2003年10月24日(金)
【徹底比較】 「現実」と「小説の中」の出来事


これは笑い話ではない。
大変に複雑かつ難しい問題なのだ。


このことを日記に書いていいか? と、話してくれた人に持ちかけた。
その人は、この話が現実なだけに、しかも、まだ起こって日が浅いため、なるべく
配慮をして記述するようにと釘を刺されたほどだ。




まず、その前に、あたくしが学生時代からずっと書き続けていて未だ完結しない小説の
今のところのあらすじを書こうと思う。



【小説のあらすじ】

主人公の凌子は、15歳の夏、恋人であったマサヤを喪った。
マサヤは若くして脳腫瘍に侵されていた為、彼の命を救うことは出来なかったのである。
悲嘆に暮れる凌子を必死に励まし、支え続けてきたのは、マサヤの双子の弟・テツヤである。
彼もまた凌子に恋心を抱いていたのであるが、兄に先を越され、
そして凌子の心も兄のところにあると知り、愕然としつつも、
兄が死んでしまった後、テツヤは自分が身代わりになれれば・・・・と、
彼女に対して献身的に庇護をする。
しかし凌子には二つの揺れ動く心があった。マサヤのことは勿論、愛していたが、
同時にテツヤに対しても同じ気持ちがあったことに気付いてしまったのである。

やがて、中学を卒業した彼らは、別々の高校へ行くことになる。
凌子はそこで新たな場所を見つけた。ひとつは部活動であるダンス部。
そしてもうひとつは、夜な夜な縄張りを巡って学校対抗で行なわれる抗争に参加すること・・・・喧嘩である。
テツヤは凌子のことが気になりつつも、まさか彼女が裏の集会に顔を出しているとは知らず、
他校の生徒や、昔馴染みの友人に連絡を取るが、誰一人として彼女に関する情報を
きちんと流してくれるものはいない。
何故なら、凌子は既に、この街を統括するほどに無敗伝説を作り上げていて、
向かうところ敵なしの状態・・・・彼女の心を巣食っている病魔が正に抗争の現場で爆発しているのだと
テツヤは真っ先にそう思った。
止めようにも止められない彼女の暴走。
彼女のサポートをしているケイという少年とはコンタクトが取れたが、
彼もこんなことを言う。
「何が彼女をあそこまで追い詰めているのか、俺にもわからない。」
「ただ俺にしてやれることは、凌子が無事に家に帰り着くのを見届ける・・・・それだけだ。」
と。ケイは凌子のことが好きなのだ。が、集会ではパートナーとして彼女を支え続けるだけの
一つの駒に過ぎない、悲しい存在であることをテツヤは知らされた。
様々な痛みを体験し、凌子は精神的にも肉体的にも大人になっていった。

高校を卒業し、大学へ進学。凌子の暴走性はナリを潜めていた。
楽しいキャンパスライフに、新しい友達。
そして、新たに自分のことを好きだと言ってくれる男性も目の前に現れた。
が、彼女はその一歩が踏み出せず、思い悩んでいた。
マサヤにしろテツヤにしろ、過去の人間ではないか。
未だ過去に囚われている自分を呪うように、彼女は自分を責め続けた。
そんなある日。
ちょっとした偶然で、凌子はテツヤに再会する。
昔の恋心が再び動き出そうとしている。
この頃、テツヤにもエリコという恋人が既にいたのだが、テツヤは次第に
エリコではなく凌子に対して時間を割くようになり、やがては家にも招き入れるようになった。
不審に思ったエリコは、ある日突然、凌子がいるテツヤの部屋を早朝に訪問する。
あれこれと詰問を重ねるエリコとは逆に凌子は居直っていた。
「恋愛に順番などない。あなたが彼に対して必死に存在をアピールしなくてはならない時点で、
彼はもう、あなたのことを見てはいない証拠だわ。」
女同士の闘いはあっさりと凌子に軍配が上がったように見えたが、エリコはまだ諦めなかった。
後日、エリコは凌子に二人だけで話がしたいと申し出たのを、凌子は快諾し、
自分の部屋に招いたのである。そこで、凌子はテツヤが自分にとってどのような存在であったかを
正直に全て話して聞かせた上で、料理を振舞った。
凌子に気圧されるようにしてその料理を口に運んだエリコ。彼女の完敗であった。

程なくして、まるで互いが空気のような存在のまま、凌子とテツヤの交際が始まった。
冬のある日。
2人で出かけたデパートの中。凌子は頭痛がするといって、鎮痛剤を飲んでいたのであるが、
とうとう倒れ、そのまま救急車で病院に運ばれる。
緊急手術が行なわれ、その診断名が下りたのであるが、何の因果か、彼女の病名はマサヤと同じ、
脳腫瘍であった。
幸い、命に別状はなかったものの、彼女の今後には大きな後遺症が残るであろうと、
医師はそのムンテラを家族とテツヤに施した。凌子、21歳の冬である。

彼女の意識が戻り、やがてリハビリが始まった。
彼女に残された大きな後遺症は、右半身不随というものであった。
凌子は諦めなかった。季節が何度か巡って、毎年夏になると憂鬱そうな顔をしては
屋上に出て風に吹かれているのだけれど、リハビリはただの一度も休まず、
それが功を奏してか、左手に杖を持てば、何とか歩けるところにまで彼女は回復した。
それをずっとサポートしてきたのはテツヤだった。
大学に通う傍ら、彼はずっと凌子のそばに居続けた。
彼が大学を卒業し、しばらくしてから、テツヤは凌子を伴って、帰郷した。
彼女も東京の大学病院から、地元の国立大学の病院に移転することになった。凌子、25歳の夏である。

そこでの入院生活も無事に経て、彼女は自宅療法にまでこぎつくことが出来た。
今まで大きな我侭を言わなかった彼女が、初めてテツヤに無理を言った。
「マサヤのお墓に行きたい。」
マサヤの命日、7月28日。奇しくもこの年のこの日は、太陽が高く上がり、
正に酷暑。その中をゆっくりと歩いて墓参に向かう凌子。
が、この墓地に、もうひとりの男がやってきていた。
凌子が入院していた国立大学で研修医になっていた、嘗ての同朋、ケイである。
濃縮された凌子の素顔を知っているケイ。
反して、長きに渡る闘病生活を共にしたテツヤ。
ケイはテツヤに「挑戦状」を叩きつけた。
「俺が凌子を治す。専門は脳外科だ。」
弱く、脆い彼女しか知らないテツヤ。反して、強く気丈な絆で結ばれていたケイ。
二人の男の狭間で、27歳になっていた凌子は、新たな決断を求められていた。







ざっと書いて、この長さ。本当はもっと沢山のキーパーソンが登場し、凌子やテツヤ、ケイの生き様など、
詳細に渡って書いてある上、ここには記さなかった数々の事件も存在する。
未だ完結しないこの物語は、一応の完結編が800枚、続編として書き始めたものが1500枚を越え、
書いているあたくしですら、今後の展開が読めない( ̄∇ ̄;)
2000枚以上の物語を、ここまで凝縮したあたくしを誰か褒めてくれ(爆)。
(原稿用紙20枚以内で書かないとエラーが出るのだ(爆))







そんなことはさておき、ここからが現実の話である。
今まで書いてきたのはあたくしが、仮想現実として書いたフィクションの物語だ。
そして、これから書くのは、全てほんの数年前に起こった、
そして関る人々の人生を狂わせんばかりの大事件は、ほんの1週間ほど前に起こった、
ある種、奇跡に近い、現実・・・・ノンフィクション・・・・ドキュメンタリーだ。


登場する人物は、予め仮名で設定しておこう。
現在、21歳の若者たちばかりである。青年・柏木、そして、ハル子ナツ子という
2人の女性が主要人物である。


【現実に起こった事件のあらすじ】

3人が18歳、高校3年生の夏のことであった。
既に交際を始めて1年以上が経っていた柏木とハル子は、ある日、デートの待ち合わせとして、
とある場所を指定し、そこで落ち合う約束をしていた。
が、柏木は電車を1本乗り遅れたため、待ち合わせの場所に到着するのが少々遅れた。
と、自分たちが待ち合わせをした場所が黒山の人だかりになっている。
ハル子の姿も見えない。
ハル子を探そうと、とにかくその人だかりを分け入ってみると、そこには
交通事故に巻き込まれ、血まみれになって倒れているハル子の姿があったのである。
柏木はパニックに陥った。自分が遅刻をしたばっかりに、ハル子が・・・・
自分の愛する人が今、目の前で血まみれになって倒れているのである。

ハル子は病院に搬送された。意識不明の重体。
責任を重く感じた柏木は、毎日毎日、欠かさずに病院へと通い、彼女を見舞った。
しかし、その甲斐も虚しく、彼女の意識は戻らないままなのであった。
3日経っても、1週間経っても、1ヶ月経っても、そして、重症だった傷がほぼ癒える頃になっても、
彼女は眠り続けたままなのだ。
柏木は精神的ショックと重責のストレスからか、ほぼ廃人同様の状態のまま高校を卒業した。
それでも柏木は、いつか彼女が目を覚ますに違いないと信じ続けて、大学も受験しないまま、
ただ毎日、ハル子の病室に通った。
手を握って、聞こえているのかどうかもわからないが、彼女に一所懸命に話しかける。
一日の面会時間が終わるまで、彼は彼女に付きっ切りだったのだ。
1年間、このような繰り返しの日々を過ごしていた。

そんな彼を不憫に思ったのか、ある日、ハル子の父親が柏木にこう言った。

「もう、いいよ。君には君の人生がある。もう、ここに来なくてもいい。」

第三者から見れば、彼に助け舟を出すいいきっかけの言葉にも聞こえるが、
彼は行き場を失い、以後病院へ姿を現さなくなったものの、半年間ほど何もせずに暮らす日々が続いた。

そんな彼を励まし続けているひとりの女性がいた。それがナツ子である。
ナツ子はハル子とも親友で、柏木たちの仲間のうちの一人でもあった。
廃人同様だった彼が、とにかく立ち直り、アルバイトを始めるようにもなったのも
彼女が柏木のことを心配し、友人として励まし続けた成果とも言えるだろう。
やがて2人は交際を始めた。
仲良さげに一緒にいるところを、周囲の人たちも目撃している。
彼らの交際が始まって2年と少しが過ぎた頃、誰もが予想していなかった衝撃の事件が起きた。


ハル子の意識が回復したのである!


3年半の月日を経て、彼女は奇跡的に意識を取り戻したのである。
当の本人は、まるで1日だけ眠っていたようなことを言い、そしていつもそばにいた嘗ての恋人、
柏木のことを呼ぶのである。
ハル子が目覚めたことで、彼女の両親も嬉しさと、驚き、そしてパニックもあったと思う。
娘の要望通りに、柏木の元へ連絡を入れたのである。
その日、仕事があったにも拘らず、柏木は取るものも取りあえず、病院へ直行した。
普段、勤務態度も良かった彼がいきなりの無断欠勤をしたので、アルバイト先では
良からぬ噂を立てたり、よっぽどのことがあったんだろう、などと叱責は免れたものの、
問題はここからなのである。


ハル子の頭の中では、まだ柏木は恋人のままなのだ。
彼女の意識では1日くらいしか眠っていなかったような感覚なので、いきなり今日の日付を言ったりしたら
混乱を来す。本物の浦島太郎状態なのだ。
そして、3年半の時間が流れている間に、柏木はナツ子という新しい恋人に出会ってしまっている。
しかも、ナツ子はハル子の親友だ。
これをどう説明したらいいものか、柏木は、喜びも束の間、一瞬にしてパニックに陥った。
ナツ子には、ハル子が覚醒したことを報告せねばならない。
それは隠していても仕方がないので、事実を伝える。
が、今度は、その事実を伝えられたナツ子が、憔悴し始めたのだという。


ナツ子も心の中では、ハル子に目覚めて欲しいと願ってはいたものの、いざ、本当に覚醒したら、
柏木が彼女のところに行ったっきり、戻ってこなくなってしまうのだ。
恋人として幸せな日々を送っていたのに、ハル子が目覚めたせいで、全てが狂い始めた。
しかし、元々、柏木と交際していたのはハル子。自分はその後釜に納まったに過ぎない。

これは、あたくしの推測の域を出ないが、恐らくナツ子はハル子に対して、
常に「恐れ」を感じていたのかもしれない。
心の中では、友人として覚醒を願っていたが、柏木の恋人としてはそうではなかったことを
気付かされてしまったことに、彼女もまた重い自責を感じてしまったのではなかろうか・・・・。


柏木は、病院でまだ自分が18歳だと信じて疑わないハル子と、今現在の恋人のナツ子の間で、
激しく悩んでいる。まだ、ハル子が覚醒して1週間しか経っていないので、
医師やご家族がどのように対応していくのかも見えない中、彼自身、どのように動いていいのか
全く見当がつかず、わからないままらしいのだ。
そうこうしている間にも、ナツ子の状態は悪化していくし、病院ではハル子が待っている。
自分を助けてくれたナツ子に義理を通すか、それとも嘗て愛した女性の人生を背負うか・・・・
彼の悩みはパニックゆえ二者択一の究極の選択になってしまい、
思い余って、あたくしの知人にことのあらましを全て説明した上で、相談してきたらしい。





小説や映画やドラマでも、ここまで波乱を呼ぶ激動の物語というのは、稀有である。
今クールでも、似たような話(TBS「恋文」)がやっているが、
アレもアレで結構なストーリーだと思っていた自分の感性の乏しさに呆れる。
現実に起こった上記の事件は、どう考えてもハッピーエンドにならない気がする。
例えば、ナツ子が気丈に耐え抜いたとしても、何かしらの虚しさが漂うし、
当の柏木がそれで納得するかどうかも怪しいところだ。また違った意味で落胆し、
今度はハル子を当惑させてしまうかもしれない。
また、ハル子が現実をきちんと受け止めて、それなりに気持ちの整理を付けたとしても、
また柏木が当惑することになるだろう。
柏木はハル子に対して、「好き」という気持ちを持ち続けたまま別離を余儀なくされたわけだから、
ハル子から改めて別離を切り出された場合、心にしこりが残るに違いない。

↑人生って・・・・(-。-) ぼそっ



ねぇ、神様。
どうしてハル子は目覚めようとしたのでしょうか?
柏木を支え続けたナツ子は、罪深いのでしょうか?
一途にハル子を愛していた柏木は、
ナツ子を不必要だと撥ね付ける強さを持っていなければならなかったんでしょうか?

ハル子が「生きたい」と強く願った結果がこれなのだとしたら、
あんまりのような気がします。

あたくしは思いました。
柏木は自我が薄いのではないのだろうか・・・・とも。
しかし、彼は彼なりに自分の思いを無器用ながらにも必死に相手に伝えるべく
頑張ってきた側の人間じゃないのですか?

ハル子だって、眠っている間、罪を重ね続けたわけではない気がしています。

ナツ子だって、廃人同様の友人に手を差し伸べて、救った側の人間です。

どうしてこの善人みんなが、苦しまなくてはならないのですか?

あたくしにも教えてください。
彼らが苦しまなくてはならない理由がそこにあるのだとしたら、それは一体、何なのですか?
文学で言えば「芸術的」とされる、このような奇跡的事象は、時に残酷です。
フィクションの世界ならば、人間の手でいくらでも操作が出来ます。
だけど彼らは等身大の21歳の若者で、ハル子に至っては、まだ自分が18歳のままだと信じているのです。
結婚にも早く、まだまだこれから研鑽を積むべき時点にいるとあたくしは思うのですが、
それは甘ったれた考えなのでしょうか?

彼らが一体何をしたというのでしょう・・・・?
あたくしが書いた小説のなかにも、苦悩で苦しむ人間は沢山出てきますが、
優しい心を持っている人ほど、苦しむのは何故なのですか?
それは「美学」なのですか?

神様・・・・。
あたくしには、どうしてもわかりません。

↑理不尽で、理不尽で・・・・。


せめてこの3人の若者が、強く逞しい自己を確立し、やがては乗り越えていくことを
あたくしは願うしかできない、非力な人間であるということも、同時に知りました。

あさみ


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あなたの毎日にずぅむいん・・・・

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