このシリーズで登場させた、サナエ(仮名)とおじょ〜(通称)は、
高校時代の友人である。
あたくしが、篩にかけ、厳選に厳選を重ねた友人で、生粋のいいオンナ達である。
リエとは小学・中学校と一緒だった、
幼なじみ・・・・とまではいかないが、長きに渡って付き合いのある、
あたくしにとっての「いいオンナ」の根源。
そんなリエと、今日会ってきた。
2年ぶりである。
最近は、携帯電話というとっても便利な科学兵器(グッズ)があるので、
メールなどで、お互いの近況を報告しあったりも出来るけれど、
顔を見て話すのは、実に2年ぶりであった。
昔話に花が咲く・・・・。
実は彼女とは、小・中とおして同じクラスになったことが1度もなく、
中学の時の部活も全く別々だった。
唯一、あたしたちを繋いでいるのは、
小学校の時のクラブ活動で、「ポンポンを持って踊る」ということくらいだ。
15年も遡らなければならない。
あたしは委員や生徒会などをやっていたが
リエはそういうのに名を並べるタイプではなかったし、
こう言ったら彼女には悪いが、
学力にも差があった。あたしの方が若干上である。
そんなあたしを、彼女は憧憬の眼差しで見ていたらしいが、
あたしは、彼女のことが羨ましかった。
「隣の芝生は青い」ではないが、
「踊る」以外に全く共通項を持たない2人が
実は互いに羨ましがっていたというのが、今日、わかった。
(それは、後から書きますわ。まずは時代を追ってこっちの話題から・・・・)
中学時代に、あたしをいじめの渦中から最初にサルベージしてくれたのは
彼女である。
彼女は、当初、あたしをいじめる側にまわっていたのだが、
あたしからどんどん覇気がなくなっていくのを感じ、
いじめたまま、あたしはいじめられたまま、冬休みを挟んで
「このままでいいのだろうか・・・・。」
と、考えていてくれたのだという。
あたしはその頃、生徒会の活動と受験を抱え、ひどく忙しくしていたのにも拘わらず
そういうややこしい人間関係の渦にも巻き込まれ、本当に辟易としていたが
学校を休むと、自分より前に、学校運営に支障をきたすことをちゃんとわかっていたので
不登校という道を選ぶことが出来ないでいた。
忘れもしない、中学3年、3学期の始業式。
前年までは山のように来ていた年賀状も、この年ばかりはほとんど届かず
クラスメートにもどんな挨拶をしたものかと
気も重く登校した。
下駄箱が並ぶ昇降口であたしは自分の靴を放り込みながら、
教室へ行くのがとても怖かった。
「おはよう」「久しぶり」「元気だった?」と挨拶をする相手がいないのが、
これほどまでに怖いとは、それまで知りもしなかったのである。
そんなあたしをリエは呼び出した。
あたしは、内心びくびくしていた。
また何か言われる・・・・そして、長い長い3学期が始まるのか・・・・と。
すると彼女は・・・・・頭をさげて「ごめんなさい」と言った。
今まで自分は間違ったことをしていた。そう言った。
「いじめ」という低次元のストレス発散法に
あたしは諦め半分で身を差し出していたので、彼女の行動・言動は正に
「きょとん??」
である(笑)。
しかし、この彼女の行動・言動は、本当にあたしを感動させた。
自分の非を認め、そして詫びるというのは、
それはそれは勇気もいるし、何より相手より自分そのものと向き合わねばならない。
その作業を、冬休み中かけてやっていてくれたことを私は咄嗟に悟り
この人はなんて凄いんだろう・・・・・・とダイレクトに感動したのである。
もし自分が逆の立場だったら、こんなにも潔い行動はとれなかっただろう。
こんなにも素直に「ごめんなさい」と言えなかっただろう。
そのことを思うと、彼女に対して素直に「ありがとう」と言うのが
一番いいのかもしれないと、あたしはにっこりと彼女を見て笑ったのだ。
長く長く、いつ終わるやと嫌な「永遠」を感じていたそれまでの瞬間を
彼女が消してくれたのである。
「おはよう」「久しぶり」「元気だった?」と挨拶をする相手が、目の前にいる。
素晴らしい冬の日だった。
「いじめ」の渦は、それから色々と形を変えて、様々な人を巻き込んだが
あたしは、自分が抜け出られてからは、一切、触れなかった。
再び巻き込まれそうになっても、ガンと構えていられた。
何を言われても、全然堪えなかった。
それは、リエがいてくれたからだ。
彼女の価値観は、あたしに大いなる影響を落としていった。
中学を卒業しても、高校に入学して新しい環境になっても
大垣という故郷を後にして、それぞれが違う土地に行くことになっても、
どこに行っても、彼女はあたしの自慢の友達だった。
あたしの友達には、こんな素晴らしいヤツがいるのだと
新しい環境になる度に、そこで作った友達にもよく自慢したものだ。
それは今でも裏切られていない。
彼女もあたしが思ったとおりの、いいオンナになっている。
リエは言った。
「夕雅はね、皆の憧れだったんだよ。」
数日前に、オーアエが言った言葉を思い出す・・・・。
「あなたは大奥で君臨しているのが似合ってるよ。」
あたしは、それを全否定した。
あんなところで君臨していられるタイプなどではない。
あたしは隠れていたかったんだ。
静かに静かに生きていくはずだったんだ・・・・と。
しかし、あたしの親友であるリエまでが、オーアエと同じことを言ったのである。
「私、夕雅のことが好きだっていってる男の子のこと、結構知ってたもん。」
「だって、誰もそんな素振り見せないんだもん、全然わかんないよ。」
「そりゃ、そうでしょ。思春期男子って(爆)」
「でも、あたしは、ほら●●ちゃんとか▲▲ちゃんみたいなタイプとは
全然違うじゃん? あたし、あぁいうのが羨ましかったの・・・・。」
「あぁ、確かに違う。彼女たちはアイドル。でも、夕雅はね『好きになる人』なんだよ。」
「・・・・・・。」
「あたしたちみたいな落ちこぼれにはさぁ、夕雅みたいな人は
『雲の上』の存在だったんだよ。そうそう簡単に話し掛けられないような。」
「『雲の上』って・・・・(笑) あたし、そんなに偉くないよ。」
「でも、あの時の夕雅って、すっごく頑張ってたでしょ?
自分の為じゃなくて人の為に。」
「頑張るのやめるの、怖かったからかもしれない・・・・。」
「そうかぁ・・・でも●●ちゃんとか▲▲ちゃんとは、根本的に成分が違う。
やっぱり、『トップの人』なんだよ、夕雅は。
そうなりたがっていなかったとしても、他人の為に謙虚に頑張ってたからさぁ。
だから、皆が『好きになる』んだよ。」
宝石のような言葉だった。
「トップの人」・・・・ウソのようだ。
あたしの上には、もっと沢山のオンナたちがいる。
自分が君臨したいがために、スキルアップを欠かさないオンナたちだ。
あたしは、そういうオンナたちが大嫌い。
あたしが謙虚・・・・? それこそウソみたい(笑)。
でもリエたちにはそう見えてたのか。
そして、「好きだ」と思ってくれる人が、ちゃんといたのか。
あたしは、そう報せてくれたリエのことが凄く好きだと思ったし、
彼女の言葉を素直に嬉しいと思った。
あたしの病気のことは予てから伝えてあったが、
彼女はカラカラとこう言ってのけた。
「頑張る人がなる病気なのかもね。
あの時アレだけ頑張ったんだから、今はもういいってことなんだよ。」
彼女もまた、あたしに「休め」と言う。
でも、こうも言うのである。
「でもね、あたしやあたしの先輩で、夕雅の舞台を見てファンになっちゃった人も
いるんだからさぁ。絶対に戻ってきてよ。また見せてよ。」