”BLACK BEAUTY”な日々
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2006年04月22日(土) 再生 その八

いよいよ本日は「ハーレー野郎」とのセッションである。
小岩駅に着くと、待ち合わせ場所であるお相撲さんの銅像のそばにスキンヘッドにキャップを被った男性がいた。しかも髭をたくわえ、目が鋭く光っている。ハーレー野郎の正体はちょっと小柄な小岩の武藤敬司であった。声をかけ、本人である事を確認し、スタジオへ向かう。

スタジオに着くと1時間予約時間を間違えていた事が判明。1時間早くスタジオ入りしてしまったのだ。
いかん。こういう時は軽いジョークで場を和ませ、謝罪をするというのが大人というものだ。俺が軽いジョークを考えていると、ベーシストがすかさず無難な話題ですでに場を和ませていた。結局俺の軽いジョークは陽の目を見る事はなかった。

小柄な武藤君のプロフィールはこんな感じだった。

『熱い?ロックをトリオでやりたし。好みは、ジミヘン、ZEP、BBA、グラファン、クリーム、KISS、などなど。結構何でも聞きますが、自分のドラムのスタイルは手数よりもパワーとノリとリズムアクセントで押すタイプではないかと思います。やる曲は、リフ物が好きです。加入もしくは新規募集。ブーツカットやベルボトムを履きこなすような雰囲気をもった人が良いです。ステージ衣装もそれなりに派手に行きたいです。初心者は申し訳ないですがパスいたします。』

トリオでKISSをやれるのかはなはだ疑問だが俺とベーシストはこれらのバンドについて「俺達も好きっすよ!」「リフ物の曲もありまっせ!」等々のアピールをし、何とか1時間をつぶした。

そしてスタジオに入りセッティング中、小岩の武藤が「手数はそんなに多くないです。割と淡々と刻む感じですね」と言うので俺はチャーリーワッツを何となく想像していた。

セッティングが終わり、俺は小岩の武藤に「じゃあ、オリジナルを何曲かやってみましょう。シンプルな曲が多いので、ついて来て下さい」と言って、1曲目のリフを弾き始めた。
する小岩の武藤がそれに反応し、ドラムを叩き始めたのだが、その音量が半端じゃなくでかい。最早爆音に近く、俺はドラムにマイクを立てているんじゃないかと錯覚を覚えるほどだった。
そして、「手数は少ない」と言っていたにも関わらず、とんでもなく手数が多い。
今回のバンド結成で俺が狙っている線は「引き算の感覚で楽曲を組み立てる事」だった。音を出す瞬間に3人がビシッと揃い、かつ音を切る時も3人が同じタイミングで音を切る。そして音を切った後の空白を大切にしたかった。
その空白が「キレのある演奏」につながるからだ。

ところが小岩の武藤はその我々が大切にしている空白を爆音で埋め尽くしてしまう。結果、Aメロとサビの区別がほとんどつかない恐ろしい状況となってしまった。

やがて、数曲演奏して武藤に感想を求めると武藤はこういった。
「僕はブルースベースのバンドより、ハードロックのバンドの方が好みなんですね。例えばパープルとかの」

ちょっと待ちたまえ、君のプロフィールにパープルなんて書いてなかったぞ。しかも君の好みのジミヘン、ZEP、BBA、グラファン、クリームは見事にブルースベースのバンドではないか!

でもここでそんな事を言ってみても始まらない。ただ一つ言えるのは、武藤は俺達のバンドに加入する意思はないという事だ。

さらに驚いたのは、自分も歌いたいのでマイクを立てて欲しいと武藤が言い出した。初セッションでドラマーが歌いだすってのは想定外だった。

ちなみにフリークスの「乾いた風」もやってみた。結果は風が乾いてるか湿っているかの騒ぎではなく、カトリーナクラスのハリケーンが楽曲を粉々に粉砕してしまった。
これでは「お前の夢の続きも、あのメロディーの続き」も聞けやしない。

トホホ。誰か俺にポーションをくれ。






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