2003年04月15日(火)
闘え!起動戦士アサミンジャー 「衝撃」の巻
オーアエはカルテ管理が杜撰


毎度。
微熱以外は特に何ら変わった症状も出ず、減薬も着々と進行中のアサミンジャーです。
本日も、愛車(ケッタだよ( ̄∇ ̄;))に跨り、お散歩がてらの通院です。


しばらく発作らしい発作も出ていなかったので、あたくしもすっかり安心していたのだけど、
本日、待合にて、1時間も待たされたので、さすがのあたくしも限界みたいなものを感じた。
暇つぶしグッズを持参していたので、何とか事無きを得たんだけれど、
あたくしの2つ前に診察を受けていた患者さんが、診察室から出てくるなり、
あたくしの座っているすぐ傍のソファに腰を下ろして、泣き始めたのだ。


これには、参った。
あたくしは、自分で言うのも何だけど、低めの感情トーンや、強い感情パルスに
ずるずると引きずりこまれる、厄介な性質を抱えている。
だから、何事にも巻き込まれやすいし、気付かなくてもいいことにまで意識がいってしまう。
でも、これは芝居をやっていく上で数年間に渡って叩き込まれた訓練の成果でもあり
このくらいの神経でなければ、あの世界ではやっていかれないので
自分のこの性質は、切っても切れないものだと思っていたし、
舞台を離れてからも、人間観察においては多大な威力を発揮していたので、
「長所」と思うことにしていた。
が・・・・。
この人が発しているSOSは半端なものではない。
あたくしはずるずると引きずりこまれて、そして、真相みたいなものを見てしまった。


それからもしばらく待たされて、やっと診察室に通されたわけだけど、
あたくしは、その時点で相当疲れきってしまっていて、
でもその事実だけはちゃんと伝えなければいけないと思い、オーアエに話し始めた。


「先生・・・・あたしの2人前にここにいた患者さんのことなんだけどさ・・・・。」

「ん? あの人がどうかしたか?」

「待合で、あたしの隣で泣き始めちゃったんだよ。
あたし・・・・引きずり込まれそうになっちゃって、ちょっと参った。」


「引きずり込まれるって、どういうことだよ?」

「先生には信じてもらえないかもしれないけどさ、
あたしね、自分の波長と合う人とそうでない人を、見分けることができるんだ。
強い感情とか、低い感情とかにずるずる引っ張られちゃうの。」


「へぇ〜。面白いな、そういうの。」

「ここしばらく、発作らしい発作は出てなかったんだけど
あの人が隣にいた時は、さすがのあたしもヤバいと思った。」


「ふ〜む・・・・。でもキミの言っていることは満更嘘じゃないな。」

「どういうこと?」

「あの人も、キミと重なる部分が無きにしも非ずってことだよ。」

「ふぅん・・・・。でも、あれだね。
あの人はあとしばらく、絶対に救われないよ。」


「!!??」

「例えばご両親とか先生とかが、何か慰めの言葉とか気休めとか言っても、
多分、しばらくはサルベージされない。重症だよ。
物凄く、悲しそうに泣いてた・・・・。」


「そんなことまでわかるのか!?」

「何となくだけどね。・・・・何? 図星?」

「あぁ・・・・いや・・・・」




図星のようだった(苦笑)。




「でも、人のことがそこまで判るっていうのに、
どうしてあなたの謎は解明されないのかねぇ・・・・?」


「できてれば、こんなところに来ないって( ̄∇ ̄;)」

「それもそうか(笑)。」

「あ・・・・先生。今日の靴、綺麗だね。」

「おいおい・・・・何でそういうとこばっか見てんだよ(爆)」

「おしゃれは足元からって言うじゃない♪
・・・・それに。先生いつも、それこそ泣きそうに悲しそうな靴を履いてたわ。
そうね・・・・『精神科医の悲哀』が漂ってきそうな靴だった。」


「何だよ、それ(爆)」

「何も靴ばっかり見てたわけじゃないわ。
今日はシャツの感じが違うなぁ・・・・って目線を下げていったら、
靴も綺麗になってた。もう『悲哀』は感じないわ(笑)」


「ホンットによく見ているよなぁ、キミは。」

「人間観察にかけては、あたしはプロだもん。
待合にいたって、患者さんなのか、付き添いの人なのか、病院関係者なのか
一発でわかる。発してるものが違うから。」


「なるほどなぁ。そういうのをシャットアウトすることってできないの?」

「しちゃいけないって思ってた。それに、もうできなくなってるのかも。
しようと思っても、きっと否応なしに入ってきちゃうんだろうね。」




ここから色んな話に及んだ。それはかなり核心をつく内容なので、割愛させて頂くけれど
あたくしは、そんな深刻な話をしている間中、凄く気になって気になって仕方がないことがあった。
この後、この診察室を訪れるであろう患者さんたちのカルテが、順番に机の上に並んでいたのだが
その中に、あたくしの中学の時の同級生(♂)と同姓同名のものがあったのだ。
漢字まで一緒・・・・。
でもまぁ、そこまで珍しい苗字でも名前でもないし、
ひょっとしたら本人じゃないかもしれないし、
それに、カルテに記載してあった住所は、元々彼が住んでいた場所とは少し離れていたから
どうか別人でありますように・・・・と、そう祈って処方箋を出してもらった。


「ねぇ、先生・・・・。」

「ん? 何だ?」

「仮にも患者の前に、別の人のカルテ出しっぱなしとくもんじゃないよ。
そうじゃないことを祈って言うんだけど、この次に入ってくる患者さん、
多分、あたしの中学の同級生だわ。」


「マジでっ!!??」

「でもまぁ、違う人かもしれないからね♪」

「ホントにキミは色んなところを見過ぎなんだよ(笑)」

「ホント、そうかも。じゃあ、ありがとうございました。」





悲劇はここから始まった( ̄∇ ̄;)
診察室を出るや否や、見覚えのある顔が・・・・。
・・・・激マズ、あたくしの恐ろしいほどの予感はピタリと当たり、そこには
あたくしが懸念していた「中学時代の同級生」本人がいたのだ!!
あたくしは、まずビビリまくって、踵を返すように、再び診察室に駆け込んだ。




「セ、センセー!! 大変!! いた!!」

「何ぃ!? ど、どれだ!!??」

「嗚呼・・・・もう、あたし逃げたいよぉ。」

「大丈夫だから。次から時間をずらしてあげるから。」





あたくしはなるべく彼の顔を見なくても済むような角度で腰掛け、
会計が済むのを今か今かと待った。
その同級生は、前の大病院でも見たことのある心理の先生と話し込んでいた。
知り合いなのだろうか・・・・?
だったら、患者じゃなくて、ここに勤める可能性もあるかもしれないよなぁ。
でも、カルテが用意してあった。
高確率で、彼はあたくしと同じ主治医の患者・・・・ということになる。
まずいなぁ・・・・。
凄く嫌だ・・・・。


あたくしは受付の声の大きなお姉ちゃんに、ズバリフルネームで名前を呼ばれ、
なるべくさっさと会計を済ませて、逃げるように隣の薬局に駆け込んでいった。
あたくしの名前はインパクトがある・・・・。
気付かなければいいんだけど。


あたくしは薬局で待っている間も、何故か、ここしばらくにない緊張を強いられていた。
もし、アイツが追ってこの薬局に来てしまったらどうしよう・・・・?
薬局は静かで人も少なくて、名前を呼ばれてから薬の説明も延々と続く。
どうか、オーアエが彼の足止めを上手くやっててくれますように。
そう祈りながら、自分の薬が出来上がるのを待っていた。


何とか彼が来る前に、薬は出来上がり、会計も済ませて、薬局を脱出することができた。
しかし、心にしこりのようなものが残る・・・・。





遡ること、高校受験の発表日。
実は、この彼はあたくしと同じ高校を受けたのだけど、サクラは咲かず、
滑り止めの私立高校に進学していったのだけど、その現場にてあたくしは
彼の傷に塩を塗るような真似をしてしまっていたことを痛烈に思い出していたのだ。
彼の方が先に合格発表の掲示板を見終わっていて、後発隊のあたくしが掲示板に向かおうとした時、
既に結果を知ってしまった彼とすれ違ったのである。
同校のよしみ・・・・というか、小学校の頃から何度か同じクラスにもなっているので
それとなくいつもの調子で声をかけたのだ。

「どうだった?」

「・・・・・。」


彼からは芳しい返事もなく、そのまま立ち去られてしまったのである。
あたくしは掲示板を一通り見たところで、彼の不合格を知ってしまったと同時に
凄くヤバい事を言ってしまったのに気付いて、めちゃくちゃ後悔したのである。
その現実を今日の今日まで忘れていたのだけど、ひょっとしたら、あたくしのあの時の一言が、
彼の心によろしくない傷を作ってしまっていたとしたら、
すごい重圧感・・・・というか責任みたいなものを感じてしまう。

そして、それが原因で、ここを訪れているのだとしたら・・・・。
もう考えるだけで発狂しそうになる。

元々、悪いことを言ってしまったのはあたくしなので、
あたくしが土下座をして、それで済むことならばそうしてしまいたいくらいだ。

しかし、彼がどんな理由で来院したのかはわからず、
そもそも、患者なのか関係者なのかもわからないままだ。
オマケに、次回の診察はGWを挟んでいるので、5月6日。
間に、アヒル隊長に頼んで処方箋だけ書いてもらって薬を貰いに来ることにはなっているのだけど
真相がハッキリするのはGW明けということになる。
道程は長い・・・・。


ここしばらく、調子が良かっただけに、このワンパンチはかなり効いた。
自分の観察力の鋭さを、さすがに今日だけは恨んだ。
あんなカルテ、見なければよかった。
3週間以上、悩まなくてもいいことを悩まなくてはならなくなってしまったからだ。

↑彼は「女性」のあたくしを知らない。



家に帰ってきてから、サヨコにもこのことを報告したら
やっぱり彼女も、あの高校受験発表日のことをガッツリ覚えていて、
そのことが原因じゃなければいいね・・・・と少し心配そうに言っていた。
気休めだけれど、ここは田舎だから「心療内科」自体が少ないのだし、そういう理由で
あそこに来たのかもしれないよ・・・・とも言った。
どちらにせよ、親子揃って、あの日のことが彼の傷になっていないことを祈るしかないのだった。

あさみ


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