あの、温厚で明るいヒサエちゃんですら、イライラや焦燥感、 ダンナとの意見の食い違いから、夜、眠れなくなったという。 自分の主張をハッキリと伝えたにも拘らず、あれこれと家の事情が先行して、ミユキは自分の思うように 式次第を決められなかった上、式当日は激痩せしていて、顔が真っ青だった。 多分、和装の羽二重がきつかったのだろう・・・・。
ぷよ2の女友達で、学校で一番頭が良く、気立ても良く、 昔からみんなの人気者で、アイドルのような風貌を今も保持し続けている、 アユミちゃんも、気が触れたようにダンナに向かって物を投げたと聞いた。
あたくしも、何もかもがイヤになってきて、しくしく泣いていたかと思えば、 今度は無性に腹がたってきて、ぷよ2の文字通りぷよぷよしたお腹を ピシャピシャ叩いて、鬱憤を晴らす・・・・オマケに酷い頭痛がもう2日間、ひっきりなしに続いていて、 昨夜は、もう耐えられなくなって、ロキソニンを飲んで寝たら、今朝・・・・思いっきし爆睡してしまい、 ぷよ2の弁当が、ギリギリ間に合うか否か・・・・というくらいになってしまった。
感情的になってはいけないと思って、言いたいことはとりあえず文章にまとめておくことにした。 その上で、ムカついていることや納得いってないことを、逐一言うようにもしてきた。 これだけの対策をとっていても、気は沈む一方、今まで病歴がなかった人々でさえ、 上記のような状態になるというのだから、あたくしがこうなるのは蓋し当然なんだけど。
「大丈夫・・・・これがきっと世間で言うマリッジ・ブルーってヤツなんだよ。 ほら、適応障害の一部にもされてるでしょ・・・・ニュースでやってた。 みんな、こういうのを乗り越えて、やっとお式に辿りつくんだよ・・・・大丈夫。 マジでヤバくなったら、1も2もなくオーアエに診てもらうことにするから。」
ぷよ2にはそう説明しておいた。
自分でも理不尽だと思うんだ。 世では、結婚しても色々な理由で以って、挙式できないカップルは五万といるし、 自分たちは、ホントに及第点以上、いや、それよりまた更に高みにいるような そういう環境に恵まれているんだから、不満なんかを言っている場合ではないんだけど、 理不尽な不安や不満は、次々に溢れだしてくる。
何でか?っていうのも、自分ではおよそ理解している。 あたくしは、今のままの生活に特にイベントを求めていなくて、このままのんびり、 リズムがつかめるまでは、毎日、家のことをしたり、ダンナの世話をしたり、 自分の体のメンテをしたりしながら、「自分の生活」「自分たちの生活」を確立するために 時間を贅沢に使いたかったんだ。 お金に関しては贅沢をするつもりは全然なくて、寧ろ、倹約するのが楽しいくらいだったから、 1ヶ月にどのくらい貯められるか、自分のお小遣いは捻出できるのか、 そういった日々のやりくりが一段落するまでは、何も要らない・・・・そう思っていた。
ドレスの試着は楽しかった。ホント。 でもあれで、「花嫁の自覚」たるやはきちんと整った。 袖を通した時点で、そういうことなんだな・・・・というふうにも思えた。
「ゴメンなぁ・・・・多分、今は理由をきちんと言って、釈明もできるけど、 そのうちそういうことも出来んくなると思う・・・・。 理不尽に殴る・・・・多分。 理不尽に蹴る・・・・多分。 理不尽に家事放棄する・・・・多分。 理不尽に八つ当たりする・・・・多分。 多分・・・・っつうか、絶対( ̄∇ ̄;)」
ぷよ2は、あたくしの心の中で起こっている変化に、まだ本当の意味では気付いていないだろう。 でも、この日は至極、物分りが良かった。
「あぁ、いいよ。殴るにせよ、蹴るにせよ、好きにしたらいいよ。 あのアユミちゃんだって、ダンナさんに物を投げたっていうんだから、そのくらいは覚悟するさ。」
「でもアユミちゃんとこって、何から何まで手作りで自分で用意しなきゃいけないお式だったんだよね? 創作で行き詰って、それに誰かとコラボレイトしなきゃいけない時に、そんなブルーになったら、 創作者は絶対にそうなる・・・・気持ち、痛いほどわかる。」
〆切が決まっていて、それに向けての創作はかなりのプレッシャーになる。 予てから聞いてはいたけれど、アユミちゃんは、絵を描いたり、オブジェを作ったり、 そういう創作の仕事をしている。 だから親の意向で、結婚式は全部手作りで・・・・卓上装花から会場演出全てに至るまで、 全て自分の演出、創作でしなさい・・・・そう言われて、そのお式を見事遂げたんだそうだ。
まだ、『雑』の校正が済んでない。 創作意欲まで激減して、イライラばかりが募る。 そんな時の作品を誰が読むものか・・・・と、手直しをしたかったんだけど、 それすら進まず途中で挫折。 日々の倹約から捻出したあたくしのお小遣いは、負担金を捻出するのに十分な額に達したというのに これでは全くダメではないか。ここしばらく、自責の毎日である。
あたくしも、一創作者として、恐ろしく巨大な締め切りを目の前に そっちの分のブルーと、花嫁としてのブルー、奇しくも両方を一気に抱えるハメとなり、 アユミちゃんの気持ちがそういう理由でよくわかる・・・・そういうわけで。
式で使う曲、1曲だけ、ドンピシャのを見つけたので、ぷよ2に伺っておく。 かつて、女の子が生まれたらこんな名前にしたい・・・・なんて話をした時と同じ反応で 少しだけ気分が和らいだ。 多分、曲を耳にした時に、どっかで聞いたことあるなぁ・・・・でも何だったけ?? というのにしたかった、その中で絶好の物を見つけたので、それで気分が少しラクになった。
我が家では「あやや」というと、松浦さんのことではなく、自動的に上戸さんのことをいい、 ぷよ2はそんな「あやや」の大ファンなので二つ返事だったんだと思うんだけど(爆)。
この日記を書いているときに、ママさんから、フォローの電話があったので、また泣く(苦笑)。 ママさんの檄は嫌味がない。一所懸命励ましてくれるんだけど、 逆に力が取れる。
「あなたももう結婚して、ひとりの奥さんなんだから、こんなことで振り回されててどうするの? 大丈夫よ、まだ時間はたっぷりあるんだから、何とでもなるんだから。 余計な心配はしないで、ゆっくり休んで・・・・今日はぷよ2が家にいないから心配かもしれんけど また明日、ひとつずつ考えてけばいいんだから。 それと、自分のお母さんのこと、悪く思うんやないよ。 とにかくゆっくり休みなさい。あんまり気を使いすぎずに、ね? 薬も控えて、休める時に休んでおきなさい、ね。」
ありがたくって、また涙があふれてきた。 ダンナよりもよっぽど頼りになるよ、ホント・・・・。 明日から来週の日曜にかけて、日をおかずにまた何度も名古屋に足を運ぶので、 体力温存のために、寝てきます。 ぷよ2も夜勤だし、少しはのびのびできるだろう(苦笑)。
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