2007年03月09日(金) 田町


おととしの夏、父といっしょに田舎の成田へ遊びに行った。
成田山のお祭り見物、
いとこのケンちゃんが山車を引く若連衆としてデビューする日だ。
天気は快晴、お祭りの喧噪、おいっさーという野太い掛け声。
黄色い法被にねじり鉢巻を締めたケンちゃんも
いつもよりきりりとして見える。
ケンちゃんの所属する田町町会の山車の進行に合わせて、
私たちも移動していく。

お父さんはもともとここ成田で生まれ育った。
渡辺家にはお婿さんとしてやって来たのだ。
この日のお父さんはいつもとちょっと違った。
東京にいるときの、仕事中とも家にいるときとも、なんだか違う。

人ごみを避けるため、参道からはずれた裏道を進む。
「こっち行こう」
私を急かしながらぐんぐん進むお父さんの顔、
なんだか少年みたい。
私たちの後ろには、小学生の男の子が3人連なっていて、
かつてのお父さんは彼らだったんだな、と思った。

若かりし日のお父さんもまた、田町の若連衆のひとりだった。
当時の若連衆の仲間は、
今は山車の上でお囃子や音頭を取る幹部になっていて、
「コウちゃん来てたのか!」「コイチじゃねえか!」
とお父さんに声をかけてくる。
みんな頭が薄かったり太っていたりするけど、
相変わらずお父さんはうれしそうな顔だ。

参道を勢いよく掛け上っていく山車を眺めながら
あの黄色い法被は俺が選んだんだよ、
とお父さんはつぶやいた。
その顔は、なつかしくも寂しそうで、
少しだけいつものお父さんに戻っていた。



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