2004年11月15日(月)
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ナイトメア【恨み節】 |
「そういうことを思ってるんだったら、目の前で堂々と言えば??」
と、腹立たしいような、悲しくなるような、そんな気持ちで目が覚めた。 日記の日付は15日・・・・だけど、16日の早朝。あたくしはまたナイトメアによって叩き起こされた。 これ以上眠っていたくない、その衝動だけでベッドを出た。
隣ではぷよ2がスースーと寝息を立てて気持ち良さそうに眠っているのだけど、 そんな彼に、またもや殺意を覚えた。 気持ち良さそうに眠っているからではない。 この寝息がどうやら、この朝に見たナイトメアの原因だったようだ。
ずっと同じせりふで、何回も何回も
「●●●●●●●●。」
と、エンドレスで言われた。 起きた瞬間、本当に彼が言っているのだとしたら、揺さぶり起こして事の真意を確かめるところだったが 冷静になって思うと、あれはぷよ2の声じゃないことに気がついて、殺意はナリを潜めた。 さっきまで克明に覚えていたというのに、そのせりふがどうしても思い出せない。 やっぱり夢だったんだ。少し安心している。 ただそのせりふは、前にも実生活で誰かの口からハッキリと聞いたことがあるもので、 その時も、その人に対して「殺意」・・・・とまではいかないけれど、物凄くイヤなヤツ・・・・と ストレートに感じたことだけは今でもハッキリ覚えているんだけど・・・・。
あの声は・・・・あの声の主は・・・・タカだ!! 夢の中であたくしを苦しめていたのは、高校3年から大学の半ばくらいまでつきあっていた、 タカの声だ!! あたくしは目が覚めて5分後、その答に辿りついて、 まだ眠っていたぷよ2を拝んで、殺意を抱いたことをコッソリと詫びておく(苦笑)。
ナイトメアのシチュエイションはいたってシンプル。 夢と現実の間を彷徨っている微妙な時間帯だったので、あたくしも最初、夢なのか現実なのかの 区別が怪しかった。故、すごく拘束されているような感覚で、言い返すこともできない。
【僻み】
ずっとずっと、その親しいオトコは、まるで恨んでいるかのように、拗ねているかのように、 僻んでいるかのように、あたくしに向かってこう言い続けるのである。
「あんなもの・・・・●●●●●●●・・・・」
「お前のやっていることが●●●●●●●・・・・」
ずっとずっとそれが続く。 途中で目が覚めたのだけど、そこにいるのはぷよ2で、最初は彼が寝言に乗じて 本音を語っているようにも見えた。 囁き声なのが、ぐさりぐさりとあたくしの心を抉っていく。 そんなことを思いつつ、あたくしの事を見ていたのか・・・・どこまで続くのか見ていよう。 あたくしは声を出すのを堪えて、まだ覚醒しきっていないのをいいことに その声が何を言い続けるのか聞き続けることにした。 たまに囁き声から、普通の声になって、明らかにそれはあたくしに向けられているのである。
「1ヶ月に数千円にもならないようなことをして自己満足に浸るなよ。」
「実際、あんなもの俺にだって作れる。」
「特別だと思いやがって。」
あ・・・・最後のコレかもしれない。「●●●●●●●・・・・。」の正体は。 ハッキリしないけど、多分、コレだと思う。
「才能あると思うなよ。」
「チャンスが巧く巡ってきただけで調子に乗りやがって。」
「あんなのを仕事だと言うな。」
等々、肉声になった時の言葉は種々雑多だったけれど、最終的には「●●●●●●●」で終わる。 囁くような嫌味な声で。
起きたのは6:30過ぎ。多分、コレが1時間くらいに渡って続いていたものと思われる。 最悪、現実にそういうことを1時間為されたら、普通の人間でもかなり堪えるか、 最終的に言い争いになる。夢だから多分、黙って聞いていたんだと思う。
恐らく、焦点が合わされているのは、最近、ご注文が犇いてきた色紙の件だろう。 注文が入って目まぐるしい反面、嬉しくて嬉しくて仕方がなかったのは事実だ。 仕事というよりはライフワークみたいなもので、 お金だって原価にちょこっと上乗せした金額くらいしか受け取っていない。
(かの子が知ったら、ビビるかもしれないけれど、色紙の1枚単価はたったの¥50) (なので、残りの90%の価格が、あたくしの詠む歌につけられた値段と手間賃の合計金額)
・・・・計算上、そういうことになる。 大量生産を避け、同じものを2枚と作らないあたくしのポリシーが、全てあたくしを支えているようなもので それを真っ向否定されて、黙っていられるあたくしではない。 なのに、言い返さなかったのは、冷静になるまで、それをぷよ2に言われていたと 勘違いしてたからなんだろうか。
最近は、発送する前に、出来上がった作品は全部ぷよ2に見せて、チェックしてもらっている。 この間、発送したばかりのお2人の歌の清書版を見て、ぷよ2は
「こっちのは『大』っていう字と『見』っていう字がいい。」
「こっちのは『人』と『真』っていう字に味があるね♪」
ときちんと感想を言ってくれていた。 あたくしは書家ではないので、書道においての文字のバランスのとり方や、美しい文字という基準が 今ひとつ曖昧なままだ。 今まで色紙を受け取った人たちには非常に申し訳ないことを言うようで悪いのだけど、あれら作品は全部 あたくしの気紛れとインスピレーション、そしてノリと勢いが最高潮に達した時に書いたもので、 書家の人たちが精神統一するために丁寧に墨を磨ったり、正座をして黙祷をしたりという作業工程は あたくしの創作行程の中には一切ない。 自分でも、それじゃいけない・・・・と思うこともあるけれど、そもそも書家でないあたくしの 「文字」に値段がつくのではなく、自称『歌人』のあたくしの歌に値段がつくと思っているフシも否めないので そこは見て見ぬフリをしようとしているのだけど(苦笑)。
夢の中で一番カチンと来たのは、ある一つの色紙を論って、言われたことだ。
「▲▲▲▲(人の名前)、▲▲▲▲・・・・? ふ〜ん、▲▲▲▲って読むの。 読めんわ、こんなもん。」
奇しくも、このお子さんのお母様がこだわって付けられた、新しいいのちの名前だ。 あたくしはその子がもう文字が読めるほどに大きくなっているのを考慮して、 名前の部分をひらがなで書いて、読みやすいようにと工夫して作った大事な作品だ。 あたくしに対する侮辱はともかく、この子とそのお母様に大変失礼な気がして、 夢なのに、物凄く悔しくて、悲しくて、涙が出そうになった。
「特別だと思いやがって・・・・」
名前は「特別」なんだから当たり前でしょ!! と叫ぶ寸前で目が覚めた。
その後しばらく、ボーっとしていて、テレビの情報番組の占いを見ていたら
そして、昔の恋人・タカのパーソナルについて考えていた。 実はこの彼とは半年くらい、アナログ直筆で交換日記をしていたこともある。 あたくしが交際した中では、最も筆まめで、かつ、自分の言いたいことを的確に文章で表すことができる 数少ない・・・・いや、唯一といっていいほどの珍しい男性だった。 なので、たまに直情的な言葉が入っていても、それを書いた理由や言い訳がちゃんと付記してあって、 最後には結局謝ってある・・・・という文面も少なくない(笑)。 交換日記の中で文責を問うほど、当時のあたくしもそこまで細かくはなかったけれど、 文字として残るものなので、彼は彼なりにリアルタイムの気持ちと書き始めと書き終わりとの タイムラグの間に起きた、気持ちの移り変わりをきちんと書いておきたかったのかもしれない。
彼は物凄く情熱的で、当時は結構冷めていたあたくしとの間に奇妙な格差が生まれていた。 恋愛に対してだけでなく、何か異様に老成した高校生だったので(爆)、惚れた腫れたで バカ騒ぎするより、じっくりまったりといった方が好きだったので、彼のテンションに たまについていけないこともあった(爆)。 今までの人生の中で一番ハイテンションだったあの時期の恋愛がそうだったなんて 誰も気付きやしないだろうけれど、「彼となら一生このままでもいい〜っっ!!(ラヴラヴ)」とは 決して思えなかった・・・・なぜなら、花も恥らう受験生だったからだ(笑)。
あたくしは奇蹟的に、第一志望の大学にホント何かの間違いじゃないかと思うくらいスンナリと合格し、 燃えるオトコ:タカは、地元の私立は1つか2つ受かってたようだが、 どうしても上京願望が強く、第一志望は6大学の中の1つだったりしたので、 そのまま浪人することになり、あたくしたちも1年間、遠距離恋愛を余儀なくされた。 この1年間・・・・何が苦痛だったかって、ほとんど何にもできなかったことだ。 芝居にかまけていれば、彼にかまっていられなくなるのは明白で、 それで逆切れされて、また受験に失敗して、あたくしのせいにされたらたまらないから、 1年間、本当にじっと大人しくしていた・・・・やりたいことは山のようにあったのに。 丁度、大学受験が始まる頃、あたくしはもう彼に対して自分が何もできない立場にあると確信して、 次から次へと公演予定をぶち込んだ。彼の進学が決まろうと何しようと、 向こう半年は芝居の予定をガッチリ組み込んで、彼が入る隙をなくしてやった。
そうしたら、タカは驚くことなかれ・・・・第一志望には辛くも惨敗したものの、 何とあたくしと同じ大学に来てしまったのだ!(学科は違うけれど)
マジで、「ひょえぇぇ〜〜〜〜〜〜っっ!!」である( ̄∇ ̄;) ・・・・つか、ここだけの話、かなりヒイた。
彼の入学が決まった頃、あたくしは学外の初公演の準備で、上を下への大騒ぎ。 とてもじゃないけれど、ゆっくりと彼の合格を祝っていられる場合じゃなく、 泣きながら笹かまぼこを齧りつつ、自分で起こしたクーデターの後始末をしながら とにかく幕を飛ばすことで頭がいっぱい・・・・もちろん家になんかほとんど帰れずに、 この公演がもとで別れたといっても過言ではない(爆)。
この公演さえ終われば、何とかなるとでも思ってたんだろう、タカは。 5月になって初めて、8月にも1本、裏方で芝居に関与するというのを聞いて、 うちのアパートから最寄の商店街で、キレて暴れた( ̄∇ ̄;) 8月の公演の、脚本の清書をあたくしが一手に引き受けていたものだから、5月の連休全てが それに費やされ、見張りまでついて(爆)、3連夜、あたくしは軟禁状態で仕事してたのである。 もう、さすがに嫌気がさしたあたくしは、8月の公演が終わるや否や結成された集団に 潜り込ませていただき、9月の公演にも参加し、前の公演で既に出会っていたあっちゃんに 協力してもらって、無事にこの9月の公演の前にはスッパリと別れることが出来た。 ・・・・スッパリと、というわりには意外と手間がかかって、あたくし、この公演の初日に大遅刻。 色恋枕で他人の行く手を阻むようなオトコは大っ嫌いです( ̄^ ̄) ましてや、芝居ともなれば、1つの作品に関る人も多いので、その人たち全員に迷惑をかけるような そんな真似は御法度なんだけど、まだその世界1年目の彼に、そんなことを話しても 通じるはずもなく・・・・。 半ば暴力的な手段で別れ、以後、キャンパス内で鉢合わせをするような可能性がある時は 常に、あっちゃんか同じクラスの友人に傍にいてもらい、 おいそれと声を掛けられないような鉄壁の環境を築き上げた。 向こうは1年生・・・・こっちは2年生。立場を利用した環境的な敷居を高くして、 しばらくは、あんなに仲が良かったのに口も利かなかった。
あたくしが嫌気がさした理由にはもう一つ理由があって・・・・。 実習課題の8mmの撮影にどうしても協力してほしいと言われて、まぁ最後の施しだと思い、 8月公演の支度で一番忙しい、5月の連休の1日だけ、休みをもらって撮影に協力してやったのだが 後に、撮りこぼしと同録テープの入れ間違いが発覚( ̄∇ ̄;) もうこれ以上、自分には時間がないのに、まるで当たり前というような顔をして、 撮り直しのアポを入れてきた時だった。 勝手に日程を決めてしまった後で、こちらの予定はおかまいなし。 何様だオマエ!!?? とさすがのあたくしもぶちキレて、罵詈雑言で捲くし立てた。
「冗談じゃないわ!! あたしはあの日1日だけで全部済むっていうスケジュールを呑んで それで時間を開けたのよ!? もうこっちも一刻の猶予もないの。 それを、何!? 自分の失敗を棚に上げて、それが人に物を頼む時の態度!?」
嗚呼・・・・今から思えば、あの頃のあたくしは、夜叉だわ。鬼だわ。 まぁ、8月の企画が思いの他、デカかったので、あちこちに回らねばならず、 それでなくてもパンキョー(一般教養)の単位取りこぼしを絶対に避けなければならないところ 1年生と2年生とでは、もう逼迫している状況がまるで違うのである。 しかも学科違いのあたくしを、自分の課題に巻き込もうとして勝手も甚だしい。
まぁ、今の彼なら、まず撮りこぼしなどというアホな失敗をしないだろうし、 それなりの権限も持つようになっているし、少しは頭の下げ方も覚えただろうから、 こんな辛酸を舐めずに、元気に仕事をしていることと思うが、 如何せん、根が単純で、地軸はオノレ中心・・・・失敗は簡単に取り戻せると勘違いしているフシだらけ。 まだあの頃は、多分、自分の失敗がどこまで影響を及ぼすかわかってなかったんだろうなぁ。
時間軸を少し前に戻すが、交換日記をしていた時のこと。 既に確固たる目標があったあたくしに対し、まだ曖昧な理由でしか進学を希望していなかった彼は いつも、そのノートの中であたくしのことを羨んでいた。 自分の才能を自覚して、それを十分にアピールすることも決して忘れないオトコだったが、 欠落している「何か」が予想以上に大きいことに、徐々に気付き始めていたのかもしれない。
「夕雅には目標がある・・・・俺には、まだない。 情けねぇ・・・・マジでもう時間はないのに。」
受験日が迫るごとに、そういう弱音が増えていった。
彼は大学を卒業後、大手の電気機器会社が持っている、CSか何かの子会社に就職し、 1〜2年目のうちにADを抜け出て、番組を持つようになった。 最後に連絡をとったのは、5〜6年前の年賀状。忙しそうではあった。 CSも最近元気なので、それに乗じて彼も元気ならばそれでいいが、 このナイトメアの恨み節が、彼の解雇通告を予知したものでないことを心から願おう。
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