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陋屋で俺様が自由に出入りできない部屋がいくつかある。 一つはトイレであるが、 まぁ、これはいたしかたあるまい。 俺様も別に一緒に入るというような 奇矯な趣味は持ち合わせていないので、問題はない。 他の部屋の話をしよう。 まず一つ。 普段は物置部屋と化している和室である。 ここは俺様の興味を誘うものが、しこたま詰め込まれている。 MILETが発表会で着たシフォンのドレスや、 レフ板代わりに使っていた、薄い紙の貼ってある板。 それから入り込んで冒険するのにもってこいの押入などである。 だが、普段そこは締め切られており、 時折何かを取り出すために、固く閉ざされた襖が開けられるのだ。 その瞬間を見逃さずに中に走り込み、 MILETと追い駆けっこなどに興じることもある。 基本的には俺様だけが立入禁止になっているので、 その反感を込めての嫌がらせであるが。 もう一つ。 これは風呂場である。 ここは条件付きで俺様が入ることが出来る。 その条件というのは、昼間で風呂桶に湯が張られておらず、 タイルの床も乾いている、というものだ。 そういった条件に適えば 俺様も風呂場にはいることが出来る。 しかし俺様が入りたいのは、そういうときではない。 もうもうと湯煙に煙った、そういった風呂場に入ってみたいのだ。 今日はMILETが風呂から上がってすぐに、 風呂場に侵入を試みた。 残念なことに、湯を沸かした形跡はなく、 風呂場は寒いだけだった。 通りでMILETがすんなり俺様を通したわけだ。 しかし、風呂桶に水は張ってあった。 俺様は興味を引かれて覗き込んだ。 その際に、腹の毛を少々水で濡らしてしまったが、 そういうときはバスタオル代わりがいるから そいつに任せることにする。 …ここで言うバスタオル代わりというのは 薔薇職人のことだ。 なんだか悪態をついていたが、俺様の知ったことではない。
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