃っている時に咳き込みでもしたら大変だからだ。
行ったのは朝9時だった。 一番乗りだった。 ところが、床屋には誰もいなかった。 いつも店番をしている犬さえもいない。 ま、いつものことなので気にせずにそこにあった少年マガジンを読んでいた。
近くにいくつも床屋があるのに、なぜこういう待たされる床屋に固持するのかというと、それは『魁!!クロマティ高校』を読めるからである。 これがあるから、なかなか床屋をかえられないのだ。 もしかしたら、他の床屋にも少年マガジンは置いてあるかもしれない。 だが、それを調べるために、冷やかしに行ったりとか、電話で聞いたりとかいう面倒なことをぼくはしない。 そこにあるから、それで充分なのである。 姉さんが出てきたのは20分後だったから、その間充分に『魁!!クロマティ高校』を読むことが出来たのだった。
髪を切っている途中にも、電話が入ったり、集金人が来たりして、なかなか終わらなかった。 それもいつものことなので、ぼくは気にせずに眠っていた。 そういえば、眠っている時に「しんた」という声が聞こえた。 ぼくが声のほうを振り向くと、姉さんが「あっ」と言った。 ぼくが目を開けると姉さんは、「どうしたと? 痛かったと?」言った。 「えっ…。いや…」 そう言いながら、ぼくはあたりを見回した。 だが、その声の持ち主らしき人は見あたらなかった。 おそらく夢だったのだろう。 それか、目に見えない何者かがそういう声を聞かせて、事故を未然に防いでくれたのかもしれない。
ようやく終わったのは、11時前だった。 心配された咳き込みもなく、無事に散髪は終了した。 頭がスースーして寒かったが、長い時間鬱陶しかった前髪も垂れず、実に爽快な気分で家に戻ったのだった。
【追記】 ぼくが入会しているプロバイダ、「ぷらら」がようやくブログサービスを開始した。 試行期間は4000人限定だそうで、サービス開始の昨日、さっそくぼくは登録した。 おかげで、『shinta』のアカウントが取れたのだ。
さて、そのブログを何に使おうかと考えていたのだが、『歌のおにいさん』用に使うことにした。 タイトルは『ショートホープブルース』である。
今日、これまでカテゴリ『歌のおにいさん』に書いた記事を写し、それに音を加えた。 今後は、こちらとは違った記事を書いていこうと思っている。
ということで、『ショートホープブルース』は、 http://pub.ne.jp/shinta/ に置いております。 こちらの方も、よろしくお願いします。
ぼくの店の熱帯魚コーナーに、『小太郎』という名の高校生のアルバイトがいる。 本名ではないが、見た感じ『小太郎』という名前がしっくりくるのだ。 ぼくがいつも「小太郎」と呼んでいるので、いつしかみんな「小太郎」と呼ぶようになった。 イトキョンにいたっては「小太郎ちゃん」と、「ちゃん」まで付けて呼んでいる。
最初の頃、彼は「小太郎」と呼ばれるのを嫌っていた。 「何でぼくが小太郎なんですか?」 「あんたが『小太郎』やけよ」 「本名違いますよ」 「そんなことはどうでもいいんよ。小太郎やけ小太郎と呼ぶんよ」 そう言って、ぼくは小太郎を押し切った。 そのうち、渋々彼は「小太郎」を受け入れるようになった。
しかし、やはり人前で「小太郎」と呼ばれるのは嫌だったようで、ぼくが散々人前で「小太郎」と連発して呼んだ後には、必ず近くにいる人に「ぼく、本当は小太郎じゃないんですよ」と自分でフォローしていた。 それでも気にせずに、ぼくは「小太郎」を連発した。 そのうち、小太郎は諦め、小太郎に抵抗しなくなった。 そう、晴れて小太郎になったのだ。
小太郎は大人しい子で、普段はあまり目立たない。 しかし、閉店近くになると、俄然張り切り出して、ぼくにいろいろ話しかけてくる。 話の内容は、お笑い関係のことが多い。 何でも、小太郎は中学生の頃まで、家族やクラスの人たちの笑いを取ることが得意だったらしく、今でも密かにお笑いの才能があると思っているようだ。
ぼくが「何かネタやってみ」と言うと、小太郎は「いや、ここではやれません」と言う。 「何で?」 「いろいろ準備がいるんですよ」 「小太郎は準備せな、笑いをとれんと?」 「いや、そうじゃないですけど、ぼくのネタはここじゃ受けないんですよ」 「じゃあ、どこやったらいいと?」 「うーん、教室とかがいいですね」 お笑いの才能があるなら、別に教室でなくてもいいはずである。 小太郎は、いったいどんなネタをやるつもりなんだろうか。 それはなかなか教えてくれない。
さて、今日のことだった。 いつものように閉店前に張り切りだした小太郎は、「しんたさん」とぼくを呼んだ。 「何だね、小太郎君」 「ちょっとぼくのお尻見て下さい」 「あ? おれ、そんな趣味ないよ」 「いや、お尻のところが破れてるんでしょ」 見てみると、なるほどお尻に穴が開いている。 「破れたんね?」 「いえ、最初から破れてるんです」 「不良品?」 「いや、わざと破ってあるんですよ」 「えっ、今は、尻の破れたズボンとかが流行っとるんね?」 「はい」
しかし小太郎は、その破れ具合が気に入らないようで、しきりにその破れを隠そうとしていた。 ぼくが「気になるなら、縫ったらいいやん」と言うと、小太郎は「そう思ってるんですけど、普通に縫ったらおかしくなりますからね」と言う。 「じゃあ、慣れた人に縫ってもらおう。ちょうどいい人がおる。ちょっと待って」 そう言ってぼくは、イトキョンのところに行った。
「イトキョン、小太郎がね…」 「小太郎ちゃんがどうしたと?」 「さっき水槽を掃除していたら、ピラニアにお尻を噛みつかれたらしいんよ」 「えっ、ピラニアに? それでケガはなかったと?」 「うん、ケガはなかったんやけど、ズボンのお尻が破れてしまってね。あんた縫ってやって」 「え、わたしが縫うと?」 「うん。あんたしかおらんやん」 「わたし縫いきらんよう」
そんなやりとりをしているところに、小太郎が「しんたさん、いいですよ。自分で縫いますから」と言ってきた。 「お、ちょうどいいところにきた。小太郎、お姉さんにお尻を見せてあげなさい」 「えーっ」 「何を恥ずかしがっとるんね」 「嫌ですよう」 そう言って、小太郎は元いた場所に走って戻っていった。 ぼくは「逃げるな、この根性なしが!」と言いながら、小太郎を追いかけていった。
イトキョンは、薄笑いを浮かべて、しばらくこちらを見ていた。 だが、夕飯のことで頭がいっぱいだったのだろう。 シャッターが閉まると、さっさと帰っていった。
昨日のことと関連した話である。 書類を書き上げたあと、警察官が「コピーを取りたい」と言ったので、ぼくは「コピー機は店内ですよ」と言って、案内した。 警察官にコピーを取っている間、暇になったぼくは、「何か面白いことはないかなあ?」と周りを見渡した。 するとそこに、格好の暇つぶしがいた。 イトキョンである。
『これはチャンスだ!』と思ったぼくは、血相を変えた顔を作ってイトキョンのもとへ走って行った。 「イトキョン、イトキョン」 「あ、しんちゃん、血相変えてどうしたんね?」 ぼくはコピー機の方を指さして言った。 「ほら、あそこに警察がおるやろ」 「あ、ホント。何かあったと?」 「事件、事件」 「何、何?」 「さっきカードを使った詐欺事件があったんよね」 「えっ、どこであったと?」 「ここに決まっとるやろ」 「えー、全然知らんかった」 「そうやろうね。あんたが来る前のことやけ」 「そう」 「今、あの警察官ね、指紋を採りよるんよ」 「へえ、犯人はコピー機を使ったと?」 「うん」 「でね、さっきおれも指紋採られたっちゃ」 「ほんと!?」 「うん。サービスカウンターのTさんも、あとKさんも採られたみたいよ」 「でも、しんちゃんの指、汚れてないやん」 「今はね、汚れが付かんインクを使うんよ」 「へえ、進歩したんやね」
イトキョンは興味を持ったのか、警察官をずっと見ていた。 「ねえ、しんちゃん。何であの警察官一人しかおらんと?」 「鑑識の人やけよ」 「ああ、そうか。で、犯人はどうなったと?」 「逃げた」 「ふーん。そういえば、さっきカード詐欺って言ってたけど、そのカードはどうなったんね?」 「ああ、カードは犯人が逃げる時に落として行ったんよ。今そのカードはあの警察官が持っとるよ」
警察官が帰ったあとも、イトキョンはそのことが気になっていたようだ。 そんな時に「しんたさん、外線です」という連絡が入った。 ぼくはイトキョンに、「犯人が捕まったのかもしれん」と言って、受話器をとった。 さっきの警察官からだった。 持って帰ったはずのカードがない、という電話だった。
電話を切ると、ぼくはイトキョンの方を向いて、「大変なことになった」と言い、さきほどの書類を書いた部屋に走って行った。 カードは無事に見つかり、その警察官に「ありましたよ」と連絡した。 再びやってきた警察官にカードを渡し、一件落着したあと、ぼくはイトキョンのところに戻っていった。
ぼくの『大変なことになった』という言葉を気にしていたイトキョンは、ぼくが戻ってくると、目を輝かせて「何かあったんね?」と言った。 「いや、また新たな犯行があってね」 「えーっ」 「またカードが落ちてたらしいんよ」 「うわー、何かミステリー事件みたいやね」 というところで、閉店になった。
帰りしなに、ぼくはイトキョンに「もしかしたら、明日の新聞に載るかもしれんよ」と言った。 ところがイトキョンは、先ほどとは違うモードに入っていた。 ぼくの言うことが聞こえたのか聞こえなかったのか知らないが、無視してそそくさと帰っていったのだ。 きっとイトキョンの頭の中には、事件のことなんか入ってなかったに違いない。 夕飯のことで、頭の中はいっぱいなのだから。
夕方のことだった。 サービスカウンターのパートさんがぼくを呼んだ。 「どうしたと?」 「キャッシュカードを拾ったんだけど…」 「ふーん、じゃあ銀行に連絡したらいいやん」 「しんちゃんがして下さい」 「何でおれがせないけんとね。そのくらい自分でやって下さい。子供じゃあるまいし」 「でも、わたし慣れてないけ」 「慣れとかの問題やないやろ。ちゃんと拾った人が連絡せな」 「わたしが拾ったんじゃないもん。お客さんやもん」 という押し問答の末、結局ぼくが電話することになった。
落とし物はケースに入っており、その中にはキャッシュカードが2枚入っていた。 1枚は信用金庫のカードで、もう1枚は郵便局のカードだった。 ここでぼくは、どちらに電話しようかと悩んだ。 そこでパートさんに、「どちらに電話しようか?」と聞いた。 するとパートさんは、「郵便局はやめた方がいいよ」と言った。 「何で?」 「郵便局は忙しいけ、来てくれんっちゃ」 「でも、前は来てくれたよ」 「前はどうか知らんけど、今は来てくれんよ。人が足りんのやけ」 そういえば、そのパートさんのご主人は郵便局に勤めているので、郵便局の内情をよく知っている。 それならということで、信用金庫の方に電話することにした。
「北九州の○店です。実はおたくのキャッシュカードを拾ったんですが…」 「ああ、そうですか。お宅様には、うちのキャッシュサービスがあるんですかねえ?」 「ああ、拾得物入れでしょ。あいにくこちらには、F銀のしかないんですよ」 「そうですか。それでは、こちらからお客様に連絡して、そちらに取りに行ってもらいます」 「お願いします」
それから30分ほど経って、先ほどの信金の人から電話が入った。 「お客様、いないんですよねえ」 「そうですか」 「それでですねえ、お手数ですが、そちらから交番に持って行ってもらえませんか?」 「えっ、交番にですか?」 「はい」 「‥‥」
交番に行け、これまた面倒臭い申し出である。 交番に行くと手続きに時間がかかるから嫌なのだ。 そういうことなら、郵便局の方に電話すればよかった。 忙しくても、カードを引き取りには来てくれるだろう。
そこで、そのことを信金の人に言おうとした時だった。 先方が、「そこから一番近い交番はどこですか?」と聞いてきた。 「××交番ですけど」 「××交番ですね。わかりました。お客さんと連絡が取れたら、その交番に行ってもらうようにしますから」 「‥‥。そうですか。はい、わかりました」 ぼくは渋々受話器を置いた。 これで、郵便局に電話できなくなった。
ぼくはサービスカウンターに行き、カードを拾ったパートさんに、「交番に届けることになった」と言った。 「そう、やっぱりね」 「あんたが行ってきてね」 「えっ?」 「おれはちゃんと銀行に連絡したんやけ、今度はあんたの番やろ」 「何で私が行かないけんと?」 「あんたが拾ったんやろ?」 「私じゃないよう。お客さんが拾ったんよ」 「同じことやん。ちゃんと行ってきてよ」 「えー、行ってくれんと?」 「おれが行くとしたら、確実に9時近くになる。もしその間に落とし主が交番に行ったらどうするんね?」 「ああ、そうか」 「ちゃんと行ってきてよ」 「でも…」 「それが嫌なら、警察に電話して取りに来てもらい」 「あ、その手があったねえ」 「自分でかけてね」 「わかった…」 ということで、パートさんは警察に電話をかけた。
それから30分ほどして警察官がやってきた。 書類に必要事項を書き込んで、警察官は帰っていった。 『時間食ったけど、これでようやく一件落着した』 と思っていた時だった。 店内放送で「しんたさん、外線が入ってます」という連絡が入った。 出てみると、先ほどの警察官からだった。 「あのー」 「どうしたんですか?」 「先ほどのカードですけど…」 「あ、落とし主が現れたんですか?」 「いや、そういうことじゃなくて…」 「どういうことですか?」 「交番に帰ってからカードを挟んでおいたノートを開いてみると、カードが入ってないんですよ」 「えっ? 落としたんですか」 「いや、落としたんじゃなくて…。忘れたんじゃないかと思いまして」 「ちょっと待ってください」
そう言って、ぼくは先ほど書類を書いたところに行ってみた。 しかし、カードはそこになかった。 『もしかして下に落ちてないか』と思い、その辺を探してみた。 すると出入口のドアのところに先ほどのカードの入ったケースが落ちているではないか。
「ああ、ありましたよ」 「やっぱり忘れてましたか?」 「いや」 「えっ?」 「落ちてました」 「どこにですか?」 「入口のところです」 「…そうですか。すぐに取りに行きます」
5分もかからないうちに警察官はやってきた。 これで、ようやく一件落着となった。 それにしても、持ち主に落とされ、警察官に落とされ、本当にかわいそうなカードである。
2005年11月25日(金) |
ぼくはPRが下手である |
メインにしているブログでの登録記事数は、昨日までで1955件である。 これを全部読むとなると、かなりの時間と労力がかかる。 もしぼくが、今日このブログを知り、興味を持ったとしても、全部読むことはまずしないだろう。
そういったことから、なるべく読みやすいようにカテゴリ別のブログを起ち上げていっているが、今日このブログのメインテーマの一つである『健康一番』のブログを、『健康ブギ!(http://blog.goo.ne.jp/m_shinta/)』とタイトルして起ち上げた。 これは前にlivedoorでやっていたのだが、操作性が今ひとつだった。 そのため、他のサーバーを探し出し、そこに一つ一つの記事を移していたのだ。 何でそんな地道な作業をしていたのかというと、そのサーバーにインポート機能がなかったためである。 どこのサーバーも一長一短あるようで、なかなかパーフェクトなサーバーには行き当たらない。 ということで、今日、その作業がようやく終わったわけである。
これで、完成したカテゴリ別のブログは、先月起ち上げた『筋向かいの人たち(http://shinta.seesaa.net/)』と併せて二つになった。 どちらのブログの記事数も数百件程度だから、すべて読んでもそれほど時間もかからないだろうと思う。 ま、その二つのブログと、『皆岡ノオト(http://sky.ap.teacup.com/mengly/)』を読めば、ぼくがどういう人間だかだいたいわかることだろう。 それからメインのブログに挑戦するもよし、それで終りにするもよしである。
ああ、そういえば、昨日、ヤマハプレイヤーズ王国がリニューアルオープンした。 それに伴って、ぼくのページのアドレスも変わったのだった。 新しいアドレスは、ここ(http://players.music-eclub.com/?action=user_detail&user_id=72100)である。 トップのディスプレイがブログ的になった程度で、内容にほとんど変わりはないのだが、一つだけ新たに加わった機能がある。 それは日記である。 すでにやっていることなので、わざわざそれを利用する必要もないのだが、あれば使いたくなるのが人情。 いくつかの記事を書いてみた。 ブログのようにトラックバックや記事検索といった機能はないのだが、メモ書き程度なら充分活用できる。(と言いながらも、歌で呼べない分、日記で呼ぼうという姑息なことを考えているのではあるが)
ということで、より充実した「しろげサイト」をこれからもよろしくお願いします。
11月に入ってから、胃が痛かったり、背中が痛かったり、便通が悪かったりと、あまり体調が優れなかった。 ところが、先週の土曜日に、そういったことがぱったりと止んで、実に爽快な気分になった。 翌日曜日も朝から調子がよかった。 「ようやく治った。体調の悪さは、きっと季節の変わり目だったからだろう」と思っていた。
昼頃だっただろうか。 タバコを吸いに外に出たときだった。 突然、のどにピリッという痛みを覚えた。 それと同時に咳が出た。 最初はタバコのせいかと思った。 だが、どうもそうではないようだ。 のどにピリッとくる痛さは、ぼくの場合、風邪を引いたときの痛さなのである。
しかし、何で前触れもなく突然に風邪を引いたのだろう。 だいたい、ぼく風邪の進行は順序が決まっている。 まずのどが痛くなり、次に鼻がつまる。 それから熱が出て、最後に咳が出る。 ところが、今回はのどの痛みと咳込みが同時にきたのだ。 途中の鼻づまりや発熱はまったくなかった。 つまり、最初と最後の症状が一度にきたわけである。
まあ、そういうこともあって、最初は一時的なものだろうと思い、あまり気にはしてなかった。 ところが、日を追って、のどの荒れは酷くなり、咳き込みは激しくなるばかりである。 この間の火曜日は、当初床屋と銀行に行く予定にしていたのだが、それらをすべてキャンセルした。 ウソウソと外を出歩いたりすると、風邪が酷くなると思ったからである。 そういうことを、すべて次の休み、つまり明日金曜日に延期し、その日は、家で養生することにした。 しかし、風邪は相変わらず酷くなるばかりである。 この調子だと、おそらく明日も外には出られないだろう。
しかし、突然引いたと思われるこの風邪も、よくよく考えてみたら、思い当たる節がないでもない。 冒頭に書いた、今月に入ってからの体調の悪さである。 案外その体調の悪さが、実は風邪の初期症状だったのかもしれないのだ。 ということは、けっこう長い期間、風邪を引いていることになる。 実に3週間以上だ。 これまで生きてきて、こんなに長く風邪を引いたことはない。 地道な生活改善のおかげで、せっかく寝不足が解消されつつあるというのに、このまま風邪が長引くとなると、咳き込みなどで再び寝不足になってしまう恐れがある。 早いうちにこの風邪を何とかしないと、健康診断の再検査で、またしてもD判定を受けてしまう。
2005年11月23日(水) |
オナカ君とヒロミちゃん3 |
先日の日記に『オナカ君とヒロミちゃん』を書いたが、それを受けてか、ヒロミから「この間よりもいい写真を送る」と言ってきた。 それをオナカ君に見せて、反応を教えてくれと言うのだ。
ぼくはさっそくオナカ君に電話をかけた。 「おい、メールでヒロミの写真いるか?」 「ああ、欲しいのう」 「じゃあ、あとでメールで送る」 「おう」 「で、それを見た感想をメールしてくれ」 「えっ、感想? どんな感想を書けばいいんか?」 「写真見て、感じたとおり書けばいいんよ。きれいと思ったら、『きれいですね』と書くとか」 「そんなのでいいんか?」 「おう。きっとヒロミは喜ぶぞ」 「そうか」
電話を切ってから数分たって、ヒロミからメールが届いた。 一番お気に入りの写真だそうで、なるほどきれいに写っている。 さっそくぼくはオナカ君に転送しようとした。 ところがこの写真、なぜかガードがかかっていて転送できないのだ。 そこでヒロミに、パソコンのほうに送ってくれと頼んだ。 それが手間取ってしまい、オナカ君への転送は翌日になってしまった。 ぼくは『遅くなりました』というタイトルを付けて、オナカ君に送った。
しばらくして、オナカ君から返事が来た。 さっそくそれをヒロミに送った。 ヒロミからすぐに返事が来る。 それをまたオナカ君に送る。 その日の夜、ぼくはずっとヒロミとオナカ君のメールの橋渡しをしていたのだった。
>(オナカ) 待ってました。 思っていた以上に美人ですね。 宴会が非常に楽しみです。
>(ヒロミ) オナカさん初めまして(^^)v お会いできる日を楽しみにしてます(*^_^*)
>(オナカ) いつもしんたの日記で、ヒロミさんの活躍を読ませてもらってます。 ヒロミさんは、美しくて面白い人なんですね。 会える日が楽しみです。
>(ヒロミ) オナカさん お返事ありがとう(^^) あの日記は70%だけが本当です(゜-^)ъ しんたさんの話では オナカさんは素敵な方と伺ってます☆ 早くお会いしたいですね。 お会いした日は 絶対に日記に書かれますよ(^^ゞ
>(オナカ) 美人は謙虚が一番大事! ヒロミさんの返事を読むと謙虚さがにじみ出ていますね。
二人のやりとりは以上である。 その後、ヒロミからぼく宛にメールが届いた。
>(ヒロミ) オナカさんは真面目な人なん?
>(しんた) オナカ君は高校の時、級長やったけのう。 野球部やったし、律義なんやろうの。
>(ヒロミ) オナカさんは独身なん?
>(しんた) オナカ君は結婚しとるけど、かわいそうな人なんよ。
>(ヒロミ) そうなん。何がかわいそうなん?
オナカ君、ヒロミが『何がかわいそうなん?』だとよ。 どう答えようか?
Hさんが休んでいたということで、イトキョンはそれとなく信じたようだった。 ぼくはイトキョンをかつぐことが出来たので満足していた。 ところが、それだけでは満足できない人がいた。 Kさんである。 ぼくが考えた入院話に、3千円徴収を乗せたのもKさんだった。 話はそれだけでとどまらなかった。
昼過ぎ、その日早番のイトキョンと交代で、中番のMさんが出社してきた。 Mさんはぼくの売場に来ることは、滅多にない。 ところがその日は違った。 血相を変えてぼくのところにきたのだ。 「どうしたんですか?」 「昨日は大変やったらしいね」 「ええ」 「でも、急なことやったねえ」 「そうですねえ」 「Hさんは、子供さんおったんかねえ?」 「いますよ」 「若いんかねえ?」 「いや、もう社会人ですよ」 「ああ、それならよかったねえ」 「?」 「で、今日は何時から?」 「えっ、何がですか?」 「お通夜よ」 「えーっ!?」 「さっきKさんが言ってたよ。今日Hさんのお通夜だって」
ぼくはそれを聞いて、思わず吹き出してしまった。 「えっ、何がおかしいと?」 「いや、Kさんがそう言ったんですか。ハハハ…」 「違うと? …あっ、もしかして騙したんやね」 そう言うとMさんは怒って売場に帰っていった。
しばらくして、薬局に行ってみると、Mさんと話していたイトキョンがぼくを見つけて言った。 「もう、しんちゃん嘘つきなんやけ」 「何が嘘つきなんね」 「Hさん、死んでないやん」 「あ? それ言うたのKさんやないね」 「でも、しんちゃんも入院したと言ったやないね」 「言うたよ。でも、おれは人を殺したりはせん」 「どうせ、入院も嘘なんやろ?」 「嘘やないよ」 「もう、信じんけね」 「普通、救急車で運ばれたりしたら、何でもないでも、一応検査入院するやろ」 「うん、するよ。…あ、そうか」 「ほら、嘘やないやろ」 「うん」
イトキョンが帰ったあと、ぼくはMさんに本当のことを話した。 「そうやろ。わたし昨日遅番やったけ、ちゃんとHさん見たもんね。Kさんから話聞いたときも、おかしいと思いよったんよ」 「もし死んどったら、店の中の空気が、それとなく違ってくるじゃないですか」 「そうよね。いつもと変わらんかったもんねえ。それで、イトキョンはまだ信じとると?」 「さすがに死んだというのは嘘とわかったみたいやけど、入院は信じとるみたいですよ」 「イトキョンらしいね」 「いつまで信じとるか楽しみですね」 「いや、きっともう忘れとるよ」 「えっ、そうなんですか?」 「うん。あの人、いつも、その日の夕飯のことしか頭にないもんね」
昨日のこと。 Hさんは休んでいた。 Kさんがいたので、「Hさんは休んだんですか?」と聞いてみると、「うん、大事を取って休むらしい。朝電話があったよ」と言う。 「やっぱり昨日の今日ですからね」 「あの人、明日も休みやけ、連休やね」 「ああ、そうですね」
と、その時だった。 そういうことがあったと言うことを、まったく知らない人間が通りかかった。 薬局のイトキョンである。 ぼくはイトキョンを見て、瞬時に「これは遊べる」と思った。
ぼくはさっそくイトキョンを呼び止め、真剣な顔をして「昨日は大変やったよ」と言った。 イトキョンは目を丸くして、「何かあったと?」と聞いてきた。 『しめしめ』と思ったぼくは、「実はねえ…」と昨日あったことを話した。 しかし、元気に帰ってきたとは言わずに、「結局入院したんよね」と言ったのだった。 「えっ、入院したと?」 「うん。1ヶ月以上かかるかもしれんのよ」 「うそー、困ったねえ」 「そうやねえ。ただでさえ、ここは人が少ないけね」 「年末で忙しくなるしね」
話が終わり売場に戻ると、そこにKさんがいた。 さっそくぼくはKさんにそのことを言った。 「Kさん、今、イトキョンにHさんが入院したと言っときましたから、口裏合わせとってください」 「わかった。入院やね」 そう言って、Kさんはイトキョンのところに行った。 Kさんは、真剣な顔をして、イトキョンとしばらく話していた。
話が終わったようなので、何気ない顔をしてイトキョンのところに行くと、イトキョンは暗い顔をして立っていた。 「どうしたと?」 「Hさん、相当悪いんやね。Kさんが入院が長引くけ、見舞金を一人3千円集めると言ってたよ」 『えっ?』、話が膨らんでいる。 しかし、否定すると嘘だとバレるので、「そう、さっきKさんから聞いた」と言っておいた。
それから1時間ほどして、イトキョンがぼくのところにやってきた。 「しんちゃん、また騙したやろ」 「えっ、何のこと?」 「Hさんが入院したなんて嘘やないね」 「入院したよ」 「でも、みんなが『Hさんは、昨日すぐに戻ってきたよ』と言ってたよ」 「そうよ。昨日は戻ってきたよ」 「ほら、やっぱり嘘やん」 「嘘やないよ。誰も昨日入院したとか言うてないやろ」 「えっ?」 「会社に自分の車を置きっぱなしにするわけいかんし、入院するためには準備がいるやん。だから一度戻ってきたんよ」 「あっ、そうか」 「今日入院したんよ。Hさん、今日休んどるやろ」 「そういえば見らんねえ」 「人の話をちゃんと聞かな」 「すいません」
「あ、そうそう。イトキョン、頼みがあるんやけど…」 「何でしょ?」 「あんた、Hさんの机の上に花を置いといてやって」 「花を?」 「うん。学校でよくやったやん」 「えっ、それは死んだ人にするんやったやん」 「そんなことはない。入院した時にするんよ」 「そうやったかねえ」 「そう。従業員を代表して、ちゃんと花を供えときよ」 「私が!?」 「そう、年長の仕事やないね」 「私、年長じゃないよう」 「そんな細かいことは言わんでいいけ、ちゃんとやっとってね。年長さん」 「‥‥」
昨日の夕方のことだった。 ぼくが昼食から戻ってくると、パートさんが、 「さっき大変だったんですよ」と言った。 「何かあったと?」 「Hさんが救急車で運ばれたんですよ」 「えっ?」 「倒れたらしいんですよ」 「何で倒れたん?」 「詳しいことは知らないんですけど…。ああ、Kさんがそばにいたから、詳しいことはKさんに聞いたらわかると思いますよ」
そこでぼくは、さっそくKさんの所に行き、事情を聞いた。 「Hさん、倒れたらしいですね」 「うん」 「どうしたんですか?」 「いや、作業中に、急に腕に痛みが走ったらしいんよ。そのあと気分が悪くなって座り込んどったらしいんやけど、そのまま意識がなくなって倒れたらしい」 「意識がないままですか?」 「いや、ぼくが行った時には、ちゃんと意識は回復しとったよ」 「で、救急車で運んだんですか?」 「うん。本人は『大げさに救急車なんか呼ばんでくれ』と言いよったけどね」 「でも、『救急車なんか呼ばんでくれ』とか言う元気があるなら、大したことないでしょうね。点滴でも受けて帰ってくるんじゃないですか?」 「うん、すぐ『ただいまー』とか言うて帰ってくると思うよ」
それから2時間ほどたって、Hさんの奥さんから店長宛に電話が入った。 ぼくは悪い予感がした。 こういう事があったあとに、家族から電話が入る時は、あまりいい知らせではないことが多いからだ。 『もしかしたら、Hさん、どこか悪かったんかもしれんなあ』 ぼくは詳しいことを聞こうと、事務所に向かった。
ところが、事務所の前に来た時、聞き慣れた笑い声が事務所の中から聞こえてきた。 ドアを開けてみると、そこにはHさんがいるではないか。 「Hさん、大丈夫やったんですか?」 「ああ、大丈夫。ご迷惑おかけしました」 話によると、病院で検査を受けたが、何の異常も見受けられなかったらしい。 強いて上げれば、中性脂肪が少し高かったそうだ。
その後、Hさんは「病院はタバコが吸えんけのう」などと言いながらタバコを一服し、早帰りすることになった。 Hさんが帰る時、Kさんは「早よ帰れるからと言って、今日はパチンコせんで、まっすぐ家に帰らなね」と言われていた。 Hさんは大のパチンコ好きで、ほとんど毎日パチンコに行っていて、帰るのはいつも11時近くになるらしい。 「倒れたのは、パチンコのやり過ぎのせいよ」とKさんは言っていた。
【同級会の報告】 先日お知らせしたとおり、一昨日は同級会だった。 急きょ決まった会だったために、人数は集まらず、飲み屋に予約を入れた段階で総勢5人だった。 ところが、予定を入れた後に、1人が体調不良のためにキャンセルした。 ということで、結局集まったのは4人だった。
だが、5人で予約を入れているため、どうしてもあと1人頭数を揃えなければならない。 いろいろ当たってみたが、結局だめだった。 そこで、しかたなく嫁ブーを呼ぶことにした。 メンバーの1人を除いては、みな面識があるので、大丈夫だろうと思ったのだ。
さっそく電話をかけると、嫁ブーは「恥ずかしい」などと言って躊躇した。 そこで、ぼくは「何が恥ずかしいか。みんなおまえの顔を見たがっとるんやけ、さっさと来い!」と言って有無を言わせなかった。 それから30分ほどして、嫁ブーは登場した。 これで予定の5人になったのだった。
最初は遠慮がちにしていた嫁ブーも、そのうち場に慣れたのか、みんなとうち解けていたようだった。
ということで、滞りなく会は終わった。 次回は来月か再来月、場所は体調不良で来られなかったM代の家で行うことになった。
【ヒロミとオナカ君2】 さて、その前日、ヒロミの写真を見たオナカ君は、完全にヒロミちゃんファンになったようである。 同級会で飲んでいる時にオナカ君の横に座ったぼくは、「おいオナカ、何なら、今度ヒロミが家に遊びに来た時、晩飯はどうせ外で食うやろうけ、その時おまえも呼んでやろうか?」と言った。 するとオナカ君は、「そうやのう。一度お目にかかりたいのう」と答えた。 「じゃあ、呼んでやる。場所はここでいいか?」 「どこでもいい」 「わかった。その代わり、灰皿だけはたくさん用意しとけよ」 「えっ、灰皿? 何でか?」 「ヒロミの使った爪楊枝を入れないけんけ」 「そんなに使うんか?」 「生半可な量じゃないぞ。おそらく、灰皿が爪楊枝でいっぱいになるやろう」 「そうか…」
この会話のあとオナカ君はしばらく黙っていた。 爪楊枝の件で、オナカ君は引いたのかと思ったぼくは、「どうするんか?」と聞いてみた。 オナカ君は、「でも、お目にかかりたい」と答えた。
ということなので、ヒロミちゃん、次に家に遊びに来た時はオナカ君も呼びますので、相手してやってください。
【1】 「ところで、何で『嫁ブー』なんね? 私そんなに太ってないよ」 「アホか、おまえは。『嫁ブー』ということにしとったら、日記読んでいる人は誰もが『ブー』と思うやろ?」 「うん」 「そしたら、『嫁ブーのいびきがうるさくて眠れなかった』と日記に書いたって、おまえは『ブー』やないんやけ、絶対にバレんやろうが」 「ああ、そうか」
【2】 先月の日記で、占いの人に見てもらったことを書いた。 その時、ぼくたち夫婦の相性はすこぶるいいということも書いた。 その後日談である。
「おまえ、占いの人に見てもらった時、おれたちの相性がいいとか言いよったのう」 「うん」 「どういうふうにいいんか?」 「あの時ねえ、『ご主人は、あなた以外の人だったら結婚してないでしょうね』と言われたんよ」 「どういう意味か?」 「しんちゃん、元々結婚に向いてないらしいんよ」 「そうか」 「家庭内で気を遣うのが苦手なんだって」 「じゃあ、何でおまえと結婚したんか?」 「わたしには気を遣わんらしいんよ」 「そうやのう。おまえには気を遣わんのう」
ある日、ぼくがこたつで寝ころんでいる時のことだった。 同じくこたつで寝ころんでいた嫁ブーに、「おい、そこの本を取ってくれ」と言った。 すると嫁ブーは、「そのくらい自分で取ればいいやろ」と言った。 「誰やけ頼むんか?おまえやけやろ。だから結婚したと占いの人も言いよったやないか」 「うっ…」 嫁ブーは、渋々起きあがって本を取った。
占いの人はいいことを言ってくれたものだ。
【3】 嫁ブーには変な癖がある。 何でも捨てる癖だ。
先日のことだった。 その二日前の新聞に、知り合いのことが載っていると聞き、家に帰って、さっそく新聞入れを探した。 ところが、どこを探しても見あたらない。 「おい、一昨日の新聞知らんか?」 「ああ、今日ゴミ出しやったけ捨てたよ」 「えっ、捨てた? でも、去年の新聞はあるやないか」 「上から順番に捨てようけ」 「おまえのう、古いのから先に捨てれ」 「だって、下の新聞出すの面倒やん」 「どこの世界に、新しい新聞から捨てる奴がおるか?」
【4】 初夏のことだったと思うが、シャボン玉石けんの本社に行き、固形シャンプーを3個買った。 使っているシャンプーがまだ残っていたので、買ったシャンプーは脱衣所の棚の上に置いていた。 さて、いよいよシャンプーがなくなったので、新しいシャンプーを使おうと、棚の上を見た。 ところが、ないのだ。
「おーい、この間買ったシャンプー知らんか?」 「そこにあるやろ?」 「ないけ、聞きよるんやないか」 「ない? そんなわけないやろ。他の棚に移したんやないんね?」 「おれは触った覚えはないぞ」 「私だって触ってないよ」 「ここを掃除するのは誰か?」 「それは私やけど…」 「じゃあ、触ったのはおまえしかおらんやないか」 「でも、触ってないもん」 と言って、嫁ブーは家捜しした。 だが、シャンプーは結局見つからなかった。
「おまえ、また捨てたやろ」 「捨ててないよう」 「でも、ないやないか」 「いや、そのうち出てくるっちゃ」
あれから3ヶ月ほど経つが、いまだシャンプーは出てこない。
何ヶ月か前のことになるが、嫁ブーから面白いことを聞いた。 嫁ブーの会社に、ネット好きの人がいて、よくブログなどを見て回っているらしい。 その人が嫁ブーに、 「最近面白いブログを見つけたんですよ」と言った。 嫁ブーが「どんなの?」と聞いてみると、 「いろんなジャンルのことを書いているみたいなんだけど、けっこう笑えるんですよ。でね、その人、奥さんのことを『嫁ブー』と呼んでいるんですよ。このへんに住んでいる人みたいなんだけど」と言った。 『嫁ブー』、その言葉を聞いて、嫁ブーはドキッとしたらしい。 「嫁ブーが主役なん?」 「いや、嫁ブーは時々出てくる程度ですけどね」 「鬼嫁みたいなの?」 「いや、逆に嫁さんをバカにしているような感じなんです」
その日の夜にぼくはその話を聞き、さっそく『嫁ブー』検索をしてみた。 きっと他の人のブログだろうと思ったのだ。 ところが、『嫁ブー』でヒットするのはぼくのサイトだけしか出てこないではないか。 「おい、それ、おれのブログみたいぞ」 「えっ…」 嫁ブーは一瞬沈黙した。
「ねえ、しんちゃん、変なこと書いてないやろうね」 「書くわけないやん。おまえが足をくじいた時に病院に連れて行ったこととか、おまえがぎっくり腰になったとか、休みの日にはしょっちゅう寝とるということくらいしか書いてないぞ」 「病院に連れて行ったこと? まさか車いすに私を乗せて遊んだこととか書いたんやないやろうね?」 「もちろん書いた」 「えーっ、何でそんなことまで書くんね?」 「日記というのはありのままを書かんとの。でも安心しろ。翌日のことは書かんかったけ」 「えっ?」 「おまえ翌日には治っていたくせに、わざとらしく松葉杖ついて会社に行ったろうが」 「‥‥」
「うそやろ。困るやん」 「何で困るんか?」 「嫁ブーが私ということがバレたら、変な人と思われるやん」 「変な人やないか。ヒロミの友だちなんやけ」 「‥‥」 「でも、心配せんでいいぞ」 「何で?」 「もしバレたら、その人に『主人のサインもらってきてやろうか』と言ってやればいいやないか」 「ブログ書いとるぐらいで、サインを欲しがるわけないやん」 「そんなことはない。『主人は作詞や作曲して歌も歌いよるんよ』と言って、『本来なら有料やけど、今回は特別にタダにしてやる』と言えば、おまえの価値も上がるやろ?」 「あっ、そうか」
相変わらず、単純な女である。
2005年11月16日(水) |
オナカ君とヒロミちゃん |
ぼくが昼食をとっている時だった。 突然携帯が鳴ったので、誰からだろうと着信を見てみると、何と会社からだった。 『わざわざ携帯に電話しなくても、店内放送で呼び出せばよさそうなものだ』と思いながら出てみると、「もしもーし」と聞き慣れた男の声が聞こえた。 この声は、友人のオナカ君ではないか。 「どうしたんか?」 「いや、ちょっと寄ったもんで」 「そうか。じゃあ、もうちょっとして戻る」 そう言って、残った食事を食べてから売場に戻った。
明日同級生と飲み会をやるのだが、オナカ君はその打ち合わせに来たのだ。 「結局、4人しか集まらんかった」 「えっ、たった4人か?」 「しかたないのう。急に決まった話やけ」 「そうやのう」 実は、先週オナカ君から電話があった時に、ぼくが「久しぶりにみんなで飲みたい」と言ったことで、急きょ決まった飲み会だったのだ。 そのため、みな調整がつかなかったのだろう。
その後、二人で他愛のない話をしていたが、オナカ君は何を思ったか、突然携帯電話を取り出した。 「おい、ついに買ったぞ」 「えっ?」 「FOMA」 「おお、そうか。ようやく買ったんか。で、いくらやった?」 「タダ」 「えーっ、何でタダなんか?」 「おまえはタダじゃなかったんか?」 「2万円以上したぞ」 「そうか。ま、おれの場合新規やけの」 「それにしても、タダはないやろ」 そう言いながら、ぼくはオナカ君のFOMAを取り上げた。 そして、そのFOMAでオナカ君の写真を撮ったり、ぼくの携帯に入っているレイザーラモンHGの素顔の写真を送ったりして遊んでいたのだが、ふとあることを思い出し、ぼくの携帯に保存してある、ある女性の写真をオナカ君に見せた。
「おっ、きれいやん」 「そうやろ」 「うん。彼女か?」 「そんなわけないやろ」 「誰か?」 「おまえ、おれの日記読みよったのう」 「うん」 「じゃあ、爪楊枝のヒロミちゃん知っとるやろ」 「おう…。えっ、これがあのヒロミちゃんか?」 「そう」 オナカ君は、しばらく黙り込んでいた。 ぼくが「どうしたんか?」と聞くと、「いや、日記から受けるイメージとこの写真は、かなりかけ離れとるけ」と言う。 「ああ、そうやろ。ヒロミは顔と言動のギャップが面白いんよ」
ということで、オナカ君は、しばらくヒロミの写真を見ていた。 その写真、ここでお見せできないのが残念である。
2005年11月15日(火) |
いよいよ灯油のいる季節になってきた |
今日は休みだったが、これと言って予定もない。 ということで、疲れを癒すために、家にいることにした。 朝起きてから、先日買ったこたつの中でゴロゴロして、テレビを見ていた。 ところが、今日は寒かった。 こたつではどうも物足りないのだ。
そこで、昼から灯油を買いに行くことにした。 出かける前に、まず店を決めなければならない。 ある人から、今年の灯油の相場は1缶(18リットル)1300円くらいだと聞いていた。 毎年買っている米屋は、いつも相場以下で売っているから、まだ安いはずだ。 そこで、電話を入れてみると、案の定安かった。 1098円である。 もっと安いところはないかと思って探してみたが、近くのホームセンターは1100円、いつもガソリンを入れているスタンドは1230円だった。 ということで、今年も灯油は米屋で買うことにした。
さっそく灯油缶を用意して、米屋に向かった。 買ったのは5缶で、家が1缶、実家が4缶である。 灯油を買う時は、いつも実家の分もいっしょに買うことにしている。 別々に買っていると、その都度店に行かなければならないので面倒だからである。
しかし、灯油は重い。 家はエレベータがあるからまだしも、実家にはそれがない。 男手はぼくしかないから、当然運ぶのはぼくの仕事である。 実家は団地の3階だ。 4缶だから、そこを2往復しなければならない。 初回はそれほどでもないが、2回目が地獄である。 初回の運搬を終え、階段を下りる時には、すでに膝にきている。 その状態で2回目を運ぶものだから、上手くバランスが取れない。 それでも我慢して階段を上っていく。 だが、方向を転換するたびに灯油缶に振り回されてしまう。 あげくに壁にぶつかったり、灯油がこぼれてたりしてしまう。 さらに、3階に着いた時には、動悸と息切れがしてしまう。 時には気分が悪くなることもあるのだ。
それが嫌でガスファンヒーターに変えようと思ったこともある。 ガス会社のチラシが入っていると、目を凝らして見ていたものだ。 値段はそこそこで、工事代もそうかからないようだ。 そこで、実際にガスファンヒーターを使っている人に、使い勝手を聞いてみた。 ところが、その人から意外なことを聞いた。 ガスは高くつくと言うのだ。
そこで、ガス器具を取り扱っている取引先に聞いてみると、「その通りです」と言う。 「冬場はただでさえガス代が上がるでしょう?」 「そうやねえ。冬場はえらく高くなるよね。ひどい時には普段の3倍近くなることもある」 「そうでしょ」 「その冬場にガス代の増えた分と、灯油ひと月分と、どちらが高いですか?」 「ガスの方やね」 「そうでしょ。冬場にガス代が高くなるのは、湯沸かし器や風呂で夏場よりちょっと多めに使うからなんです。そのちょっとが、あの金額になるんですよ。ファンヒーター使用すると、その分も加算されるわけでしょ。しかも、ファンヒーターの場合、使うのはちょっとじゃないですよね」 「なるほどね。でも、関東や関西の人は、けっこう多くの人が使いよるみたいやん」 「関東や関西の方はガスが灯油並みに安いんですよ」 「えっ、何で? 同じガスやん」 「よくわからないけど、きっと人口が多いからでしょうね」 ということで、ガスファンヒーターを断念したのだった。
さて、これから約半年の間、灯油缶と戦わなければならない。 すでに気が遠くなっている。
ぼくが歌を作り出したのは高校時代からだが、歌詞ノートを見てみると、現在200程度の歌がある。 そのほとんどは高校時代から東京時代、つまり16歳から22歳にかけて作ったもので、それ以降は、あまり歌を作っていない。
よく人から、「それは才能が枯れたからだろう」と言われる。 だが、ぼくはそうではないと思っている。 なぜそう思うのかというと、22歳の時に、アルバイトではあったがぼくは長崎屋に勤めだしたのだが、そのために、それまであった自由な時間が減ってしまったのだ。 つまり、仕事をしだしたことで、歌を作る時間が持てなくなったわけだ。 ぼくは速攻で歌を作る方で、手間暇かけて歌作りをするようなタイプではない。 しかし、それが出来たのは時間に余裕があったからだと思っている。 その余裕がなくなったから、歌作りが急激に減ってしまったのだろう。
ちなみに、長崎屋時代以降に作った歌の数は24曲しかない。 さらにその内訳を見てみると、20代に作った歌が17曲で、30代は7曲、40代に至っては何と0曲である。
さて、今日、プレイヤーズ王国で『追いかけて』という歌を公開した。 この歌は以前、しろげしんた名で一度公開したことがあるから、正確には再公開したということになる。
この歌は、30代に作った数少ない歌の一つである。 今の会社に移って何年か経った頃、前の会社の同僚が結婚した。 ぼくはその披露宴に呼ばれたのだが、招待状に「何か歌ってくれ」と書いてあった。 その前年に、他の同僚の披露宴で『ショートホープブルース』を歌ったのだが、それが好評だったので、「歌ってくれ」ということになったのだ。
さて、何を歌うかだが、同じ『ショートホープブルース』では面白くない。 とはいえ、ぼくの歌は失恋の歌ばかりしかない。 ということで、新しく歌を作ることにしたのだ。 まあ、新しい歌とはいえ、曲には苦労しなかった。 なぜなら、10代から20代にかけて、膨大な数の曲を作っていたからだ。 問題は歌詞である。 当時恋愛なんかしてなかったぼくに、その歌詞は書けない。 そこで、純恋に走っていた、高校時代のときめいた気持ちを思い出しながら歌詞を書くことにしたのだ。
ということで、出来上がった歌が、これ(http://players.music-eclub.com/players/Song_detail.php3?song_id=86363)である。 慌てて作った歌なのでうまく歌いこなせはしなかったが、披露宴ではまあまあ受けた。
ちなみに、プレイヤーズ王国に上げたのは、それからちょっと後に録音したものだ。
高校1年の秋のことだった。 「しんた、Y子のことどう思う?」 友人のKちゃんが、突然ぼくにそう聞いてきた。 ぼくはドキッとした。 なぜなら、Y子はその当時ぼくが好きだった女性だったからだ。 ぼくはそのことを誰にも教えてなかったから、てっきりKちゃんにそれを見透かされたと思った。 だが、真相は違うところにあった。
「Y子…、Y子ねえ…。ま、かわいい方やない?」 ぼくは、自分の気持ちをKちゃんに悟られないように、平生を装って言った。 すると、Kちゃんは目を輝かせて言った。 「そうやろ。かわいいやろ!」 「うん、まあ…」 「実はおれ、Y子とつきあうことになったっちゃ」 「えっ…」 ぼくは絶句した。 しかし、Kちゃんにぼくの変化を気づかせてはならないと思い、慌てて次の言葉を探した。 そして、零点数秒の沈黙が、次の言葉を探し当てた。 「どちらからアプローチしたと?」 「おれから」 ぼくは、Y子からのアプローチでなかったことに、少し安心した。 「ふーん。何と言ったと?」 「つきあって」 「Y子はすぐに返事したんね?」 「いや、躊躇しとったみたいで、『少し考えさせて』と言ったんよ」 「で、いつ返事もらったんね?」 「昨日」 「そう…」 5分かそこらの会話だったが、この会話が今もなお、耳の奥にこびりついている。
その後の二人はどうなったのかというと、長続きしなかった。 一ヶ月くらいつきあった後に、別れたのだ。 別れはY子から切り出したらしい。 クラブ活動に専念したいから、というのがその理由だった。 そして、最後にY子は、こういうセリフを吐いたという。 「私、高校卒業するまで、誰ともつきあわない」
誰とも付き合わない。 誰とも付き合わない。 誰とも付き合わない…。 ぼくはこの言葉に縛られた。 そのため、Y子にその想いを伝えることが出来なかった。 もし、Kちゃんからそのことを聞かされてなかったら、ぼくは高校時代のいずれかの時期に、その想いをY子に伝えていただろう。 『Kちゃん、何でおれに言ったんか!?』 ぼくは運命を恨んだ。
その伝えられない想いが、ぼくを音楽に走らせた。 Y子がクラブ活動に専念するように、ぼくも音楽に専念しようと思ったのだ。 そして、いつかこちらを振り向かせてやる、と思ったわけだ。 だが、その思いは叶わなかった。 結局、8年間想い続けた末に、『月夜待』という歌を作り終わってしまう。
朝、店長が店の軽トラックの荷台に、三つの段ボール箱を載せてきた。 ぼくが「何ですか、これ?」と聞くと、店長は「屋上の駐車場に捨ててあったんよ」と言った。 「捨ててあったんですか?」 「うん。ほら、昨日の雨でずぶ濡れになっとるやろ」 「ああ」 「中に鞄が入っとるみたいなんよね」 「鞄?」 「うん。ちょっと待って、開けてみるけ」 そう言って、店長はずぶ濡れになった段ボール箱をびりびりに破いた。
なるほど中には鞄が入っていた。 店長はそれを見て、「いいねえ、この鞄。捨てとるならもらおうか」と言った。 「ちょっと待ってください。そこに封筒のようなものが付いていますよ」 「ああ、これね」 そう言って、店長は封筒を破った。 中には、『○○様』と書いた納品書が入っていた。 ぼくが「それ捨てたんじゃないで、落としたんじゃないんですかねえ」と言うと、店長は「いや駐車する場所じゃないところに、重ねて置いてあったもんねえ」と言う。 ぼくが破れた段ボールを見てみると、そこには荷札が貼ってあり、『11月1日(土)着)と書いてあった。 「おかしいですよ、これ。今月の1日は何曜日だったですかねえ?」 「1日は確か火曜日だったと思うけど」 「やっぱりおかしい」 「何で?」 「これ見て下さい。11月1日(土)となってるでしょ」 「ああ、そうやねえ。1日が土曜日ということは、2年前か。なるほどおかしいねえ」 「中に何か入ってるんじゃないんですか?」 「見てみようか」 そう言って、店長は鞄を開けた。
中に入っていたのは、『ナポレオン・ヒルの成功哲学』と書いたビデオテープやCDがたくさん入っていた。 「やっぱり、これおかしいですよ」 「しんちゃん、ナポレオン・ヒルちゃ何かね?」 「ちょっと前に流行った自己啓発みたいなのですよ」 「ふーん。よく知っとるねえ」 「新聞とかに載っとったやないですか」 「そうやったかねえ」 「これ全部で、おそらく100万円以上しますよ」 「えーっ、そんなんすると?」 「ええ、確かビデオテープ1本数万円するはずですから」 「何でそんな高価なものを捨てるんかねえ?」 「さあ?」 その金額を聞いて恐れたのか、店長は慌てて「警察に届けてくる」と言って、軽トラックを運転して行った。
その後店に帰ってきた店長は、「警察からも、『100万円以上しますよ』と言われたよ」と言っていた。 いくらお金ではないとはいえ、普通100万円の価値のあるものをどうして捨てるだろうか。 おそらくこれを捨てた(?)人は、ナポレオン・ヒル物の代理店をやっている人なのだと思う。 何かの理由で捨てたのだと思うが、納品書の封が開いてなかったのだから、きっと仕入先には代金を払ってないのだろう。 しかし、何で2年前に送ってきた品物を、今頃捨てるのだろうか? それもわざわざうちの店に来て。 いらないのなら、焼却するなり何なりすればいいのだ。 いらんこと捨てたりするから、警察に行かなくてはならなくなったのだ。
ところで、持ち主が現れた場合、謝礼はどうなるのだろうか? お金でくれるのだろうか? それともその商品をくれるのだろうか? それでもいいなあ。 ぼくは、それを一度見てみたかったのだから。 あっ、いかん。 いらんこと捨てたりするから、謝礼を期待してしまうじゃないか。
こたつを取りに行ったのは、午後1時過ぎだった。 朝から降り始めた雨がピークを迎えたのが、ちょうどその時間だった。 車を店の駐車場に置き、ぼくと嫁ブーは滅多に使わない傘を差して店に向かった。 店の中は雨にもかかわらず、けっこう多くの人が買物をしていた。 最初は座椅子でも見てみようかと思っていたが、雨のため何か気が重く感じたため、さっさと荷物を積んで帰ることにした。
「あのー、こたつを取りに来たんですけど」 「はい」 「これですけど」と、ぼくは契約書を見せた。 「えっ、配達になってますけど…」 「ええ、配達時間が合わなかったんで、急遽店渡しにしてもらったんです」 「ああ、そうですか。お待ち下さい」 そう言って、係員はパソコンを打ち始めた。 「しろげしんたさん。はい、確かにお預かりしております。商品を持って参りますので、少々お待ち下さい」
あとは嫁ブーに任せ、ぼくは駐車場に行き、こたつを車に乗せる準備をした。 何せ、120×90センチのこたつである。 いくらRV車とはいえ、そのままでは載らないだろう。 ということで、2列目と3列目のシートを倒すことにしたのだ。
これが大変な作業だった。 なぜかと言うと、後部のシートを倒すことが滅多にないから、倒し方がよくわからないのだ。 しかも大雨である。 全身ずぶ濡れになってしまった。
シートを倒すのに5分以上も費やしてしまった。 そして、再び店内に戻った。 ところが、まだこたつが来てないのだ。 嫁ブーに「まだか?」と聞くと、「うん、まだなんよ」と言う。 ぼくより気の短い嫁ブーの顔は、すでに怒りモードに入っていた。
それからしばらくして、倉庫の兄ちゃんみたいなのが、だらしそうに台車を押してきた。 「しろげしんたさんですか?」 「はい」 「ああ、こたつです」 そう言って、だらしく戻って行った。
ぼくと嫁ブーの前に、お買上げシールの貼ってない大きな段ボール箱が置かれたままになった。 他の係も知らん顔である。 ぼくは係に聞いた。 「あのー、これ持って行ってもいいんですか?」 「はい、どうぞ」 「このままでいいんですか?」 「はい」 「じゃあ、台車借りますよ」 「はい」 いらんこと言わんでいいから、さっさと持って行け、という感じである。
大雨の中、ぼくは台車を押して車を置いてある所まで行った。 鍵を開け、後部のドアを開き、台車に載せてあるこたつを持ち上げた。 「!」 店内では気づかなかったが、箱がえらく汚れているのだ。 ぼくは嫁ブーに、「おい、これ見てみ」と言った。 「えっ、何これ。埃まみれやん」 「おう。普通埃を取ってからお客に渡すよのう」 「うん。文句言ってこようか?」 「もういい。この店とは関わりたくない」 そう言って、さっさとこたつを車に載せ、台車を店内に持って行った。 「台車、ここに置いときますよ」 誰も返事をしなかった。
昨日も言ったが、所詮その程度の店なのである。 ぼくは改めて、その感を強くした。
今月の1日、Nという家具屋でこたつを買った。 あいにくその日は商品が切れていて、「取り寄せになります」ということだった。 別に急いでなかったので、「かまいませんよ」と言い、入荷したら配達してくれるように頼んだ。
「物は2,3日で入ってくるんですが、配達の方は便の関係で11日になります。それでよろしいでしょうか?」 「11日…、何曜日ですかねえ?」 「金曜日になります」 「ああ、それならいいですよ。ただ午前中は都合が悪いんで、午後からにしてもらえますか?」 「こちらでは時間の指定が出来ないんですよ。いちおう、その旨は書いておきますが、前日に配送のほうから連絡が入りますので、その時改めて打ち合わせしてもらえませんか?」 「ああ、そうですか。わかりました」 ということで、手続きをしたのだった。
どうして11日の午前中がだめなのかというと、その日嫁ブーが健康診断で、ぼくが連れて行かなければならない。 その健康診断は9時から始まるのだが、終わるのは場合によっては11時近くになるという。 それから家に帰ると、11時半になってしまう。 そのために午前中を避けたわけだ。
さて、今日のこと。 仕事中、携帯に電話が入った。 出てみると、例のN店からだ。 「N店の配送センターの者です」 「はい」 「明日の配達の件で、お電話差し上げたのですが」 「はい」 「明日は午前中に伺うことになってますが、それでよろしいでしょうか?」 「えっ、午前中ですか?」 「はい」 「午前中は都合が悪いんですが」 「そうなんですか」 「午後からになりませんか?」 「午後からは他の地域を回ることになってますので、行けないんですが…」 「それは困りましたねえ。買った時に、午前中は都合が悪いので午後からにして欲しいと頼んでたんですよ。そしたら、配送の方と打ち合わせてくれと言われたんですよ」 「あ、そうなんですか。でも、もう決まっていることなんで、動かせないんですが…」
これがN店の打ち合わせのやり方である。 打ち合わせでも何でもない。 ただ、自分たちが勝手に決めた時間を、お客に押しつけているだけなのだ。
その人は、あげくにこんなことを言い出した。 「じゃあ、提案なんですが、後日の配達ということではだめでしょうか?」 「後日っていつですか?」 「そうですねえ、最短で14日の月曜日になります」 「14日は仕事なので、家には誰もいません。その次はいつですか?」 「次はですねえ…、17日の木曜日になります」 「それもだめです」 「じゃあ、どうしたらいいでしょうか?」 こちらが、どうしたらいいか聞きたいくらいである。
だいたい配達を後日に回すだけのことで、『提案』という言葉を使うだろうか。 しょせんその程度の店なのだと思ったぼくは、「もういいです。こちらから取りに行きます」と言った。 「あ、そうですか。じゃあ、手続きを取りますので、いったん電話を切ります」と言って、先方は電話を切った。
それからしばらく電話はかからなかった。 『配送便に乗せなければいいだけなのに、いったい何の手続きをとっているのだろう? 配達時間を報告することを「打ち合わせ」だと言ったり、配達を後日回しにするのを「提案」だと言ったり、おかしな店だ』 電話を待っている間、ぼくはそんなことを思っていた。
30分ばかり経って、ようやく電話が入った。 「はい、店渡しの手続きが完了しました。で、お客さんは、何時頃取りに見えますか?」 「えっ、店に取りに行くんだから、いつでもいいんじゃないんですか?」 「いや、いろいろ準備がありますんで」 「じゃあ、11時から1時の間に行きます」 「11時から1時の間ですね。はい、わかりました。じゃあ、その時間帯に準備しておきます」 たかが店渡しに何の準備がいるのだろう。 しかも店に取りに行くのに、時間帯を言わなければならないとは…。 いよいよおかしな店である。
ということで、明日は余計な仕事が増えてしまった。
一昨日の日記に、嫁ブーの左あごが腫れたので、そのことをヒロミに教えたら、『きっと、それは焼き鳥がはさまっている』というメールが来たと書いた。 そのことで思い出したことがある。 ヒロミと飲みに行った時のことだ。 ぼくがタバコを吸おうとして灰皿を手元に寄せた時だった。 そこには、口紅の付いた爪楊枝が十数本捨ててあった。 ぼくが「なんかこれ!?」と言うと、ヒロミが鼻にしわを寄せて「フフ」と笑っていた。 「これ、ヒロミが使ったんか?」 「だって、焼き鳥が歯に挟まるんやもん」 「いくら歯に挟まると言っても、普通十数本も使わんやろ?」 「えーっ、わたし使うよ」 「だから歯が取れるんたい」
そういう会話をしている時、ちょっと思い出したことがある。 ぼくの歯には、肉がはさまるスポットと、魚がはさまるスポットがある。 それに気づいたのは、数年前のことだった。 その頃はしょっちゅうバイキングの店で焼き肉を食べていたのだが、決まって右下の奥から2番目と3番目の歯の間に肉がはさまるのだ。 最初は気にしなかったのだが、すでに虫歯になっていたせいか、放っておくと歯茎が腫れてくる。 そこで、肉が挟まったのに気づいたら、すぐに爪楊枝を使ってその肉片を取るようになった。
また魚の場合は、右の糸切り歯とその横の奥歯の間にはさまるのだ。 ここにはさまると、取るのが大変である。 歯と歯の隙間が微妙にしか空いてないせいか、爪楊枝が立てにくい。 また、ものが魚だけに、ちょっとずつしか身が取れないのだ。 ようやく取れたと思っても、まだ魚がはさまっているような気がする。 だけど、もうそれ以上は取れない。 そこで放っておいたのだが、前回歯医者で治療した時、しっかりそこを削られた。 そう、そこも虫が食っていたのだ。
こういったことも、歯医者に行ったから治っていると思っていた。 ところが、そうでもないのだ。 やはり肉は肉のスポットに、魚は魚のスポットにちゃんと収まっている。 これまた放っておくと、また治療に行かなければならない。 そこで、前にも増して爪楊枝を使うこととなった。
しかし、ぼくはヒロミほども爪楊枝を消費しない。 せいぜい2,3本である。 「ヒロミ、おまえ歯と歯の間の隙間が、人の十倍あるんやないんか?だから、爪楊枝が十数本もいるんよ」 「そんなことないよー」 そう言いながら、ヒロミはまた爪楊枝をくわえていた。
2005年11月08日(火) |
ヒロミちゃんと飲みに行く(3) |
飲み始めて1時間ほど経ってから、予約を入れてくれた中リンを呼んだ。 中リンは小倉からの帰りだったらしく、よそ行きの服装をしていた。 店に入ってきた時、ぼくはその格好を見てびっくりした。 何とマフラーをしている。 そこでぼくは、「中リンは寒いんか?」と聞いてみた。 「えっ? 寒くないですよ」 「じゃあ、のどが弱いんか?」 「あ、これですか。これ流行なんですよ」 「‥‥」 いくら流行とはいえ、TPOというものが…、若い子はよくわからない。
その後ヒロミは、中リンよりさらに若い、娘Mリンを呼んだ。 Mリンも小倉からの帰りで、何でも小倉でダンスを習っているらしい。 ヒロミは、Mリンが来たはなは母親らしく振る舞っていたが、ぼくたちの前だったので気がゆるんだのか、つい本性を現してしまった。 Mリンが来てからも、ヒロミは取れた差し歯を口の中に入れていたのだが、時々面白がってそれをぼくや嫁ブーに見せるのだ。 それを見つけたMリンは、「ママ、汚いけやめて!」と言って、ヒロミを叱った。 「だって、なおす(しまう)ところがないんよ」 「バッグにでも入れとったらいいやん」 「あ、そうやね。バッグに入れとったらいいね」 ヒロミは、ようやく差し歯を口の中から取り出し、中に入れていた。 どちらが母親かわからない。
それからしばらくして、今度は中リンの彼氏が登場した。 ぼくは彼氏を最初見た時から、誰かに似ていると思っていたのだが、それが誰だか思い出せなかった。 翌日中リンに、「彼氏、誰かに似とるとか言われん?」と聞いてみると、「Mr.ビーンに似てるって言われるけど」と言う。 いや、違う。 確かに似てはいるが、Mr.ビーンでは、ぼくの思ったイメージとは少し違うのだ。 それがようやくわかったのは、3日後のことだった。 午後9時過ぎだったか、ヒロミからメールが届いた。 そこには、『“危険なアネキ”見て。Mリンが、中リンの彼氏に似とる人が出てるって』と書いてあった。 さっそくテレビをつけてみると、そこに中リンの彼氏がいた。 森山未来である。 さっそく、そのことを中リンにメールした。 中リンからも『あ〜、似てますね!!』という返事が来た。
さて、最終的に6人になった飲み会は、11時半でお開きとなった。 終電の時間が迫ってきたからだ。 その終電を逃すと、タクシーで帰らなければならなくなる。 夜間ということもあって、家までは一万円近くかかるだろう。 ということで、ぼくたち夫婦とヒロミ親子は、急いで駅まで行った。 その間もヒロミは、「歯がない」と言って騒いでいた。 「ママ、ちゃんとバッグに入れたんね?」 相変わらずヒロミは、Mリンから叱られていた。
昨夜もいつもと同じく、仕事が終わったあとで嫁ブーを迎えに行った。 従業員の専用門の前に車を停め、さっそく携帯で電話をかけた。 「着いたぞ」 「すぐ行きます」
しばらくしてから、嫁ブーが出てきた。 しかし、いつもと様子が違うのだ。 嫁ブーが顔を上げた瞬間、ぼくは「えっ?」と声を上げた。 左のあごのところに白い湿布のようなものを貼っているのだ。 ぼくは「もしかしたら…」と思った。
車に乗り込んだ嫁ブーに、ぼくは言った。 「おまえ、まさか虫歯じゃないんか?」 「ああ、これやろ」 そう言って、嫁ブーは湿布のようなものと指さした。 「昨日寝る時からおかしかったんよね」 「朝はどうもなかったやないか」 「うん、朝はね。昼頃からなんよ。あごがだんだん重くなってきて、それでこんなになったんよ」 「痛むんか?」 「いや、痛くはないんやけどね」 「明日、歯医者に行った方がいいぞ」 「うーん…」 「おれが行きよったS歯科がいいぞ」 「うーん…」
嫁ブーは歯医者行きに気が進まないようだ。 そこで、 「おまえ、そのまま放っといたら、脳に菌が入って大変なことになるぞ」と言って、脅しをかけた。 「えっ、大変なこと?」 「パーになるんたい」 「パーになると?」 「おう。元々パーのに、それ以上パーになったら面倒見きれんけの。さっさと実家に帰ってもらうわい」 「‥‥」 「いいか、明日は医者に行けよ」 「うん、わかった」 ぼくも、嫁ブーには『パー』が効くということが、よくわかった。
家に着くなり、ぼくは言った。 「じゃあ、さっそく撮ろうかの」 「えっ、何を」 「写真たい」 「写真!?」 「おう。その美しい顔を写真に納めとかなの」 「何が、『納めとかなの』ね。どうせその写真を、またヒロミに送るつもりやろ」 「決まっとるやないか。美しい顔は共有せなの」 「しんちゃんといい、ヒロミといい、ホントあんたたちよく似とるねえ」 「よけいなことは言わんでいい。はいポーズ」 ぼくはすぐさま、その写真をヒロミに送った。
さて、今日のこと。 嫁ブーは、朝一番に歯医者に行った。 10時半頃だったろうか、ぼくの携帯が鳴った。 嫁ブーからだった。 「今終わったけ」 「どうやった?」 「最高に腫れるまで治療できんらしいんよ」 「えっ、まだ腫れるんか?」 「うん。昔治療した歯のどれかの神経が、まだ残っていて、それが炎症を起こしとるらしいんよ。それで、腫れきらんと、どの歯か特定できんらしい」 「そうか、それは楽しみやのう」 「何が楽しみなんね」 「腫れあがった顔に決まっとるやろ」 「もう、人ごとかと思って」 「いいか、帰ったら、また写真やけの」
電話を切ったあと、再びぼくはヒロミにメールを送った。 『ボリ(嫁ブーのこと)の顔は、まだ腫れるらしい。帰ったら写真撮って送る』 すると、ヒロミからこんなメールが届いた。 『あの焼き鳥が、歯にはさまっとるんよ!腫れがとれたら抜歯やね。抜歯の会を作らんとね』 どうやらヒロミは、嫁ブーの腫れた顔よりも、抜歯のほうを期待しているようだ。
2005年11月06日(日) |
ヒロミちゃんと飲みに行く(2) |
さて当日。 ぼくと嫁ブーは、約束の時間に間に合うように、1時間前に家を出た。 しかし門司は遠い。 JRで30分もかかるのだ。 料金は片道450円である。 およそ市内を移動する価格ではない。 首都圏なら、かなり遠くまで移動できるのではないだろうか。
7時20分頃、門司駅に到着。 そこでヒロミと合流し、例の焼鳥屋に向かった。
店に着いてから、ヒロミは一人でしゃべっていた。 突然、「私たちの関係は、この三人じゃないとわからんよね」と言い出した。 何を言っているんだろうと思っていると、 「知り合いに『私、友だちの旦那と毎日メールしよるんよ』と言ったら、『えっ、それおかしいよ。友だちは、そのこと知っとると?』とか言うんよ。それで『友だちは知っとるよ。でも、何も言わんよ』と言ったんよ。ね、おかしいやろ。私たちの関係は、他の人にはわからんよね」と言うのだ。 別におかしくはない。 ちゃんと「友だちとは高校からのつきあいで、旦那は独身の時に働いていた会社の上司だった。昔は3人でよく遊びに行ったり、飲みに行ったりしていた」と説明すれば、その知り合いも納得するだろう。 ヒロミのことだから、おそらくその説明がなく、突然「私、友だちの旦那とメールしよるっちゃ」と言ったのだと思う。 だから変に思われるのだ。
が、ヒロミの、その突然が面白い。 前に、焼鳥屋の件で電話をかけた時のことだった。 ヒロミはなかなか電話に出ない。 10回ぐらいコールして、ようやく出たと思ったら、こちらが誰とも確認せずに、突然「それがね、○万円かかるらしいんよ」と言いだした。 「えっ?」 電話の向こうで誰かと話しているのかと思った。 「ねえ、保険使った方がいいんかねえ?」 「ああ、おれに言いよるんか」 「うん」 「何の話か?」 「歯よ、歯」 「ああ、歯か」 会社にいた頃も、何の説明もなく突然「悲しいことがあった」と言って帰ったことがある。 昔からヒロミはこうなのだ。
その歯のことで、飲んでいる途中にアクシデントが起きた。 ヒロミが今治療している歯の、反対側の差し歯が取れたのだ。 ヒロミが周りを気にしながら、小声で「しんたさん」と言うので、何かと思って見てみると、ヒロミは舌を出した。 何と、その舌の上に歯が載っているではないか。 「取れたんか?」 「うん」 「ティッシュか何かに包んで、しまっておいた方がいいぞ」 「そうやね」 と言ったのだが、その後何時間も、ヒロミはその歯を舌の上に載せて遊んでいたのだった。
2005年11月05日(土) |
ヒロミちゃんと飲みに行く(1) |
先月のことだった。 前々からヒロミに頼まれていた洗剤を、嫁ブーと二人で持って行ったことがある。 その時ヒロミが、「今度いつ休み?」と聞いてきた。 近くにおいしい焼鳥屋があるので行こうと言うのだ。 「都合がいいのは、月末の土曜日やけど。その日なら二人とも休みやけ」 「じゃあ、月末に行こうね」 ということになった。
それから数日後、ヒロミから『歯を抜いたあとに飲みに行ってもいいんかねえ?』というメールが来た。 どうしたのかと思い、電話して聞いてみると、「月末に歯を抜くことになったんよ」と言う。 「おれ、去年歯を抜いた日に、先生に『今日飲みに行ってもいいですか?』と聞いたことがあるんやけど、その時は『別にかまいませんよ』という返事やった」 「じゃあ、飲みに行ってもいいんやね」 「医者がいいと言うんやけ、いいんやないんかのう。ただ…」 「ただ?」 「歯を抜いたあとに飲んでも、おいしくないんよ」 「ええっ!?」 「刺身を噛んでも流血やけのう。半分血を飲みよるようなもんよ」 「じゃあ、行けんやん」 「そうやのう。おいしくないけのう」
「ねえ、しんたさん。まだ予約してないやろ?」 「えっ、おれが予約するんか?」 「うん」 「知らんぞ、その店。しかも門司やないか。ヒロミの家の近くやろうもん」 「あっ、中リンが知っとるけ、頼んでみたら?」 「ああ、そうか。中リンがおったのう」 中リンとは、ぼくの店で働いている子で、ヒロミの家の近くに住んでいる。 実は、その焼鳥屋は中リンの行きつけでもあった。
「中リンに言って、来月頭に予約してもらって」 「来月の頭でいいんか?」 「うん。その頃は、もう大丈夫やろうけ」 ということで、来月頭(11月4日)ということで、話が決まった。 月末、ヒロミからまたメールが届いた。 『2本抜いた』と書いてあり、そこには抜歯後の間抜けな顔の写真まで付いていた。
さて、前日(11月3日)になった。 ヒロミから、『明日何時に予約した?』というメールが届いたので、『明日は7時30分から。「歯抜けヒロミ」で予約入れておいた』と書いて送った。 『歯抜けヒロミ』、この名前にヒロミは引っかかった。 そのメールがきてから、ヒロミはご主人に「しんたさん、『抜歯(ばっし)ヒロミ』という名前で予約したらしいんよ」と言ったらしい。 ヒロミのご主人は、「そんなの嘘に決まっとるやろ!」と言ったらしい。 そう、嘘である。 ぼくは『歯抜けヒロミ』で予約したのだから。
【24:30】 飲みに行って、さっき帰ってきた。 飲み過ぎたせいか、どうも体調がよくない。 明日は仕事なので、とにかく早く寝て体調を元に戻しておかなければならない。 ということで、今日はもう寝ます。 飲み会風景は、明日書きます。 おやすみなさい。
【追記】 朝になっても体調は相変わらずである。 2時間近く考えているが、日記に関しては何も出てこない。 うっ、またトイレだ。 きつい。
お「そういえば、6月にビートルズが来たんやったねえ」 小「うん」 お「テレビで見たやろ?」 小「見たけど…、よくわからんかった」 お「あと何年かしたら、わかるようになるよ」 小「ふ−ん。でも、ぼくは加山雄三のほうがいい」 お「ああ、そうやったね。でも、加山雄三ももうすぐ飽きてくるよ」 小「えっ?」 お「もうすぐタイガースというグループが出てきて、そっちが好きになるよ」 小「タイガース?」 お「うん」 小「阪神ですか?」 お「いや、ビートルズみたいなグループ」
小「ちょっと聞いていいですか?」 お「何ね?」 小「おいちゃんの時代は、西鉄ライオンズ強いですか?」 お「ああ、そのことか。あのねえ、この時代には、もう西鉄ライオンズはないんよね」 小「えーっ、西鉄ライオンズないんですか?」 お「うん」 小「じゃあ、福岡にプロ野球のチームはないんですか?」 お「いや、あるよ」 小「どこですか?」 お「ソフトバンク」 小「何ですか、それ?」 お「あのね、あんたのおる時代に、区内の引野小学校におった人が、作った会社なんよ」 小「引野小の人が?今、その人何年生ですか?」 お「同い年やけ、3年生」 小「ふーん。ソフト・バンクスというんですか?」 お「いや、福岡ソフトバンク・ホークスというんよ」 小「え、ホークスなんですか?」 お「うん」 小「南海じゃないんですか?」 お「南海は今から17年前、あんたの時代からだと22年後に、ダイエーに身売りしてね、それで福岡に来たんよ」 小「ダイエー?」 お「うん。今は知らんやろうね。もうすぐ黒崎に出来るよ」 小「ふーん。で、ライオンズはどうしたんですか?」 お「ライオンズは今から27年前、あんたの時代からだと12年後に西武に身売りして、埼玉に行ったんよ」 小「うーん、よくわからん。で、そのソフト何とかって強いんですか?」 お「強いよ」 小「へえ。監督は野村ですか?」 お「いや、王監督」 小「えっ、王監督って、王貞治ですか?」 お「そうよ」 小「巨人もなくなったんですか?」 お「いや、巨人はあるよ。まあ、ないみたいなものやけどね」 小「じゃあ、巨人は長嶋が監督なんですか?」 お「いや、違うよ」 小「国松ですか?」 お「違う」 小「柴田ですか?」 お「違う」 小「城之内」 お「違うなあ」 小「じゃあ、堀内ですか?」 お「惜しいなあ。今年まで監督やった」 小「誰なんですか?」 お「今、昭和41年やったねえ?」 小「うん」 お「じゃあ、去年の夏の甲子園の優勝校、知っとる?」 小「えーと、どこやったかねえ?」 お「福岡県の高校」 小「ああ、三池工業」 お「うん。そこの監督の息子が、今度監督になるんよ」 小「何という人?」 お「原というんよ」 小「ふーん」
そこまで話して、ふと「これからこういうことが起こるから、絶対にこういう行動をとるなと教えてやろう。こんなチャンスは二度とない」と思った。 ところが、無情にも夢はそこで醒めたのだった。 実におかしな夢だった。 もし、次にこういうことがあったら、その時は、そこから話を始めよう。 もしかしたら、それで今のぼくの人生が変わるかもしれないのだから。
お「何か聞きたいことある?」 小「聞きたいこと?」 お「何でもいいよ」 小「じゃあ、W3(ワンダースリー)の最終回はどうなるんですか?」 お「ああ、それはまだ知らん方がいい」 小「何でですか?」 お「30歳過ぎてからの楽しみがなくなる」 小「ちぇっ」
お「他にある?」 小「ぼく、大学に行くんですか?」 お「残念ながら、他の道を行くことになるよ」 小「他の道?」 お「うん。高校に入ってから、作曲したり、詩を書いたりするようになるんよ。それでね、大学に行く勉強をせんようになる」 小「作曲ですか?」 お「そう。加山雄三みたいにね」 小「じゃあ、加山雄三みたいになるんですか?」 お「頑張るけどなれん」 小「なーんか…」 お「でも、ずっと夢を見れるよ」
小「あっ、そういえば何ヶ月か前に友だちに本貸したんやけど、まだ戻ってこんのです。いつ戻ってくるんですか?」 お「ああ、覚えとるよ。別冊少年サンデーやろ」 小「うん」 お「残念やけど諦めたほうがいいよ。その友だちは39年経っても戻してくれんよ」 小「えーっ!?宝物なのに…」 お「おそ松くんやったよね」 小「うん」 お「でも、心配せんでいいよ」 小「何で?」 お「そのうち、もっと大切な本に出会うけ」
お「ところで、宿題すんだ?」 小「まだ」 お「お母さんに叱られるよ」 小「うん。お母さんうるさいけ」 お「そうやろ」 小「いいよなあ、大人は。宿題がないけ」 お「そうでもないよ」 小「じゃあ、おいちゃんは、仕事から帰ったら宿題しているんですか?」 お「宿題みたいなことはしよるよ」 小「何してるんですか?」 お「毎日パソコンの前に座っとるんよ」 小「パソコンって何ですか?」 お「パーソナルコンピュータ」 小「?」 お「電子計算機ってわかる?」 小「電気のそろばんですか?」 お「そんなところやけど…。ああ、電子頭脳ならわかるやろ?」 小「アトム」 お「そうそう」 小「パソコンって、アトムみたいなのですか?」 お「頭脳だけね」
小「そちらに、ロボットはいるんですか?」 お「いる」 小「やっぱり。じゃあ、空飛んだりするんですか?」 お「いや、飛ばんよ。歩いたり踊ったりはするけどね」 小「しゃべるんですか?」 お「しゃべるのもあるよ。でも、アトムみたいに人間の心を持ってないよ」 小「じゃあ、悪者なんですか?」 お「悪者じゃない」
小「宇宙とかに行けるんですか?」 お「お金出せば行けるらしいよ」 小「ふーん。じゃあ、月に都市とかはあるんですか?」 お「ないよ」 小「宇宙って、どこに行くんですか?」 お「地球の周りを回るだけみたいよ」 小「なーんか、月には行けんとか」 お「いや、月には行ったよ」 小「えっ!?」 お「あと3年したら行くよ。6年生の1学期の終業式の日は、早く帰ってテレビ見たらいい」 小「本当ですか?」 お「うん」
さて運命の月である。 これからぼくはどう変わっていくのだろう。 それを占いの人は教えてくれなかった。 ただ言えることは、ぼくが夢を見て生きていくことにした、ということだけだ。 ということで、今日は風呂の中で夢を見ていた。
風呂の中で本を読んでいる時だった。 突然『ビービー、ガーガー』という音がしてきた。 「何だろう?」と思っていると、突然目の前にテレビが現れた。 画面は白黒画像で、最初ぼやけていたが、だんだん輪郭がはっきりしてきた。 一人の少年が映っている。 どこかで見たことのある顔をしていた。 ぼくがじっとその画面を見つめていると、少年はおもむろに口を開いた。
少年「あのー」 おいちゃん「‥‥」 小「あのー」 お「‥‥」 小「おいちゃん、返事してください」 お「えっ? おれに言いよると?」 小「そうですけど」 お「あんた誰?」 小「しろげしんたといいます」 お「えっ?」 小「おいちゃん誰ですか?」 お「おれも、しろげしんたというんやけど…」 小「えーっ。ホントですか?」 お「うん」 小「何で同じ名前なんですか?」 お「知らんよ、そんなこと。ところで、あんた何しようと?」 小「スーパージェッターを見ていたんです。そしたら、急にチャンネルが変わって、おいちゃんが出てきたんです」 お「えっ、スーパージェッターって、そこは今何年?」 小「昭和41年です」 お「昭和41年…?」 小「はい」 お「あんた今何年生?」 小「小学3年生です」 お「何組?」 小「4組」 お「教室は2階やろ」 小「うん」 お「担任の先生の名前は?」 小「Y先生」 お「4月に、教室から1階のテラスに唾はいて、それが女子の頭にかかって怒られんかった?」 小「怒られた」 お「…そうか」 どうやらぼくは、39年前の自分を見ているようなのだ。
小「おいちゃんは何してるんですか?」 お「風呂に入っとるんよ。そしたら突然目の前にテレビが現れて、あんたが出てきたんよ」 小「へえ」 お「もしかしたら…、もしかしたらなんやけど、おれ、あんたの39年後の人かもしれんのよね」 小「えっ、そうなんですか?じゃあ、ぼく、今月9歳になるから、39年後というと…、えーと、おいちゃんは今月48歳になるんですか?」 お「うん」
小「おいちゃん、仕事は何やってるんですか?」 お「販売の仕事」 小「販売って、何の?」 お「主に電化製品」 小「えっ、ぼくはそんな仕事はするつもりないけど…」 お「その時はそうやったけどね、成り行きでそうなったんよ」 小「成り行きって何ですか?」 お「そのうちわかる」
小「結婚してるんですか?」 お「うん」 小「お嫁さんの名前、何と言うんですか?」 お「ユキ」 小「えっ、M子じゃないんですか?」 お「何でM子なんね?」 小「だって、ぼくM子と結婚の約束したんですよ」 お「M子はねえ、小学校3年と4年の時だけの話。それからいろいろあるんよ」 小「いろいろって何ですか?」 お「…そのうちわかる」
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